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rm58 怪我人復帰による勢力回復について

 雨が訪れて、そしてますます春は夏へと近づいていく。渡海雄と悠宇はますます薄くなりゆく衣を身に纏い、いつもの道を通って学校へと向かっていたい。


「それにしてもカープの打線が去年と違ってそれなりに勢いがあるからありがたいものよ」


「去年は弱すぎたものね。二人雇った外国人はろくに仕事をしないまま消えていったし」


「役に立たなかったと判明してからも言い訳だけ積み重ねて何も動かなかった怠慢、当時からげんなりしていたけど今思い返してみてもまさしく犯罪級の行為だったと腸が煮えくり返るわ。今年の二人がいれば、いえ、どちらか一人いただけで少なくともBクラスまで落ちる事はなかったはずだから」


「というわけで今年の外国人野手は大分違うね。特に目下首位打者争いを繰り広げているファビアンの好調ぶりは目を見張る物がある」


「ここまでは中距離砲として期待された通りの、いえそれ以上の力を見せつけているわね。積極的な打撃で五月以降はヒットを量産。ホームランも十五本ぐらい行けそうなペースで長打力も十分。三番打者として欠かせない打線のピースとなっている。守備も頑張ってるしね。そしてモンテロだけど、こっちはまだ怪我から復帰したばかりなのでもう少し見守る必要がありそう。でも現時点ではある程度ボールを見て四球を選べそうとか、守備も悪くなさそうとか割とポジティブな面を発見するのは容易い。初アーチも放ったし評判通りパワーは間違いなさそうだしね」


「早々とヒーローインタビューに呼ばれてるあたり、勝負強さもあるのかな」


「まあ少なくとも離脱時に出ていた堂林や本職じゃない二俣よりはプラスになるのは確実だから、怪我に気をつけて日本の野球にいち早く慣れてほしいわ。幸い同郷かつ同年代のファビアンもいるんだから、二人がしっかり協力してともに伸びていってくれれば最高。打順は今のところ下位で楽に打たせてるけど、最終的にはどうなるかな。開幕当初の四番もいいけど、末包が勝負強さを見せてるからね。恐怖の下位打線的な存在感のままで行くかも知れない」


「打順で言うと今のクリーンナップは三番ファビアン四番末包五番坂倉という流れになってるね」


「坂倉も怪我で離脱していたけど、復帰後早速打撃で別格な部分を見せつけているから見事なものよ。今は六番にいる小園は一時期の好調こそ落ち着いたけど、ゴールデンウィークの最中いきなりスタメンを外す荒療治の甲斐があったか最悪な状態は脱したみたいだし、ここから一層の活躍を期待したい」


「そして上位だと、一番打者として中村奨成が想像以上の活躍を見せてくれたね」


「そこは本当にそうよね。秋山離脱に伴うセンターの穴をどう埋めるかという問題に関して、キャッチャーやファーストと違って復帰までの期間をハイクオリティな内容で繋いでくれた選手が出たのはある意味最大のサプライズだったわ。力のある打球を飛ばせるようになって、割と走塁もいける。センター守備もまあまあ、盗塁はちょっとうまくないかなってところで、これを通年やれればどこのチームでもレギュラー確実というパフォーマンスを見せてくれた。一方で復帰した秋山がスタメンに並ぶやいきなり先頭打者ホームラン含む猛打賞とベテラン健在を強烈にアピールしたものさすが」


「やはり実力があるよね」


「とはいえ年齢的にはいつまでセンターをやれるか分からない。それは本人も分かっている部分なので今まで培ってきた技術や経験を若手に伝えたりもしてるみたい。でも無条件でポジションを譲るつもりはさらさらない、自分を超えてみせよという壁にもなるまさしくベテランの鑑か。中村奨成が今のチームにおける次のセンター有力候補の一人にまで躍り出たのは事実だけど、禅譲が決定したわけでもない。今シーズンここからよ、本当に大事なのは。『一瞬良かったね』で終わらぬようもっともっとアピールしなきゃね。野間もいるし」


「頑張ってほしいよね。そして二番菊池も最近よく打ってる。一方で矢野はいくらあの守備力があるとしてもちょっと考えちゃうよなって打撃成績に」


「一割台はさすがにね。でもやっぱりあの守備力はプラスがあまりにも大きいから外すという選択肢は取りにくい。まあ八番に置くならあの程度でもいいんじゃないのって思いはあるけど。幸い普通打撃に期待出来ないキャッチャーに坂倉がいるんだし。ただカット打法で球数を稼ぐのも悪くはないけど、やっぱり前へ強い打球を飛ばそうという意識を持って挑んだほうが結果的には打撃でもプラスになるんじゃないかな。強い打球を打つって方向性はずっとある中で、そこを貫徹するのは腕力ではなく心のパワーよ」


