rm49 交流戦ぴったり五割突破について
梅雨前線が仕事をするよりも早く太陽の力が大いに活性化してしまい、先週末などはすでにうだるような暑さが街に降り注いだ。でも本当の真夏になるとさらに気温が五度以上も高まるのだから、今のうちから脅威に思う渡海雄と悠宇であった。
「そうやって勝手に気温のボルテージが上がっていくのはもう勝手にやってろって話として、今年の交流戦はいつになく好調だったね!」
「とは言っても所詮は五割だけど、実際ここ五年はそれすら遥かに遠かったからね。佐々岡監督時代なんか大体負けてばっかりだったものが勝ったり負けたりするんだから、体感的には勝ちまくってる印象さえ抱いたわ」
「特に前半戦は一つ勝つたびに五年ぶりの勝利! とか六年ぶりの何とか! みたいなそういうおぞましい記録が次々と塗り替えられてて呆れ果てたよ」
「まあここ二年などは大体交流戦の時期あたりにコロナのクラスターが発生して主力大量欠場とか、そもそも戦う以前の問題だったケースも多いから単純に比較は出来ない部分もあるけど、それでもやっぱり酷すぎたわね」
「というわけで戦績だけど、まず最初にオリックスとソフトバンクと当たった。これに一つ勝つだけで早くも記録だったね」
「根本的にプロ野球はある程度実力に差があろうと三回に一回は勝てる程度のバランスに収まるもの。それがああいう風に数年単位で負け続けていた。理由を真面目に考えると八百長かスコアラー不足に伴うデータ活用の放棄ぐらいしか見当たらず、さすがに前者だと信じたくはないから多分後者だろうとは推察するけど、とにかくたった一つの勝利すらろくに得られずにいたゴミのような時代は今年限りで終わったので、来年からはさっさと勝ち越してほしいものよね」
「これで借金二スタートも、次の日本ハムにいきなり三連勝して挽回した」
「日本ハムは新球場元年って事もあってかなり若いチームという印象を受けたわ。その辺がうまく噛み合えば勢いは出るけど常に安定した力を出せるほどではない、ミスも多い。カープ戦はその悪い部分が出ちゃったのかな。今年好調だった清宮もいなかったし」
「あの三連戦においてはカープの守備が光っていたよね」
「第二戦一点差九回裏ツーアウトでの難しいゴロを巧みに捌いた矢野とよくぞキャッチしたという韮澤の、あの一連のプレーなんかは本当によくやったと思うわ。セーフだったらランナーが帰って延長戦突入だったわけだし。その辺でエスコンフィールドは日本ハムにとってはまだ馴染み切っていない新たな環境だけど、元々内野が総天然芝の球場を本拠地にしていたカープのほうにむしろアドバンテージがあったという説が流れていて、なるほどなと思ったわ」
「この三連勝で一気に借金返済してようやく待望の貯金、と思ったらいきなり交流戦首位タイとか言い出してびっくりしたよ」
「例年独自の戦いを繰り広げていた事もあって順位は気にしてなかっただけになおさらね。ちょうど折り返し時点にして五勝四敗が六球団はかなりの接戦よ。まあ毎年大負けしてきたカープがまともになったのがその一因でもあるんでしょうけど」
「胸を張れる状況でもないけど、とりあえずはカープの勝利が増えたならそれでいいか。それにしても日本ハムの新球場、綺麗だったよね」
「北海道だから簡単に行けるものではないけど、あのスタジアム以外も含めた壮大な構想が実現して北海道の新しいシンボルになるぐらい光り輝き続けていけば素敵だなと思うわ。。それで言うと広島にもサンフレッチェの本拠地となる新サッカースタジアムが着実に完成に近づきつつあるけど、あんまり話を逸したくないので今は割愛。でもああいう巨大な建造物が作られるのってワクワクするからね。これからも変わり続ける街であってほしいわ」
「それから次はロッテ戦と楽天戦もまた一勝二敗だった。なんか今年はこういうリズムが多いよね。三連戦負け越してジリジリ後退しつつあるところで三連勝してリカバリー」
「この辺もやりようによってはもうちょっと勝てたんじゃないかなというもったいなさは正直あるけど、とりあえずは一つ勝てたので良しとしましょう。六点差をひっくり返したと思ったらリリーフ陣が炎上してすぐさまひっくり返された楽天の三戦目とかね」
「ただいよいよリリーフ陣も疲れてきたのかな。暑くなってきたし」
「その中でここまでタフに投げまくってくれていたターリー登録抹消とか不穏な話題は尽きない。一応リフレッシュのためって話だけど、それで先に二軍に行ったケムナは未だに帰ってこないし、言葉を額面通りに受け取るのは難しいわ。矢崎とか島内も怪しいピッチングが増えてきた。そして栗林は……、本来彼の奮闘なくしてリリーフ陣の安定はないから信じたい気持ちは分かるけどねえ」
「ここまで六敗に防御率七点台はさすがに使うほうが悪いんじゃないかな」
