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sw10 コロナウイルスが蔓延する社会について

 先日の三月二十日金曜日に春分を迎えたこの日本。つまりこれからは太陽の時間が暗闇の時間を凌駕するのだ。それなのに未だにコロナは猛威を奮っている。


 そんな暗黒時空においても小学校の卒業式だけはどうにか挙行されて、卒業生のみんなはちゃんとお別れが出来たんだから良かったねと渡海雄と悠宇も安堵していた。


「とは言えお店の棚にティッシュやトイレットペーパーが少しずつではあれど残るようになってきたし、一時期のパニックからは脱しつつあるはず」


「そうだといいけどね。しかし本来なら今頃はセンバツの真っ最中でプロ野球も開幕してたんだけど」


「センバツは完全に中止だし、プロ野球もまずは四月十日以降の開幕にずれ込んで、それからもまた延期するみたいだし。もちろんJリーグも試合なんてやれないし、道はまだ険しいね」


「本当ならオープン戦の成績を見て色々語る事もあったんだけどね。ピレラが四割打ってて守備はともかく打撃ではまず力を見せてくれたし南アフリカのスコットも変化球いいよね、とか。日本人だと高橋樹也、塹江、藤井皓哉あたりから今シーズン三十試合以上、叶うなら五十試合以上投げられる人が一人でも出てくるといいよね、とか」


「でもピレラは何か三軍に落ちてるし」


「それで本来開幕戦の相手だった中日との練習試合やってたけど、もし今開幕してたらあれが公式戦の成績だったと思うとこれはこれで何らかの幸いである可能性はないでもない、のかな。もちろん観客の有無やモチベーションに関しても全然違うんでしょうけど」


「しかしこうなると日程どうなるんだろうね。ただでさえオリンピックでギチギチなのに。いや、そもそもオリンピックやれるかどうかも怪しいか」


「普通に開催される場合ボイコットしそうな国も出てきたし、まず無理よね。それでJリーグも苦慮してるけど、現状第一節が原因の感染者はいないみたいでとりあえず一安心かと思いきやサッカー協会の田嶋幸三会長がコロナ感染してて、相変わらず余計な事ばっかりしてるのが笑えない」


「サッカーこそ凄いよね。今年は降格なしで来シーズンは二十チームでリーグ回すとか」


「最悪シーズン消化しきれずに終了の可能性もあるからね。昇格したばかりで戦力が不安な横浜FCとかいまいち監督がしっくり来てない鹿島あたりは内心安堵してるかもね」


「後清水もかな。かつての上司ポステコグルー監督でも浸透に時間かかった攻撃的戦術をただでさえ守備脆弱だった清水に植え付けるのは大変そうだったけに、これで時間が与えられたわけだから。逆に戦術はもうしっかりしてるサンフレッチェなんかは割と痛恨なのかも」


「第一節もいい内容で快勝して、さあこれからというタイミングだっただけにね。でもこうしているうちにも新外国人のエゼキエウはチームにフィットしているはずだし、それに何より進むべき道は明確に見えているはずなんだからそれを積み重ねられるかという部分においては間違いなくアドバンテージはある」


「城福監督というベースがしっかりしてるのはいいよね。それで言うと現状正しくない道を提示している監督がいるチームだと、うっかり解任のタイミングを逃している可能性もあるのか」


「それこそ鹿島とか、ヴェルディも明らかにやばげ。ただここは自分たちが変なサッカーしてるってだけだからご自由にって話なんだけどね、鳥栖に関してはまた意味が違うわね。ここがこんな形で残留決めるとしたら正直どうなんだろうって感情はあるわ」


「鳥栖かあ……。経営、まずいらしいね」


「サイゲームス撤退に続いてDHCまでもユニフォームから抜けてオフからやばいやばいと言われてたけど、案の定そういう報道が出てきた。多くの企業がコロナで苦しんでるけど、ここに関してはそれ以前の問題。元スペイン代表のトーレス獲得もあまり効果なかったみたいだし、そういうギャンブル的な経営を続けられるほど資金力も地元の体力もないし、そもそもすでに何度か経営危機やってるから仏の顔も三度って話にもなるし」


「厳しいよねえ。潰れてしまうの?」


「現状そうなっても不思議じゃないわね。そもそもシーズン前からこうなるのが分かってたはずななのに、いささか対処がぬるいようにも見えてしまうわ。かつて経営危機に陥ったクラブが売れそうな選手、高年俸の選手はばっさり放出という前例もあるだけにね。それで全然戦いにならずぶっちぎり最下位で降格したクラブもあったけど、それでも命は繋げた。一方で鳥栖、まだ金崎とかいるんだからね」


