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oi03 鶴竜横綱初優勝について

 日々順調に涼しくなってきている。空に広がるうろこ雲も爽やかだ。スポーツの秋ということで各地で様々な戦いが繰り広げられており、悠宇と渡海雄もシルバーウィークからずっと色々楽しんだ。


「まずは、何からにしようかと思うけどとりあえずは昨日の話からにしましょう。大相撲の秋場所は鶴竜が横綱としては自身初の優勝を果たしたわね」


「そうだね。でも……」


「まあ、勝ち方に関しては色々ね、言われるのは仕方のない事よね。実際私も少なからず驚いたから。あの十四日目、稀勢の里戦における変化連発」


「ああ、あれは本当にびっくりしたねえ」


「一回目から右に変化だったけどこれは立ち会い不成立で行司にも止められて、二回目どうするかと思ったら今度は左に変化。結局稀勢の里は負けたけど敗因はこの変化ではなく、むしろ対応して押し込むところまでは行ったのに拙速で腰が高かったから土俵際で体よく体を入れ替えられたのが原因だから、まあ非常に残念な負け方だったとは言えるわね」


「逆に鶴竜からするとそこまで勝ちたかったって事なんだよね」


「そうよね。ただ横綱ってのは基本勝てばそれでいいって枠じゃないから、今回みたいに色々言われるわけよね。ほら、横綱相撲とか言うでしょ。相手の得意技を受け止めて、その上で実力の違いを見せて勝つあれ。心技体と言うようにただ強いだけでなくそういった器量も必要と見られるわけよね。横綱という地位にいると」


「ああいう変化を仕掛けたりするのは注文相撲なんて言われて叩かれてるよね」


「注文ってのが主に立ち会いの変化といった策略、計略みたいな事を意味する相撲用語で、平幕がせいぜいの小兵が策略を用いるのはある程度大目に見られるけど大関や横綱レベルになると格下の相手に何やってんのって批判の対象になるわけよ」


「横綱も大変だね」


「本当にね。でもそういう役職だから。実績や実力では比べ物にならない白鵬もやれダメ押しがどうとか言われまくりでしょう。その前の朝青龍もそうだった。その前の貴乃花もああだこうだと言われてきたし、今はモンゴル人が強いからモンゴル人のメンタルは日本人とは違ってどうこうみたいに言う人もいるけどそんな事は関係なくて、日本人だろうが何人だろうが一挙手一投足を微細に見られて少しでもまずい部分があればここぞとばかりに叩かれるのは、もはや宿命と言えるわ」


「でも今回の鶴竜の取組はそういうレベルじゃないような気もするけど。普通にやってればああ言われなかったのにね」


「そうね。でも今場所はかなり異常事態が多い場所だったから。まず白鵬が初日からまさかの連敗でそのまま休場という信じ難い幕開けからしてね」


「確かにそれは衝撃的だったね。しかも動きが明らかに悪くてあんなので倒れちゃうんだという負け方だったから」


「事前に日馬富士の休場は判明していたけどやはり二番手だから。白鵬がいる限りは当然の如く優勝争いの中心に立つものだと思っていたけどこうして退場を余儀なくされてしまった。思えば白鵬も既に三十歳を超えて、近い将来これが常態化してしまうのよね。いつか引退する日は必ず訪れてしまうものだから。ある意味いつか来るその日のためのシミュレーションが今場所だったのかもね」


「だったら白鵬が引退したら今場所みたいな展開になってしまうのかな」


「それはどうかしらね。今場所一番男を上げたのは間違いなく照ノ富士だから。序盤から連勝街道を驀進して終盤までは単に白鵬が照ノ富士に代わっただけなんじゃないかとさえ思われたあの快進撃」


「照ノ富士は強かったよね。明らかに立ち合い失敗してたのに受け止めて自分の形にする圧倒的なパワー」


「いつものように優勝を期待されていた稀勢の里は攻めているのに最後の詰めを誤るというらしい負け方で十日目で三敗、鶴竜も妙義龍相手に引いてしまい足が土俵から出て負けとか、いつも通りな感じだったからそりゃあ照ノ富士は輝いて見えたわ」


「それが十二日目、栃煌山に負けたと思うと翌日は稀勢の里にも敗れる。しかも倒れる時はまるで自壊したかのような嫌な崩れ方で、実際靭帯を傷めたって事だったからね」


「あの倒れ方は絶対怪我だろうなと思ったわ。実際翌日、豪栄道に何も出来ず敗北という絶望的な光景でこれは千秋楽出られるのか、出てもあっさり終わるのではと思ったけど、いやはや見事なものよね」


「鶴竜相手に本割では勝利して決定戦にまで持ち込んだんだもんね。最後は力及ばずだったけど」


「前日の取組を見ても一勝だけで御の字ではあるわね。さすがに連勝はきついわ。まずはしっかり安静にして怪我を治してほしいわね。それさえ気をつければ近い将来が照ノ富士の時代になるのは確実とさえ言える素材だけに、今場所の強行出場がその輝かしきキャリアに影を差すような事にならなければいいんだけど。特に膝を痛めて駄目になる巨漢力士って昔からいたから。小錦とか」


