rm10 2014年シーズン終盤の展望について
合宿から帰った途端雨に見舞われたお盆を超えて、どうにか夏の入道雲が戻ってきた。しかしこの夏は既に残暑と呼ばれるものに変質している。あの限りなく長いとさえ思えた八月もついに尻尾が見えてきた。渡海雄と悠宇は合宿の際にテキストからプリント、自由研究まですべて終わらせたのでそこに関しては左団扇であった。もっとも実際は残暑と言ってもかなり厳しく、クーラーのない部屋では団扇を振り回して涼を取っているのだが。
「ふわあ、今日もまた暑いねえ」
「でも京都じゃ街が水没したかと思えば広島でも土石流で多数の死者が出たり、相変わらず地球はやりたい放題よね。雨を降らせるにしてももうちょっと控え目ならいいのに」
「まあそこは人間も地球に対して基本やりっぱなしで生きてるからねえ。今回に関してはさすがにやりすぎだとは思ってもね、雨に降るなとも土に崩れるなとも言えないんだから。相手が相手だしどうにもならないよ。それでも失われた命はもう二度と戻らないのだから、密やかにご冥福をお祈りしますと、結局それしかないんだよね、僕らに出来る事と言えば」
「それもそうよね。グラゲの人たちに勝手に荒らされるよりはずっとね、いいものよ。ところで広島と言えばカープの調子は最近ようやく底を打った雰囲気があるような気がするわ」
「確かに。この間の巨人戦とか、まさか勝ち越せるとは思わなかったよ」
「山口から三点を奪って逆転とか、まさかの展開だったわ。打線も投手も一時期に比べるとかなり格好がついてきたから、これからはもっと勝っていきたいところよね」
「阪神や巨人とのゲーム差を見てもまだ上を狙える位置にいるよね」
「そうね。残りはもう四十試合を切ってるけど首位とはゲーム差が三程度だし、このままの順位で終わるほど少なくはないわ。去年も八月の時点ではまだまだ混戦だったけど九月になってカープが中日とに差を付けて三位に入れたという形だったから、それが今年は最上位で起こっているのはリーグ全体にとっても朗報よ。去年なんて巨人と阪神が上位独走で、その中でも巨人が首位で阪神は上からも下からも離されてという形だったから」
「と言うか、今年は上位から下位まであんまり成績に差がないよね。広島もそうだけど巨人もヤクルトも勝ったり負けたりでなかなか差が付かない」
「実際かなりの混戦模様よね。相変わらず怪我人が多くて投手陣が極めて厳しいヤクルトは残念だけど脱落っぽいし、五位のDeNAも昨日までやってたカープとの三連戦が正念場となっていたけど残念ながら負け越してしまったので、不可能とまでは断言出来ないけど限りなく終戦に近づいてしまったとは言えるでしょうね。ただ中日はまだまだ怖い位置に付けているわね。カープは今三位にいるけど、こんな順位は全然安泰じゃないって事よ。気を抜くとBクラスも現実的よ」
「でも逆に言うと優勝の可能性もまだまだ残ってるよね。いやあ、怖さもあるけどなかなか楽しいよ」
「そうよね。やっぱりより上の順位で争ってこそよね。そして現状のカープは、まずは投手陣から言うとここ数ヶ月って単位で勝てなかった人たちにようやく白星が付いたのはいい流れよね」
「バリントンに大瀬良、それに野村もだね」
「そう。特に野村は野手の援護なくなかなか勝てない時期が続いてたけどピッチング自体は悪くなかったから、ようやく正しい結果が与えられたから本当に良かったわ。それに加えて意外と頑張ってくれた福井や戸田」
「ああ、福井は本当にねえ。今年最初の登板は最悪だったけど見事に巻き返してくれたよねえ。巨人と阪神相手にまさかの三勝。まあ前の登板ではついに地金が出たかなあという内容だったけど、少なくとも負けは付かなかったし」
「春先の篠田みたいなもので、とりあえず期待以上のものは既に見せてくれたから。先発の一番厳しい時期に頑張ってくれたんだからもう上等よ。後は前田よね。本当に頑張ってほしいのは」
「前田はここ数試合本来の実力がまったく発揮出来てないよねえ。やっぱりエースならばAクラス相手に勝ってくれないと」
