表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
388/397

rm59 これぐらいでいいんだよという交流戦成績について

 先週は異常な暑さだった。これでは早くも真夏ではないか。六月はもっと六月らしく、たまの晴れ間も爽快さがなければならないはずだ。そう思っていたら無事に梅雨前線が復活してきたので、にこやかに雨を受けながら通学路を歩く渡海雄と悠宇であった。


「もうこんな薄着になって夏本番モードだけど、ビニール傘から眺める雨は綺麗だねえ」


「今後傘の技術が進歩してバリア的な何かで覆う感じになるともっと綺麗に見られるのかしらね。そんな時節だけど、まずはついこの間終了した交流戦について改めて振り返ってみましょうか」


「成績で言うと九勝九敗の勝率五割」


「個々の試合を振り返るとあれは勝てただろうって試合は三つぐらいあったけど、逆によく勝てたなって試合もあったし、そういうのもトータルで見て勝率は出てくるもの。まずはよくやったわ」


「全体で見るとビジターのオリックス、ロッテ、日本ハム戦はいずれも一勝二敗と負け越している。さっき言った勝てただろう試合もこの辺りの事だよね」


「まあね。とは言え全敗はしなかったし、十分に粘れたほうだと考えたい。ただ日本ハムの第三戦だけはさすがにありえない、ありえてはならないと言わせてもらうわ。ああいう事は今後二度と繰り返さないようにしてほしいと強く願うがゆえに。誰が悪いとかそういう話とはまた別に、ハーンや栗林といった勝ちパターンを担うリリーフ投手の数字がまだ上がってこないのは由々しき事態であり、ただ抜本的に見直さなければならないって大袈裟に騒ぎ立てるほどでもないから結局は復調を信じて使い続けるしかないのかなとも思うわ。ううん、難しい」


「ただリリーフ陣だと島内森浦中崎と、他にも成績良好な駒はそれなりに揃っている。今後の展開によってはこういった選手達がもっと重用される可能性はあるのかな」


「無論あらゆる可能性を排除せずチャレンジしてもらいたいものよ。岡本や高橋も与えられた役割相応に頑張っているとして、そこから先がいささか悩む部分よね。二軍では良好なピッチングを続けてきたはずの長谷部や益田が上では失点を積み重ねてしまっているのは残念。それで一軍に上がったもののタイミングの問題から今のところ出番なしの滝田がどうなるか。大差がついた試合なんかでそのうち出番は巡ってくるはずだから、どうにか使えてくれるとありがたいけど」


「層の厚さに関してはもう少し必要な感じかな。ともあれビジターでは借金三だったけど、ホームではまず西武に三連勝、ソフトバンクには負け越すも最後の楽天戦は勝ち越しに成功した」


「やっぱり西武戦、ガッツリ勝てたのは極めて大きかったわね。羽月の好走塁から逆転勝ちの初戦も見事だったけど、今井や武内相手に打撃爆発は正直あんまり予想していない展開だっただけに驚いたわ。こういう試合を今後どれだけ増やしていけるか。いつまでも大竹みたいな投手に名を成さしめてる場合じゃないでしょ。そしてソフトバンク戦はね、根本的な話をすると一勝二敗でも改善される通算成績の情けなさをまずどうにかしないと。八百長でもしてるんじゃないの。せめて勝率四割台までは上げないうちは語るに及ばないわ」


「特に三戦目は酷い負け方だったよね」


「とは言えあれは単なる大敗に過ぎないので日本ハム戦ほど問題ではない。元々防御率以上に不安定だったドミンゲスの地金が出たところで何を取り乱す必要があるというのか。いや初回から大量失点してるのを見た瞬間は十分がっかりしたけど。それと長谷部も、これでは所詮二軍止まりと見られても仕方なくなる。ただこの試合でホームランを打って僅かな光明を見せた中村奨成が楽天との第三戦でも満塁から逆転の走者一掃タイムリーを放った。双方が勝ち負けを競う争いなのだから負ける事はある。負けの中でも良からぬ負けに遭遇する事だってある。それでもあの大敗において、中村奨成の存在が一つの意味となった。そうやって繋げていく事よ。その先に未来はあるから」


「中村奨成は一時期の好調から大分数字を落としたけど、底は打ったと見てもいいのかな」


「まだそこまでは断言しないけど、当たれば割と長打になっているのは面白いところなのでまだまだ上で見てみたい選手の一人ではあるわね。この交流戦では意外にも大盛がセンターとして躍進を果たした。元々守備走塁に定評ある選手が打撃でも三割を大きく超えており、そうなるとレギュラーとして使われるのは当然の話。この好調が続いているうちは大盛がレギュラー第一候補でいいけど、正直そこまで長く続くとは思っていない。二軍野手で上げるとしたら林が筆頭で後は中村健人程度になるけど、もう少し突き上げがほしいわね」


