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rm34 久々に絶望的だった交流戦について

 そろそろ梅雨時かなという事で、実際に怒涛のような激しい夕立が火照った街を洗い流す日もあるが、全体的にはまだそれほどでもないかなという印象。そして渡海雄と悠宇は今日も元気に学校で落ち合った。


「いやあ、久々にこれは酷いと言える交流戦になったわね」


「うん。本当にどうしようもない戦いが延々と続いたね。まるで開幕直後のようだった。あらかじめ計算していたかのように負ける負ける。雨天順延した試合がまだ終わってないから最終結果に関しては何とも言えないけど、少なくとも最下位は決定している。まさしく無残、悲惨な結果となったけどその原因は?」


「無論、打撃陣よ。投手陣が踏ん張ってるのに全然得点を奪えないまま延長突入して力尽きるという試合が複数あったのはいかにも気の毒だったわ。例えば延長で点を取ったものの裏に返されて引き分けになった日本ハム戦とか、抑えをまっとうしきれなかったフランスアの問題でもあるけど、それと同等かもしくはそれ以上にノーアウト満塁という絶好のチャンスを作りながら一点しか取れなかった打撃陣の責もまた重いものがあると言える」


「打撃陣は誰がどうってレベルじゃないぐらい全体的にさっぱりだったよね」


「その中でも特に野間はあまりにも悪すぎてスタメン陥落したし、菊池とか鈴木誠也もその実力からするとまったく駄目と言うしかない数字。代役にしても松山がやっぱり不発だったりで指名打者のヒットなしが延々続く始末。それと上本スタメンとか骨の髄まで勘弁してほしいわ。ましなのは會澤ぐらいかな」


「そう言えばようやく田中広輔がスタメンから外れたね」


「根本的には四月五月の時点で外れなかったのがおかしかったわけだし。ここに至ってのスタメン落ちは当たり前どころか遅きに失したとも言えるけど、でもそうなった理由は明確なだけにようやく常識的な道を選んでくれたという安堵感も同時にあるわ。大体開幕三ヶ月も経って未だに打率一割台って時点で相当な異常なのに、そんな選手がのうのうとスタメンフルイニング出場を続けてきたというさらなる異常が加わってそれが常態化してたんだからおぞましい話よ。一番としてあまりにも打てないから八番でフルイニング継続とか、そんな茶番がいつまでも続くはずもなかった」


「せめてもっとはっきりと復調してくれれば良かったのにね。一瞬二割台に乗った時はこのまま上げていけるかと期待したけど今じゃまた落下したし。それで代わりに出てきたルーキー小園は、打撃は初打席初ヒットとかなかなかいいものを見せてくれてるけど守備はちょっと、まだ一軍のレベルに追いつけていないのかな」


「そもそも高卒ルーキーが今の時期に上で出てる時点でこれまた異常事態なんだけどね。ましてや二軍で突出した成績を残したから上げるってケースじゃなくて、まだ下でやる事はいくらでもあるのにいつまで経っても田中が向上せず、対抗馬も人材を得ず不甲斐ないからという厳しい事情が透けて見えるような人事だし、その辺は度外視かなって心情ではある」


「失点、しかも決勝点につながるエラーもあったよね」


「今はまだそれを責める気はないわ。ただ学んでくれれば。ちょっと皮肉っぽい見方をすると、本当はすぐにでも田中を外したかったんだけど聖域を排除するには上本や曽根なんかじゃ格が不足で、そこでドラフト競合一位で将来のショートレギュラーを大いに嘱望される小園の一軍初出場初スタメンというカードを切る事によってようやくこの暴走特急を止められたのかな、なんて考えたりもするんだけど。まさかよもや監督が好き好んであの記録を継続させていたとは信じていないから本人がただ決断するだけじゃなくて、継続を望む何者かを納得される必要性があったのかななんて邪推もいいところだけど。小園はまだ二軍でやる事はいくらでも残ってる選手なんだから」


「二軍成績見ると打率一割台か。ううむ、これは……」


「とは言え六月に入ってからかなり打率上げてきてるわけだし、ずっと二軍でいたらもっと見栄えのいい数字になっていたのは確実。小園に関しては初打席でいきなり打ったのは素晴らしいと思うけど、来年まで新人王の権利を残す程度の出番でもいいと思うの。それより大切なのはフルイニングという聖域がようやく除かれたって事よ」


「これからは田中がスタメンでもここぞの場面では代打とか使えるわけだからね」


「代打にもあんまり人材ないのは置いとくとして、これも田中の成績に加えて今のカープの成績が看過出来ないほどに酷いからこそ実現した話だと言えるわ。なまじ交流戦で一定の成績を残してたら『別に田中スタメンでも勝ててるから、まだ首位なんだからいいじゃないか』という意見も浮上していたはず」


