表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
250/398

hg34 少年隊について

 クリスマスも終えて気分はすっかり新年への準備といきたいが、今のうちにやっておくべき事はまだ残っている。


「でももう学校も冬休みだし年賀状も書いてポストに出したし、後は何かあったっけ? Jリーグが無事に終わったとか?」


「でも終わったのが一九日とかだからね、これは来年に取っておく予定。そのうち新戦力とか動きがあるかも知れないし。ないかも知れないしむしろ減ってるかも知れないけど」


「そうなると困るよねえ。話題も」


「でもとみお君こそ何かあるでしょ? こういう時のためにストックしておいたネタが」


「いやあ、今年はコロナもあってそういう弾ももう出し切ってて……。あっ、そうだ。この十二月に元光GENJIで今もジャニーズ事務所に在籍し続けている内海と佐藤敦啓がクリスマスイベントを開催したんだ」


「へえ。でも今までなかったほうが不思議なくらいだけど」


「グループ最年長と最年少だし現役時代から今に至るまであんまり絡んでいた印象がない二人ではあったけど、特に内海は年に一つ二つぐらい舞台に出演するぐらいしか表立った活動してなかったのもあるし。それを思うと内海のルックス、想像以上にキープしてたのには驚いた。相変わらず細いし」


「もう五十何歳だっけ? むしろある程度ふっくらするほうが自然だろうに、よくやるわね」


「これぐらいのルックスなら復活してもそれほど見苦しいものにはならないんじゃないかな。ところで光GENJIの先輩にあたる少年隊のメンバー三人中二人が今年末を限りに退所する、しかし解散はしないという決断を下した。でもグループの活動はここ十年以上行われていなかったし今回の決定を受けて何らかのライブなりイベントなりをするでもなく、来年以降もまったくの白紙状態だそうで」


「それ解散とどう違うの?」


「そもそもとっくに事実上解散していたと言えるし、結局所属が変わったところで現状が何か変わるわけでもないから改めて解散する必要もないと考える事も出来る。そして残された唯一の真実と言えば、今回の件に合わせて実に三十二年ぶりとなるベストアルバムが発売されたという一点だよ」


「三十二年って、凄まじいわね」


「実際少年隊の売り方は、例えば概ね年四枚シングルに半年に一枚アルバムというアイドル王道ペースを歩んだ光GENJIなんかとはかなり違っていた。それはただ若さを消費するだけのアイドルグループで終わらせたくないという、故ジャニー喜多川の執念の為せる業だったのかも知れない。ジャニーズの最高傑作はという問いに少年隊と即答したとされる喜多川は彼らをエンターテインメントの本場アメリカでも通用するような実力者に育てる意気込みを持っていた。でもそこまで愛着を持たない一般目線から言うとさすがに引っ張りすぎだよねえ。需要がないわけないのに」


「そんなに力入れてたグループだったんだ。世代が違うのもあってベテランの実力派ってイメージぐらいしか知らなかったけど」


「まず少年隊という存在について、当初は今で言うジャニーズJr.の事をジャニーズ少年隊みたいに呼称してたらしいけど八十年代前半、その中から選抜されたメンバーこそ少年隊という事になった。そのメンバーとは錦織一清、植草克秀、東山紀之、そして松原康行」


「あれ三人じゃなかったっけ」


「GENJIの田代秀高然り初期に知らないメンバーがいるのはよくある話。ここから東山が一時的に芸能活動をセーブしたタイミングがあって、その時に錦織、植草、松原の三人で少年隊となるもそのうち東山が復帰、松原は脱退して広く知られる三人組となった。これが一九八二年の事。最初はバックダンサーとして名を売り、ドラマに出たり当時有名だった歌番組に出演するなどデビュー前からすでに高い人気と知名度を誇っていた」


