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vm02 サンフレッチェ広島連覇について

 一年の締めくくりとなる十二月にひとつの戦いがまた終焉の時を迎えた。十二月七日、J1最終節。そして翌日の十二月八日にはJ2からJ1昇格を決めるプレーオフの決勝戦が開催される。今日はそんな十二月八日、渡海雄と悠宇は南郷宇宙研究所で行われた訓練が終わると一緒にテレビを見た。


「そろそろ始まるわね、プレーオフ。BSだっけ」


「うん、三時半からキックオフで。今年はどうなるんだろうね。去年はいきなりJ2で六位だった大分が昇格しちゃったけど今年はすでに五位の千葉と六位の長崎は退場して、京都か徳島かだけど」


「長崎はJ2昇格一年目からいきなりプレーオフ進出と見事な成績だったけど、最後は力及ばずだったわね。京都としてはガンバと神戸が昇格した中もうひとつも近畿の自分たちでって思いはあるでしょうし、徳島だって初のJ1を狙って意気軒昂でしょうし。引き分けなら京都だから徳島としてはとにかく一点を取れるかどうかが大事よね。それにしても、サンフレッチェ連覇したわねえ」


「うん、したよねえ。そりゃあ期待はしてたけど、まさか本当に出来るなんて」


「二週間前はもうマリノスで確定だと思ってたわ。降格確定の湘南とサンフレッチェのサッカーの対策ができてない鹿島相手だからいけるかもとか、逆にマリノスは後半戦好調な新潟と川崎だから厳しいとか後からならいくらでも言えるけどね。さすがにそれをあの状況で言えるのは相当豪胆だし、単なる願望に限りなく近かったわ」


「そうだよね。マリノスは残り二試合でひとつでも勝てば自力優勝ってところまで行ってたし、その頃の広島は順位が浦和以下だったのに。まさか両者連敗で脱落する中広島だけは連勝で逆転戴冠なんて、ご都合主義のストーリーみたい。マリノスや浦和相手には今シーズン分が悪かったし、上が勝手にこけたから広島に転がり込んできた他力本願の棚ぼた優勝って感じは正直あるけど」


「でも優勝出来る時に優勝しておかないと。資金的にもいつも狙えるってもんじゃないし。他力本願だろうがそれを得られたのは選手や監督、関係者の皆さんが最後まで諦めずに戦い続けたからだし、受け取るものはしっかりと受け取ろうじゃない」


「そうだね。根が弱気だとついネガティブな発言しちゃうけど、どこかの市長みたいに。僕も昨日は気が気じゃなかったからわざとテレビを見ないで図書館に行ってたぐらいだから。おっ、ここまでは京都が優勢かな。いい感じで攻めてる」


「この流れで一点取れるとかなり楽になるわね。逆に徳島はここをしのげばいい流れも来るはずだから大事な時間帯よ。それと市長のあれはねえ、まったくの失言よねえ。ただ実際のところスタジアムなんてそんな簡単に出来るものでもないし、そういう現実的な色々があってのものだとは思うけど言い方ってのもあるでしょうに。まあ私たちに結局出来るのは署名するとかで機運を高め続ける事だから。あの発言もそこに火を付ける役割まで計算した上での話なら大した役者だけど」


「まさかね。それにしても、今年のJ1は色んな流れがあってどこが優勝するかまるで読めなかったよね。序盤なんて大宮がすごく強くて去年の仙台みたいに優勝争いするのかなと思ってたら信じられない自滅行為で後退して、ベテラン揃いのマリノスが行くかと思いきやこれまた最後の最後で失速して掴み損ねて」


「浦和もがっつり補強してたから優勝するんじゃないかって思ったんだけど。理屈だけで話すとやっぱり予算規模からしてもサンフレッチェが連覇って異常よ。でも金持ち浦和は今年も無冠で、ご立派な人気や予算の割に実績は全然追いついてないのよね。それにしても今シーズンの終盤、負けちゃいけない戦いが続く中で思いっきり守備が崩壊しちゃったのはペトロヴィッチ監督らしかったわね。監督のよく言ってた『安い失点』という奴だけど、あんなディフェンスでは失点が嵩んで当然よね。サンフレッチェの頃からそうだったけどいい位置までは行けるのよね。でも優勝となるとあまりにも守備が雑すぎるので取りこぼしも多く、こんな結果になっちゃう」