「去年は二割六分まで上げたし、決して打てない選手ではないはずだもんね」


「そこは上がり目と見ましょう。それに控えだと内野守備固めに山足、内外野こなす二俣、代走外野守備固めに大盛、代走羽月といったところか。一時期はよく打ってたけど沈静化してきた田村は二軍に落ちたけど、つまりまだ下で鍛える部分があると露呈したまでの事だから進歩してくれれば良いわ。逆に上で通用した部分もあったんだから、彼もまたこれからの選手よ。内心だと二俣も今のうちに一旦落として実力向上させるのはありかなって考えも浮かんだりしている。そして今二軍で一番熱い男がルーキー佐々木泰。怪我から復帰後いきなり打棒爆発し現在打率五割突破と炎のアピール真っ最中」


「すごっ! 今すぐにでも使えるでしょ」


「それで今入った情報だけど、一軍昇格が決まったみたい。まあこれを無視する手はないもんね。最初は代打要員なのかな。現時点で今すぐポジションを掴むとは断言しないけど、少なくとも近い将来にはそうなるだけの才能を持った選手なのは明らかなので、そこは非常にポジティブに考えているわ。壁に弾かれるかも知れないけど、まずは全力でぶつからない事には始まらないものね。今や交流戦も近づいているから指名打者として使うって手もあるし。そこの人選も楽しみよね。交流戦はまず五割って話は毎年の事だけどまた言うわ。頑張ってね」


「やっぱり打線が好調だと気持ちも多少は明るくなるよね。去年はずっとギリギリの戦いを強いられて最後に力尽きた感じだけど、この勢いが続くなら投手陣も楽だろうから」


「投手陣は今年も引き続き頑張っている。森下床田大瀬良はさすがの安定感で、森やドミンゲスはもう少しイニング数を稼げたらなお良いとは思うけどとりあえずは及第点。玉村は内容の割に防御率が悪いように思えるけど、どこまで改善出来るか」


「それと高橋昂也が突然先発で使われたよね」


「何で高橋って思ったけど想像以上に仕事したからいいか。実際先発の次点として待機しているのはアドゥワかと思うわ。日高常廣あたりがもっとアピールしてくれればいいんだけどな。色々考えると先発タイプの新外国人を補強しれくれればありがたいけど。ドミンゲスも実際はリリーフタイプなんじゃないかって疑念あるし」


「動いてると信じたいけど、去年の動きを思うとどうにもねえ。そういえばトレードでいい感じの選手が取れる可能性ってあるのかな」


「そもそもトレードで計算出来る先発が漏れるとはあんまり思えないけど、現時点では戦力として厳しいかって選手が環境の変化やちょっとした指導で開花する可能性はないでもないから、とにかくあらゆる可能性を排除せず見極めてほしいとは願うわ。次にリリーフだけど、勝ちパターンを担う栗林やハーンが炎上したため印象は悪いけど内実はそこまでまずいと思えない。森浦島内塹江、そして例年以上に調子が良い中崎と安定した駒は揃っている。岡本や鈴木健矢も勝ち星を得て、意外と隙がない。長谷部遠藤大道益田など二軍で抑えてる選手も多いし、引き続きシビアでハイレベルな争いが続くものと思われるわ」


「そういう今二軍にいる選手がプラスを作ってくれると一番いいけど、誰になるかな。それと斉藤も一軍登板を果たしたよね」


「これもじっくり育ちつつあるみたいでありがたいわ。最終的には先発かリリーフか。今シーズンだけでなく数年後を見据えての動きとなるでしょうね。そして今の順位だけど、とは言えまだ序盤に過ぎないので首位だから二位だからとかそういう細かい部分を気にする必要はないか。他球団も好調だったり怪我人が出たりそれぞれの事情がある中で、まずは上位に食い込み続けられるか」


「怪我人で言うとヤクルトが大変だよね」


「巨人も不動の四番だった岡本長期離脱は厳しいけど、即座にソフトバンクから五年連続二軍のホームラン王という前代未聞の実績を持つリチャードを獲得した動きの早さは見習いたいところよね。カープもトレードしないかな、みたいなところでこの話は切り上げるとして、一方でサンフレッチェはそろそろシーズンの半分に近づいている」


「思った以上に早いものだね。一時期は連敗してどうするんだと思ってたけど、その最悪状態からは持ち直しつつある」


「まだ内容が抜群ってほどでもないけど、それでも辛うじてでも、勝ち点を積み重ねられているのは幸いよ。怪我人もちらほらと戻りつつあるし。それで復帰直後のジェルマンが早速ゴールを決めた。アルスランや中島もそろそろみたい。特に昨年後半戦の得点源だったアルスランの復帰は絶対的に望まれるところで、その時こそが本番となるはずよ。マルコス・ジュニオールも復帰間近らしいけど……」