「接戦で使うのは怖いけど今更敗戦処理させて得るものがある選手でもないし、それなら適当な若手を引き上げたほうがまだまし。そう言えば栗林の背番号二十の大先輩でもある北別府学氏が亡くなられたわね。しかも中日の大エース杉下茂も同日に訃報が伝えられて、それぞれの球団史上におけるエースの筆頭格がこうして去っていったのは悲しい話だったわ」
「ご冥福をお祈りいたします」
「ともあれ投手陣に関しては先発陣がよく頑張ってくれている。床田九里森下と誰か勝てるから大型連敗にならないのはありがたい。大瀬良はもう格こそ上だけど実力は三番手四番手クラスで、でも彼ぐらいの選手をそこに置けるぐらい先発のクオリティが高まったのはそれはそれでありがたい話よ」
「そしてこの四人以外となると、アンダーソンはそこそこ頑張ってたけどこれも離脱して、コルニエルもまだまだって事で後は若手を適宜挟みつつローテーションを維持って感じになってるよね」
「ロッテ戦で佐々木朗希に対するは黒原とか、戦う前から結果が見えているような絶望感があったけど、いざやってみると黒原は概ね想定内だったにせよ意外と打線が食らいついて終わってみると一点差で敗れた。いや結局負けたのは同じだけど、そういうちょっとした粘りを見せてくれるとやっぱり嬉しくなるじゃない。ゼロで抑えられるよりせめて一点、一点が入ったら次の二点目を……、と貪欲な粘りのムードを積み重ねていけばシーズン全体の成績も変わってくるはず」
「新井監督はそういうモチベーションを高める役割に関してはしっかりしてそうだしね。ミスに対しても頭ごなしに激怒するのではなく、少なくともファンの目に入る範囲では寛容な態度を崩さないでいる姿勢が顕著だし」
「萎縮させるのではなく伸び伸びとやらせるとか、明るい雰囲気を醸し出すのは今らしい指揮官の姿ではあるわね。正直戦力的には十分とは言えないんだけど。特に長距離砲は全く不足している。マクブルームも離脱するし、デビッドソンは守備はいいんだけどもうちょっと打てるようにならないとね。林は打撃が未完成なのは仕方ないとして守備が危うすぎる。それで最近二軍から昇格してきた末包が今いいバッティングを見せてくれているけど、これもいつまで続くか。まあ最後まで続くのを願うよりも、彼のような一時的な加速装置を今後どれだけ用意出来るかよ」
「そういう候補となると、誰かな? 宇草とか中村健人の二軍成績を見てがっかりしたけど」
「でも末包もちょっと前まではまずい数字だったものが一気に上げて今があるし、まだまだこれからよ。そして浮上の本命は小園と言いたいけど、割とショートはどうにかなってるのよね。矢野は守備はいいけど打撃が物足りず、すでに三十歳を超えた田中や上本にもあまり無理はさせられないからやっぱり大局的には小園必須ではあるけど、今すぐ上げるしかないという切羽詰まった状況ではないから、多少時間をかけても新しい盤石な何かを築いてから昇格でも決して遅くはない。彼に求められているのは復活ではなく進化だから」
「そこは期待したいよね。そして最終節では西武に連勝して勝率五割以上を早々と確定させた」
「西武は今一番調子の悪い球団じゃないかしら。特に打線はざっとスタメンに並ぶ選手の名前と数字を見ただけでも苦労が滲み出ている。この話はあんまり触れたくないから今まで言わずにいたけど、主砲がいなくなった件もあるし、戦力的にもモチベーション的にもマイナスは計り知れないわね」
「同じ名字を持つ同士としては甚だ残念だよ」
「そうよねえ。ともあれいつもよりちょっと楽しかった交流戦もこれでお開き。ここから元の戦いに戻るけど、首位阪神はやや伸び悩んで、それを交流戦を優位に進めたDeNAと巨人が追撃し、カープもどうにかそれに食い下がっているという状況。それでも阪神が一応優位だけど、これぐらいなら全然逆転の範囲内だからしばらくは優勝争いを楽しめそう。一方ヤクルトと中日は離されすぎかな。交流戦でも借金を増やして数字で言うともはや阪神カープ間よりカープヤクルト間のほうが広いわけだし、Aクラス争いには相当な覚醒がないと厳しい」
「カープは幸い今後の上位争いへの参加権は得られたけど、言うまでもなく本番はこれからの戦いにあるから頑張ってほしいよね。それとサンフレッチェ、概ねシーズンの半分を終えて五位という成績はどうかな」
「とりあえずこれぐらいはやれるだろうってラインはクリアしてるけど、優勝となるとフィニッシャー不足がちょっと厳しいかな。弱いチーム相手ならそれでもどうにか点を取れるけど、水準以上の相手だとそこで苦労している。去年優勝したルヴァンカップも敗退するし。それと川村が日本代表から体調不良で離脱ってのも嫌なニュースよ。ただでさえ満田が潰されたというのに」
