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ng19 河野佳指名記念 2022年ドラフト会議について

 正しい秋の気温ってどれぐらいなんだっけと迷いそうになる今日は十月十三日。一時期が低すぎたから今ぐらいは妥当だったのか、それともやっぱり高いのか。指針すら失いそうな中でも時は確かに流れ続ける。そして今年もまたドラフトの日が近づいてきた。


「という事でいきなりだけど、カープはドラフト一位で北海道の苫小牧中央高校にいる斉藤優汰投手を指名すると公言したわ」


「正直知らない名前だったけど、これはどういうタイプなの?」


「百九十センチにも届かんとする恵まれた体格から百五十キロを超える力強いボールを投げ込む右の本格派よ。今年ここまでの情勢を見ると右の強打者がほしいという毎年恒例のアナウンスを素直に信じた主に他球団のファンからはまさに右のパワーヒッターである大学生の森下で行くのではないかと予想され、個人的には野手以上に足りていないのはピッチャーだから即戦力投手で行くんじゃないかと思っていたから高卒の大型右腕というチョイスを聞いた瞬間は意外に思えたわ。でも考えると納得ではあるのよね。今のファームに良い素材が多くないという懸念はずっとあったから」


「高卒投手の一位は近年記憶にないよね。北海道出身なのも珍しく思うよ」


「北海道の選手は近いところだと持丸が育成指名から今年支配下登録された。そして高卒投手はちょうど十年前、二〇一二年のドラフトで左腕の森雄大を指名して以来よね。この森は本来一位クラスの選手じゃなかったものをあらかじめ公言する事で競合を避けようとしたんだけど、一本釣りされるのがむかつくってだけの理由で楽天が突っ込んできてくじ引きの結果そっちに行ったものの、大成しないままここ数年は育成枠で細々と現役生活を続けている。はっきり言って戦略ミスだったわ。結果的に二位で鈴木誠也を当てたからドラフト全体ではプラスを作ったけど、投手力強化には一ミクロンたりとも貢献しなかったのが現状にも祟ってるわけだし」


「あんまりいい前例じゃないね」


「でもその前は今村、そのまた前の分離ドラフト時代は唐川とか前田健太とかいい感じの選手を指名しているからね。ともあれこの斉藤、完全な素材型なのは間違いない。当然即戦力になるとは誰も思っていないわ。まさか競合はしないでしょうね」


「そうなると育成力が試されるね」


「折しも新井貴浩監督の就任会見が昨日開かれたばかり。手腕は不明だけど、とりあえず森浦に無意味な十連投とかさせないなら何でもいいわ。練習によって己を磨き上げて一流選手へと成長した男だけに、練習の厳しさはこれまで以上のものとなるとは予想出来るわ。近年は上位陣に大学生や社会人といった即戦力が多かったけど、じっくり育成する方向に舵を切るかも知れない」


「そうなると二位以降も高校生中心だったりするのかな?」


「それは結果を見てみないと分からないけどね。ところで今年のドラフト候補は例年に比べて小粒と言われている。その中で競合を外すリスクを考えて、今のうちに公言する球団が多いのはここまでの特徴となっているわ。斉藤以外にも巨人が高校生ナンバーワンスラッガー浅野、日本ハムが二刀流の矢沢、西武が三拍子揃った大学生外野手蛭間、ソフトバンクがナイジェリア人の両親を持つ高卒素材型内野手イヒネを指名するみたい」


「今のところ競合はしていないんだね」


「それだけ絶対的な候補がいない裏返しでもある。とは言えまだ半分以上残ってるし、現時点で名前が出ていない中でも吉村曽谷といった即戦力と目されるピッチャーがどうなるか、あるいはまた別の単独狙い球団が出てくるか。現時点ではそういった部分が注目点となるわね」


「なんだかんだ言っても盛り上がってきたじゃない」


「そうね。後は現在開催中のCSで順当に一位チームが勝ち上がるかどうか。しかしDeNAファンにとって今シーズンのラストシーンがあの併殺打ってのもなかなかいたたまれないわね。ともあれ本番は一週間後よ」


「良い流れが来るといいよね」


 そんな事を言いながら今日は別れた。五位に終わったシーズンの事は一旦忘れて、来年からの事を考える時期が来たようだ。今後も新しいニュースが出たら更新して、本番でも内容を更新しまくる事となるだろう。しかし一位指名がすでに決まってるからそんなニュースなんてあるんだろうか。十月二十日、すでに休みは取ってある。


