ng20 2023新春記念 森保監督続投について
そしていよいよ始まった新たなる一年。今年は一体どんな年になっていくのだろうか。期待と不安に胸を膨らませた渡海雄と悠宇は、今年もまた変わらず仲良しの二人であった。
「あけましておめでとうございます」
「去年も色々あったけど、こうして今また近所の神社で新年を迎えられた。しかも健康な体で。それが何よりの幸いよ」
「去年は本当に色々あったもんね。コロナは未だに収まらず、むしろ勢いを増している。国内では元首相が暗殺。海外に目を向けてもその元首相と同じ未来を見ているロシアがウクライナ侵攻して、これもいつ終わるかまるで見通しが立たない」
「今年はほんの少し、一歩だけでもいいからこういう問題が良い方へと向かうといいんだけどね。WBCもラグビーワールドカップもあるし国際協調大事。ところでカープも今年から新井監督が就任して心機一転といきたいものだけど」
「実際のところ手腕はどうなんだろうね」
「それはこれから詳らかになっていくでしょうけど、人事の点では藤井彰人をヘッドコーチに招聘するなど新しいものを見せている。石原は言うまでもないとして福地も離れて久しいものの元カープの選手なのでタイミングによって招聘はあったはず。でもこの藤井と広島出身とは言え監督の弟という血縁が最大のポイントであろう新井良太は新井監督じゃないとまず来ていなかった人物なので、それが新風になれば。とは言え基本的に新人監督が前年より成績を落とすのは前提みたいなものなので、おおらかに見守っていきたいと考えているわ」
「でも去年以下ってなるとそれ最下位じゃない?」
「実際そうなっても不思議ではないでしょ。でも仮にそうなったとてすなわち新井監督が不適任とは一概に言えない。ヤクルトの高津は一年目最下位から連覇、DeNAの三浦も二位に浮上させた。もはや監督も育成の時代であり、カープだって野村緒方とそれを実行してきた」
「それで言うと佐々岡監督はあんまり成長しなかったね」
「采配に関しては試みた時点ではそこまで問題ないように見えても結果的には裏目に出るパターンが多くて、コロナの蔓延も含めて運がなかったのは間違いない。ベテランを重用したのも彼らのいい時期を知っているからでしょうし、でも時とともに力が衰える一方の選手を使ったところであれが関の山だから新井監督は思い切った起用も求められてくるはず」
「そういう意味ではいよいよ三連覇時代からの決別が見られるかもね」
「例えば投手陣だと当時からの主力で引き続き計算出来そう、あるいはやってくれないと困るのは大瀬良九里ぐらいだし、実質としてはとっくに過去の話なんだけどね。それで投手陣、まず先発だけど、一見有力な選手が揃っているようでその内実は薄氷を踏むようなものとなっている。上記の二人は成績を落としており、実際衰えても不思議ではない年齢に到達している」
「特に後半戦の大瀬良はかなりまずかったよね」
「まだ力は残っているはずなので、巻き返してほしいものよね。そして本来去年の時点で開幕投手を任されて然るべきだった実質エース森下は肘に問題を抱えており、状態によってはシーズンにも影響を及ぼしかねない。床田も怪我の回復具合が気にかかる」
「それでもこの四人が稼働すると仮定して、五番手六番手は遠藤とアンダーソンが基本線になるのかな」
「とりあえずはそうでしょうね。それにシーズン終盤登板機会を得た二年目の森や先発転向するというコルニエルがどれだけ絡めるか。後は玉村小林高橋昂也などの中から誰か台頭すれば……。ううむ、この布陣で楽観視するのは現状難しいわね。高橋なんて去年一軍登板ゼロだし、年齢的にももう若手とか言ってられないわ。大道は先発でいいのかよく分からない」
「後は野村とかも?」