「稼働期間短すぎだけど動けばいい選手だし、とにかく期待したいよね。その頃にはジャーメインの負担が減るとかしてもっとゴール決められるようになってるといいよね」


「現状得点力が気絶するほど低いけど、その原因たるジャーメインや加藤とてよく頑張ってはいるんだしこういうのもきっかけだと信じたいものよ。今のところ順位は五位で、上位には鹿島柏京都浦和といる。この中で最も勢いを見せているのが首位の鹿島。近年は上位には進出するもタイトルが遠い微妙な時期が続いていたけど、ここまでは立派なものよ。一方下位で注目はマリノス。はっきり言って相当やばい」


「単純に勝ち点を見ただけでもブービーのチームにすら離されてるし降格圏脱出となると、相当な大逆襲が求められるね」


「しかし現状は結果だけでなく内容も悪い。すでに監督交代も行ったけど浮上の気配なく、もはやシーズン途中補強に全てを賭けるしかないか。日産時代の七十九年に昇格し、最下位は強制降格となった翌八十年に落ちたけど一年で復帰した。それを最後に長らく最高峰リーグで戦い続けたチームがいよいよ本格的な危機に瀕している。最終的にどうなるかはまだ分からないけど、ここから残留を決めたら奇跡と呼ばれても不思議じゃないところまですでに来ている。後半戦の注目どころよ。そして大相撲、これは行くかな大の里横綱昇進。そう思わせる圧倒的な勝ち方をしている。いやまだ半分で上位と当たるここからが本番なんだけどね」


「横綱が複数になるとすれば随分久しぶりだもんね。結局照ノ富士はずっと一人横綱のまま引退してしまったから」


「それはそれでおかしい時期が続いてたんだけど。本質的には横綱となるべき存在だと思うから、さくっと決めてほしいものよ」


 このような事を語っていると敵襲を告げる合図が光り輝いたので、二人は周りに人がいないところに隠れると変身して敵が出現したポイントまで急いだ。


挿絵(By みてみん)


「フハハハハハハ、俺はグラゲ軍攻撃部隊のゴイサギ男だ。この惑星を正しく導いてやろう」


 青みがかった黒色と灰色、それに白の羽毛に覆われた姿はちょっとペンギンっぽい、その名前は平家物語が由来とも言われる鳥の姿を模した侵略者が河川敷に出現した。しかしその暴虐を止めるための力もまたすぐさま到着した。


「出たなグラゲ軍。お前達の思い通りにはさせないぞ」


「清々しい空気を血で汚すのはあまり良くないから程々にしてほしいんだけど」


「ほほうこれが噂に名高いエメラルド・アイズか。俺の手柄としてくれるわ。行け、雑兵ども」


 ゴイサギ男の指示にただ従うだけの殺戮機械を、二人は情熱込めて次々と撃破していった。そして残る敵は一人だけとなった。


「よしこれで雜兵は尽きた。後はお前だけだゴイサギ男」


「一方的に飛んできて身勝手な理屈ばかり押し付けても同意されるはずがないでしょう」


「愚か者に道理を説くのは時間の無駄なので、ならば殺すしかあるまい」


 ゴイサギ男はそう言い放つと、懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。やはり戦うしかないようだ。そう悟った二人は心を重ねて、一人だけではとても得られないほどの莫大なパワーを手にした


「ヴィクター!!」

「エメラルディア!!」


 晩春の空の光を全身に受けた二つの巨体が、その光が放たれるほうへと近づいて行われた一大決戦を知る者は決して多くない。しかしそれは今ここで行われているのだ。そして悠宇は持ち前の反射神経を駆使して敵の攻撃を回避しつつ接近すると、カウンターを決めた。


「よりいまよとみお君!」


「分かったよゆうちゃん! ここはレインボービームで勝負だ」


 一瞬だけ生まれた隙を逃さず、渡海雄は白いボタンを叩いた。胸から放たれる七本のカラフルなビームが次々と敵を貫いた。


「うぬぬ、ここまでか。撤退する」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によって、ゴイサギ男は宇宙の彼方へと帰っていった。訪れようとする夏を笑顔で迎えられそうだと二人は思いながら、夕暮れを歩いた。


 それにしても今回の農水相の発言は許し難い。元々評判の悪い人間だったが、まさかここまでとは。さすがに脳が狂いそうになった。なるほどここまで無能無神経無責任な男がトップにいては米価高騰も必然の帰結か。仮に現代日本で打ちこわしが発生した場合、その第一ターゲットは決まったようなものだ。いや実際そうなっても誰からも同情されないだろうが、あくまでも民主的に裁きたいものだ。有権者は最後の最後まで理性を保って、こういう傲慢と戦わねばならない。

今回のまとめ

・打線が去年より明確に向上したのでより明るい気持ちで見られる

・投手陣は十分健闘しているがもう少し起爆剤が入れば喜ばしい

・サンフレッチェは怪我人復帰で得点力が上がればいいのだが

・江藤拓という名前とその所業だけは当分覚えておかねばなるまい

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