 十月十五日、カープの新ユニフォームが発表された。また前日にはオリックスが曽谷の一位を公表した。


「どう思う? あのユニフォーム」


「赤いわねえ。いや、ビジター用は元々赤かったけど一層赤くなったわ。やはりカープの色は赤と強調するのはいいけど、文字も赤でちょっとメリハリが足りないのかな。エンゼルスみたいに縁に白を入れるだけでも分かりやすくなりそうだけど。ホーム用は背中に遊びを入れてきたのが新機軸」


「血飛沫みたいな線は驚いたよ」


「基本的にマイナーチェンジって感じだけど、元々完成度が高いものをいじるのは大変だったと思うけどやっぱり蛇足になったという印象。それなら全然別物でも良かったんじゃないかしら。それと新井監督の背番号が現役時代と同じなのも少し残念。若い選手に継承されれば良かったんだけど、じゃあ適任者はと問われると答えに窮するのが一番残念。でも思えば新井ってドラフト六位からいきなりこんな若い背番号貰えてたのよね。それを考えると末包とかにサクッと授けてれば良かったのかもね」


「斉藤が入団した場合は何番になるんだろう」


「素材型だしいきなり若い数字である必要はないかな。例えば四十六とかでも良さそうだし。まあ鬼が笑う話は程々にして、次の木曜日を楽しみにしましょう」


「その時にはもう何人公言されてるのかな」


 半分の一位が決定して、しかも被りなし。最終的にはどうなるのだろうか。とか言ってたら今日の夜、オリックスがモイネロを打ち崩しサヨナラ勝利で日本シリーズ進出を決めた。お見事!


 そしてついに十月二十日、ドラフト当日を迎えた。朝はやけに冷えたがそこからはそれなりに気温も高まった。また他球団の動向で言うと楽天は荘司、中日は仲地、ヤクルトは吉村の指名を公言。実に九球団が事前に動向を明らかにした。


「そうなると逆にロッテ阪神DeNAがどう動くかが気になるね」


「ここまで競合がないしね。その中でロッテが斉藤を指名するかもと予想するスポーツ新聞もあるけど果たしてどうなるか。全体的には高校生の素材を多く獲得するドラフトになる可能性が高そうだけど全体像も気になるところよね」


「しかしそうなると来年は現有戦力の強化で賄う事になるのか」


「フェニックスリーグではそれなりに好調だし、そういう中から一人でも出てくる選手がいれば大きいわ。FAの動向に関して野間がまず残留を決めた。西川は不明だけど、もし退団としたら秋山野間にもう一枠は中村健人や末包あたりで争うか外国人か。誰でもいいけど願わくば長野松山に引導を渡すような活躍を見せてほしいものよね」


「さあそろそろ午後五時、指名の時間だ」


 やっぱり悠宇の家にいる二人。渡海雄はまるで自分の家にいるかのように手慣れた手付きでリモコンを押した。


 そして迎えた午後五時。そこから関係者入団とか説明とかいつもの行事を終えたところでいよいよ一位指名が読み上げられた。その結果日本ハム矢沢、中日仲地、ロッテ荘司、広島斉藤、楽天荘司、巨人浅野、西武蛭間、阪神浅野、ソフトバンクイヒネ、DeNA松尾、オリックス曽谷、ヤクルト吉村となった。


「まあ基本的には事前に言われてた通りなんだけど、公表していなかったロッテは荘司、阪神は浅野、DeNAは松尾で荘司と浅野が競合となったね」


「阪神浅野とは事前に言われていたけどロッテの動向がスポーツ新聞各社バラバラで読みにくかった。結果的には大学生で一番パワーのある右腕である荘司で行ったか」


「そしてカープは安全に意中の斉藤を指名出来たわけだ」


「まあね。素材型としては間違いないと思うからどう育てていくか。しかしもう一週間ぐらい前からすでに獲得した気でいたから、無事そうなって良かったって気分にさせるわね」


「そしてくじ引き。まず荘司は、おおっ楽天だ!」


「やっとロッテが二択のくじ引きで負けたわね。単なる運とはいえ当たりすぎで気持ち悪かったからようやく正常に戻った安堵感があるわ。次の抽選も見ものよ。原と岡田、どちらも何故かドラフトのくじ運が悪い同士の決戦が始まるわ」


