hg24 映像作品について
夏休みだとはしゃいでいたらもうお盆も終わって夏は翳ってきた。今までの熱風とは一味違う、少し涼しい風がここ数日は吹いていて心地良い。ツクツクボウシも鳴き始めていつまでもこのままではいられないと叫んでいるようだ。渡海雄も覚悟を決めて、悠宇を家に呼んだ。
「今日ゆうちゃんを呼んだのは他でもない。帰省も終わったし、今まで色々語ってきたけど今日あたりで一気に終わらせようかなって思ってるんだ」
「ああ、映像方面ね。DVDがいくつか並んでるわね」
「そう。光GENJIの現役時代は当然VHSの時代だったけど、解散後にいくつかのビデオがDVD化されているんだ。今日はまずそれを総まとめにしようと思う。発売されたのは二〇〇三年から二〇〇四年にかけてだけど、この間にポニーキャニオンのロゴマークが変わっているのがまず目につくね」
「ああ本当だ。PCというイニシャルをデザイン化したマークから黒、灰色、赤の丸三つに変更されてる」
「だから今回はDVDが発売された日とは関係なく、リアルタイムで発売された順で行くよ。そしてその第一陣は『太陽がいっぱい』」
「ああ、あのシングル曲の」
「いや、それが関係ないんだよね。同名のシングル曲が出る前年、一九八八年に発売されたビデオで、収録楽曲はファーストアルバム限定。つまり『パラダイス銀河』以前という時期のものなんだ。翌年のシングルとは、タイトルが被っただけでまったくの別物」
「シングルとは本当に関係ないわけね。と言うか何で同じタイトルにしちゃったんだろう。それでこっちの『太陽がいっぱい』はどんな内容なの?」
「内容はないに等しく、南の島で延々はしゃいでるだけ。『ほのかに甘くHOLIDAY』に合わせてトランポリンでジャンプとか『RAINY GIRL』に合わせてシャワーで水遊びとか、言わんとするところは分からないでもないけど極めてシュールな映像が続出して、その危ういまでの無防備さが逆に見どころとなっているんだ。また、ビデオ限定のインストゥルメンタルが三曲あって、その二曲『WALKING』『シュノーケル』は作曲編曲が石田勝範。でもキーボードでちゃっちゃと作ったみたいな音であの本格的な雰囲気はなし。もう一つの『Thanks』は作曲都志見隆、編曲中村哲。ちょっとメロディアスで歌詞があれば面白かったかも」
「最後は筏を作って大海原に乗り出していって終了か。パッケージには『自然の大きさと素晴らしさを学びとる光GENJIの、セミ・ドキュメント』とか書かれてるけど何言ってんのって感じね」
「彼らをアイドルとして心から好きな人じゃないと正直きついけど、リアルタイムでは三十万本売れたらしい。開示一発三十万円、ビデオ一発三十万本。いずれにせよ凄い話だよ。次は『光GENJIファースト・ライブ』。まあタイトル通りの代物。やっぱりファーストアルバムまでしか出てない時期のものなのでオリジナル曲は少ない代わりに前半は洋楽、後半は田原俊彦や近藤真彦といった先輩のカバー曲が多く歌われているのが特徴。当たり前だけど皆若々しくて、拙い部分も多いけど手作り感が溢れるライブだよ。そして映像特典として光GENJIのリーサルウエポン、『パラダイス銀河』のアニメPVも収録されているんだ! これはもう見るしかないよ!」
「アニメPV、そんなのもやってたのね! そんな絶賛するからにはさぞかし出来がいいんでしょうね」
「そうだね。ふふっ」
「宇宙の星々から北斗七星が輝いて、ちょっと良さげな雰囲気かも。おっ、イントロ……! ああっ!?」
直後から次々と繰り出される驚異的映像の応酬に悠宇は腹筋が擦り切れるまで笑い転げた。渡海雄は彼女の発作が治まるまで待機した。
「いやあ、申し訳ないわ。すっかり取り乱してしまって」
「仕方ないよ。僕も初めて見た時は同じだったから。本当、衝撃的だったでしょ?」
「ううん、これは……、確かに凄いわね。当時超一流の人気があったアイドルのPVなのに圧倒的にチープな作画。それでなんか諸星がペガサスに乗ってたり。と言うかせめて顔ぐらいは似せないと。サビでテニスしてるのは誰? 二番の光の動きも凄いし、銀河鉄道だし。いやあ、修羅場を垣間見たわ」
「凄いもんでしょ? 服が違って髪の長さで容易に判別出来る光の二人と諸星はいいとして他四人の見分け方は、前髪が外に跳ねてるのが敦啓、天パみたいなのが赤坂、山本と寛之は実態以上に描き分けられてないけど髪質がよりストレートなほうが山本で微妙に輪郭が膨らんでいるほうが寛之、らしい。だからサビでテニスしてるのは山本、じゃないかな」
「本当にそれでいいの?」