「ただ外野はシビアだよね。ファビアンは三割打って首位打者争いに参戦中だし」


「他の打率上位は中日の岡林、阪神の中野、巨人の泉口など。この中でファビアンに関してはホームランも今のところ九本となかなかの好打者ぶりでありがたい限りよ。二番に置いてる今の形はしばらく継続してほしい。なおホームランの次点が末包の六本でその次が大盛の三本、小園坂倉菊池中村奨成の二本……、と続くみたい。こう見るとモンテロはもうちょっと長打があると嬉しいかな。数字上交流戦では強打のチームとなっていたみたい。ロッテのサモンズとか抑えられる時はガッツリ抑えられたのであんまり実感はないけど」


「そして交流戦後にはローテの再編もなされるみたいだね」


「ここまでは森下床田大瀬良に森も十分な働きを見せている。玉村もとりあえずは入ってくるでしょう。しかし六人目と期待されたアドゥワは連続の背信投球で陥落し、ドミンゲスもご覧の体たらく。ただ二軍ではルーキー佐藤柳之介があわやノーノーの快投を見せたようで、それと常廣が一軍練習に参加したという話もある。この辺の若手にチャンスを与えるにはもってこいの機会ではあるかな。先日二軍戦で先発した鈴木の可能性もある? どっちかと言うとロングリリーフ枠を担ってほしいけど。そして外国人補強、まだ諦めないからね!」


「まあ期待しすぎない程度に期待したいよね。ともあれ勝率五割でまとめたカープだけど、それでもセリーグは全体的に大負けしたのでリーグ内ではトップという」


「結構な話よ。首位の阪神との差は狭まったし、しばらくはDeNAや巨人と順位を争いつつ追撃体制を整えるのはどこになるかというフェイズになってくるでしょうね。中日はやや離されててるけどまだ可能性は残っている。そこからも大きく離されているヤクルトは、さすがに厳しいかな。二軍成績もオイシックス以下だし、かなりしんどいシーズンになってるけど、今後の順位を睨むとこういう不調なところから稼がなきゃ苦しくなるのはこっちだからね。ともあれ一見順位浮上してるけど現状は単なる貯金一に過ぎないし、ここからが本番よ」


「ちゃんと伸ばしてくれるといいよね」


「補強も絶対やってよね。トレードでも何でも。育成選手昇格でお茶を濁すんじゃなくて。いやでも前川はチャンスだし球速アップを果たした辻も気になるし……。いやいや、例えばサンフレッチェは六月に少しだけあった補強期間で柏から木下康介という大型フォワードを獲得した。こういうのを補強って言うのよ」


「得点力が低いサンフレッチェとしては、まさしく救世主候補にふさわしい」


「身長百九十センチだけど軽快に動きテクニックもある。横浜FCのユースに所属していた頃から注目されており、プロキャリアの初期は海外でプレーしていた。二十一年に帰国し浦和加入から翌年水戸で二桁ゴール達成、京都を経て柏に所属した去年はJ1で十点と活躍するも今年はやや存在感が薄れていた。現在三十歳とこのタイプとしてはいよいよ本領発揮という年齢で、期待通りの活躍を見せられれば躍進は確実」


「実際いきなりリーグ戦で二ゴールを決めた」


「このまま行ってほしいわね。塩谷が虫垂炎で離脱したみたいだけど中野がしっかり埋めたりと、守備はいいから後はゴールのみ。他に今のうちに語っておきたいのはルヴァンカップのPK戦で勝ち残りを決めるセーブを見せたチョン・ミンギのありがたさ。やっぱり獲得しておいて良かったと心底思ったわ」


「その一方で川浪が岡山へ移籍したね」


「二十一年加入からリーグ戦出場は一試合のみ。でも主にムードメーカーとしてそれ以上の印象を残したんだからまさしくナイスガイよ。それでチーム全体の話に戻ると、もう少しのところなのよね、得点数だって。でもそれを埋める難しさをずっと体感し続けているからね。そこでこの木下が最前線にドーンと鎮座出来れば、よく働いてくれてはいるけどゴールという結果だけは伴わなかったジャーメインの汗がより意味を持つものとなりうる。そうならなければならない。直近の横浜FC戦は快勝だったけど、こういう試合をもっともっと増やしていって首位鹿島を焦らせなきゃね」


