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11、冒険者登録!

 冒険者協会の前に着いた。何だか、周りの冒険者からの目が冷やかだ。特に男の冒険者たちからの目が。まだ、何もしていないんだけどなぁ。


 看板から目を離して、冒険者協会の入口の方を向くと、僕が睨まれていた理由が分かった。原因は僕の手の上にあった。左足を曲げて、彼女の足が地面に着いてから手を離した。


「ごめんごめん、忘れてたよ」


「あら、そう。ご苦労さま」


 なんか、素っ気なくなった?


 フィリアさんが言っていた通り、女の子の気持ちはすぐ変わるようだ。まあ、今回は勝手にお姫様だっこした僕が悪かったが。


 レベッカさんを見ると、すでに冒険者協会の中をズンズンと歩いている。竜人だから、度胸も人一倍なのだろう。閉まりかかっている冒険者協会の扉に、僕が手を触れた時には、もうレベッカさんが受付まで進んでいた。


「ルイ!」


 えっ、フィリアさん?


 いや、そんなわけ無いよな。......でも、絶対にあり得ないということは無い。もしかしたらって思えるのがフィリアさんのスゴい所だ。


「はい、今行きます!」


 レベッカさんの対応をしている受付の人が手をこまねいている。レベッカさんは出会った時から相変わらず、僕とは目を合してくれない。今も右にある依頼板を見ているし、僕にはまったく興味が無いようである。


 まあ、目を合わされても困るんだけど、さすがにあからさまに距離を取られるのもなぁ。


 それよりも、受付の人がフィリアさんにそっくりなことが気になる。違うところと言えば、髪型、声、服の3つくらいしか見当たらない。片方がもう片方を真似したかのようである。まさか、異世界でドッペルゲンガーを見るとは思わなかった。


「冒険者協会へようこそ」


「......」


「どうしたのかな?」


「あ、すいません。知り合いに似ていたものでつい」


 本当にそっくりだ。でも、話し方までは似ていないようだ。もうちょっと仲良くなったら、好きな食べ物とかを聞いてみたい。確か、フィリアさんはスライムゼリーが好きだと言っていた。いつもは厳しいけど、こういう事は女性なのだと感じる。


 スライムゼリーで思い出したが、フィリアさんはスライムを倒さないらしい。いつもスライムを見つけても、横を素通りするだけである。その時だけ、早歩きになるのは困るが。


 他のメイドさんに聞くと、どうやらスライムは可愛くて倒せないだとか、倒す価値も無いと思っているだとか、プヨプヨしているものが嫌いだとか、色々な説が出てきた。本人に直接聞くのは、ちょっと気が引ける。女性にプライベートのことを聞くのがマナー違反だと、いつも言われているからね。


「フィリアのことね」


「知っているんですか!」


「ええ、私がその妹のリーフィアですから。あと、私がここにいるってのは内緒にしてね」


 僕がはいと頷こうとした時、左側からスゴい殺気が流れてきた。周りの冒険者から時々送られてくる殺気とは比べ物にならない。


 僕が恐る恐る左を見ると、やっぱり殺気の送り主はレベッカさんだった。


 僕が振り向くと、ハッとした様子で殺気を消していた。ムスッとしながら、受付のリーフィアさんの方を見ている。


「どうしたの?」


「何でも無いです。冒険者登録するんでしょう?」


「そうだったね。リーフィアさん、冒険者登録できますか?」


「ええ、それに記入して」


 リーフィアさんが指差した先にあった棚から紙を取った。その紙には、ちょっとした質問事項が書いてあった。名前、種族、年齢など様々......あっ、レベッカさんが正直に種族を書くのはマズい。


 竜人なんて知られたら、その瞬間から周りの目がうるさくなるだろう。絶対に、野次馬根性を持った人たちが集まってくる。


 リーフィアさんがフィリアさんの妹でも、完全完璧には信用できない。もしかしたらって事もある。僕は竜王様からレベッカさんのことを任されているんだし、面倒事はなるべく避けなければ。それに僕も面倒臭いのはイヤだ。


「レベッカさん、種族の欄には人って書いてね」


「......」


 あれ、無視された?絶対に聞こえてるとは思うんだけどなぁ。


 彼女は鉛筆を握ったまま固まっている。鉛筆入れにはすでに折れた鉛筆が2本入っている。まさか鉛筆を握るだけで折れるとは。


 鉛筆がミシミシ言い始めていたのは、鉛筆の頭をピッと引っ張った。本当なら鉛筆を手から引っこ抜けるはずなのだが、鉛筆が少し上に持ち上がっただけだった。


「何よ」


 明らかに機嫌が悪い。言葉は3文字だったが、それでも余りあるくらいの不機嫌さが伝わってくる。


「僕の話、聞いてる?」


「......レベッカ」


 名前くらいは把握しているのだが。まさか、さっき間違ったかな?


「私の名前」


「それは知ってるよ」


「言ってみて」


 顔を上げて、レベッカさんの顔を見た。頬を赤らめながら、少し遠くの地面を見つめている。心()しか、顔がこわばっている気がする。


 熱なの、って聞いても、私は竜人ですからという答えが飛んでくるだろう。それよりも、この発音レッスンはなんだ。そんなに発音がマズかったかな、面倒臭いのだが。


 まあ、魔物を倒すときに僕の指示が彼女に届かないのもマズいのかもしれない。でも、改めて彼女の名前を言うのは緊張する。何か、ここだけ空気が違う。


「レ、レベッカ?」


「はい!......あ、違う。今日からはそれで呼ぶように」


 僕は呼び方よりも、春一番のような始めの返事が気になる。あれは何だったんだ。


 フィリアさんにも言われた。異変に気付いたら、その理由を見つけろと。いつもは魔物が相手で、女の子を相手にするのは初めてで何をするべきなのか分からない。


「分かった?」


「うん、分かったよ、レベッカさん」


 コホン


 レベッカさんが咳払いをした。


 コホン、コホン


 レベッカさんが僕を睨みながら咳払いをした。何を伝えたいのか......あっ、レベッカさんじゃなくて、レベッカだった。そんな、急に変えろと言われても。


「うん、分かったよ、レベッカ」


「それなら良かったです!」


 また、春一番が出た。女の子の機嫌は春の天気よりも変わりやすいっていうのは本当らしい。


 これからも振り回されるのかもしれないが、いつかは解決策を見つけたい。(てい)の良いアチーブメントがあったりしないかな。

まだ初心者で改善点があると思うので、なにかあれば感想で教えていただけると助かります。


もし面白いなと思っていただけたなら、ブックマーク登録、ポイント、リアクションもお願いします。


ぜひ他の作品も読んでみてください。

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