第六章①
結論から言えば、ライサはネウに殺されたのではなかった。
順を追って説明すると、ネウとライサは、ウルバーノに毒を盛られた際、クラインとは別にこの部屋に閉じ込められていたらしい。そして、初めに毒の眠りから覚めたのはライサで、ここから脱出しようと試行錯誤をこらしてあらゆる道具を使ったが、結局扉は空かず、部屋からも出られず、様子を見に来た海賊と戦いになったそうだ。
つまり、クラインが、ライサはネウに襲われて傷だらけになったと思っていたのが、実は海賊達と戦った跡だったのだ。
そして、ライサ自身の口から語られたその戦いはあまりにも無謀が過ぎた。
冷静な頭で考えれば、勝負は初めから見えていたようなものだろう。なにせ、ライサが普通にナイフを装備していて万全の態勢だったならともかく、武器を奪われていた上に数でも負けていたために、ライサは成す術もなく敗け、必死の抵抗を試みたが失敗、そのまま手を縄で縛られて気絶してしまったのだという。
ネウが海賊を血祭りに上げたのは、丁度海賊達が部屋を出ていこうとしている最中だったという。
そこにクラインが偶然部屋に入り、血の海の中に居たネウとその後ろの壁にもたれかかるライサを見て、クラインはネウがライサを殺したと勘違いした。
そう考えてみれば、ネウはただライサの報復をしただけと言う結果になる。しかし、それでもネウが海賊に対して行った「報復」には、度をはるかに超えたものがあった。
「……済まなかった。お前を疑ったりなんかして」
「いえ、良いのよ。そりゃあ、あんなのを見たりした、ら……」
クラインは、ネウに正直に謝った。勿論、誤れば済むと思っているものでも、とりあえず誤っておけばいいなんて安易な考えの結果でもない。
自分はネウに無実の罪をかけてしまった。下手をすれば、もう二度と引き返れそうもないものを。だが、クラインのできることといえばこのくらいだった。
ネウは、そんな、と手を振り、柔らかい笑顔で返したが、すぐにまた嫌な記憶か何かを思いだし、苦しげに悩むように、俯いた。
「……私、やっぱり化物だったのね……。やっぱり、私は……」
「違う。お前はライサの仇を取ろうとした。ただそれだけの事だろう?」
なるべくネウが深く考えないようになだめようとはしているのだが、こんな時に限って、いつも言っているように、上手く言葉が出てこない。何がクラインの思考を妨げているのだろうか。その問いは、クラインだけが知っているはずだった。
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