「成績見るとここ五年はずっと防御率四点台以上で、とてもじゃないけど計算出来ないわ。今年もこの調子だと引退すらあるんじゃないかしら。トミー・ジョン手術から復帰する岡田はどの程度まで戻せるかとかもあるけどまずは二軍戦を見てからよね」
「こう見ると先発は誰かが急に伸びるようなマジックがないと大変そうだね。リリーフはどうだろう」
「とりあえず抑えは栗林として、そこまで繋ぐにはどうするかってのは引き続き課題よね。それで去年の最初はセットアッパー中崎なんて狂気じみた構想もあったけど必然の帰結として失敗、最終的に矢崎や森浦が頑張ったけど今年もやれるかと問われると胸を張ってイエスとは言えないわね」
「悪くはないけど良くもない程度で、残留は微妙かと思ってたけど残ったターリーが去年以上に働いてくれればいいんだけど」
「先発陣の状況によってはアンダーソンを後ろに回すってありかな。後は島内。あれは一体何をやっているのか。本来はこの男こそがセットアッパーを務めるべきだったのに。ケムナ塹江藤井松本らがここから三段階ぐらいパワーアップでもすれば、とか投げやりな事を言ってみる」
「やはり九回まで繋ぐ方法をどう見つけるかが大変そうだね。現役ドラフトで獲得した戸根は?」
「便利使い出来れば御の字だし、本人が口走った通り投げダルマになってもらいましょう。それと益田河野長谷部という社会人ルーキートリオがプロでどれだけのものを見せられるか。特に河野は、ゆくゆくは先発とかの含みまで期待しているわ」
「そういえば河野はドラフトの後に入団拒否かみたいな報道があったけど普通に入ってくれたよね」
「あれは今年自身の調子も上がらず当初の予測よりも低い順位で指名されたという悔しさが大会に負けた事で増幅されてネガティブになった時に、ある種の誘導尋問か切り抜きをなされたものであろうと見ているわ。本気で拒否する選手はもっと頭ごなしに拒否以外ありえないって言い方をするものだけど河野は可能性もあるって程度だったし、針小棒大に取り上げすぎだと最初から思っていたわ。とりあえず投手陣はこんなものかな。キャッチャーはとりあえず坂倉が一番手でしょ」
「去年はサードメインだったけど今年は戻すって話だよね」
「サードは確かに穴だったけど、去年の會澤の成績じゃキャッチャーも穴みたいなものだったし世代交代もやむなし。とは言え今時キャッチャーをフル出場させる球団は少ないし、會澤にもまだまだ使い道はある。三番手は磯村、その次を中村奨成や石原が担いその他若手はほぼ二軍でしょうね」
「中村奨成は年齢的にもそろそろ上でやれないとまずいのにつまらない事で名を売ったのが歯がゆいよね」
「センスはある。でもそれを活かすためには心身を鍛えないとね。すでにファンの心は離れつつある中で私はまだ呑気にも期待しているけど、それでも主力に成長するには今年が一つの目処となるのは確か。こうなったらもう野球しかない、はずなんだけどね」
「次に内野陣だけど、去年は概ねファーストマクブルーム、セカンド菊池、サード坂倉、ショート小園だった」
「その中から坂倉は本来のポジションに戻って、後釜として獲得したのが新外国人のマット・デビッドソン。メジャーリーグでは低打率ながらもシーズン二十六ホームランを放った経験を持つ右打の大砲よ。とりあえず打率は二割五分程度でいいからホームラン三十本打てれば最高だけど」
「マクブルーム以上にパワー重視なのかな。駄目だとクロンみたいな」
「あれは外国人野手が実質一人だけって環境もどうかと思うし、マクブルームと連携して補い合えれば。ここが駄目だと一気に怪しくなるからね。林は去年出番ゼロだったし、昨シーズン終了後に支配下登録された二俣も未知数。他のポジションから上本矢野田中広輔らを回すにしても一時しのぎでしかない。そういえば田中広輔の大減俸にはびっくりしたわ。確かに成績は悲惨だけど、それでも中崎や無償トレードで巨人復帰した長野みたいにちまちま削るのがカープのスタンスかと思ってたら随分思い切っちゃって」