「怪我は本当に怖いよね」


「アスリートの宿命とは言えね。ただしっかり治せば、例えば鶴竜も今年二場所休場したけど復帰した先場所もなかなか好調だったし、これは良い結果を生んだと言えるわ。ただ横綱は陥落がないからそれぐらいがっつり休めるけど大関が二場所休んだら陥落なわけで、そこも辛いところよね」


「日馬富士や白鵬もしっかり休んで大復活、みたいになるのかな」


「でも白鵬も日馬富士もすでに三十代。日馬富士に至っては小柄な肉体を今までフル回転させてきたから当然蓄積されたダメージも大きいはず。休場が増えてくとそれこそ引退間近のサインなわけで、今後の見通しは決して明るいだけではないと言わざるを得ないわね」


「キャリアを見ると大関で四回優勝、横綱としては二度の優勝。しかも全勝と十四勝がそれぞれ三回ずつと本当に抜群の成績で優勝してるんだよね。普段は金星配給も多いけど好調な時は圧倒的なスピードを武器にまさに他を寄せ付けないもんね」


「鶴竜はねえ、今場所優勝と言っても所詮は十二勝。そこをしっかり制したのは見事だったけど、混戦になったって事は他を圧倒出来る力があるわけではないと改めて証明されたわけでもある。上には白鵬がいて日馬富士もはまれば強い。若い照ノ富士はこれから全盛期を迎えようとしているように見える。そんな中で今場所はまさに千載一遇のチャンスだったわ。駄目だったら花田勝氏こと若乃花みたいに横綱としての優勝なしで引退というキャリアさえ見えてきたところよ」


「ううん、やっぱりそういう名誉の問題もあるし、せこいとか器じゃないと言われても勝ちたかったんだなあ」


「覚悟を決めたって事でしょうね。稀勢の里に見せた変化とかね、要は自分は格下ですと認めるような取り口じゃない。年齢だってもう三十歳なんだからこれから急激に強くなる可能性なんてほとんどない。自分は弱い横綱だと認めた上で、それでも勝ちたいんだという意地があのような取組を生んだんでしょうし、稀勢の里はそこまで勝負の鬼になりきれなかった。彼もまた繰り返してる人よね」


「期待されてるけど、やっぱり過大なのかな? プレッシャーに弱いみたいに言われたり」


「ただ単に弱いだけならいいんだけど、時々素晴らしい実力を見せるからこそ期待されては叩かれるのよね。特に優勝争い直接対決みたいな大事な取組でモンゴル人力士に変化を食らって敗北ってのはもはやパターン化してるけど、常にガチンコな稀勢の里は心のどこかで汚い策を弄した相手に正面からぶつかって敗北する自分を許してしまっているのかも。その真っ向勝負の精神は尊いものだとは思うけど、狡猾さもまた強さの一つだと割り切って勝負に徹したらまた局面は変わってくるかも知れない。むしろ力士としての軸がぶれて弱くなるかも知れない。そこは本人しか分からない部分よ」


「ともあれ今場所は稀勢の里にとっても千載一遇のチャンスだったはずなのにね。いつか優勝出来るのかな? 鶴竜にとっては優勝出来たのが唯一にして最大の収穫って感じかな?」


「変化して負けてたら本当に無様なだけだったし、あそこまで勝負にこだわったのに最後照ノ富士に屈したら本当にピエロで終わってたところよ。色々あったけど、今一番言わなくちゃいけないのは優勝おめでとうございますと称える事だと思うの」


「そうだね。ところでカープについてだけど」


「打撃がね……」


「お寒かったよね……」


「まったく。一応まだCS進出の可能性はあるけど、もはや順位は関係ないわ。この連戦も結局最初の下位二つに後れを取った時点でもう一巻の終わりよ。ああいう野球しか出来ない原因がどこにあるのかを見極め、それをうまく改善してほしいところ。ドラフトまで一ヶ月を切って、十月には戦力外通告も報道されるから本当に入れ替わりの時よね」


「栗原が戦力外とかそうじゃないとか言われてるけど」


「少なくとも今後カープにいても戦力になる可能性はないわね。もう手は尽くしたから、移籍してリフレッシュするぐらいしか手は残ってないでしょ。他にも、例えば二軍の本拠地最終戦で代打で出場してすぐ交代した選手なんかは危ないと見られるわけよね。投手だと一回投げきってない人達とか。実際いかにもな面子だし。発表されるのが十月以降だけどあらかじめ本人には知らされているものだから、二軍の最後の方を見るとそういう選手が続々出場ってのは他球団でも見られる光景よ」


 ちなみに由宇最終戦となる中日戦、代打だけで終わった野手は栗原、廣瀬、土生、中村憲、東出、森下。一回投げなかった投手は岩見、河内、池ノ内であった。実際は、廣瀬と土生は残ったが他は今シーズン限りで退団となった。その他投手では篠田やデヘススも登板していた。