「そして、あっ巨人か」


「おおお、結果的に事前に公言していた球団が引き当てたわね。これもまた偶然の為せる業とは言え、心象的にはスムーズな形に収まったんじゃないかしら」


「でもロッテと阪神はこれを受けてどう動くかだよね。こうも単独が多いと候補者もかなり限られてくるだろうし」


 というわけで外れ一位指名はロッテが菊地、阪神が森下を指名した。


「ロッテは即戦力期待の大学生投手、阪神は右の大砲と路線は変わっていないわね。それだけ必要な選手が明確に見えていた証明と言えそう」


「しかしこれで無事に十二球団の一位指名が決定したわけか」


「ここまでは概ね予想通りってところかな。無風とは言わないけど。しかしここからがドラフトは本番となる。一体誰を指名するのか、期待しましょう」


 というわけでドラフト一位では予定通りに苫小牧中央高校の斉藤優汰を指名した。現時点で言う事はそう多くない。大きく成長すれば良い。


 そして六時前に始まった二位指名では日本ハム金村、中日村松、ロッテ友杉が指名された。


「金村は一位候補でもあったし村松友杉は二遊間の候補では筆頭だったから必要な球団にとってはこれ以外ないという指名。そしてカープは……」


「内田湘大」


「ああそっちか。現在日本には三校しかないという組合立、複数の自治体がお金を出し合って設立した一部事務組合によって設置された高校の一つである利根商業ではエースで四番だったけど力強い打撃が特に評判だった右の大砲候補よ。体格も堂々としているし、将来的にはサードなんか守れたらいいなって感じかな」


「そう考えると新井監督の現役時代みたいな選手を期待しての指名かな」


「最終的にそうなれば万々歳よね。二位は個人的には古川かなと見てたけど、古川より長打力があって内藤より動けそうな体格って事でこのタイプの中ではバランスの良い選手ではあるわ。万が一だけど三位で残ってたら是非指名してほしいわ」


 二位で早速内田湘大。個人的には三位であるかと思っていたが評価はもっと高かったようだ。右の大砲候補として文句なしの指名かと思う。


 それ以降は楽天小孫渡辺、巨人萩尾田中千、西武古川野田、阪神門別井坪、ソフトバンク大津甲斐、DeNA吉野林琢、オリックス内藤斉藤響、ヤクルト西村澤井が指名された。


「やっぱり古川も内藤も全然残らなかったわね。他に西村も高校生の強打者で、いずれも二位で指名された。近年こういうタイプの需要は高まっているし、内田だってその流れだもんね」


「この中から誰が出てくるか。そしてカープの三位は」


「東京ガスの益田武尚」


「おおっ、ちゃんと即戦力候補にも手を出してきたじゃない良かった良かった! この益田は事前予想では一位候補とも呼ばれていた社会人では吉村と並んで評判の右腕よ。先発でもリリーフでも行けそうって話で、カープの現状を見るにいきなりチャンスは与えられそう」


 益田三位か。正直結構うまい感じじゃないかと思ってしまった。イェイイェイ。斉藤内田はすぐ出てくるものでもないので、この益田がどれだけやれるかは短期的な目線においては重要となってくるはずだ。


 それから日本ハム加藤安西、中日森山山浅、ロッテ田中晴高野が指名された。


「日本ハム三位加藤豪将ニューヨーク・メッツ!」


「アメリカの大学からアメリカのドラフトにかかった時も注目されていた選手で、今年メジャーデビューを果たした内野手よ。日本ハムかDeNAが狙ってたという報道があっただけにやはり来たって感じ」


「まさに即戦力か。そしてカープの四位は、清水叶人」


「内田と同じく群馬県では評判のキャッチャーで、強肩で打撃に関しても評価を高めていた。でもここのポジションを更に増やすとはそれだけの素質を持っているのか。しかもあの素晴らしい校歌で有名な健大高崎。新しい風を吹かせるには程よい指名じゃないかしら」


 この清水で四人中三人が高校生となっている。現状どこか停滞感も漂っていたファームにこういう好素材が入ってくる事でより前向きになっていくのなら素晴らしいものだ。


 そこからは楽天伊藤平良、巨人門脇船迫、西武青山山田陽、阪神茨木戸井、ソフトバンク大野松本、DeNA森下瑠橋本、オリックス杉澤日高、ヤクルト坂本北村が指名された。


「ここまではどう?」


「オリックスなんかドラフトファンが今年の指名予想と称して有名どころ並べたみたいな面子でいい感じじゃない? 個人的にはスカウトは高校時代から評価してたみたいなので気にしていた松本晴が指名されたのがおおってなったわ」