「本当に残念だよねえ。しかしエルサルバドル戦はちょっと見たけど相手が即退場じゃさすがにどうでも良くなったよ」
「日本代表の試合だから何でもかんでも見るのではなく重要な試合は注目を集めるしそうでもない試合はそうでもない。それもまた自然の摂理よ」
「ところでサンフレッチェはこの苦境にどう対処すべきかな」
「今すぐってなると補強しかないのかな。ただ金銭的余裕はまたなくなってるみたいだから今年はここらで勘弁して新スタジアム……、いえ、ついこの間正式名称が決まったからそっちで言いましょう。エディオンピースウイング広島。ここに移転してからが本番みたいな発想もありかもね」
「ううん、しかし名前が決まるとやっぱりビシッとしてくるよね」
「工事の様子を見てもあの特徴的な屋根が徐々に形作られてていよいよ姿を表したって感じだしね。しかしどう呼べばいいのかしらね。ビシッとした格好良い略称があればいいんだけど」
「エディオンピースウイングだから……、エピウ? エースグ? オンピー?」
「……まあ実装していくうちに自然とそういう部分も定まっていくでしょうし、今から心配するまでもないかな。ともあれ新スタジアムは来年には完成する。サンフレッチェのサッカーは待っているだけでは完成しない。今の壁をどう乗り越えるか、期待していきたいわね。あと少し前の話だけど霧馬山が大関昇進して霧島になったわね」
「モンゴル出身者がガッツリ鹿児島的ネームになるのも味わい深いものがあるね」
「先場所は照ノ富士が貫禄を見せたけど、今の三役付近には大関候補がひしめいている。その中から霧島がまず抜け出したのは意外でありつつ見事でもあり、これで特に同じモンゴル出身で先んじていたはずが追い抜かれた形となる豊昇龍辺りは平気ではいられないでしょうね。若隆景と若元春の兄弟も割とそういう図式かな。落合改伯桜鵬など勢いよく進撃する若手も多いし、しばらくは出世レースを楽しめそう」
このような事を語っていると敵襲を告げる合図が光り輝いたので、二人は姿を潜めてから返信し、敵が出現したポイントへと走った。
「フハハハハハ、俺はグラゲ軍攻撃部隊のチリーフラミンゴ男だ。この汚れた大地を正常に戻してやらねば」
名前の由来ともなっているチリを始めとする南米の南部に生息する、への字状の嘴と薄いピンク色の羽毛が印象的な足の長い鳥の姿を模した侵略者が山中に出現した。彼らの危険な企みをいち早く察知した地球はその意志である二人の情熱的な人間をすぐに向かわせた。
「出たなグラゲ軍。お前たちの思い通りにはさせないぞ」
「これから暑くなる季節だけど、あまり勝手な真似はさせないわ」
「おお、これが噂に名高い反逆者か。いざ勝負。行け雑兵ども! 奴らを殺せ!」
チリーフラミンゴ男の無情な指令にただ従うだけの機械人形達を、二人は次々と破壊していった。そして残る敵は一人となった。
「これで雑兵は尽きたな。後はお前だけだチリーフラミンゴ男」
「今ならまだ間に合うから早く故郷へ帰りなさい」
「まだ間に合うか……。確かにその通りだな。貴様らを殺すにはこの俺だけで良いのだからな!」
チリーフラミンゴ男はそう言い放つと懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。結局今は戦う以外に道はないようだ。二人は覚悟を決めると合体して、目の前の暴力に対抗する力を手にした。
「ヴィクター!!」
「エメラルディア!!」
梅雨の合間の強い陽光に照らされた機械仕掛けの巨像二体が、空の上で大激突した。翼で打ち付けてくる敵の攻撃を悠宇が持ち前の反射神経を駆使して回避すると、その勢いのままカウンターを食らわせて一瞬だけ動きを止めた。二人にとってはそれだけで十分であった。
「よし、今よとみお君!」
「分かったよゆうちゃん。ここはサターンミサイルで決める!」
僅かな隙を見逃さず、渡海雄は橙色のボタンを押した。脚部に満載されていた土星のような形をしたミサイルが敵を取り囲んだかと思うと、一気に炸裂した。
「うおおお!! 長らく反抗を続けているだけあって力はさすがだな」
機体が爆散する寸前に作動した脱出装置に乗せられて、チリーフラミンゴ男は宇宙の彼方へと帰っていった。
それで今は日本代表のペルー戦を見ているが、ホームとは言えこれぐらいの相手にこれぐらいの内容で戦えるんだからまったくもって強いものだ。やはりまぐれではドイツスペインに勝てるはずもないし、まずはこのペースでいけば大丈夫だろう。
今回のまとめ
・やっぱりやれば出来るじゃないかなぜここ五年やらなかった
・投打に新戦力の台頭なくしてここから先は戦えまい
・サンフレッチェは壁が目の前に立ちはだかっている感覚だ
・霧島というどっしりした名を貰ってより盤石な存在になれるか期待