「そう考えるとペトロヴィッチ監督のサッカーで優勝するために必要なのは守備を整備できる監督なのかなあ。皮肉な話だけどって、ああっ、徳島決めた! コーナーから千代反田!!」


「おお、マーカーが何だかこけてて完全フリーになってたわね。これなんかまさにGKの実力ではどうにもならない失点よ。やっちゃったわね京都。まあ選手がどうと言うより組織の問題よね。それで言うとサンフレッチェ、エース佐藤寿人は去年ほどじゃなかったけど、それでも勝ち点を拾える組織としての強みを見せたとは言えるでしょうね。去年から引き続きファールが少ないクリーンさも美しいわ。MVPはサンフレッチェから選ばれるとしたらリーグ最少失点に導いた守備の選手で、西川かしらね。他のチームからの場合だと中村俊輔か、あるいは得点王の大久保か」


「ベストイレブンには色々入ってくるだろうけどね。塩谷とか森脇の穴を埋めるどころか守備に関しては明らかに上で攻撃もかなりいい攻め上がりを見せたし。うわっ、徳島がまた決めた! もう二点目だ」


「矢継ぎ早にという言葉がふさわしい連続得点。ここで二点差は大きいわ。一点差なら京都としては同点に追いつくだけで実質勝利だけど二点となるとね。しかもパス回しは上手でもここぞの場面では弱い大木監督のサッカーでいかに点を取るか」


「前半終わったけど、ううん、難しいね。むしろ京都優勢だと思ってたのに徳島の得点ラッシュで二点差なんて。やっぱりいい時に決められなかったのがまずかったのかなあ」


「まあそんなものよね。ゴールひとつで流れは変わるものだから。それで言うと西川を獲得したいって報道が出た浦和は失点も多かったし、守備の要であるGKを獲得するのは道理よ。ただ選手だけではどうにもならない部分ってあるから。浦和と同じようなサッカーのサンフレッチェがリーグ随一の堅守なのはGKの差も確かにあれど監督の違いも大きいでしょうね。どんな優秀なGKでも危険なシュートを数多く打たれると中には防ぎようがないシュートが飛んできたり、ミスだって起こってしまうものよ。じゃあ浦和にピンチを招いてるのは誰かって言うと守備を整備しない監督や攻撃が大好きな槙野森脇って事になると、なんだかマッチポンプみたいね」


「移籍しないといいけどな。まあ決めるのは本人だし、それが本当に自分のためになると西川自身が考えているようなら仕方ないね。ましてや生え抜きでもないんだし、そうなったらそうで新しい選手に期待しようか。そして最終的な順位は、二位はマリノスで三位は川崎がいつの間にかここまで浮上してたんだね。川崎なんか序盤は不安定な印象さえあったけど得点王の大久保なんかもいて、最後は優勝のアシストまでしていただいて、しかもACL出場まで決めるんだから革命的な展開だよ」


「最終節はまるで最初から計算されていたかのように上位同士のぶつかり合いだったから、優勝争いだけでなく三位までに与えられるACL出場権をめぐる争いも激しかったわね。結果的にはサンフレッチェとマリノス、そして川崎ともう一つ天皇杯の勝者か、それがすでに出場権を決めたチームだったらリーグ四位のセレッソが出場するんだったかしらね」


「ACLは今年もそうだったけど勝ち抜ける展望がまったく見えないよね、正直。怪我人が大勢出たってのがまず最大のマイナスだったけど、そもそも選手層が薄い中だからこうもなるよ。一方で浦和はACLも見据えての補強だったのにグループリーグ敗退の体たらく。天皇杯はすでに敗退、ナビスコカップも決勝で散りリーグ戦も六位程度で終了。単なる嫌がらせ要員かな。しかし、後半は徳島のペースっぽいね」