「そしてカープの五位は、河野佳」


「広陵高校出身の社会人で、去年は抜群の成績を残して一位不可避かとも言われてたけど今年は成績を落として注目度もダウンしてしまった。身長がそれほど高くなくて眼を見張るような剛球を投げるわけでもないから、どうしても実戦での成績ありきになるのよねこのタイプは。でも実力は十分にあるはずだから、五位でこれぐらいの選手を拾えたのは割とおいしいかもね」


 益田といい河野といい社会人でこれがまだ残ってるじゃないかって投手を積極指名したところが今年のドラフトの盛り上がりどころとなった。名前が読み上げられた時は手を叩いたよ。しかも河野は高卒社会人でちょっと若いし、即戦力かつ成長にも期待したいところだ。


日本ハム奈良間宮内、中日濱田中幹、ロッテ金田を指名した。ロッテは五人で選択終了となった。


「カープも五人か六人って噂だしそろそろ指名終了でも不思議じゃないかもね」


「あれ、行くみたいだよ。長谷部銀次」


「愛知県出身、中京大中京から慶応大学を経てトヨタ自動車に所属という流れは去年の中村健人と同じだけど、ポジションは全く違って左のリリーフタイプとして期待される選手よ。しかし社会人のピッチャー三人指名だからやはり即戦力が必要だったのは間違いじゃなかったわね」


 都市対抗で見せた好リリーフが指名に繋がったのは間違いないだろう。ブルペン陣に厚みを持たせるためには効果的な指名となるかも知れない。また先祖が杉田玄白でそれ以外も優秀な学者が揃う華麗なる家系図も広まっているが、なかなか凄まじいものだ。


 そこからは楽天林優、西武児玉、阪神富田、ソフトバンク吉田が指名された。巨人DeNAオリックスヤクルトは五人で選択終了し、それ以外も六人で終わり。もはや祭りの終わりが近付いている。


「もうほとんどの球団が指名終了してるしカープもここらが限度かな」


「あれっまだ行くよ。久保修」


「ああそっか。まだ指名されてなかったもんね。新興の大阪観光大学から初のプロ入りなるかと騒がれた選手で、足や肩といった身体能力に定評ある右打の外野手。でもこうなると戦力外がどうなるのか。想像以上に指名が多かったから、その分出る選手も増えるのは宿命。ちょっと読めないわね」


「ともあれ七人の侍、これからどのような道が開けているのかとても楽しみだね」


 久保も阪神かカープが指名するのかなという雰囲気はあったが、ここまで残っていたから手を出した感じだろうか。確かにカープが好きそうなタイプではあるし。でも本当に七人も指名するとは思わなかった。後は中日が福永を指名して、両球団指名終了し本指名は終わった。


 育成ドラフトでは名原、中村貴、辻の三人を指名して選択終了となった。


「久保と名原なんて前評判同じぐらいだったでしょう。そして中村貴浩って名前にはちょっとびっくりしたわ。中村多い上に監督と同じ名前で」


「しかし今回の指名をまとめると、まず人数の多さが一番の驚きだったのかな」


「そうね。そしてその内容を見ると事前のイメージ以上にバランスの良い指名になったなという印象。一位斉藤は高卒投手だけどそれ以降は社会人投手を連打し、高卒メインだった野手も大学生の久保を加えた。キャッチャーも指名した」


「後はその中から誰が出てくるかだね。じゃあとりあえず僕はここらで。また明日!」


「ええ、また明日ね!」


 というわけで時間は八時前、もうちょっと他球団の育成指名は続いているがカープの指名は終わったので渡海雄は帰宅した。翌日の朝、白い翼のような鰯雲が旻天を覆い尽くしていた。秋だ秋だ秋だ! 日本の四季は夏と冬が強すぎてもはや崩壊したかのように言われるが違う。こんな秋らしい日はまだ残っている。そんな空を見上げて、二人はきっと訪れてほしい輝かしい未来に思いを馳せるのであった。




一位 斉藤優汰 投手 苫小牧中央高

二位 内田湘大 内野 利根商高

三位 益田武尚 投手 東京ガス

四位 清水叶人 捕手 健大高崎高

五位 河野佳 投手 大阪ガス

六位 長谷部銀次 投手 トヨタ自動車

七位 久保修 外野 大阪観光大


育成

一位 名原典彦 外野 青森大

二位 中村貴浩 外野 九州産業大

三位 辻大雅 投手 二松学舎大附属高

今回のまとめ

・終わってみればそれなりに安心出来るドラフトだった

・即戦力もそれなりに集まったから素材も素直に期待出来る

・全体的には指名者が少ないあたりは小粒という前評判通りか

・でもその中から出てくる選手は絶対いるのでそれが誰かだ

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