「そう言えば今年は大物が次々と引退してるよね。中日の小笠原や和田、山本昌。そして谷繁も選手としては引退して監督専任に」


「時代を作った選手よね。他にも西口、谷、平野、斉藤隆、森本稀哲など有名選手が一気に。寂しくはあるけど時代は常に動き続けているものだから」


「そうだね。それとラグビーのワールドカップで日本が南アフリカに勝ったとか、Jリーグでは清水降格不可避とか色々あったね」


「ラグビーは本当に凄い快挙だったみたいだけど、そこに至るまでの歴史をまるで知らないから不必要に知ったかぶるのは自重しましょう。その上であの試合だけを見た感想になるけど、チーム全体で突撃しては潰される中で少しずつでも前進していくのは非常に熱いものがあったわ。最後のトライとか、実況解説の人までもがもはや言葉にならない感じだったし」


「調べたらワールドカップでは延々負け続けてて、九十一年のジンバブエ戦以来の勝利だとか。そりゃあ泣きたくもなるよね」


「まだJリーグも開幕してなかった頃だもんね。そんな時代に誕生してこれまで頑張ってきた清水だけど、ついに年貢の納め時かな。勝ち点を見てもここと明らかに選手が足りていない松本、山形が降格となりそうで、ここから残留したら奇跡ってレベル」


「それとあんまり関係ないけど、ルーツが同じサッカーとくらべてラグビーのパンツの丈って今でもやたらと短いよね。サッカーは九十年代にだらだらと長くなったけどそういう進化のペースがスローなのかな」


「掴んだり掴まれたりがあるから案外実用本位な気がしないでもないけど、でもムキムキのボディを見せつけるようなデザインは素敵よね」


 大体このような事を話していると敵襲を告げるサイレンが鳴り響いたので二人は素早く変身して敵が出現したポイントへと走った。


「うわはははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のトウブハイイロリス男だ! さっさと侵略を終えてこの汚らしい星を正しい姿に導いてやらねば」


 北アメリカの東部に住んでいる体毛が灰色なリスの姿を模した男が山の中に現れた。イギリスでは在来種が駆逐されたという報告も入っているなどなかなかの害獣っぷりを見せている。


「出たなグラゲ軍! お前たちの好きにはさせないぞ!」


「よくもまあ飽きもせず。やっぱり秋だからなのかしらね」


「むうっ、出たなエメラルド・アイズ。お前たちを討てば俺の出世も間違いなしだ。死んでもらうぞ。行け雑兵ども!」


 秋風に紛れて次々と出現した雑兵を二人はその拳で粉砕していった。そして残った敵は一人だけとなった。


「よし、雑兵は片付いた。後はお前だけだなトウブハイイロリス男!」


「迷惑な侵略はもはやここまで。今すぐ帰ってくれればそれ以上の危害を加える気はないわ」


「黙れ! 俺のためにお前たちは死んでくれなければならないのだ」


 あまりにも身勝手な理由を振りかざしながら、トウブハイイロリス男は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。渡海雄と悠宇もそれに対抗すべく合体した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 巨大なリスと巨大な人間の対決。素早い敵の動きを、しかし悠宇は持ち前の動体視力でしっかりと見極め、相手が突撃してきたタイミングで左に変化した。これでバランスを崩したトウブハイイロリスロボットの背中に蹴りを入れて転倒させた。


「よし、今よとみお君!」


「うん! レインボービームで勝負だ!」


 その隙を逃さず、渡海雄は白いボタンを押した。胸のブローチが七色に光り、それがビームになってトウブハイイロリスロボットの胴体を貫いた。


「ぐおお! ここまでか! 残念だが撤退するしかない」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によってトウブハイイロリス男は宇宙へと帰っていった。秋の心地良い空はまだまだ続く。グラゲに邪魔されたくない空だ。


 それにしても横綱初優勝まで本当に時間がかかった。「鶴竜横綱昇進について」と題して前回の優勝をネタにしたのが去年の三月。部数で言うと三十六部だ。ちなみに今回は九十二部。あれ以来鶴竜が優勝したらネタにしようと思っていたが一年半ご無沙汰とは、でもまったく想像出来ない結果でもなかった。


 ただやっぱり最強横綱になる器じゃないのはこの間でもはっきりと判明していたわけで、それに一人横綱という重圧も今場所では加わっていた。だから叩かれてもチャンスは逃したくないという心情には納得の共感を抱いた。贔屓目入ってるけど。せめて十三勝で優勝ならなあとか色々あるけどもはや言うまい。


 とりあえず言そうなのは人気は落としただろうなって事ぐらいだが、そのような外部の声とは別に自分の内側と向き合い、答えを出した結果は来場所にも判明するものと思われるのでそこに期待したい。白鵬も戻り、照ノ富士の傷が癒えたなら九州はさらに白熱した戦いが繰り広げられる事だろう。

今回のまとめ

・さすがスポーツの秋だけあって見どころは多かった

・そうは言っても優勝したのは間違いなく鶴竜だった

・照ノ富士の怪我だけは本当に心配

・カープはそろそろシーズンオフのあれこれに気が移りつつある

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