「前半は京都もいい流れの時間帯はあったけど、そういう局面において点を取れないとこうもなるのよね。前半三十九分の先制点から四十三分にはもう追加点だし、試合の流れなんてそんなもの。後半では徳島のほうが勢いに乗っているように見えるわ。あれ、ドウグラス出すの。怪我は大丈夫なのかしら。でもここで三点目となるとまさしく決定的ね」


「京都としてはまず一点だよねえ。満塁ホームランで一挙四点とかないんだし、とにかく点を取らないことには始まらない。でもどうやって攻めるのか、今は京都にとって厳しいね。原と三平出してきたけど徳島のGK松井もいい感じだし。で、J1の順位はセレッソで以降は鹿島、浦和と来て、新潟がお見事賞金圏内の七位かあ。去年はギリギリ残留だったけど持ち直したんだね」


「鹿島と浦和は最後に負けてこの順位。特に浦和は到底納得できる順位ではないでしょうけど、来シーズンはACLもないし楽にやれるんじゃないかしら。以下はFC東京と清水を経て、柏と名古屋は二桁順位なのね。序盤は守備が不安定だったけど途中補強成功の鳥栖が十二位で仙台はその下十三位。去年は優勝争いしてたのに気がついたらすぐこれだから恐ろしいわね」


「最終的にいつもの順位に戻った大宮十四位でこれまた補強が功を奏した甲府が十五位でここまでは残留成功。そして、これ以下の湘南、磐田、そして大分は大変残念ながら来シーズンはJ2で戦う事になっちゃったと」


「湘南は単純に戦力不足。キリノとか途中でいなくなるし。やりたい事ははっきりしてたけどね。磐田は選手が揃ってたと言うけど去年中盤以来の失速から立ち直れなかったわね。まあ嫌な雰囲気はここ数年ずっとあったし、ついに来るべき時が来てしまったという事ね。ガンバですら降格するこのご時勢、磐田がそうなるのも不思議じゃないわ。そして大分は、まあJ2の六位だしこんなもんでしょ。またJ2でやり直しね」


「そしてこの試合もここまでの流れを見るに京都も来年はJ2って雰囲気だね。今年はガンバと神戸が明らかに有力で、案の定自動昇格はこの二つだったから大変だっただろうね」


「千葉と京都は今のポジションが板についてるのがちょっと侘しいわね。磐田は来年駄目だとお仲間になりかねないわ。そして更に下のヴェルディルートも。それにしてもこの試合、京都は極めて追い詰められたわね。最後に宮吉を出したけど何となく得点に結びつく雰囲気がないわ。とにかくすぐにでもゴールが必要だけど、それで焦るとうまくいかないものよ。徳島は逆に焦る必要ないわけだし、心理的にも全然違うわ」


「ところで今の試合をやる前にやってた試合だけど、J2最下位の鳥取とJFL二位の讃岐によるJ2の枠をかけたプレーオフ。これに讃岐が勝ってJ2昇格を決めたらしいよ」


「鳥取は来年新設されるJ3に回る事になるけど、聞いた話ではこの試合でも相当まずいサッカーをやって解説者が激怒しまくってたみたいじゃない。ただ監督交代とその人選などもやもやしたものが漂うのも仕方ない運営だったし、まずは選手、監督コーチ、フロントとの一体感が大事よね」


「それとこれも昨日の話になるけど、ワールドカップの組み合わせ抽選あったけど、コロンビア、ギリシャ、コートジボワールに決まったね」


「これも読めない組み合わせよね。突破出来るかも知れないし全敗で散る可能性だって十分にある。まあ余裕な相手が出るような大会じゃないのは言うまでもないし、望むところって感じじゃないかしら。サンフレッチェからは、西川ぐらいかしらねえ。移籍しなければ」


