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am11 太陽の使者鉄人28号について

 日に日に寒くなっていく地球の鼓動を肌で感じながら、今日も人々は生きている。しかし高倉健逝去はまさに巨星墜つという言い回ししか思い浮かばないニュースであった。それはともかく、渡海雄は最近GYAO! で配信が始まったアニメにはまりつつあるようであった。


「(そのアニメの主題歌を歌い出したが歌詞掲載はご法度なので自主規制)」


「本当そういうのはやめて! どうせ歌詞は自主規制されるんだから」


「ふふっ。だからこそ歌うんだよ、ゆうちゃん。サーカスの曲芸師だって下にネットが張っているからこそ堂々と空中ブランコで演技できるってもんでしょ。万が一にも歌詞を書き込んだりしない理性は失っていないつもりだよ」


「まったく。それで今のは何って曲だったの?」


「『太陽の使者鉄人28号』。作詞藤川桂介、作曲清水靖晃、歌唱はギミックとなっているけどその正体は河内淳一という歌手なんだ。かなり勢いのあるロック調の楽曲で、Aメロの部分のキーボードなんかが好み。ちなみにEDはOPと同じ製作陣による『希望にむかって~正太郎のテーマ~』という穏やかなバラード。だけど河内のボーカルが必要以上にロック臭い歌い回しなのでもっと素直に歌ったほうが良かったと思う」


「ふうむ。それにしても鉄人28号って何回もアニメ化とかされてるらしいからよく分からない部分もあるわね」


「最初は白黒だもんね。そもそも原作となる漫画は一九五六年から連載開始されたらしいんだ。作者は横山光輝。エンターテインメントに徹した作品を多く残した漫画家で、他にもアニメ化や果ては実写化された作品も本当に数多いんだけど鉄人28号はその中でも代表作の一つなんだ。昔の漫画家だから手がけたジャンルは幅広く、巨大ロボットが登場するSFから少女漫画、それに忍法という建前で現実不可能な能力バトルを繰り広げる忍者漫画とか学校の図書室によく置かれてる『三国志』全六十巻などの歴史物も数多く手がけているんだ」


「ああ、あの登場人物の区別がつかないと評判の」


「実際読んでみたらその場では十分区別出来るから大丈夫。それで鉄人に話を戻すと、少年探偵である金田正太郎がある事件において旧日本軍が作った鉄人28号という兵器と出会う。これはリモコンで操縦されるから、操縦者によって前にも悪にもなるとても危険な兵器なんだ。漫画でも最初の方は正太郎や警察と鉄人を悪用しようと目論む悪人が繰り広げる人間同士の攻防を描いたもので、鉄人自体は案外出番が多くないんだ。正太郎はアリエスじゃないけどまさしく小さな大人と言うべき存在で、見た目こそ半ズボンを履いてる子供だけど車を乗り回し銃を操り、しかも強い。ビルの影で待ちぶせてた悪人に後ろから奇襲を受けたのに普通に返り討ちにしてるもの」


「まさしく颯爽たる子供のヒーローなのね」


「うん。まあ作中の都合によってはあっさり気絶させられてコントローラー奪われたりもするんだけどね。最初のアニメ化が一九六三年との事。しかもその前にラジオドラマとか実写ドラマもあったらしいし、それぐらい人気のある作品だったんだ。三木鶏郎が作りデューク・エイセスが歌った主題歌もよく知られたもので、でもさすがに感覚としてはさすがに古すぎるからどうこう言うようなものでもないかなって感じ。原作通りのずんぐりむっくりした鉄人が活躍する物語だよ」


「それで第二弾が一九八〇年なのね」


「そう。七十年代後半あたりから昔のヒーローのリバイバルブームみたいな流れがあったらしくて、同じ時期にウルトラマンや仮面ライダー、鉄腕アトムなんかも復活してるんだ。急に話は飛ぶけど鉄人アニメ化第三弾は一九九二年で、その名も『超電動ロボ鉄人28号FX』。これは白黒アニメの続編というもので、少年探偵だった正太郎が大人になって、その子供が主人公となっているんだ。ロボットはいかにも九十年代って感じのとげとげしくて格好良いデザインになっているのが特徴。それと昔の丸っこい鉄人28号も往年のヒーローって感じで登場するんだ。ただ作中でヒーローがどうこうみたいな話をしてたけど、そういう話はあんまり好みじゃないからあんまり真面目に見てなかった」


「OPは『フューチャー・ヒーロー』。作詞園田英樹、作曲長沢ヒロ、編曲戸塚修、歌手は最初は作曲者でもある長沢だったけど途中から清水咲斗子という女性歌手に変更されてるみたい」