「こんな成績のままアメリカに行くのも格好が付かないでしょうし、ここから奮起してくれる事がカープにとっても前田本人にとっても必要不可欠。だけどちょっと雨が降ったからってあからさまに不満顔をするようなのはちょっと信頼を疑わせる光景だったわね。相手の内海は絶対そんな顔しなかったわ。とにかく、前田の復調なくして順位の上昇はありえないんだから、もうちょっと真面目にやってくれないとお話にならないわ」
「エースだもんね。福井が駄目になるのとは訳が違うもんね。とりあえず先発はこんなもんかなあ。あっ、そう言えば七月も終わる頃に獲得したヒースという新外国人投手もいたねえ」
「外国人枠はもうとっくに飽和してるけど、出番あるのかしら。リリーフに関しては、中崎が意外と働いてくれてるわね。恵まれた体格から意外と弱含みなボールを投げるというイメージだったけど150キロ台を投げ込むようになってるし、一岡が離脱した現状ではミコライオの次に位置する信頼感よね」
「中田や永川も最悪の時期は脱した感じだよね。それと横山がいて、敗戦処理として小野ってところかな現状は」
「小野は落ちるらしいわ。最近上がってきた江草も頑張ってほしいわね。いっそヒースもリリーフとして使うってアイデアもありそうだと思ったりしたけどバリントンが二軍だからやっぱり先発として考えているのか。でも福井あたりもそろそろまずそうだし、そうなったら九里あたりに任せるとして、ううむ、正念場よね。ここで誰かがやってくれたらいいんだけど。ほんの数試合なんだから」
「最終的にどんな形になるんだろうね。そう言えば外国人枠と言えばエルドレッドが二軍に落ちたよね」
「あの成績じゃあね、仕方ないわ。打率は一割未満、得意のホームランもさっぱり。むしろよく我慢したほうよ。でも代わりに昇格したロサリオがまたいいのよね。うん、ロサリオは好感が持てる選手よ。成績もしっかり残してるし、全力疾走な感じとかね。それにしても、四番とエースがメタメタなのに案外戦えてる現状は多少心強さもあるわ。選手層厚くなったものよね」
「確かにねえ。ロサリオは何と言うか、野獣だよね。守備が怪しかったり積極走塁が過ぎて暴走したりってマイナスな部分も含めて」
「菊池が出てきた時もとんでもない野生児が出てきたと思ったけど、ロサリオはさらにパワフルで常識外れな選手だから、これが成長したら一体どうなってしまうのかはとても興味があるわ。意外としょぼくれたりしそうな気がしないでもないけど、とにかく四年契約があるんだから来シーズン以降はこのロサリオが打線の核となっても全然不思議ではないんだし頑張って成長してほしいわね。それこそフルシーズン出場してタイトル獲得するぐらいに」
「その菊池は去年課題と言われていた打撃で三割をマークしてて、早くも弱点を克服したよね」
「丸との同学年コンビは本当にチームを支えてくれてるわ。それに加えて田中広輔という第三の矢まで繰り出してきたんだからこの世代は人材豊富よね」
「田中はまだルーキーなのにねえ、どっしりしてるよね。体格もそうだけど佇まいもいい意味でルーキーらしからぬと言うか」
「本当によくぞ指名してくれたわ。そしてこの田中が七番、八番に會澤というオーダーは破壊力があるわ」
「打てるキャッチャーっていいよね」
「本当にねえ。石原が一軍にいるにも関わらず前田先発の時ぐらいしかスタメンでは出ないし、監督は會澤で行くと腹を決めてるようね。いい傾向よ。今年の石原はさすがに酷いわ。もちろんリードや守備力では石原のほうが上なんでしょうけど、打撃での差がありすぎる」
「かたや三割かたや一割じゃあね。そりゃあ會澤使うよ。石原だって今までの成績見てみるとここまで打てない選手じゃなかったのに、一体どうしてしまったのか。他の野手だと、梵はいつの間にか打率を上げてるし、天谷が三割打ってたり何気に代打小窪ってのもうまく決まってるよね」
「内野陣の面子からしても小窪が生き残るにはそういう枠を確保し続けるしかないのよね。アメリカだと確実にトレードされてるでしょうけど、まあそこはチーム数の少ないNPBとは別の話よ。二軍では松山もようやく実戦復帰したという話だし、エルドレッドも調整またあの打棒を見せてくれるべく調整してるはずだし、とにかくこういった選手たちがチームに最後の活力を与えてくれれば面白くなるわね」
「それと今は甲子園やってるよね。これもどこが優勝するんだろうね」