「佐藤寿人とかきっとないよね、今更。青山とかあるといいけどな。そして試合はもう後半も四十五分過ぎて、残りはアディショナルタイムの三分か。徳島は集中が切れる雰囲気もないし、これはもう決まったかなあ。一点は入るかも知れないけど時間的にも二点はきつい」


「それは笛が鳴るまで言えるもんじゃないわ。でも限りなく確定に近いわね。千代反田や藤原、橋内も含めて徳島の守備がしっかり頑張ってるし。大木監督のサッカーは結局攻撃のパターン少ないし、それを対策されたらどうにもならない感じが結局改善されなかったわね。パスを回してもその続きがないようでは……」


 そしてタイムアップの笛が国立競技場に鳴り響いた。2対0というスコアで徳島ヴォルティスが自身初の、四国のクラブとしても初となるJ1昇格を決めた。おめでとう徳島。


 しかし渡海雄と悠宇はしばらくその言葉を発す暇がなかった。試合の余韻も冷めやらぬ午後五時二十分、日は落ちて暗くなってきたと言うのにグラゲ軍の活動が発見されたからだ。感動に水を差すとはまさにこれ。しかしその分闘志も普段より湧き上がっているというものだ。二人は素早く変身すると、敵が出現したポイントに身を躍らせた。


「ふはは、私はグラゲ軍攻撃部隊のオポッサム女よ。あまりにも凄惨な惑星環境をいち早くまっとうなものとするために我らの任務を果たさねば」


 身を切るほどの寒風吹きすさぶ草原はたった今まで枯れ草だけがたなびいていたが、そんな寂寥感漂う場所にオポッサム女と雑兵たちが出現していた。ほんの少し遅れての後、さらに二人加わり余計賑やかになった。


「またしても現れたなグラゲ軍! こんな大事な日でさえも!!」


「今からこの大地は一夜の眠りにつこうとしているのに、あまり騒ぐようなら容赦しないわ!」


「ふん、ようやく現れたか逆臣ネイの手下どもめ。さあ雑兵どもよ、奴らの首を掻っ切って名を上げたい者はかかれ!」


 オポッサム女の指示によって数十の雑兵が一気に襲いかかったが、山の上より吹き降ろされる風が草原を隅から隅まで一撫でする間に大半は片付いていた。


「もう残ってるのはお前だけだぞオポッサム女!」


「オポッサムならば持ち前の臆病さを発揮してさっさと逃げ帰ればいいものを!」


「馬鹿にするなよ。戦いはこれからが本番なのだ! 見るがよい!!」


 オポッサム女は懐からスイッチを取り出すと、例によって例のごとく巨大化を始めた。あくまでも闘志を失わないグラゲ軍必死の抵抗を振り払うにはこっちも同様の手段を用いるしかない。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 渡海雄と悠宇はお互いの心身をまったく一つにして、大いなる巨人と化した。暗闇の中、ただ四つの瞳だけが煌々と輝いており季節外れの人魂を思わせる。その人魂が素早くゆらめいて一筋の線と化した時、勝負は決した。


「ええい、メルティングフィストでとどめだ!!」


 一気に接近したメガロボットは渡海雄が押した朱色のボタンに導かれるように右拳をプラズマ超高熱線で輝かせた。そしてその輝きはオポッサムロボットの胴体を貫いた。


「むうっ、もはやこれまでか! 忌々しい奴らめ、撤退する」


 自分の腕を持っても倒すべき敵を仕留められなかったという屈辱感に打ち震えつつ、オポッサムロボットが爆散する寸前に作動した脱出装置によってオポッサム女は戦場を離脱した。今日もまた地球の安寧は守られたと言える。変身を解除した後、カープに関しては補償が決まってから話そうと確かめ合って、二人は家路を急いだ。

今回のまとめ

・やったぜ広島まさか連覇出来るとは思わなかった

・そして徳島と讃岐もおめでとうございます

・一番近場のクラブが京都だけどまたJ2に定着してしまいそうだ

・スタジアムは後三十年以内には出来てると思う

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