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sk11 自民党岸田総裁誕生について

 爽やかな秋風にいざなわれるかのように、この日本ではいくつかの大きな変化が巻き起こった。ついでに筆者もようやくワクチンを打てた。このままコロナも収束してくれればいいんだけど。


「まずは白鵬が引退したね」


「青天の霹靂だったけど、とりあえずはお疲れ様でした。最後は部屋でコロナ感染者が出たため全休となったけど、その前の場所では全勝優勝して休みさえすれば未だに最強と示した直後だっただけに残念よね。十年以上も最先端を独走し続けた角界の第一人者、図抜けた研究熱心と負けず嫌い。その偉大さは誰に何と言われようといささかたりとも揺らぐ事などありえないわ」


「間違いなく最強の存在だったのに、確かに結構色々言われてたよね」


「強いってそういう事でもあるからね。まず白鵬という力士の経歴について、来日した時はあまりにも小柄だったのでどこの部屋からも受け入れられず、あわや無念の帰国かというところでギリギリ宮城野部屋に拾われた。しかしそこからぐんぐん体が大きくなり、それに伴い成績も伸びていった。最初に小兵の技を覚えて、大柄になってからも使いこなせたのが最強の源になったと言うわ」


「しかしあの白鵬にして序ノ口では負け越してるんだね。でも以降は順調に勝ち進んで、十両は二〇〇四年の最初二場所であっさり通過している」


「その勢いで初入幕でいきなり十二勝したかと思うと、あっという間に役力士に。二〇〇六年に大関になった最初の場所で優勝し、すぐにでも横綱かと騒がれたけどさすがにそこまでたやすくはなかった。まあ一年後にはその地位に登り詰めたんだけどね」


「そこからの成績はまさに壮絶の一言。あまりにも強すぎる」


「この頃は朝青龍という同じくモンゴルの先輩横綱がいて、これも本当に強かったけど素行は悪くて、だからその対比で白鵬が真面目な善玉扱いされてたのも今となっては信じられない話よね。ともあれこの二人が並び立つ時代が続けば良かったんだけど朝青龍が不祥事で出場停止になって、それが明けた時にはもはや決定的な差が付いていた。それでも決定戦でたびたび白鵬を破るなど意地を見せたけど、二〇一〇年に別の不祥事で引退に追い込まれるといよいよ圧倒的な一強時代に突入」


「まさにその年に六十三連勝を果たしたわけか」


「ただ強いというだけでなく暴力、薬物、賭博、挙句の果てには八百長と不祥事連発する中だからね。泥の中に咲く一輪の蓮の花のように一層強く輝いていた。でもそれが持続し続けてもはや当然の光景となると、ありがたみを忘れてしまう人も出るものよね。勝ち方が悪いとか、並の横綱程度の成績に終わると『衰えた! もう終わりだ!』と騒がれたり。まあ三十代に突入してからは休場も多くなったり、確かに衰えはあったけど、実力に関して及ぶ者はほとんどなかった。その中で最大瞬間風速であれ追いつける部分があった力士が横綱になった」


「それが日馬富士、鶴竜、稀勢の里か」


「でもこの同世代の横綱達も、まず日馬富士が不祥事で去り、稀勢の里は怪我に泣き、そして鶴竜も今年力尽きた。いよいよ横綱不在も現実味を帯びてきたところで猛烈な勢いで浮上してきたのが照ノ富士だった。恵まれた体格から元々将来の横綱候補と目されていたけど、怪我で大関から序二段まで陥落した。それまでは大関経験者が十両に落ちるだけでも異例だったのに。でもここで力任せの相撲からじっくり戦う新たなスタイルを会得した」


「それで一気に上がっていったよね」


「それで七月場所は白鵬と照ノ富士による千秋楽全勝対決で、場所後に横綱昇進が決まった。本当ギリギリのタイミングだったけど、どうにか継承出来たからようやく肩の荷が下りた気持ちだったでしょうね」


「そして今場所はその新横綱が優勝」


「実力的にはまったく心配ないけど、やっぱりサポーターの痛々しさはいかんともしがたく、勝ち越しが精一杯な大関陣にも期待出来ない以上横綱不在危機は未だに去っていないわ。さあ出てこい豊昇龍、霧馬山、若隆景、その他色々」


「どんな未来になるんだろうね。それと自民党の総裁選挙だけど、岸田が勝ったね」


「今回の選挙においては最初から活躍していたから、最終的に射止めたのはお見事よね。というか前回の総裁選敗北からずっと動いてたんだろうとは思うけど、まず菅が再選を狙っていると見られていた八月時点で早くも出馬表明。その際に出した党役員の任期は一年で最長三期までという公約は現在五年幹事長を務めている二階への攻撃と受け止められ、かねてから国民からの評判が悪い老人を外そうという気概は概ね好評価を得た」