「契約とかもあるんだろうけどね。ただ社長の考えを見るにそういう泥臭い生き残り策は考えてなさそう。一か八かで負けたらそれまでみたいな」


「それもまた生き方だし、地域から真に求められているなら潰れても後を継ぐ存在が現れるはずだから現状の形に拘泥する必要もないとも言える。まあそんなのは理屈だけの話で、本当はそうやって割り切れるものではないんだけど。……試合がないとどうでもいい方向ばかり探ってしまうのは良くないわね」


「スポーツ界は中止だの延期ばっかりで、でも大相撲は気を吐いた。無観客ながらも十五日間やり遂げたのがまず奇跡的だったよね。途中で千代丸が高熱を発してコロナ検査を受けて、これで陽性なら即中止だったけどどうにか陰性だったし」


「ただ無観客は無観客でなかなか神秘的な光景ではあったわね。テレビで見る分には変な手拍子とか歓声がなかったのは一種の煩わしいノイズが消えて相撲そのものに注目出来たとも言えるし。そして肝心の内容もなかなか充実していた。まず大関取りの場所として注目された朝乃山だけど、最終的には十一勝」


「昇進の目安となる三場所で三十三勝には一つ足りなかったけど」


「豪栄道引退によって大関が貴景勝一人だけという現状を見るにまず昇進でしょ。横綱大関という稀な現象も無事一場所で解消して万々歳でございますと。いや、悪いってわけじゃないけど。確かに力は付けているし。連敗した横綱戦も白鵬戦はともかく鶴竜戦は紙一重だったし。とは言え大事なのはこれから。もう一段階あらゆる部分が育てば正統派として大成する可能性は十分」


「ただ近年の大関は怪我が多かったりしてなかなか定着しきれないよね。貴景勝にしても来場所はカド番だし」


「どうしても格闘技だからね。百何十キロの巨体が全力で突っ込んでくるんだからその衝撃は計り知れない。それを本番で九十回に巡業も加えると、そりゃあ大変よね。怪我するのは当然。その中である程度休みをコントロール出来るにせよ三十代半ばの両横綱が優勝争いだから途方もない話よね」


「白鵬だけでなく鶴竜だって歴代屈指の高齢横綱なんだよね」


「大横綱と呼ばれる力士でも千代の富士こそ白鵬と同じ三十五歳まで続けたけど、大鵬や貴乃花は三十歳で、北の湖は三十一歳で退いている。圧倒的に強かった時代や休場が増えて苦しむ晩年といった栄枯盛衰を経て、十分にやり遂げての引退だったにも関わらずよ。貴乃花の兄である若乃花や北勝海、大乃国など二十代にして限界を迎えた横綱も多い。不祥事で消えた双羽黒とかになるとまた話は別だけどね」


「不祥事で言うと日馬富士も引退時三十三歳で、あれがなければもう少しやれてただろうね」


「医療技術だって進歩してるしトレーニングや栄養学の部分においてもそうだからね。稀勢の里は怪我との付き合い方が上手くなくて短命に終わったけど、時が肉体を癒やしたみたいで今年に入って稽古で朝乃山を圧倒って話が報道されたよね。偉大な先輩での配慮ももちろんあるだろうけど、培ってきた技術や経験に関しては関脇の及ぶところではないからね」


「それで言うと鶴竜も、何度も連続休場してそろそろやばいんじゃないかという展開は何度もあったけどここまで持ち直せるのは怪我との付き合い方が上手いって事なのかな」


「それに加えて稀勢の里が目指すべき理想も重圧になったかなと思うわ。角界の第一人者として常に土俵にあるべきなのはその通りだけど、やはり休むべき時は休んだほうが合理的だった。でも稀勢の里だってそんな事は百も承知の上で美学に殉じたのかなと、今なら思えるわ。横綱まで行くような人は誰でもそれなりの美学はあるからね。例えば昔の横綱はまだやれるのにと惜しまれるうちに身を引く美学ってあったみたいで、大正時代の大横綱栃木山は直前三場所連続優勝からいきなり引退したほど」


「いやあ、それはさすがに早すぎない? なんかもったいないな」


「一応当時でも角界全体より個人の美学を優先して身勝手って批判もあったみたいだけど、基本的には横綱の模範となる鮮やかな引き際とされているわ。ただ価値観は時代によって変化するもの。確かに余力を残しての引退は格好良いけど、まったく通用しないほどボロボロになってから引退するのをみっともないを思うだけでなく別の格好良さを見いだせるようにもなった。栃木山は引退から六年後に出場した相撲大会で現役の役力士を次々と倒して優勝したエピソードが知られているけど、それならなんで引退したんだってなるのが現代でしょ」


「そう言えば急に話変わるけど、鳥谷が退団後ここまで粘った末にロッテ入団したのもその流れにあるのかな」


「鳥谷に関してはまずよく引き取り手が見つかったなという驚きがあるけど、昔なら『阪神一筋で終わったほうが君のためにも良い』みたいな説得されて、よっぽどの変わり者以外はそれに従っていたはず。組織の構成員ではなくアスリートの自由意志を尊重されるようになったとも言える。それでようやく今場所の話に戻すけど、鶴竜は序盤はあんまり良くなかったけど中盤以降持ち直して、気付いたら優勝争いの真っ只中まで戻ってきたって印象だったね」