「ただ去年小園が絶不調だった時期も使い続けて、逆に言うとそれほど信頼を落としたのかと悟る部分はあったよね」
「今年三十四歳になる。老け込む年齢ではないと言いたいけど、これぐらいの年齢で力尽きる選手も普通にいるから難しいところ。それで最後に外野陣だけど、基本的には西川秋山野間になるのかな」
「全員左打者なのが気になるよね」
「そういう意味でも右の大砲タイプとして末包あたりが出てくればいいんだけどね。肩もいいし、野間あたりを控えに置けるならそれが一番。同じ右だと中村健人も去年実戦でいいものを見せた。堂林も実質こっちかな。久保名原ら下位や育成のルーキーも台頭してくれるならそれに越した事はないわ」
「こう見ると現有戦力はある程度決まっているけど爆発力に欠けているのかな」
「上位を狙うならこれでも十分だけど、優勝を狙うなら予想以上の活躍を見せる選手が出てこないとね。去年のサンフレッチェみたいにいくといいけど」
「サンフレッチェは躍進したよね。ルーキー満田、期限付き移籍から復帰の野津田川村らがあそこまでやれるとは思わなかった」
「ルヴァンカップも獲ったしね。天皇杯なんて知らない。それで今年の戦力だけど、まず加入は大卒の中野と山崎。ともにDFの選手で、ここはスタメンに定評ある選手が揃っている中でどれだけアピール出来るか。ユースから昇格の越道もどの程度のものか。また松本大弥も復帰。そして移籍選手は現状二人」
「福岡から加入の志知孝明と秋田から加入の田中雄大か」
「特に左利きで泥臭く戦えるタイプの志知は早速スタメン争いに絡めるかと思うわ。ポジション的にライバルはベテランの柏や怪我明けの東なのでチャンスはありそう。それにしても右サイドはまさか茶島が第一候補で行くのか、外国人も含めた追加補強はあるのか、ここも要注目。田中はおそらく控えGK想定でしょうけど、J3から這い上がった強さを加えられれば。ついでに愛媛から小原という選手を獲得したものの即水戸へ期限付き移籍なので今は特に言うまい」
「堅実だけど決してネームバリューのある補強ではないよね」
「それすらなかった去年よりは楽しめてるわ。それに今年は降格枠が一で、まあ大丈夫だと思うから未来を見据えて戦ってくれればいいかな。一方で退団はDFの野上今津、サイドの藤井、FWの浅野といったところ。いずれもポジションを失うなどして出場機会が限られていた選手なので薄々そうかもとは察していたけど、やはり寂しいものはあるわね。特に藤井は、本人の決断だから仕方ないけどサンフレッチェで成長してほしかったと思うわ」
「野上もサイドで使われたり新境地的起用があったけど、やっぱり本来のポジションが良かったのかな」
「浅野も得意な形は限られてるけどなかなか得点力のある選手。今津だって神戸戦の退場で行く末は決まったようなものだけど実力がないわけじゃないから後はマッチングよ。それと地味に驚いたのが去年限りで現役引退した駒野がアカデミーのコーチという形で復帰した事よ。ユース出身から代表常連に上り詰め、サンフレッチェとして二度目の降格となった二〇〇七年限りでJ1でのプレーを求めて移籍して以来だから、その間にワールドカップでPK外したり長い旅路だったわ。お疲れ様でした。そして再び紫を身にまとっての活躍、大いに期待しているわ」
「それと槙野も引退」
「それはどうでもいいかな」
「ああ、そう」
「それと日本代表、森保監督の続投が決まったわね。出場枠拡大によってアジア予選敗退なんかはまずないのでそういう意味では楽になったとは言え、やっぱり無責任に叩かれるのを見るのは忍びないって感情はあるわ」