「そこから不思議な動きが目立ったよね。菅も二階を外すみたいに言い出したり、夏の終わりの夜には九月に衆議院解散するから総裁選は先送りみたいな報道が出たけど翌日には否定されたり」


「特に衆議院解散は伝家の宝刀と呼ばれるほど重要な総理大臣の武器。軽々と振るわれるものじゃないし、しかも一度ちらつかせた上で結局振るえなかったのは致命的だったわね。それで数日後には出馬断念に追い込まれたし。他にも地元と言える横浜市長選挙で菅が推薦した候補が惨敗して『菅では選挙に勝てない』という雰囲気が決定的になったのも痛かったけど、ともあれこれは菅が最初から想定していた展開ではなく八方塞がりになった挙げ句の決断だったのは間違いないわ」


「前回の総裁選ではあんな圧勝だったのにわずか一年でこうなるんだから恐ろしいよね」


「菅は非世襲無派閥から安倍内閣の官房長官として新元号令和を発表するなど実績を積み重ねて今の地位を得た叩き上げだけど、逆に言うとバックに乏しい。岸田は世襲の三代目だし自民党の派閥の中では宏池会、竹原三大偉人の一人であり戦後日本を代表する優秀な総理大臣である池田勇人によって設立された保守本流の由緒正しい派閥の長。だから支えてくれる人も多くて、一度負けても捲土重来を果たせたわけよ。オバマ来広の際の外相だったり実績もあるしね」


「ああ、そんなイベントもあったねえ。折しもアメリカでも今は民主党の、しかもオバマ時代に副大統領だったバイデン政権。そういう意味では政治の流れにも沿っているのかな」


「トランプと岸田は全然合わなさそうだけど、バイデンとなら上手くやれるはず。ちなみに安倍らが所属する清和会なんて本来傍流もいいところだからね。ただここ二十年は小泉安倍と国民の支持を集める長期政権を複数打ち立てた一方、宏池会は九十三年に退陣した宮沢喜一以来岸田まで総理を出せずにいた」


「今や本流こそ傍流になってたわけか」


「時代も変わったからね。また岸田に限らず宏池会は伝統的に『政策には強いが政争には弱い』、つまり戦えない集団だと言われてきた。池田の後に総理となった佐藤栄作から持ちかけられた甘言を真に受けてたら梯子を外された前尾繁三郎や超絶不人気だった森喜朗内閣に反旗を翻すかと思ったら直前で腰砕けとなった加藤紘一は典型例で、前回あっさり菅に切り替えられた岸田もその流れかと見られていた。でも今回、菅退陣までの流れを作った事で弱々しいイメージはかなり払拭されたわ。後から河野、高市、それと野田も立候補したけど、ここで事前の準備の差が出たかな」


「河野有利みたいな話もあったけど、選挙期間中には高市がなかなかの存在感を見せたよね」


「高市は大健闘だったわ。安倍前総理が支持を表明したのは大きかったと思うけど、よもや議員票で河野を凌ぐとは。と言うかむしろ河野が想像以上に嫌われてたって事なのかな。宗教的な団結を誇る高市支持者も河野じゃなかったからとりあえず満足してるみたいだし」


「そういう意味では一番無難な結果だったとも言えるのか」


「特に河野に関しては攻撃力の高さゆえに大胆な変革をしてくれそうと心酔する人もいれば逆に絶対的に嫌悪する人も出るし、そういうマイナスの多さは自民党という組織の中の選挙を勝ち抜いて総理大臣になるという舞台においては確実に足を引っ張ったわね。党員票は予想通り一位だったけど思ったほどの勝ち方ではなく、トータルでは岸田に一票差で二位。岸田と高市は決選投票でどちらかが残った場合協力すると確認していたので、すでに勝負は決まっていたと言えるけど想像以上の大勝だったわ」


「まあ勝利したのはいいけど、岸田総理でどう変わっていくのかな」


「そこが案外微妙なところよね。これまで安倍とその代打たる菅が進めてきた経済政策の見直しをするとか言ってるけど、組織の中でどれだけ岸田色を発揮出来るか。この選挙中も、安倍政権の中で噴出したいくつかの疑惑に関して再調査するかのような事を言ったら脛に傷がある連中からの反発を受けて『再調査するとは言ってない』と引っ込めたり、やっぱりまだ戦えないんじゃないかって疑念は拭いきれない部分はあるし」


