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永久に愛して  作者: 柊声-shuusei-
3/3

3枚目-marigold-

~近状報告~

最近の楽しみは実況動画を見ることです。

2日で5GB使い切りました。

僕は気が付くと、病院の真っ白の天井を呆然と眺めていた。

すると、病室のドアが勢い良く開いたのがわかった。


『九澄くん!!!』


ゆっくりとドアの方向に意識をやると、要さんが息を切らして病室に飛び込んで来た。


『…要さん…?』


『最近全然連絡来ないと思ってたら、病院から連絡があったんだよ?心配した…』


僕は、要さんが心配して来てくれたことが嬉しかった。

だけど、嬉しいよりも哀しいが勝っていた。


『僕は、大丈夫ですから。お仕事だったんでしょう?戻って下さい。』


僕は、一生懸命に冷静を保って病室からの退室を促した。


すると、要さんは少し困った顔をして『そっか…それならよかった。じゃあ、またお見舞いに来るよ。』と言い残して病室を去った。


僕は、要さんが出ていった瞬間涙が零れた。


『…ぅくっ…そんなに、期待させるような事言わないで…ゴホッ…ゴホッ…』


咳ごんで目の前に写った景色は、オレンジや黄色のフワフワした花が白いシーツに散らばっていた。

僕は、その花を集めてゴミ箱に捨て、気がついたらなんの花だったのか枕元の棚においてあったスマホを起動して、花を検索していた。

分かったのは、その花の名前がマリーゴールドという名前の花だと言うこと。


花言葉は"嫉妬" "絶望" "悲しみ"…

まさにその通りだ。

誰のいたずらなのか、周りを見るが自分以外にこの病室には患者はいない。

すこし、気味が悪かったのだがこの時はそこまで深く考えて居なかった。


あれから、5日程たった。

咳が、日に日に酷くなっていく。

要さんは2日に1回程の頻度でお見舞いに来てくれいた。

ある日僕は気がついた、この花は僕が咳をすると僕の口から出てきている。

花は、日に日に種類も増えていった。

先輩が来るたびに花の種類は増える。

最初は、マリーゴールドとストックが疎らだったが、今では数え切れない。

花びらだけだったり、花丸ごとだったり。。

その異変に気づいた医師がくだした病名は【嘔吐中枢花被性疾患】通称:花吐き病。

僕は、そんなファンタジーな病気があってたまるもんか!と否定したが、それは紛れもない事実。


『僕の体はどうなっているんだ…』


僕はすべてに絶望した。


『ゲホッ…ゴホッ…ウッ…オエッェ…』

その時…あふれんばかりの、大量の花が目の前に広がった。

しかし、花吐き病患者の吐いた花に、触ると感染するため自分で吐いた花は自分で片すように医師に言われた。


僕は、重い体を引きずって花をゴミ箱に捨てていた。

ゴミ箱はすぐに花で一杯になった。


その花は、看護師さんを呼ぶと捨ててもらえるが看護師さんはすごく厳重な防護服に身を包んでやってくる。


僕は、生きていて何がしたいんだろう?