「初日の内容はいかにも不安で案の定二日目に負けた時は気が気じゃなかったわ。こんな無観客場所で引退とか嫌だなあって。でも終盤以降はテンションを上げていった。逆に白鵬は序盤で独走かと思いきやちょっと不思議な負け方したり、あれって場面もあったけどさすがの貫禄だった」


「朝乃山戦の集中力とか、さすが角界の第一人者というプライドに満ちあふれていたよね」


「そんな横綱二人の相星決戦は、巻き替え合戦を制した白鵬が鶴竜を寄り切って実に四十四回目の優勝を手にした」


「いやあ、四十四回って、もう何もかもが異常だよね」


「優勝回数二位の大鵬が三十二回優勝だけど、これにもう二年分プラスしたと考えるともうただ強いとかそういうのじゃなくてね、超越しているわ。鶴竜もよく頑張ったし、普通じゃない状況だからこそ両横綱がしっかり存在感を示せたのは良かった。これで先場所みたいに横綱不在でそれこそ碧山あたりが優勝していたら一体どうなっていたか。もちろん徳勝龍だのが意外な意地を見せて賜杯を手にするって展開もたまにはいいんだけどね、あんまり続きすぎるのもね」


「しかし次の場所が行われるのはまた二ヶ月後になるけど、ちゃんとコロナ禍は収まっているのかな。病気そのもの以上に、この心の不安こそが最大の敵なのかもね」


「ただ政治家の自粛要請を無視して開催された総合格闘技の大会もあったけど、それを聞いて気持ちの上で『よくやった』より『本当に大丈夫なの?』が大きかったのは事実だけど、ろくな補償もない中で自粛を続けても社会が死ぬからね」


「結局どうにか病と折り合いをつけながら生きていくしかないのかな。まさか四月も学校休みなんて事は、さすがにないか」


 そんな事を語っていると敵襲を告げるサイレンが響いたので二人は会話を切り上げて戦闘モードに移行した。


挿絵(By みてみん)


「ふはははは、私はグラゲ軍攻撃部隊のオオゴマダラ女だ! 裏切り者の逃げ込んだ惑星を正義塗り替えてやる」


 東南アジアや台湾に広く分布し、日本では沖縄などに生息するゆったりした羽ばたきが特徴の大きな蝶々の姿を模した侵略者が花も芽吹きつつある草原に出現した。南国の貴婦人と称される優雅さを誇るが、侵略者となると話は別。すぐに暴力に抵抗する力が訪れた。


「出たなグラゲ軍。お前達の思い通りにはさせないぞ」


「素晴らしい季節に悪しき訪問者。戦うなら容赦しないわ」


「ふん、何かと思えば逆臣ネイの操り人形か。丁度いい。お前達も殺す予定に入っていたからな。行け、雑兵ども」


 地面から次々と湧き出てきたメカニカルな雑兵たちを二人は勢いよく破壊していき、ついに残る敵は一人だけとなった。


「よし、雑兵は片付いたな。後はお前だけだオオゴマダラ女!」


「これから手を取り合うなら喜んで応じる用意はあるし、もうやめましょうこんな戦い」


「何を戯けた事を。貴様らを殺してこそこの戦いは終わるのだ」


 そう言うとオオゴマダラ女は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。春なのに、やはり戦うしかないか。二人は改めて覚悟を決めると合体してこれに対抗した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 光あふれる大空を舞台に繰り広げられる決戦。相手がどれだけ華麗に舞おうが、この世界そのものの美しさには敵うまい。悠宇は持ち前の反射神経で攻撃を回避しつつタイミングを見計らい、カウンターの一撃を食らわせた。


「よし今よとみお君!」


「分かった。ここはサンダーボールで勝負だ!」


 一瞬の隙を見逃さず、渡海雄は黄色のボタンを押した。右手首から放たれた電撃のボールが敵を包んだかと思うと、一気に炸裂してマシンを破壊した。


「ええい忌々しい奴らめ。この私がここまで追い詰められるとは」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によってオオゴマダラ女は宇宙へと帰っていった。桜もちらほら花を咲かせつつある世界に自粛なんて本当は似合わないのだが、一体いつまでこのような戦いを強いられるのだろうか。

今回のまとめ

・コロナは一時期ほどの混乱はなくなった雰囲気も油断禁物

・しかしプロ野球開幕やJリーグ再開はいつになるのか

・無観客の大相撲でしっかり横綱が存在感見せられたのは幸い

・自粛要請ってやり口はいかにも姑息だし補償なしでは拒否も仕方ない

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