「……多分。ちなみに翌年の『太陽がいっぱい』にもアニメPVがあって、こっちは顔つきでこれは誰ってどうにか見分けられる程度には描き分けられている。無論映像の質に関しても、走ったり泳いだりする動きに多少ぎこちなさが見られるもののキラキラした雰囲気はまるで少女漫画だし、当時貴重だったCGをふんだんに使用するなど金もかかっていると見られる。それとストーリーらしきものがあるのも進歩かな。でもこっちは残念ながら、非常に残念ながらDVD化されてないんだ。それと一緒に絵本やトランプも出てたけど、まあこれはどうでもいいか」
「絵本とか、結構色々メディアミックスしてるのね。次は『虹色夏物語』。これでにじいろサマーストーリーと読ませるらしい一九九〇年のビデオ」
「これは明確なストーリーを持ったドラマパートがあって、多忙だから休みたいと思っていた光GENJIの前に悪魔が現れて、悪魔との取引に応じたメンバーがバハマだったか南の島ではしゃぐけど、色々あって元に戻るって内容。このついでにバハマでレコーディングした曲もあるらしいね。どれか知らないけど」
「楽曲は主に『Cool Summer』収録のものだけど『しょーがないよ!』『Heartの地球儀』は翌年収録となっているのね」
「いい曲だからじらしたんだよ。本当に商魂たくましいんだから。『Rabbit Train』の振り付けは結構インパクトある。それと多分光GENJIファンの悪魔を演じるのはおはスタで知られるレイモンド・ジョンソンで、ダンスの切れ味が抜群」
「次は『コンサートであおう!』。一九九一年のコンサートをビデオ化したものみたいね」
「大雑把に言うと中期ってところで、最新シングルは『軌跡の女神』の頃だね。楽曲はもうほとんど自前で賄えているけど演出として洋楽や先輩の楽曲カバーもいくつかはある。それと『水の惑星~Love Balloon~』もすでに歌われている」
「ああ本当。七人の小人みたいな衣装がファンシーね」
「その感想は限りなく正しいね。そもそもこれは『ウォルト・ディズニーワールド7日間の旅』というビデオですでに使われていたものだから。そもそも『CO CO RO』の時シングル候補だったのは前にも言ったけど、楽曲自体はとっくに完成しててコンサートでも披露される程だったのにCDには未収録というあまりに不遇な扱いを受けていたんだ。さっさとシングルにしてくれれば良かったのに。ああ、こっちのビデオはDVD化されてないよ。本当にアメリカの、フロリダにあるディズニーワールドに行って撮られたんだ。ファンタジー路線の楽曲に的を絞った選曲も良好。まあDVD化されない理由はお察しだしどうにもならないけど」
「まあディズニー相手だとね。次は『独逸旅情-素顔になって-』。これでドイツハートビートジャーニーと読ませる一九九二年発売のビデオ」
「南の島ばっかりに繰り出してた今までとは一転、統一がなされた直後のドイツ各地を回って名物や人々と触れ合う、みたいな内容。ベルリンのブランデンブルク門からスタートし、メンバー分割を経てラストはノイシュヴァンシュタイン城で全員集合という流れ。分割って具体的には諸星と山本、両佐藤と赤坂、内海と大沢というグループでケルン、ハンブルク、ボン、ヴェルニゲローデを巡る」
「一つ知らないところがあるけど、まさにドイツと言えばってところはひと通り網羅してるわね」
「最後にコンサートの映像を少し流す演出は『虹色夏物語』と同じだね。光GENJIが海外で束の間の休息を経てまた元のスターとしての生活に戻るというイメージなんだろうね。それに今までみたいな南の島ではなく歴史と伝統のドイツで大人びた雰囲気をプラスと」
「次は『七番目の夏』。これは一九九三年のものね」
「これはなかなかに迫真のビデオで、まずメンバーがメンバー本人ではない人物を演じているんだ。普通のドラマみたいにね。理由は様々ながらも引き寄せられるようにアメリカ、サンフランシスコに集まった七人の若者と一人の老人の珍道中から、老人にはある秘密がという内容も結構真面目。ただその分演技拙くないですかってのもあって痛し痒しかな。アイドル丸出しなら多少下手でも微笑ましいものだけど。それと佐藤寛之が結構目立ってた印象」
「収録楽曲は『HEART'N HEARTS』の最後にあったあの三曲なのね。結構場面に合った使い方がなされててどれも好印象。次は『BRAVO! Nippon』。これが一九九三年冬のコンサートの映像ね」
「このコンサートはファン人気が非常に高いんだ。楽曲のいいけど全体的な雰囲気が特にね、和気藹々って感じが出ているのがいいよね。実際のところはともかくとして。ちょうど『WELCOME』でセルフプロデュースした楽曲がコンサートの骨格となっていて、それもファン人気の要因となっているのは想像に難くないね」
「そして最後は『FOREVER YOURS』。一九九四年夏、つまり二人が脱退したコンサートも映像化されているのね」