「デビューする前に歌番組に出て何を歌ってたの?」


「先輩の歌だったりレコードになってないオリジナル曲だったり。結成からデビューまでほとんど間のない光GENJI関連でさえ『今、君と歌いたい』とか未音源化楽曲はいくつかあるし、デビューまで時間のかかったSMAPはデビュー曲のカップリングがそうした曲のメドレー、KinKi Kidsはファーストアルバムでそれらの曲を蔵出し大放出した。一方少年隊は、一部はこの間のベストアルバムで初めて音源化されたけどつまりそれまで三十数年放置されてたって話だし、未だに拾われていない楽曲も多い」


「まともなベストアルバムすら何十年と出ないし、ファンはよく耐えられたわね」


「東山の如きストイックさをファンにも求められるとか参るよね。そんなデビュー前の少年隊だけど、錦織は先輩で言うと田原俊彦の系譜を次ぐ正統派、植草はやんちゃそうな近藤真彦タイプのルックスだけど、初期東山の荒削りさには驚かされる。それでデコードデビューは一九八五年の十二月十二日」


「そしてその楽曲が『仮面舞踏会』。作詞ちあき哲也、作曲筒美京平、編曲船山基紀」


「先日物故された筒美の数ある代表曲の一つでもあるし、船山の編曲、特にイントロ作るのに苦労したって話やら紅白で司会から『仮面ライダー』と思いっきり間違えられた話は散々こすられてるから有名な一曲。二番サビの詰め込みまくったところとか歌うのも難しそうだし、だからこそアイドルにして実力派と知らしめるには十分のインパクトだけど、個人的には聴いててちょっと疲れるかなってのはある。チャゲアスだと『モーニングムーン』みたいな、力入ってるのが分かりすぎるというのか。曲の合間に響くシャウトが絶妙に下手なのはちょっとした脱力要素になっててありがたいけど」


「でも一発目からこの大人びた雰囲気はさすがよね。ルックスもかなり出来上がってるし」


「年齢は錦織が二十歳だけど、それ以上に成熟した雰囲気が漂う。彼は洗練されたルックスだけでなく歌もダンスもセンス抜群でトークも軽妙かつファンサービスも良いらしく、詳しい人ほど絶賛してる感じ。動画サイトのコメントとか見てると圧倒的に一番人気だし。そして東山、涼しげな目元が印象的なスッキリとした顔つきというそれまでのジャニーズにはあまり見られなかったタイプの美形として見事に仕上げてきた。よっぽど努力して磨き上げたんだろうね。それで天才型の錦織と努力型の東山、そうでもない三枚目の植草みたいなキャラ分けがなされた」


「植草だけしょっぱい役回りね」


「でもだからこそ醸し出される愛嬌ってものもあるからね。ともあれジャケットとB面を変えた三パターンシングルという力技もあってデビュー曲は無事ヒットしたけど、二枚目の『デカメロン伝説』で早速オリコン一位を逃した。出だし二十数秒が『地球をさがして』レベルにダサいし仕方ないかな。そこを超えればきらびやかでいいんだけど。次の『ダイヤモンド・アイズ』も珍妙なノリだし、ベストアルバム聴いててもここでいきなり失速を感じる」


「でも変な癖になる曲調ではあるわね」


「それ以降はかなり持ち直すんだけど。その中でアイドルらしい『stripe blue』『ABC』などと並んで『君だけに』『ふたり』といったバラードが散見されるのも洗練された魅力を誇りたい少年隊らしくて良い。なお後者は飛鳥が作詞作曲したものの自分が作った『パラダイス銀河』に及ばず一位を逃すという、楽曲提供者として需要がピークだった時代を偲ばせる話も残っている」