「これからはそういう戦いの連続になるけど、どこまで日和らずにいけるものかな」


「例えば地元である広島県で繰り広げられた河井夫妻事件。あれは確かに安倍、二階、菅といった連中の差し金だった。しかしその魔の手からどれだけ守れたか。今でも広島県連は怒っている。このタイミングでそういう連中を一層出来れば素敵だけど、現実的には結局妥協しながら進める事になるんでしょうね。一応分断から協調へというスローガンで、小泉以来推し進めてきた金持ちはもっと金持ちになって貧乏人はもっと貧乏人になるモラルなき新自由主義的経済政策からの脱却などを掲げているけど、どんな政策であれまず党内をまとめきれなければ絵に描いた餅だからね、押す部分と引く部分を見極めて上手くやってほしいわ」


「ましてやコロナ禍という非常時だしね。菅も結局それの対策に振り回されっぱなしだった印象が強い」


「難しいタイミングではあるわね。今は収まってるように見えるけどどうせ冬になればまた増えるでしょうし。そんな非常時だからこそ求められるのは発信力で、菅はそこが弱かったから支持が続かなかった。岸田もそこに関しては河野や高市に及ばないけど、とにかく実直に国民のために働いてくれればそれが一番なんだけどね。少なくとも顔と滑舌は前任者より上だし」


「これからは嫌でも毎日のように顔を見る事になるからね。そこで岸田がどれだけ受け入れられるか。まずは衆議院選挙だよね」


「正直これに関してはあまり心配してないと思うわ。菅総理時代は色々あって補選なんかで多く負けてたけど、今回の総裁選挙で河野か高市か、いや岸田だったと騒がれたのが事実上の政権選択選挙みたいになってて野党はすでに存在感低下してるでしょ。今は自民が勝ちすぎてるからある程度取り返すかなとは思うけど、まあそれが限界じゃない? 政権交代はまずない」


「ともあれ結局はこの日本のため、与党も野党もよく政治してほしいよね。まだまだコロナが猖獗を極める世の中。近所の神社の秋祭りも中止だしね」


「寂しいよね。でもそういう異常な世の中を元に戻そうと頑張っている人達こそが、腕力に物を言わせる人達よりもずっと本当のヒーローなんでしょうね」


 そんな事を語っていると敵襲を告げる合図が瞬いたので、二人はすぐに変身するとにわかに天気が悪くなった街の外へと繰り出した。


挿絵(By みてみん)


「ふはははは、私はグラゲ軍攻撃部隊のシロエリオオハム男だ。」


 普段はシベリアやカナダの北の方にいるが冬になると日本に渡ってきて、いわゆるアビはほとんどがこの種を指すほどに親しまれている渡り鳥の姿を模した侵略者が畦道に出現した。瀬戸内海ではアビの群れを目印にした漁がかつては盛んで、広島県の鳥としても指定されるほど馴染み深い存在だった。しかし今ここにいるのは危険な侵略者。その魔手が伸びる前に、二人の守護者が出現した。


「出たなグラゲ軍。お前達の思い通りにはさせないぞ」


「これから色々変革してお楽しみってタイミングなのに邪魔しないでくれるかな」


「おお、あれが噂に名高いエメラルド・アイズか。早速死んでもらおう。行け、雑兵ども」


 冷徹な指令をただ実行するだけの心を持たない殺戮マシーンの攻撃を、二人は上手く受け流しつつ破壊していった。


「よし、これで雑兵はいないみたいだ。後はお前だけだシロエリオオハム男」


「過ごしやすい秋という季節を殺伐とした戦いだけに終わりたくないから、もう退いてほしいな」


「この環境のどこが過ごしやすいんだ。やっぱりこの星には蛮族しかいないみたいだな。殺してやらねば」


 そう言うとシロエリオオハム男は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。やはり戦うしかないようだ。二人は覚悟を決めると、合体して目の前の驚異に対抗した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 なんだか台風も近付いてきたけど、大した被害はないのではないかとも予想されている。そうであれば幸いだが、そんな風雲に紛れて激しい争いが繰り広げられた。空中を優雅に舞う敵の動きをよく見極めつつ、悠宇はカウンターを浴びせた。


「よし、今よとみお君!」


「分かった。ここはエンジェルブーメランで勝負だ!」


 一瞬だけ生じた隙を逃さず、渡海雄は桃色のボタンを叩いた。背中から飛び出たブレードを組み合わせて投げると、刃は不規則なカーブを描きながら敵のボディを切り刻んだ。


「むう、想像以上の実力だ。これだけ手こずるのもうなずけるな、忌々しいが」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によって、シロエリオオハム男は本来いるべき星へと帰っていった。そして岸田が党人事で色々動いているが、河野が広報本部長はびっくりした。最終的にどうなるか、まずはお手並み拝見か。

今回のまとめ

・まずは岸田総理誕生おめでとうございます

・どんな政策も実行して初めて意味を持つからここからが本当の戦いだ

・高市野田は予想以上に健闘河野は一回目で二位はまずいんじゃないの

・白鵬引退お疲れ様でした間違いなく歴代最強クラスの横綱だった

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