15、ドラゴンの力!
この学生4人組のパーティーの暴走を止めたが、この先のことを考えると、リーダーのエリナさんをどうにかしなければならない。少なくともパーティーの意見くらいはまとめてもらわなければ。
この4人からの視線以外に僕を締め付けているものが1つある。スキル『絶対防御』の耐久力がもう残っていないのだ。この『絶対防御』は展開している間、魔力を消費し続けるので、僕の魔力はほとんど残っていない。
魔力回復ポーションを使う手もあるが、まだ依頼された場所にも到達していないから、できるだけ手札は温存したい。
「カインさんは盾で防御、メイさんはカインさんの後ろで広範囲魔法の詠唱、ルークさんは不良たちの戦況の把握、エリナさんは僕と行きましょう」
「よそ者は黙ってろ」
「エリナの命令しか聞かない」
「2人に賛成」
うっ、マジカよ。こういう反応なのか。
予想はしていたが、散々な言われようである。エリナさんはまだ何も言っていないが、同じパーティーの仲間が全員反対しているから、あの優柔不断な性格からして賛成してはくれないだろう。
言う前から分かっていたが、僕だって頑張っているのにそんな言われ方をされると、ちょっと辛い。
でも、僕は好意で教えただけだ。僕の話を聞いてくれないんなら、実際に困るまで放って置くだけだ。面倒臭いことになる前にどうにかしたかったが、どうしようも無いみたいだ。
「行ってくる」
そう呟いて、カインさんとメイさんは歩き始めてしまった。メイさんはさっきまでと変わらないが、カインさんは雰囲気が正反対になってしまった。やっぱり、余計な口出しを控えるべきだったか?
いや、僕は悪いことはしてしない......はず。ただ、この依頼を成功させようとしただけだ。
それにしても、居心地が悪すぎる。僕からは話しかけづらいし、向こうからも話しかけてこないだろう。
「流星群」
さっきまでとは違って凛としたメイさんの声が響いた。
空には岩がたくさん浮いている。おそらく、地属性の魔法だろう。火力だけだったら僕よりも強そうだ。
岩が落下を始めた。あの真下からは、流星じゃなくて雨にしか見えないだろう。まあ、岩が降ってくる雨なんてイヤだけど。
ドドドォーン
今までに聞いた魔法の音とは似つかなかった。例えるなら、火山が爆発したような音だ。敵の近くまで行って一撃放ってこよう、と言っただけの事はある。でも、そんなことをしたら......。
遠くの空がキランと光った。同じ方向を見ていると、黒い点がだんだん大きくなってきた。
キィィーー
甲高い鳴き声が頭上で響き渡った。それは獲物を見つけたことを喜んでいるかのようだった。
「あれは......」
「プテラですね......あ、群れてますよ」
自分でも驚くほど冷静になっている。冷静というよりは、この状況に半ば諦めているのだろう。自分の注意を無視した結果がAランクのプテラの群れを呼び寄せたのだ。そりゃあ誰でも、溜め息の1つくらいは出るだろう。
それに、僕は黙っていれば良いらしい。さて、どうやってAランクのプテラを倒すのか楽しみにしようじゃないか。助けは来なさそうだし、プテラは群れているから一筋縄では行かないだろうが。
ふと横を見ると、リーダー役のエリナさんが青い顔をしている。
僕も分かるよ、その気持ち。僕も竜王様の洞窟に行った時に感じた。どうあがいても勝てそうにない相手に遭遇した時の気持ちを。
「どうすれば......」
「さあ」
いや、本当にどうしようかな。Cランクの魔物までしか相手できないし、Aランクなのに群れてるし。
隣のエリナさんは唇を噛みながら、目を細めている。それに目元が光ってるし。......えっ、泣かせちゃった?
マズいな。女の子を泣かせるほど後味が悪いものは無い。正直、僕が感じる罪悪感が半端じゃない。はあ、レベッカさんといい、エリナさんといい、どうして女の子はこんなに面倒臭いのだろうか。
「僕がやります」
「え......」
Aランクの群れを相手にできるわけが無い。プテラの速さからして、僕が攻撃できるのは1回だけだろう。2回目の攻撃をしようとモタモタしていると、プテラのくちばしが僕に刺さる。
1発でAランクの戦意を削ぐ方法は1つ。力の差を見せつけることだけだ。
そして、力の差、魔法としての格の差を見せつけるのに良い方法も1つだけ。それは、スキル『ドラゴンズ・パワー(火)』で火竜王の力を見せつけることだ。
「スキル『ドラゴンズ・パワー(火)』、ファイアーボール」
プテラに突き出した右手の前で、もはやファイアーボールとは呼べない火球がどんどん巨大化していく。前に使った時より僕のは上がっているが、やっぱり負荷が強すぎる。手に力を込めて耐えているはずだが、手から力が抜けていく。
完全に『ドラゴンズ・パワー(火)』を使うことはできない。できるだけ完全に近付けることはできるが、完全を目指し過ぎると、手が消し飛ぶ。
もう限界だし、大きくすること自体には意味が無い。
「行っけぇー」
お腹に力を入れて気合で撃つ。鼻から息を吐き出すのと同時に、ファイアーボールが手から離れた。
魔力が不足していて、大したスピードは出ていないが、急降下してくるプテラには十分だ。
若干プテラがスピードを落とした気がするが、ちょっと回避したくらいで避けられる大きさでは無い。危うげもなく、プテラを1匹飲み込んだ。後続までも、というわけには行かないが、それでも数匹は巻き込まれている。
1日中働いたような気分だ。地面に仰向けに倒れた僕を心地よい風が歓迎してくれる。子供じゃなければ、ビールをグイッと飲みたいところだ。
隣に呆然と立っているエリナさんの顔はますます青くなっているが。
まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。
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