すべてに限界を感じていた。

倒れて、花吐きを患ってから会社は辞めた。

それから外の世界をシャットアウトして、隔離病棟に閉じ込められた。

それ以来要さんとは、1度も会えていない。

しかし、僕の花吐き病は一向に良くはならなかった。

あまりにも厄介な病気で、医師が頭を抱えて遂に下した決断は僕を山の奥に連れていきここよりももっと、外の世界をシャットアウトする。

そして、静寂な世界で過ごさせるという事だった。


それから、すぐに大学病院から山奥に連れていかれた。

そこに居たのは、老いた老婆が1人。


『よおぐぎだねえ、さあおあがり。おながも空いとるでしょう?』


『あ…有難うございます…。でもっ…!僕病気で…お婆さんにうつるといけないから…』


『なあに、言ってるべ。このばっさんにうつってもどうせ老い先みじけえんだ。えんりょせんと、たんとお食べ。』


そのお婆さんは、暖かい夕食を僕に差し出しもてなした。

『おまえさん、雪ん子みたいに真っ白でべっぴんさんだべな〜…名前はなんて言うのけ』


『僕は、九澄 まひろです…』


『まひろちゃんな。わがった。でもな〜ばっさんは名前はめぢゃぐちゃ可愛いべ?当ててみてヒントは、あそこ。』


そう言うとお婆さんは、庭先を指さした。

僕は、少し思い雨戸を開けるとそこにはしんしんと静かに雪が降っていた。


『あっ…雪だ…。あっ!ゆきこさん!』


『そう!正解!すごいべ!まひろちゃん!』


それから、ゆきこさんと、僕は楽しい生活を送った。

『おばあちゃん!!畑の野菜!実った!!』


『あんれまぁ、まひろちゃんが可愛がってくれたから、こーんなに美味しそうになったべ〜』


ゆきこさんはとっても優しくて暖かくて僕を家族のように扱ってくれて僕が吐いた花を、丁寧に塵取りで掃除してくれたり、発情期を迎えた時は同じΩのゆきこさんは、ずっとそばに居て、優しく抱きしめていてくれた。

