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sk09 菅義偉総理大臣就任について

 秋は日に日に深まりつつあるものの、日中の日差しはまだまだ強さを残している。それでも気付けば夏全盛より十度も最高気温が下がっている。日本が秋色に染まりゆく今、渡海雄と悠宇の心もその空のように朗らかであった。


「それで案の定菅総理に決まったね」


「早い段階で自民党内の実力者からの支持を固めて既定路線になってたからね。だから誰が自民党の総裁になるかではなく、石破と岸田の二位争いのほうが重要になっていた」


「結果的には岸田が二位で石破が最下位だった」


「得票を見ると、地方票では石破は一定の支持を見せたものの議員票が残酷なまでに流れなかった。逆に岸田は地方票がかなりしょぼかったけど議員票でどうにか逆転した。まあどっちにしろ菅の圧勝だったんだけどね」


「そんな状況であんな笑顔を見せられる岸田はいい人なんだろうかな」


「まあここで最下位じゃなかっただけ次につながったとも言えるしね。それにしても岸田、それなりに長い間次の総理候補と言われていた割に知名度は全然だったし、何よりそれを高めようという努力とか自己PRがあまりにも少なすぎたわね。菅は安倍内閣のスポークスマンである官房長官として、ニュースなんかでも常に顔を出して存在感を高めていたのとは正反対」


「それで今更のように著書が出版されたものの、すでに敗北必至の状況で出されてもね」


「でも今回ので少しは知名度も高くなっただろうし、それはそれでいいんじゃないの? それよりも今は菅内閣や自民党上層部の人事だけど、正直あんまり期待出来そうにないわね」


「でも最初から病気を理由に退陣した安倍内閣の後継ってコンセプトだし、それだとあんまり変化がないのも当然なのかな」


「菅もすでに七十歳を超えているご老体、どれだけ続くかは分からないけどまあ決まったからにはちゃんと仕事してくれるとありがたいわね。ところでカープだけど、相変わらず雑な試合が多いわね」


「と言うかやっぱりまずは投手だよね」


「フランスアはともかく塹江、島内、ケムナなど実績皆無の投手陣が打たれたり抑えたりしながらどうにかやってるリリーフ陣も相変わらず厳しいけど、その分将来への展望も見られるわけでこれはまあいいわ。それで今日入った情報だけど、なんとDJジョンソンが楽天へ金銭トレードだそうで」


「えええ! あれで商売出来るほどバリューあったんだ!」


「放っておいたらオフに戦力外だったであろう選手がこういう形で生きるんだから、感謝の心を持って送り出さないとね。それにかつて日本ハムで凡庸だったエスコバーがDeNAではタフなリリーフとして戦力になったみたいに、DJも秘めたる力を発揮するかも知れない。それならそれで力を引き出せなかったカープの首脳陣は何やってんのって話になるけど、ともあれ今はそれ以上に先発よ、先発」


「単純に駒が足りてないよね」


「ジョンソンみたいな出れば負けの投手を『一つ勝てば変わる』などとオカルトじみた理論をこじつけて延々と起用し続けたり、明らかにおかしな投球をしていた大瀬良も無理に使って炎上して結局手術で今季絶望になったもの結局はそこにつながる部分だからね」


「でもリリーフから回した薮田や二軍調整していた床田は案の定無残な結果に終わったし、ついには中村祐太までもが上がってきたけどこれまた……」


「そんな中村ぐらいしか二軍でまともにローテ回せてる投手がいないというどうしようもなさがしんどいわ。この間なんて岡田がまったくコントロール定まらず早々と降板してたし」


「実績もあるのに何がどうして矢崎以下にまで落ちてしまったのか」


「二軍で希望と呼べるのは二年目の田中法彦と育成の藤井黎來ぐらいだけど、二人ともリリーフ起用がメインなので先発強化には役に立たない。そのうちメナが上がってくるかと思ったけどなかなかしない、あるいは実力的に出来ないと見ているのか。そんなこんなで現状ルーキー森下が一番計算出来るエースだなんて、まさに惨憺たるという表現がぴったり当てはまる状態よね。野村、九里、遠藤らももはや投球内容以前に怪我しないでという心配しかないわ」


「いや本当に、去年森下を単独指名出来てて良かったよね。現時点でも大概酷いのに更に森下もいなかったらと思うと、もうプロじゃないもん」


「だから今年のドラフトでは上位三人で即戦力になりそうな大学生や社会人の投手を最低でも二人は指名してほしいと願うわ。それでも一軍二軍の不健全な状況を即是正するにはまだ足りないんだけど、とにかく現状も未来も絶望的な現状をどうにかしない事にはね」