「アイドルとしては後輩の光GENJIに食われた感じなの? そうだとしたら数年鍛えた秘蔵っ子がその場の勢いみたいなぽっと出に抜かれたってのも悲しいわね」


「アイドルにとっては若さの衝動って大事だから。八十九年にオリコン一位を獲得した『まいったネ今夜』は当時の光GENJIには無理だろうというジャズテイスト濃厚な楽曲で、この年はこれしかシングル出してないしアイドルとしては勇退ってところなのかな。ところで『CO CO RO』は元々少年隊が歌う予定だったらしいけど、あんな底抜けに陽気な曲をこの翌年に出すのも変だよね。すでに『いい歳していつまで少年隊なんだよ』みたいな揶揄はあったみたいだし、光GENJIに回されたのも納得。そんな九十年は一気にオリコン十位以下とかまで落ちて、以降はシングルは数年に一枚出す程度となった」


「それはちょっと減りすぎでしょ」


「ただ九十年代にも一定の存在感を放つ楽曲はあったし、メンバーはそれぞれソロ活動で十分活躍していた。その中でドラマがヒットするなど一番目立っていたのは東山だったのは間違いない。錦織と植草も決してここ二十年ぐらいの内海みたいな消え方をしてたわけじゃないんだけど、相対的には格差が広がったように見えるのは否めないところ」


「実際私も東山とその他ってイメージしかなかったし。写真見ても錦織と植草の見分けつかないし」


「結局髪型なのかな。光GENJIだとメンバーほとんどが前髪を下ろしてる中で上げてた大沢がやけに大人びて見えてたけど、少年隊の場合は東山が一貫して横分けしてる一方で他二人は前髪上げてて見た目被ってたりするし。ただそんな時期でも九十三年までは毎年紅白に出てたし、それにPLAYZONE、これはデビュー当時から毎年公演されたミュージカルで、シングルにはならなくてもそこで新曲は披露するし普段はソロ活動してるメンバーも集結するというまさに少年隊というグループの軸と呼べる存在があったからこそ解散などせず逆風の時代を走り続けられた」


「ミュージカル俳優に転身したようなものなのか」


「元々ジャニーズ自体がブロードウェイへの憧れから生まれたものだし、ファン以外から目につかなくなろうがこの世界の中では絶対的正解と呼べるほどの王道ど真ん中を歩んだと言える。このプレゾンは二十一世紀になってからも続き、佐藤敦啓や赤坂も出演するようになった。しかし二〇〇七年、その年のPLAYZONEにも出演していた赤坂が薬で逮捕。その翌年を限りに少年隊は勇退して当時まだJr.だったKis-My-Ft2ら後輩に主演は引き継がれたものの、開催されていた青山劇場取り壊しに伴い十五年でいよいよ千秋楽となった」


「しかしそうなるといよいよ少年隊として活動する軸がなくなったわけか」


「ラストシングルは二〇〇六年だし、活動のないまま十年以上待たせてこの結末。ルックス的にもたゆまぬ努力で輝きを保っている東山と衰えた二人、みたいな図式を感じるのは容易だけに『稼働率を期待出来ないベテランを切った』みたいな論調で語られたりもしたけど、真実がどうなのか見えてくるのはもう少し先になるかと思う」


「本当にそういう理由だとしたらまず内海はって話だしね。ただこの年齢になっていきなり野に放り出されてどうするのかしら」


「十分功績を重ねた人達だし、やりたいようにやればいいんじゃないの。ともかくようやくまともなベストアルバム発売して『What's your name?』を普通に聴けるようになっただけでもありがたいよ。この曲凄いよね。出だしからひたすら盛り上がりまくるし、ダンスがまた凄まじい。ガチャガチャと並びが変わりまくってそれぞれ異なる振付をこなしつつ統一感は抜群。ジャニー喜多川が少年隊こそジャニーズ最強と断言したのも頷ける、まさしくエンターテインメントそのものをたったの三人で体現している」