「個人的には長沢のほうが好みなんだけどね。長沢は元々安全バンドなるロックバンドで活動して、その後はPEGMOとかいくつかのバンドで活動しつつ楽曲提供の仕事も始めて、基本的には作曲家として知られてる人。アイドルへの提供もあるし、それにCMソングも結構多いらしいよ。そんな長沢の歌唱は、時々ちょっとやっぱり歌唱メインの人じゃないんだなって部分は見え隠れするけど声質はいいし、何よりピシピシしたアレンジに鉄感があるのが強み。清水バージョンはどうも弱含みというか、モワッとしてる感じでねえ。曲としてはイントロと歌い出しは抜群にいいんだけど、ちょっとメロディーに隙間が多いから勢いが持続しないのが弱点かな。ただ総合的に見ても鉄人関連の主題歌では一番いい曲だと思うよ」


「そしてEDも途中で変わってるのね。まず前期は『僕らは冒険者』。作詞工藤哲雄、作曲長沢ヒロ、編曲戸塚修で歌うのは金田探偵事務所なる集団」


「これは作中の組織名で、要は主人公など味方側の声優が歌っているようだね。ピアノの音が軽快だけどこの手の声優合唱曲だと個々人が個性を発揮しすぎた結果なのか調和がもう一歩だったりするからね。EDの映像は主人公ら五人の少年少女が歩いたりしてるけど、物語前半の大きな戦いが終わった辺りで二人が海外派遣されるとの名目でリストラされる。ここらでOPとEDも変わるんだ」


「そんな後期EDは『GET YOUR DREAM』。作詞松葉美保、作曲工藤崇、編曲戸塚修で歌うのはOPと同じく清水」


「シリアス風味で結構格好良い曲。テンポはそれほど速いわけじゃないけど、清水の低めの声質にもよく合ってる。そして二〇〇四年にはまたもアニメ化。番組名はそのまんま『鉄人28号』で、区別する際は監督の名前から『今川版』なんて言われる事もある。で、この今川版鉄人は今までみたいに鉄人のデザインをアレンジする事なく、時代も原作が描かれた時期でもある昭和中期の日本に設定されているんだ。OPも白黒アニメの曲を六本木男声合唱団がカバーしたもので、ノスタルジックな感覚を明確な意図のもとに演出しているんだ。ちなみに編曲は千住明。そう言えばこの頃に実写映画も作られてた気がするよ」


「その出来はどうなの?」


「知らない。それと去年には『鉄人28号ガオ!』なるミニ番組も作られたらしいね。さて、ようやく話を戻せるけど、いわゆる太陽の使者はね、ロボットのデザインはいかにも当時のスーパーロボットって感じの堂々たる巨大になっているんだ。目には瞳もなく体型はスマートになって、本当に戦闘ロボットって感じ。。それと設定も結構違って、舞台は当時における近未来である九十年代。正太郎もインターポール所属らしいけど一応は普通の学生でもある。まあほとんど学校にいる描写はないんだけどね。それと銃も普通のものではなく麻酔銃って事になってるし」


「ああ、やっぱり直接殺人ってのはまずかったから?」


「ロボット戦では敵ロボット破壊の際ご丁寧に内部で悪党が『うわあああ!!』などと悲鳴を上げて吹っ飛ばされる描写を挟んだりと完全に殺しにかかってるんだけどね。まあ横山光輝の作品は全体的にどこかドライと言うか、敵味方問わずどんな登場人物も死ぬ時はあっさり死ぬし主人公はその辺も割り切ってるタイプが多いからその精神を受け継いだとも言えるかも。物語は基本的に一話完結型で、前半はロボットマフィアのドンであるブランチとの戦い、そして後半は宇宙からの侵略者との戦いという連続ものの要素も多少はあるけど大抵は世界各地に出没する悪者を鉄人で成敗するって話」


「シンプルな勧善懲悪ものって感じ?」


「まさにそれ。で、悪者は大抵変なコスプレしたおっさんで、彼らが操るロボットも中華風だったりミイラそのものだったりと個性たっぷり。そう言えば一度は巨大なタコ相手に戦った事もあったかな。そんなバラエティ豊かな敵に対して青黒い鉄人は武器の一つも持たない徒手空拳のままグイグイと動き、パンチやキックで敵の装甲を突き破るという力強い戦闘シーンは本作の見せ場でもあるんだ。その回の終わりあたりになると主題歌が流れ始めて、それと同時にどんなに追い詰められてても鉄人が大逆転という構成もまさに正統派」


「シンプルなストロングスタイルはいかにも鉄人って風格よね」


「それとやけに印象に残るのはBGM。音楽担当は清水靖晃、マライアとなっているけどこのマライアってのはサックス奏者の清水を中心にスピッツのプロデューサーなどで知られる笹路正徳や光GENJIの曲でもいくつかギターを弾いてる土方隆行、山木秀夫らによって結成されたバンドらしいんだ。彼らは手練のスタジオミュージシャン。だから本作のBGMも特にドラムやベースはいかにも技術がありそうな演奏だし、やたらとお洒落な感じがかなり異色」