「ドラフトは例年の流れだと後一ヶ月ぐらい先になるのかな」


「今年はコロナでシーズンの日程がずれてるから、シーズン中にドラフトが開催となるのはちょっと違ってる部分だけど、分離ドラフト時代の高校生ドラフトとかそういう例はないでもないからね。今年は派手に競合するような目玉は少ない代わりにそこそこいい感じの即戦力投手は揃っているって評判だからその辺を上手く掬っていければ」


「でもこういうところでバシッと素材型の高校生に走りそうな懸念もないでもないよね」


「そういう選手、好きだもんね。もちろんこの男しかないと確信出来るような優れた素材を指名するのは大事だけど、それだけでは立ち行かなくなるのは現状の通りだからね。三連覇してた頃は二位で即戦力があまり残ってなかったけど、今年はまだ決定してるわけじゃないけどまあBクラスでしょ。二位も即戦力投手を指名するならむしろ選択肢が増える最下位のほうがありがたい、高校生野手を指名するなら四位はどうにか確保してほしいところだけど、そこもなるようにしかならないからただ見守るのみ。ともあれ投手陣に関しては今からでもトレードなり何なりで手を打ってほしいんだけどね。枠はあるんだから」


「一方で野手のほうも問題がないわけじゃないよね」


「打線としてのつながりがあまり良くないし、松山の守備はひたすら下手だし、そのお陰で他の内野手の守備成績も悪化してるし、西川や會澤は怪我で離脱するし。それでも野手はまだいいわ。投手と違って若い希望が数多くあるから」


「育成出身の大盛とか今一軍で頑張ってるよね」


「巨人の増田やソフトバンクの周東、ロッテの和田など育成出身の俊足タイプが一軍で活躍している流れの一端とも言えるけど、そもそもカープの育成ドラフト出身者はこれまで全然戦力になってなかったからね。それまでの最高実績者が一安打とかだし、そういう意味だともはや存在自体が球団史を塗り替えている凄い男よ。もちろん戦力としてもセンターを守れる選手としてはチーム一だし、野間みたいになる事なくポジションを奪うぐらい頑張ってくれるといいわね」


「本当ならセンターは野間で安泰と言いたかったのに、どうも中途半端なところに留まってるよね」


「根本的に頭の中身を入れ替えなきゃね。素質はあるだけにもったいない選手よ。ともあれ大盛以外も羽月や正随も一軍デビューしてそれぞれ見せ場を作ったし、二軍にはまだ林や宇草、そして小園だって控えている。特に小園は九月に入ってから猛烈な勢いで数字を上げてきた」


「実際今すぐにでも出てきてほしい選手だよね。田中が今年も低調な数字だし」


「田中はねえ、この程度の成績の選手が他に人材がいないからとレギュラー安泰なあたりはいかにも暗黒的だけど、実際のところ今控えにいる上本、曽根、三好あたりではトータルの実力で太刀打ち出来ないのは分かっている。やはり下からの突き上げを期待する他ないわね」


「今年ドラフトで即戦力内野手獲得って手はない?」


「個人的にはあり、と言いたいけどそこに割く枠があるかどうか。野手に関しては右の長距離砲を狙っているともっぱら。小園にせよ林、宇草も大体左打者だもんね。鈴木誠也もそのうちアメリカへ行ってしまうでしょうし、その辺は今のうちから手を打たねばならないのは確か」


「今年のドラフトで候補者はいるの?」


「右打者で長距離砲で、しかもサードを守れそうなある高校生の評価が高いという噂よ。とは言っても野手でいきなり戦力になるような選手が出てくるものではなく、本当の即戦力と言えば外国人だけど、アメリカでマイナーリーグが開催されていない現状でどう見極めるのかと考えるとこれまた難しい。それがなければ投手陣も含めて残留はフランスアのみでそれ以外はごっそり入れ替えるぐらいの改革を、とか言いたかったんだけどね」


「でも一塁守備が人並みに出来る人なら多少打撃がまずくても……」


「そういう極論を『でも一理あるかも』と思ってしまう心の弱さを今否定する事は難しいわ。本当に松山の一塁守備はねえ……、端的に言ってプロじゃない。周りの選手、特に菊池なんかはももう松山を諦めているみたいだけど、ああいう異常事態が常態化させてはいけない。ランナーがいる場面で強いなら代打でいい。常時守備させるマイナスは計り知れない」


「ましてや多くのプレーに絡む一塁だし、本当にどうにかしてほしいよね。ところで異常事態と言えば大相撲の秋場所、白鵬と鶴竜の両横綱が全休という奇妙な事態になってるね」


「それで特に鶴竜は、次に出る時は進退のかかる場所になるけど、もう二人とも三十五歳だから仕方ないわ。晩年の横綱が全休連発なのは昔からよくある話だし、むしろそんな大ベテラン二人の牙城を決定的に崩す新鋭の登場が見られない事こそ真の異常じゃないかしら」


