am09 超獣機神ダンクーガについて
九月十日水曜日、午後七時、KBS京都にてある番組が放送された。その番組の名は「超獣機神ダンクーガ」。今から約三十年前の一九八五年に放送されたアニメである。全三十八話。そのいささか中途半端な話数が示すように打ち切りであった。しかし根強いファンを獲得した作品でもある。
「いやあ、ダンクーガの最終回酷かったなあ。完全に打ち切りエンドだったもの」
「ダンクーガって、第四次スーパーロボット大戦で顔がやたらと美形だったけどあんまり強くなかったあの?」
「まあ、そうなんだけどやっぱりその理解の仕方はまずいでしょ。見てもないのに風評を元に『全然面白くない奴でしょ?』とか『スパロボマジックの代表格。スパロボでは格好良いけど実際はしょぼい』とか知った風に語るのはね。だからちゃんと見たわけ」
「ふうん、まめな事ね。で、実際はどうだったの?」
「うん。個性的なキャラクターと、彼らによって織り成される人間ドラマが中心という印象だったね。だからロボットを用いたアクションシーンに関してはやや淡白な部分もあったから評判が悪いのも故のない話じゃなかったけど、それなりに楽しめたよ」
「へえ」
「まず大まかに言うとムゲ・ゾルバドス帝国なる悪い者たちが地球侵略を開始してそれまでの軍隊は敵の繰り出すロボットなどに太刀打ち出来ずかなり壊滅的な打撃を受けたという世界観。でも地球側にも反撃の牙は用意されていて、そのために集められた四人の若者たちが本編の主役である『獣戦機隊』なんだ」
「地球が侵略者に狙われてるって、まるで私たちの世界みたいね」
「確かに。でも獣戦機隊は偶然その任務を負ったわけじゃなくて元々軍人だった中から選抜されたメンバーなんだ。ではその獣戦機隊はどんな面子かと言うと、まず主人公は藤原忍という男。好戦的で上官に殴りかかったり命令違反もするけど実力はあるってタイプ。『やってやるぜ!』ってのが口癖になっている熱血主人公なんだ。ただ熱血一辺倒ではなくそれなりに気遣いを見せたり、殴りかかったものの返り討ちってパターンが多くて実は弱いんじゃないのと思わせたりするのが特徴かな。イーグルファイターという戦闘機に搭乗」
「この鳥みたいなデザインになってる飛行機ね」
「このイーグルファイターは、機銃の音がいいんだよね。バラバラと何となく本物っぽい音になってて。また、イーグルファイターなどの獣戦機隊が乗る獣戦機は三つの形態があるんだ。通常時はノーマルモード、パイロットの野生の力が高まるのに感応して獣のような形状になるアグレッシブモード、さらに人型のヒューマノイドモードという三つ。イーグルファイターに関してはノーマルモードとアグレッシブモードの形状は変わってなくて、青いオーラみたいなものが出るんだ。設定上はバリアらしいけど、それで体当たりしたりする」
「なるほど、野生の力が必要だから短気なパイロットを選んでるのね」
「そうだね。次にヒロインは結城沙羅。赤い長髪と身長は低いながらも鋭い目つきが印象的な、作中でも例えられてるように女豹というキャラで、当然勝気な性格。そんな彼女に与えられているのはランドクーガー。ノーマルモードだと戦車だけどアグレッシブモードでは豹型のロボットになるんだ。それで噛み付いたりする」
「テストで自分の名前書くとき大変そうね」
「三人目のメンバーとして登場するのは式部雅人。最年少でちょっと子供っぽい性格と言うのかな、やや三枚目っぽい役回りを演じたり他のメンバーと比べるとやや気弱で親しみやすい性格。確か父親が軍需企業の社長か何かで、それに反発して軍隊に入ったみたいな設定があったはず。搭乗するのはランドライガー。正直ランドクーガーとあんまり変わらない。アグレッシブモードのモチーフはライオンだけど、百獣の王がこんな地味なのはなかなか凄いかもね」
「あれ、野生の力が必要なのに気弱でいいの?」
「内に秘めた野生は他のメンバーに引けを取らないはずだから大丈夫。そして四人目は司馬亮。拳法の達人で多分メンバーの中では一番強い。長髪でクールで冷静。それでいて初登場時にはバラを咥えてたりと意表をついた男でもあるんだ。搭乗するのはビッグモス。ノーマルモードでは戦車だけどライガーやクーガーよりもはるかに大きいんだ。アグレッシブモードではマンモスになって、牙で攻撃したりする。その他、何だか頭ごなしに命令する古いタイプの軍人といった印象のロス・イゴール長官やその息子で長官のやり方に反発してデータとか重視してたけどやっぱり父親と同じ血が流れているんだと思い至るアラン、お堅い科学者に見えるけど意外と話の分かる葉月考太郎博士、重要な役回りのはずがいまいち空回りした上に幼いルックスと妙に低い声がミスマッチな少女ローラあたりがメインキャラになるかな」