「ロボットアニメだから激しい感じとはならないわけね」


「まあそれはいいとして、キーボードがやけにチープなのがね。序盤に鉄人出撃のシーンでよくかかってた曲とか全然スーパーでかかってそうな音色でどうも弱そう。やたらとテクニカルなサックスソロに合わせて敵ロボットが街を破壊とか、ミュージシャンの実力は凄いんだろうけど全然空気読めてない選曲もなんだこれって感じだし。でも途中からブラス中心の力強いBGMが加わってその辺はまともになるんだけどね。色合いなんかも綺麗だし、でもどこか一級品とはずれてる部分があるよね。そう言えばラストも敵の親玉もろとも鉄人が自爆したと思いきや何食わぬ顔で帰還して、あれは凄かった」


「まさに不死身。主人公かくありたいものよね」


「あっ、そう言えば流れで紹介し忘れてたけど太陽の使者にも後期EDはあるんだ。タイトルは『無敵の鉄人28号』。作詞亜蘭知子、作曲河内淳一で、歌は一応ギミックって事になってるけどWikipediaではメインで歌ってるのは正太郎を演じた山田栄子と書かれてるね。正直よく分からない。マーチ調の合唱曲で、間奏の児童合唱団とかまあださいと言うか、そういう楽曲だと思えば割り切れるタイプの曲。そして亜蘭知子と言えば長戸大幸率いる音楽制作集団ビーイング。マライアもビーイング所属だったらしいからね。こういう活動をしながら地力を高めて、九十年代にはB'z、ZARD、WANDSなどで一時代を築き上げるビーイング系の隆盛、そしてJ-POPの萌芽が鉄人28号のサントラにあり、みたいな文章を見た事があるけどまあ結果論だよね」


 このような事を話していると敵襲を告げるサイレンが部屋の中に鳴り響いたので二人は変身して敵の出現ポイントへ向かった。


「ふはははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のブラーミニメクラヘビ男だ! しかし本当に暗いのはこの星の未来よ。それを我等の手で目を開かせようというのだ」


 枯れ葉の舞う山道に、非常に危ない敵がやってきた。メクラヘビなんて名前だが目が見えないなんて事はなく、ただ一見確認しにくいだけらしい。見た目はミミズに似ていて、地中生活に適応した形との事である。


「またも現れたなグラゲ軍! 変にこの地球を攻撃するようだと許さないぞ!」


「そもそも名前からしてギリギリじゃない。生き物の名前だからセーフ理論も妙な話だけど、向かってくるなら容赦しないわよ」


「ふっ、やはり現れたなエメラルド・アイズ。お前たちの首こそ、この俺が望むものだ。死んでもらうぞ」


 ブラーミニメクラヘビ男の合図とともに左右からぞろぞろと出現した雑兵を倒すと、冷たい風が残った三人の間を吹き抜けた。


「よし、雑兵はすべて片付いた。後はお前だけだなブラーミニメクラヘビ男!」


「兵隊だからとか言い訳せずにもっと先の事を見たらいいのに。本当は戦う必要なんてないものを」


「言って分からないのはそっちのほうだ。ゆえに戦う、最後までな!」


 そう言うとブラーミニメクラヘビ男は懐に隠し持っていたスイッチを押して巨大化した。対抗して渡海雄と悠宇も合体した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 メガロVSメクラ!! 世紀の対決を制したのは前者であった。ブラーミニメクラヘビロボットの巻きつき攻撃を防ぐと矢継ぎ早に殴る蹴るのラッシュでひるませた。そして追い打ちとばかりに必殺技を打ち込んだのだ。


「なかなかすばしっこい奴だけど、フィンガーレーザーカッターで切り刻んでやる!」


 渡海雄は群青色のボタンを押した。指先から放たれる光熱線レーザーがブラーミニメクラヘビロボットの細長い機体を市松模様に切り刻んだ。


「むう、何というパワーだ。残念だがここまでだな」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置でブラーミニメクラヘビ男は地球から去っていった。なおGYAO! では先週の月曜日に配信がスタートしたというタイミング。一週間で四話ずつ配信なので最初の数話は今度の日曜日までとなるが、今は宮﨑駿が手伝ったと噂の八話などを視聴出来る。

今回のまとめ

・半世紀も定期的に新作が生まれるコンテンツとか凄い

・太陽の使者はシンプルな作品だが作画などは良好なので問題ない

・ただ音楽など微妙に抜けた部分があるのが愛嬌

・ビーイング系についてはいずれ語る時が来るかも知れない

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