「当然期待されるべき朝乃山は初日からまさかの三連敗スタートだし。まあその後連勝して持ち直してきたみたいだけど、まったく読めない展開が続くよね」


「すでに全勝力士どころか一敗力士すらいないという混戦模様。これじゃまだ朝乃山すら可能性あるわね。貴景勝とかそろそろ大関らしい姿を見せてほしかったけどあっさり変化に引っかかってしまうし」


「一週間後にはどうなっている事やら。後はサンフレッチェについてはどう?」


「どうもこうも、強いチームには負けてそうでもないチームには勝ったり引き分けたりで、これは城福監督の手腕がここまでなのか選手の力不足なのかは知らないけどもっと突き抜ける事が出来ればいいんだけどね」


「それにしても川崎には滅多打ちだったね」


「もしかするとそうなるんじゃないかなとは思ってたけど、やはり強かったわね。でもこのまま川崎が独走優勝するのもつまらないから、もうちょっと波乱があるといいわね。それを巻き起こすのはサンフレッチェじゃないにしても」


「ただでさえ残留争いは消滅してるのに優勝争いまで無風じゃあねえ」


「下位だと久々の昇格で苦戦は免れないと見られていた横浜FCが若手の躍動もあって健闘している一方鳥栖、清水、仙台、湘南といった経営などに大きな問題を抱えているチームが低迷している。本来ならJ1から退場すべきチームがこうやって残る来年は一体どんな戦いになるか、今から不安であり楽しみよね」


「そしてJ2では、なんとJ3から復帰したばかりの北九州が目下首位という以外な展開」


「とは言えまだまだ半分未満。コンディションの維持も大変だし、本当の実力が出てくるのはまさにこれからよ。そういう意味では徳島、長崎、福岡、甲府といったJ1でも見た上位の面々こそ本命に近いのは変わらない」


「涼しくなる季節、さらに熱い戦いを見せられるといいね」


 このような事を語っていると敵襲を告げるサイレンが鳴り響いた。これで僕たちの連休も一時中断かと二人は覚悟を決めて戦闘体勢へと移行した。


挿絵(By みてみん)


「ふはははは、私はグラゲ軍攻撃部隊のビワマス男だ。この青く汚れた星を正義で満たすのだ」


 琵琶湖の固有種で現地では好んで食されている魚の姿を模した男が水温の冷えた水辺に出現した。そろそろ産卵の季節だが、故郷の川でもない地球に奇妙なものを産み付けられても困るので、それを排除する勢力がすぐに訪れた。


「ついに出たなグラゲ軍。お前達の思い通りにはさせないぞ」


「そろそろ来ると思ってたわ。でもこの地球はあなた達には渡せないのよ」


「むう、あれが噂に名高いエメラルド・アイズか。即刻倒して俺の手柄としよう。行け、雑兵ども」


 容赦なく繰り出されるメカニカルな雑兵は、さながら琵琶湖に放流されたブラックバスのようであった。しかし二人は外来種なんかに屈さない。次々と撃破してその存在を守り通した。


「よし、これで雑兵は全滅。後はお前だけだビワマス男!」


「お互い食うか食われるかじゃなくて共存共栄こそ真の生き方だと信じてほしいのよ」


「軍人にそれを言うとは笑止千万。今俺はここにいる。それは血で血を洗うためだ!」


 ビワマス男はそう言うと、懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。やはり戦うしかないようだ。この星を守るためには。二人は覚悟を決めて合体し、迫りくる驚異に対抗した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 目には目を、巨体には巨体を。マシン同士の戦いは空を引き裂く激しさであった。その中でも悠宇は少しずつ自分のリズムを掴んでいって、そして体当りするように一撃を食らわせた。


「よし今よとみお君!」


「分かった。ここはエンジェルブーメランで勝負だ!」


 ほんの一瞬だけ生じた隙を見逃さず、渡海雄は桃色のボタンを押した。肩から飛び出たブレードを組み合わせて放り投げると、その刃は敵のボディを切り裂いた。


「くっ、強いな! この恨みは忘れんぞ!」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置でビワマス男は本来の故郷である宇宙の彼方へと帰っていった。しかし気付けば暗くなるのも早くなったものだ。


 そういえば国勢調査も先日回答した。思えば前回とほとんど状況は変わらず、五年なんてあっという間だなと溜め息が出た。

今回のまとめ

・菅総理は期待出来ないと思えてもそれを裏切ってくれたほうが喜ばしい

・DJジョンソンが他球団に需要あるとは驚いたけど活躍するといいね

・松山を守らせるのはもはや敗退行為なので一刻も早くやめて

・横綱不在の大相撲は何が起こっても不思議ではなさそうだ

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