今まで生きてきた中で一番幸せだったかもしれない。


しかし、僕の病状は悪化するばかりだった。

しばらくすると、僕は起き上がれなくなるぐらい病状が悪化した。

それからは、床に伏せって部屋から出ることもままならなかった。だがゆきこさんは、僕を手厚く看病してくれた。


それから、2年の歳月が経った。

ある夏の日、その日は体調が良く、1週間ぶりぐらいに自分の足で部屋を出た。


『そう言えば、今日はまだゆきこさん見てないなあ…おばあちゃーん?いないのー?』


家中を探し回った。

流石に、おかしいと感じた僕は外に出て探した。


すると、ゆきこさんは畑で倒れていた。

『おばあちゃん!!!!』


急いで駆け寄ると、ゆきこさんの意識はなく、息をしていなかった。


僕は急いで、救急車を呼んだ。

救急車が到着して、僕はどうしても着いて行きたいと訴えたが、救急隊員は認めてくれなかった。


どんどん、救急車のサイレンが遠のいて行く…

僕は、その場で泣き崩れた。


それから、2時間が経ったぐらい。

静かになった家の電話が鳴り響いた。


《チリリリリリリリン…チリリリリリリ…ガチャ》


『はい…。奧山です…。』


『今朝、搬送された。奧山 恭子(おくやま ゆきこ)様が、先ほどお亡くなりになられました。以下が致しますか?』


『………僕…ゆきこさんを見送りたいです…』


『…わかりました。ではお迎えにあがります。しばらくお待ちください。』


僕は、ゆきこさんの突然の死を受け止めきれなかった。

心が張り裂けそう…こんなにも大切な人を失うなんて…神様はなんて不公平なんだろう…僕は神様を憎んだ。


しばらくして、僕は気持ちが悪いほどの吐き気に襲われ、咳は止まらず1時間程花を吐き続けた。


様々な…悲しい花言葉を持つ悲しいしい花達…


そして、僕の意識は途切れた。

『あれ…?僕どうなったんだろう?…え…要さん…?要さん!!!』


『え、誰だったっけ?馴れ馴れしくしないでくれないかな。』


暗闇の中にいた要さんに拒絶され要さんは来てえいった。

『そんな…忘れられた…?…っあ!おばあちゃん!!!!ねえ!!!おばあちゃん!!!こっちに気づいて!』


『まひろちゃん…すまねえだ…。』


『まって!!!置いてかないで!!!!僕も連れて行って!!!!!』


ードクンー…


『ゼェッ…ゼェッ…ッハァッ…ハァッ…え…なんで…発…情期…?苦…しい…よ……けて…!助けて!!!』


すると、遠くから心から求める声が聞こえる。


『…ろ…ひろ…まひろ……まひろ!!!!!起きろ!!!!まひろ!!!!!』


僕は、目を覚ました。

すると、目の前には目に大量の水を含んだ愛してやまない要さんの姿があった。


『…要さん…?どうして、ここに…』


『どうしてもなにもない!!!2年間もどこにいたんだ!!!!』


『山奥で…暮らしてました…。』


『山奥…?なんで…』


『実は、僕…嘔吐中枢花被性疾患って言う病気を患っていて…その療養で…』


『…それで?よくなったの??…』


『…いいえ…。むしろ悪化してます。』


『じゃあ!なんで、すぐに戻ってこなかったんだ!!!心配したんだ!!!』


僕は、要さんにすごく怒られた。

心配して怒ってくれたことはとても嬉しかった。


『でも!!!あの暮らしが楽しかったんです!!!!ここにいるよりも…あなたと会うよりも…!!ずっと!!!楽しかった…ゲホッ…ゴホッ…ゴホッ…オエッ…』


僕は、幸せを要さんに訴えて、勢い良く大量の花を吐いた。

要さんは、びっくりして、その花を見て触ろうとしていた。

『ダメです!!!!ゴホッ…それに!触ってはダメです!!!!ゲホッ…うつってしまう…触らないで……』


すると要さんは納得したようで、それから触ろうとはしなかった。

そして、しばらくして要さんは仕事が残っていたらしく病室をあとにした。


それからしばらくしてからだった。

ある日、病院内がとても騒がしかった。


「キャーーー!!!!見て!!!本物よ!!」


「本物のchikage様だわ!!!!!」


でも、今の僕にとって、chikageだか、なんだか知らないけどどうでもよかった。

しかし、その黄色い悲鳴はどんどん近ずいてくる。

僕は、布団をかぶり直して、音を遮ろうとすると、病室のドアが開いた。


『九澄くん!!』


僕は、そんな馬鹿な…と思ったが無視をした。

すると『まひろ!!!』そう、呼ばれるものだから何なんだとドアの方を見ると、そこにはchikageの姿があった。


『一体、何なんだ!!!大人気俳優のchikageさんが、僕に何のようなんですか!!!』


『…え?…まさか気づいてない??ほんとうに??』


『何を言っているんですか?』


『俺だよ?要!!なんでわからないかなあ。』


『ゲホッ…ええ!?要さん!?でも要さんはそんな…え!?』


僕が、混乱していると要さんは

『まひろくん、好きな人いたんだ…』

と、とても悲しい顔をしていた。


僕には何故、要さんがそんなにも悲しい顔をするのか、分からなかった。

だから、僕は要さんに『何故貴方がそんな、悲しそうな顔をするんです?貴方には素敵な彼女がいるでしょう?』


すると要さんは『彼女!?誰の事言っているの?…』


僕は『はぁ!?あなたの部屋似合った写真縦の彼女!!あなたはまだ好きだと言っていた!!』

つい、病院だと言う事を忘れて、声を荒らげた。


『…あ。彼女か…。ちがうんだ…あの子は……死んでしまったんだ…』


『…えっ…。そんな…いつですか。』


『もう、ずっと前だよ。写真の俺も若かっただろう?あれは高校生だった時の写真なんだ。』


『…あっ…すみません…』


僕は、なんて事を言ってしまったんだろう。

僕は要さんを深く傷つけた…


『それより、まひろくん、好きな人…いたんだ…そっか…なんかごめんね。』


『…え…あの…はい…』


僕は何も言えなかった。

どうしても"あなたが好き"なんて言えなかった。


要さんと出逢ってからの世界は、ずっと輝いていた。

慰めてもらってから、日に日に要さんに対する"愛"が膨らんでいった。しかし要さんの口からあの、彼女をまだ好きだと聞いてから僕はこの人に振り向いてもらうことは出来ないんだと思った。


それから、βだと言う要さんの匂いにつられて、要さんを見つけたり…

要さんの周りにはいつも、誰かいた。


僕が居なくても、誰も(要さん)困らないでしょう?

誰も悲しまない。(要さん悲しまないでしょう?)


だって、居なくなったことにすら気付かないから。

(だって、2年も僕を見つけ出してくれなかったんだから。)

おばあちゃんのプロフィール紹介します。

name:奧山 恭子〈おくやま ゆきこ〉

age:昭和2年1月26日89歳

Hobby:まひろと庭いじり。

Like :まひろ。畑。山。孫。犬。



ちょっと、悲しい回ですかね…。


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