「そんな曲が三十年以上当時出たシングル盤でしか聴けなかったとか、もったいない事してたのね」


「ジャニーズ自体過去のコンテンツを振り返らない傾向があるけど、やりすぎるとこれはもはや文化の損失だよね。ところで当初の少年隊はアメリカデビューも目論んでいたみたいだけどそれはままならず。しかしアジアでは人気を得て、台湾の小虎隊や韓国のソバンチャなど少年隊を模したグループがいくつか生まれている。前者はデビュー曲が『What's your name?』のカバーだし、韓国初の男性アイドルグループとも称される後者は『ダイヤモンド・アイズ』のパクリと叩かれた曲を出した。実際どんなものか動画サイトで確認したら確かに似ていた。でもそれ以上にゴールデンカップス時代のミッキー吉野みたいなデブがセンターにいて、それが一番人気だったらしいのが衝撃だったよ」


「どういう言い方よと思ったら本当にデブで、これはカルチャーショック」


「価値観って変わるものだね。しかし少年隊、やっぱりダンス凄いよ。アイドルとしての旬は短かったけど、その中で『What's your name?』『ABC』など鮮烈な曲を数多く残せたんだから十分。嵐も活動休止だし、新しいものが入れば古いものが去っていくのは世の道理。そしてもう数日で二〇二一年は訪れるからね。カオスだった二〇二〇年もそろそろ見納めとなると少し寂しいよね」


「まあ来年もカオスにならない可能性は低いけど」


 このような事を語っていると敵襲を告げるサイレンが鳴り響いたので、二人はすぐに戦闘モードに移行して敵が出現したポイントへと急いだ。


挿絵(By みてみん)


「ふはははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のドウガネブイブイ男だ! この汚染された惑星に正義を広めてやる」


 コガネムシっぽいけどコガネムシじゃない虫の姿を模した異星人の男が落ち葉にまみれた林に降り立った。銅みたいな色でブイブイと飛ぶ虫だからこうなったみたいだが、まとめると凄いセンスになってしまっている。しかし名前はユーモラスでも今の彼は侵略者。そうはさせじと地球からの抵抗はすぐに出現した。


「出たなグラゲ軍。お前達の思い通りにはさせないぞ」


「歳末に元気なのはいいけど余計な暴力は不要よね」


「まったく意味不明な発言だが許そう。それが最期の言葉となるのだから。さあ行け雑兵ども。奴らを殺せ」


 無慈悲な指令とともに繰り出された無機質な殺戮マシーンを、二人は無私の心で次々と撃破していき、いよいよ全滅させた。


「よし、雑兵はこれで終わりか。後はお前だけだドウガネブイブイ男」


「これで今年分は終わり、そして来年分はもう何もないなら最高だけどな」


「そうだな。これで終わりとなる。お前達はここで死ぬのだからな!」


 ドウガネブイブイ男はそう言うと懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。おそらく今年最後となる強大な暴力に対抗するにはやはり暴力しかない。その悲しい連鎖を断ち切る日はなかなか訪れないが、いつかそうなる日を願いながらその可能性を絶やさぬため今日も二人は合体した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 凍りつきそうなほど鋭く激しい敵の突進に足を取られる事なく、悠宇は持ち前の反射神経で攻撃を回避しつつタイミングを見計らい、一気にカウンターを決めた。


「よし、今よとみお君!」


「せっかく作ってもらったチャンス、確実に決めるにはメルディングフィストだ!」


 渡海雄は即座に朱色のボタンを押した。プラズマ超高熱線によってヒートした拳による一撃が敵の防御を破壊した。


「ええい忌々しい、そして愚かしい連中め。今に後悔するだろう」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によってドウガネブイブイ男は宇宙へと帰っていった。これで今年分の更新は終了。そして来年の元日にはいつも通り再会する予定。

今回のまとめ

・内海はもうちょっとでも露出が増えるといいんだけど

・少年隊は東山が努力によって下剋上を果たすドラマと言える

・エンタメとしての完成度の高さを無駄遣いしたような曲が多い印象

・でも「What's your name?」は曲もダンスも本当に好き

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