「すでに折り返しを過ぎたJ1戦線、首位鹿島はいいとしてマリノスが未だに最下位。しかも監督交代とか選手移籍とかでかなりゴタついた姿を晒している」


「川井健太監督招聘が寸前で破断という茶番劇、まだ詰めきってない話がボロボロ漏れるフロントの体制はどうなっているのかというのが最大の問題点よ。地力が実績がと言ったところで、やってる事は降格するクラブのムーブそのもの。まずは選手首脳陣フロントが同じ方向を見られるかよ。他に降格圏にいるのが新潟と横浜FC。湘南やヴェルディも含めて、まあここらはね……、的な。名古屋とFC東京はマリノス同様規模の割に不甲斐ないけど補強が起爆剤となるか。岡山はどこまで逃げ切れるか。残留争いの役者はこれぐらいになるかな」


「清水もぼちぼちだし、昇格組は去年ほどじゃないにせよ頑張ってるのかな」


「そうね。そしてJ2戦線だけど、現在八連勝中の水戸が首位に立っている。二位千葉も含めて長年J2の象徴的存在だったチームがそれを打破するチャンスとなると注目せざるを得ないでしょう。サッカーはこれぐらいで、後はドラゴンフライズ。編成は概ね終了かなと思ったところで一度は契約更新したかに思われた中村拓人が電撃退団。いやどうすんのと思ったけど即座に琉球から伊藤達哉を獲得したのでひとまず安心はしたけど、いやはや驚いたわ」


「人の往来はスポーツの必然だけど、あのタイミングで移籍はちょっとねえ。実際は水面下で色々動いていたみたいだけど、更新したって出たら更新したものと思うじゃない」


「ルール上は問題ないって上沢みたいな話になってくるけど、中国新聞が『引き抜き以外の何物でもない』と極めて強い論調の記事を出していたわね。それにしても群馬にはミリング監督を筆頭に元ドラゴンフライズの人材が多く集まっていて、ブラックシアーまでもだし」


「ちょっと前のサンフレッチェと浦和みたいな因縁か」


「ああいう因縁もうんざりする話よ。まあバッチバチの移籍市場もそれはそれでエンターテインメントの一環ではあるしやるなとは言えないけど、こうなったからには『ここで彼がいてくれれば』と泣き言を口にはしたくないものよね。結局ファンたるもの勝ってほしいチームが勝てば嬉しいし負ければ悔しいものだから。それは誰が来て誰がいなくなっても、よそから同情されようが憎まれようが同じ事」


 このような事を語っていると敵襲を告げる合図が光輝いたので、二人はすかさず人目につかない場所へ移動すると、変身して敵が出現したポイントへと急いだ。


挿絵(By みてみん)


「フハハハハハハ、俺はグラゲ軍攻撃部隊のオビババヤスデ男だ。この汚れた惑星を正義で満たしてやろう」


 主に森の中に住んでいるが八年に一度大量発生して、その際に線路を占拠し列車を運休させた事があるからキシャヤスデなどと呼ばれたりもする、混同されがちなムカデと違って毒もないし見た目以外に大した害のない虫の姿を模した侵略者が森林地帯に出現した。そしてまもなくその暴挙を止めるための力もそこに到着した。


「出たなグラゲ軍。お前達の思い通りにはさせないぞ」


「懲りずに出てくるけど、そろそろ諦めたらどう?」


「愚か者の登場か。死んでもらうぞエメラルド・アイズ。行け、雜兵ども!」


 冷徹な指示とともにわらわらと湧き出てきた殺戮マシーンを、二人は情熱込めて次々と撃破していった。


「よしこれで雜兵は尽きた。後はお前だけだオビババヤスデ男」


「お互いの領域をあえて侵すような事をしなければこの戦いもしなくて済んだのに」


「だが出会ったからには戦うしかない」


 オビババヤスデ男はそう言い放つと、懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。やはり戦うしかないようだ。今は。二人は覚悟を決めると、合体して偉大なる力を手にした。


「ヴィクター!!」

「エメラルディア!!」


 空を覆うどんよりとした黒雲のお陰で、今まさに行われている血で血を洗う激戦は隠されている。しかしそれがイランとイスラエルに並ぶ世界の現実なのだ。そして悠宇は敵の攻撃を回避しながら接近すると、死角から一撃を打ち込んだ。


「よし今とよみお君!」


「分かったよゆうちゃん。ここはウェービングシザーズで勝負だ!」


 僅かな隙を逃さず、渡海雄は灰色のボタンを叩いた。背中に取り付けられた巨大なハサミで、カッターのようにまっすぐ敵の体を切り裂いた。


「うおおおやってくれる!」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置で、オビババヤスデ男は宇宙の彼方へと帰っていった。世界平和を願えども現実はままならないものだ。それでも未来のために今を生きる心だけは失くしたくないと祈る二人であった。

今回のまとめ

・ほらね交流戦は五割で行ければいいことあるって

・数字上は打撃のチームみたいになってるけど実感はあまりない

・サンフレッチェのフロントみたいに素早く積極的に動こう

・中村拓人はもっと綺麗な別れ方は出来なかったかと残念

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