「さあね。ベスト8は三重・沖縄尚学・敦賀気比・八戸学院光星・健大高崎・大阪桐蔭・聖光学院・日本文理となったけど、この中からじゃあどこにと問われても断言出来る答えは持ち合わせてないわ。高校野球、プロよりも確定要素が少ないものだから」
「いきなり流れが変わったりするもんね。それまで完璧に抑えてたのに突如連打を浴びて逆転とか」
「技量が低いと言えばまあそれなんだけど、それゆえに終盤にいきなり大逆転とか起こりやすいのよね。次がある戦いが基本のプロと違って負けたら終了だから敗色濃厚な展開となってもそこまで手を抜くって事はしないし。でもまあ、基本的には高校生の大会なんだから、あんまり高校野球らしさとか小言で選手をがんじがらめにするのはねえ。そりゃあサイン盗みとかはっきりとルールに抵触するようなプレーなら注意されても仕方ないけど、そうでもないプレーをいちいち取り上げて『これは相手を侮辱してる』とかそういうのは傍迷惑でしょ。一九四二年の大会じゃないんだから」
このような事を話していると敵襲を告げるサイレンが鳴り響いたので渡海雄と悠宇は素早く戦いのスーツを身にまとって戦場へと率先して駆けていった。
「ぐわははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のシジミ男だ! この星の崩壊を習慣にしてやるのだ」
シジミと言えば街頭インタビューでお馴染みのしじみ習慣。CSでスポーツ見てると大抵ぶち当たるCMの数々は無駄に覚えてしまうのは困りものだ。どうせ健康食品とか買いもしないのに。ああ、でも万田酵素はちょっと気になるかも。それはともかく、クラゲが集結しつつある海沿いにグラゲが出現したので、さっさと排除する必要がある。
「夏も終わりが近づこうとしているのに相変わらず出てきたなグラゲ!」
「あなたたちの野望を断ち切る者が出現しましたよ。観念なさい!」
「ふん、ようやく現れたか。俺はお前たちを殺すために来たのだ。さあ行け、雑兵ども!」
お盆を過ぎた海水浴場にどこからともなく現れるクラゲのように現れたグラゲの雑兵を片付けると、そこには三人しかいなくなった。
「よし、雑兵たちは片付いた。後はお前だけだぞシジミ男!」
「侵略が習慣になるのは容認しがたいわね。ガンガンガン速で撤退しなさい!」
「意味の分からん事を。まあいい、それがお前たちの辞世の句になるのだから、もうちょっと考えるべきだったな」
そう言うとシジミ男は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。やはり戦いは避けられないようだ。それにしてもガンガンガン速、あんなんどう見ても怪しいけど本当にいいのか。しかしそれゆえに頭に残るという面も確かに存在しているわけで、記憶からアンインストール不能という非常に優秀なCMであると言えるか。買わないけど。それはともかく、渡海雄と悠宇も合体した。
「メガロボット!!」
「メガロボット!!」
まずは格闘戦を繰り広げたが、シジミロボットは殻もあってあまり効果的なダメージを与えられていないようだった。やはり必殺技を使うしかないと判断したが、それには一瞬のタイミングが重要となる。慎重に攻めてからその隙を見計らった。そしてついにその時が訪れた。
「よし、今よとみお君!」
「おう! ドリルキックで攻めるぞ!」
渡海雄は青いボタンを押した。足をドリルにして突進するメガロボットはシジミロボットの固く閉じられた殻を突き破った。
「うおお、これが奴らの力か。残念だが撤退するしかなさそうだな」
シジミロボットが爆散する寸前に作動した脱出装置に乗ってシジミ男は宇宙へと戻っていった。とりあえず夏休みをうまく乗り切る事は出来たようだ。去りゆく季節を名残惜しむように、渡海雄と悠宇は戦いの後に海で泳いだ。海や堤防と一緒に二人が夕日のオレンジ色に染まった時、少しだけ大人になったような気がした。
今回のまとめ
・首位と3ゲーム差はたやすくはないが不可能でもない数字
・前田は雑魚専と言われても仕方ないけど今日にでも脱却してくれ
・来年からはロサリオが打線の軸になるのだろうか
・健康食品はともかくガンガンガン速だけは(悪口になるので自主規制)