「あれも酷かったよね。まあ決して弱小ではない程度にはレベルアップしたけどドイツスペインと当たるのは運がない、厳しそうって感触はほとんどの日本人が戦前に抱いていただろうし、期待しすぎない事で来るべきダメージを軽減しようって考えも仕方ないけど」
「そこからその両国に勝った、しかも明らかに采配が機能した上での逆転勝利だったんだから、多くの日本人がそうであったように堂々と手のひらを返せば良かった。でもそんな曲学阿世を潔しとしなかった、あるいは叩きすぎて後に引けなくなった一部の人間がなおも叩き続ける姿は滑稽を通り越して落涙を禁じ得なかったわ。無論コスタリカ戦の敗戦など課題も見られたけど、評価すべきところは素直に評価しないと日本代表のためにあえて辛口という本来の意義が喪失してただ口汚いだけの無意味な逆張りにしかならないわ」
「ライターも含めた素人がああだこうだ言うだけならまだしも、一部の元選手も再生数稼ぎのためかそれに追随していたのは浅ましい事この上なかったね」
「城ねえ。本来その任に耐えうる心身の実力が伴っていなかったものを古河閥による読売追い落としの一環で無理に仕立て上げられた偽りの看板とは言え、日本が初出場したワールドカップのエースと名指しされたほどの存在なのだから相応の誇りを抱いて生きてほしいものよね。話を戻して森保ジャパン、コーチ陣も変わるみたいだからかなり別物になりそうよね」
「横内コーチは磐田、上野コーチは岐阜の監督になったみたいだね」
「特に心配なのは横内。磐田は降格した上にファビアン・ゴンザレス獲得の際すでにタイのクラブと契約を結んでいたと知った上で強引に横取りしたのがFIFAの規約違反とかで補強禁止になってるから、かなり苦しい戦いを強いられると思うわ。そんなクラブに行きたい指揮官がいるはずもないので協会が救いの手を差し伸べたって憶測もあるけど、まあ腹を括って頑張るしかなさそうよね」
「清水は降格したにも関わらず積極的な補強を続けてるのにね」
「清水は元々降格していい戦力じゃなかったので大事なのは補強よりチームの方向性よ。サンフレッチェは補強がややしょぼくてもそこがぶれなかったから良い順位だったし、現在のJリーグを席巻しているマリノスや川崎はどういうサッカーを目指すかという哲学がしっかりしている上に狙った選手を獲得出来る金もある。サンフレッチェもそうなってほしいものよね。人気と資金力以外は日本屈指のビッグクラブと言える存在なんだから」
「いやその部分こそまさにビッグクラブがビッグクラブたる所以じゃないの。ともあれ来年完成する新スタジアムが何らかの起爆剤になればいいけど」
「中国新聞が契約更改のたびにいちいち記載する推定年俸がそこまで活躍した印象のない選手を含めて全体的にプラスなのは金銭的余裕が出てきた現れなのか。とにかく予算が多くない中でフロントは最大限の仕事をしてきたけど、これからは予算の枠を大きくしていかなければ生き残れない。ユニフォームに貼るスポンサーは確保したけどよく見るとエディオン久保会長の息がかかりまくっている。その尽力は感謝すべきだけど、これをまったく別の企業に散らせれば未来はより開けてくるはず。最悪の事態はそこまで心配はしてないけど、今年も引き続きしっかりね!」
予測した未来なんて所詮は外して「まさかこんな事になるとは」と驚くための前振りに過ぎない。ゆえに願わくば心地良い裏切りが多い年であってほしいものだ。目には見えない神様に向かってそんな祈りを捧げてから、二人はそれぞれの家へと帰っていった。
今回のまとめ
・ぐちゃぐちゃな世界に少しでも秩序がもたらされるように
・新井監督一年目はそこまで成績に拘泥せずにいたい
・サンフレッチェはまあ大丈夫だろうと安心していられる
・あえて地獄の責め苦に向かう森保監督はあまりにも強い人だ