「そうだね。やっぱりそういう事情もあって最後だなという、団結の面では前回に及ばない部分はあるね。大沢の髪型が変だし。内容もねえ。佐藤寛之と大沢、それぞれのソロパートが終わった後にSUPER 5によって『Melody Five』が披露されるんだけど『最後まで楽しんでいってくれ!』『まだまだこれからだぜ!』というメンバーの叫びも虚しく会場が冷温停止していく光景はいたたまれないよ。まあ単純にコンサートの時点で未発表曲だからってのが大きいんだろうけど、やっぱり光GENJIは七人であって五人ではないからね。それとトークシーンではデビュー直前、若かりし日のTOKIOの雄姿も。一部楽曲では演奏までしてくれてる大盤振る舞いっぷりだよ」
「それにしても、佐藤敦啓が『今度の八月三十日で二十一歳になります』とか、そんな若くしてこんなねえ」
「そう考えると本当に若くして頂点を極めて、そこから去るのも早かったんだよね。この時の城島は余裕で年上だし、今のジャニーズ事情だと二十一歳なんてジュニアにいくらでもいる年齢でしかないのに」
「でも城島はこの頃から全然顔が変わってない印象さえあるわ。この頃からすでに苦労人っぽいオーラが全開で。松岡や長瀬はもう全然違うのに」
「彼らはまだ十代だったからね。TOKIO以外にもバックダンサーとしてジュニアの皆さんがちょくちょく顔を出しているけど、詳しい人ならそれが誰かとかも分かるんだろうね。年代的には後のV6に入る人とかいそうだけど、どれがどれとか分からないな」
「ああ、そうか。光GENJIのファン以外でもそういう楽しみ方の可能なわけね。これに限らず今までのライブ映像でも若かりし日のあのメンバーが、みたいな」
「僕はあまり詳しくないし、メインで映らないからね。でもそのためだけに手を出すには値段が結構張るからね。オークションの落札相場見ると一万円も払ってる人がいるくらいだけど、さすがにそれはぼったくられてるにしても四桁は確実に行ってるね。Amazonでもあんまり安くなってない。でも楽しめるのはファンのみだから、光GENJIに四桁出して後悔しないと思えるなら手を出してもいいってところかな。値段で言うと再生装置さえあればVHSのほうがよっぽど安いし、状況によってはそっちでも悪くはないと思う」
このような事を話していると警報が鳴り響いた。「あれ、もうちょっと言いたい事があったのに」と残念がる渡海雄だったが、地球の危機となれば仕方ない。素早く変身して戦いを終わらせるべく立ち上がった。
「ふはははは、私はグラゲ軍攻撃部隊のエゾボラ女だ! この毒々しい大地を甦らせるのだ」
そろそろクラゲが漂い始めた夏の終わりの海にグラゲが現れた。食用の巻き貝、いわゆるつぶ貝の中でもマツブ、真のつぶ貝と呼ばれているのがこのエゾボラという種類の貝である。しかし内部には毒もあり、安易に手を出すのは危険でもある。
「久々に出たなグラゲ軍! だがお前たちの目論見通りにはいかないぞ!」
「すっかり諦めてくれれば良かったのに。でもまた侵略してくるようなら容赦はしないわ」
「ふん。容赦しないのはこっちの事よ。行け、雑兵ども! 奴らの首を刎ねて皇帝に献上するのだ!」
砂浜からポコポコと現れた雑兵たちを渡海雄と悠宇は次々と倒し、残る敵はエゾボラ女だけになった。
「よし、雑兵は片付いたな。後はお前だけだエゾボラ女!」
「真にこの地球を想うなら放っておいてくれればいいものを」
「我がグラゲ軍の大義を理解できぬ愚者に任せられるものなどありはしない。お前たちも叩き潰してくれるわ」
エゾボラ女は聞く耳を持たず、懐に隠し持っていたスイッチを押して巨大化した。やはりこの戦い、避けられぬものなのか。覚悟を決めて渡海雄と悠宇も合体した。
「メガロボット!!」
「メガロボット!!」
いかにも硬そうな殻を持っているエゾボラロボット。しかし見た目に反して装甲は薄いともっぱらだけに、メガロボットとしても力押しで対抗した。
「よし、今よとみお君!」
「うん。メルティングフィストでぶちぬいてやる!」
渡海雄は冷静に朱色のボタンを押した。プラズマ超高熱線によってヒートした右の拳がエゾボラロボットの装甲に穴を開け、機能停止にまで追い込んだ。
「ぐぬぬ、残念だがここまでか」
エゾボラ女は機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によって宇宙へと戻っていった。本当は今日限りで一連のお話を終わらせる予定だったが想像以上に長引いてしまった。という訳で今日の続きは九月三日にその全貌を現し、それでひとまず終りとなる。
今回のまとめ
・今VHSを普通に再生出来る家庭はどれほどあるのか
・「パラダイス銀河」アニメPVの攻撃力は異常
・太陽がいっぱいの無防備さはもはや立派な武器
・コンサート系はあくまで追体験でやはりリアルタイムには敵わない