「ふうん。ところでヒューマノイドモードについての説明はいいの?」
「個性も出番もあんまりないからねえ。ともかく、単体でもこのように多彩なギミックを有する四体がさらに合体するんだ。両手両足に胴体と、身体の大部分はビッグモスでライガーとクーガーは足の底へ靴のようにくっつき、イーグルファイターは頭部になる。獣を超え人を超え、合体したスーパーロボットこそがタイトルにもなってるダンクーガなんだ」
「なかなか凝った作りになってるわね」
「凝ってると言えば本当に凝ってるからね。そしてそのダンクーガが初めて合体に成功するのは十六話ってのもよく語られるけど、そもそもキャラクター登場にかなり時間かけてるからね。沙羅が味方に加わるのが第三話で以降雅人、亮、ローラと主要人物登場で一話使ってじっくりと個性をアピールしている」
「そこがまさにキャラクター重視って事なのね」
「そうだね。序盤は世界各地で頑張ってるレジスタンスの支援に飛び回るけど、その際にイーグルファイター以外は戦車で飛べないからそれ用の輸送機なんかもあってねちょっとリアル風だったり、ちょっとした部分も案外頑張ってる。確かにダンクーガは出てこないけどそれなりに仕掛けは多かったから退屈って程でもなかったな。そして十六話でようやくダンクーガ登場だけど、一言で言うと強い。その時、戦場で対峙していたのはデスガイヤー将軍というムゲ帝国屈指の武闘派なんだけど、パンチ一撃でデスガイヤーが乗るロボットを撃破してるからね。その後も基本的には徒手空拳で敵を倒してて存在自体が必殺技みたいなものだからバトル自体はあっさりしてるんだよね。この間の最終回もギルドローム将軍という精神攻撃する相手と戦ってたけど、お得意の精神攻撃は結構あっさり打ち破られてて拍子抜けだったなあ。格好良いロボットがヒロイックに大活躍するアニメだろうと認識して視聴したら腰砕けもいいところで、確かに評判は悪くても仕方ないという感じかな」
「それで敵はどんな感じなの? 武闘派のデスガイヤーと精神攻撃のギルドロームと」
「将軍はもう一人、ヘルマットってのがいるんだ。多分危ない性格のはずなんだけど、あまり見せ場なく死んだから地味。まあ死ぬ間際に『エネルギー排気口から融合炉へ飛びこまれない限りは大丈夫』みたいに次の展開を懇切丁寧に説明してたシーンがちょっとインパクトあったかなって程度で。ボスのムゲ帝王はダンクーガにワンパンKOされたデスガイヤーに対してこれまでの功績を持ち出した上で『負けたのなら仕方ない、ゆっくり休め』などと労いの言葉をかけるこの手のボスには珍しい器の大きさが印象的だったね。と言うかムゲ帝王と最終決戦に挑む前に終わってしまったからテレビ版だけでは印象薄いの。ただ本当に重要なのは他にいて、その名はシャピロ・キーツ。ムゲ帝国に寝返った地球人なんだ。しかも沙羅の元恋人」
「おお、それはいかにも盛り上がりそうな展開じゃない」
「かねてから侵略者は来るよと進言してたから有能でもあったはずなんだ。でもシャピロの意見は採り入れられず、実際侵略者が攻めて来た時に軍は何も出来ず壊滅状態という惨状に嫌気が差して、もっと大きな野望を果たすために寝返ったんだ。その際沙羅も一緒に行くつもりだったけど忍に阻まれて、それ以来敵と味方に別れたんだ。シャピロは最初の頃は頑張ってたけど最終的にはムゲ帝国に見捨てられて発狂。ずっとそばにいて愛人のようだった副官のルーナとかいう女も最後は完全に見限ってたけど、それまで気があるような態度を取っていたのは最初から演技だったのか一時期は本当に好きだったけど途中で醒めたのか。ともかく、最後は狂乱の中で元恋人でもある沙羅に撃たれて死ぬ」
「何だか悲惨な最期ね」
「野望を掴み損ねた男の末路なんて、そんなもんなんだろうね。でもその末路含めてインパクトは大きかったので人気も高いんだ。後期EDは完全にシャピロの心情を歌ったものだし映像もシャピロ満載。悪趣味とか言われるけど曲自体は好きだよ。『SHADOWY DREAM』。作詞冬杜花代子、作曲東郷昌和、編曲戸塚修。BUZZという七十年代にCMソングをヒットさせた事で知られるフォークデュオ出身で作曲もこなした東郷が野心に生きる男の虚しさを濃厚に歌い上げたバラード」
「後期って事は前期もあるの?」
「うん。まずOPは前期が『愛よファラウェイ』、後期が『ほんとのキスをお返しに』。ともに作詞冬杜花代子、作曲古本鉄也、編曲戸塚修で藤原理恵が歌う。藤原はローラの声優も担当してる、当時の新人アイドルなんだ。ただ音痴な上に声質もいまいちで声の仕事は向いてなかったという印象。曲自体は正直同程度だけど映像に関してはいかにも八十年代っぽい後期が好みかな。前期EDは『バーニング・ラヴ』。作詞冬杜花代子、作曲いけたけし、編曲戸塚修で作曲のいけが歌う。OPでもいけるのではというスピード感のある曲だけどボーカルの声質が燃え系にも爽やか系にも弱い感じ。だから個人的には後期EDのほうが好み。それとBGMに関しては序盤によくかかってたはつらつとした曲と、最初にダンクーガ合体した時に流れてたスローテンポの曲が好きだな」
「ううん、確かに藤原の歌唱はもう一つね。特に英語の部分とか」
「つまり、超獣機神ダンクーガという作品をまとめると、キャラクターの印象が強いのは事実だね。ロボットに関してはダンクーガにしてもアランの乗るブラックウイングにしても設定は凝ってたけど大抵不発に終わった感じ。主人公たちのファッションも当時の流行を反映させたって事だけど、忍がピンク色のシャツ着てたりと、同時代的な演出が今となってはしょっぱくなってるのも宿命とは言え辛いかな。いや、当時から滑ってたって話だけど。ストーリー自体も割かし陳腐だし」
「『南風ハートブレイク』とか素晴らしいタイトルの回もあるし、いかにも八十年代っぽいわね」
「それと滑ってると言えばローラ絡みの演出は全体的に不発。他にも粗は多いけど全然駄目って事じゃなくて、やりようによってはもっと魅力的になれたはずと思わせるところがあるんだよね。そう思う人が多かったからこそ打ち切りに終わってからも続編のOVAが作られたんだろうし。そこでムゲ帝王と決着をつけたり、実は生きてたシャピロがまた絡んできたりするらしいね。スパロボで必殺技になってる断空剣なんかも全部OVAで登場するものだと言うし、本来は見てないと片手落ちって事なんだろうけど。あっ、そうだ。来週からは続編の『獣装機攻ダンクーガノヴァ』始まるらしいよ。本家ダンクーガに輪をかけて評判悪いけど、見る?」
「ええと、それは……」
悠宇が答え終える前に敵襲を告げる警報が鳴り響いた。まったく、このような世界はフィクションまでにしてほしいものだと願いつつも二人は戦いの地へと赴いた。
「ふはははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のジャガー男だ。一突きでこの星を正しい道にするのだ」
ジャグァーではないしもちろんメルツェデスでもない、ジャガー男が出現したのは山の麓にあるアスファルトで敷き詰められた道路の上だった。ここから暴走伝説が始まったら困るので渡海雄と悠宇はさっさとその場へ急行した。
「お前たちの悪事もこれで終わりだグラゲ軍!」
「現れたからには殲滅するしかないんだし、最初から出てこなければいいものを」
「ふん、俺の任務はお前たちを殺さなければ遂行出来ないものだ。飛んで火に入る夏の虫とはまさにこの事よ! 雑兵ども、かかれ!」
すでに秋だと言うのに夏の虫などと言い出すジャガー男の奇妙な知性に違和感を覚えながらも渡海雄と悠宇は雑兵を蹴散らした。
「ふう、ようやく雑兵を倒したな。後はお前だけだぞジャガー男!」
「どこで日本のことわざを覚えたのか知らないけど、観念する事ね」
「ふん、真の戦いはこれから始まるのだ! 知らぬわけではあるまい、我らの最終決戦兵器を!」
そう言うとジャガー男は懐からスイッチを取り出し、それを押して巨大化した。いつもの展開になったので渡海雄と悠宇も合体して対抗する事にした。
「メガロボット!!」
「メガロボット!!」
巨体同士の一戦は静かに始まった。ともに攻撃力に定評のある機体なので、迂闊な動きが死につながる。ゆえに慎重に事を進める必要があるのだ。先に動いたのはジャガーロボット。しなやかな肢体から繰り出される柔軟な攻撃を悠宇はうまく回避して、カウンターで裏拳を右の頬へ入れた。
「よし、今よとみお君!」
「うん。ランサーニードルで勝負だ!」
悠宇の声に反応して渡海雄は黒いボタンを押した。次の瞬間、胸部から腹部にかけて装備されている六つの発射口から射出されたニードルがジャガーロボットを蜂の巣に変えた。
「ぐうっ、もはやこれまでか。なかなかに強いものだ」
ジャガーロボットが爆散する寸前に作動した脱出装置に乗せられてジャガー男は宇宙へと撤退していった。実に危険な男であった。ところで、ダンクーガノヴァに関してはちゃんと視聴して何らかの面白みを感じたら文章にするので乞うご期待。
今回のまとめ
・面白くないわけじゃなかったけど全体的にB級感漂う作品だった
・ロボットは割と格好良いしギミック満載なのに生かしきれなかった
・あからさまに未完打ち切りなのに「完」とか出る脱力感は異常
・ノヴァは評判最悪だけど短いし付き合ってみようと思っている