「それこそ『代わりはいない』だの『今までと比べると上がってきた』だの言われたりしてたんだろうね」


「動かない理由はいくらでもひねり出せる。しかし動かない水は澱むし、澱んだ水は腐る。NPB全体にも言えるけどさっさとエクスパンションしろよってところだけど、さすがに本筋と関係ないから自重するわ。とにかく、何ら競争なくスタメンの座を与えられて安穏としていられるポジションが存在するという事実こそがカープというチーム全体にとってどれだけ害悪だったか」


「連続フルイニング出場なんて腐敗の最たるものだもんね」


「しかし幸か不幸かそれはもうなくなった。そもそもショートのポジションに関して、今のカープで一番レギュラーにふさわしい実力を有しているのは田中なんだから、本質的にはフルイニングとは言わずとも試合に出まくるのは必然だった。しかしそれは無条件に与えられるものではなく日々の競争の中で勝ち取るものでなければならない。これからの田中は当然レギュラーを奪還しようと必死になるはずだから、それがチームにとって良い循環を生み出す流れとなるなら雨降って地固まるともなるでしょう」


「逆に腐るって可能性は?」


「野球は確かに個人技に依存する割合が多いとは言えあくまでもチームスポーツ。選手もまたチームのために尽くすのが最後は個人の栄達にもつながる王道と言えるわけだし、プロならそれぐらいは熟知しているはず。その上で腐りたいなら勝手に腐ってればいいんじゃないの。田中はそんな選手じゃないと信じてるけどね」


「とにかく、頑張ってほしいよね。本来の実力はこんなものじゃないんだから。後はようやく二軍落ちした中崎とかも」


「あの内容じゃあ遅かれ早かれだったけど、なかなか分かりやすい形で尻尾を掴ませてくれなかった。でもいよいよ崩れたからまずは抑えを剥奪して、なおも説得力のないピッチングしか出来なかったからようやく二軍落ちと順調にステップを踏みながら消えていった。なまじ実績があるからそうやらないと駄目なのもチームの硬化を示すようでいかにも苦しいけど、一度こうなったからにはしっかり休んで真の姿を取り戻せばいいわ。とは言え代役で抑えに入ったフランスアも案外気の弱いところがあるのかポロポロ失点するし。でも打撃陣と比べるとまだ人材はいる」


「中村恭平とか随分出世したものだね」


「ああいうボールを投げられるんならそりゃあね。むしろ今までは何だったのかってぐらいで。若い島内や遠藤も楽な出番中心とは言え何気に頑張ってるし」


「先発だと山口も意外とやれてるよね」


「いきなり二軍落ちしたけどね。野村が炎上続きで落ちるのもむべなるかなだったけど。ローテーションを確認してみると大瀬良、ジョンソン、床田が入って、それと九里もなぜかそこそこ好投してる。後はアドゥワともう一枠と考えると、まあ山口じゃなきゃ絶対駄目だって事は、今のところはまだそうならないかな」


「ともあれ一軍でもある程度インパクトを残せたわけだし、ここから二軍でもっと強くなれるといいよね」


「そうね。とにかく今は誰が出てきたとか駄目だったとか色々あるけど、最終的にものをいうのは十月の順位がどうなるかだからね」


「順位で言うと、交流戦の不調から当然の帰結として首位陥落したけど、一応まだ二位か」


「これが交流戦でまだ良かったわ。直接対決でこういう不甲斐ない戦いが続くようならそれこそ致命的だっただろうから。まあ優勝はまだ大いに可能性があるから諦めず、しかし常に新たな風を吹かせる努力は続けてほしいと願うわ。交流戦も終わったしここからトレードなんかもあるかもね」


「そうだね。それとサンフレッチェはどうだろう」


「まあいいんじゃないの。勝ったり負けたり、負けたり勝ったり。とりあえず残留争いに巻き込まれなければ上等上等。現状残留争いは経営ズタボロな鳥栖、当初から戦力を不安視されていた磐田、松本あたりが降格圏内にいるけど、まあ言っちゃ悪いけどなるようになってるなってところ。まさかこれに加わらないよねと信じたいわ」


「まあそんなところか。それと日本代表は今コパ・アメリカで南米ブラジルにいるけど」


「日程のあれこれなんかもあって基本的に東京オリンピック世代中心のメンバーだから負けるのは織り込み済み。むしろウルグアイ戦であわや勝利あるかと思わせる引き分けで勝ち点を奪っただけでも大善戦よ」


「二度リードを奪って、惜しかったね。VARのPK判定も」


「厳密に言うとってところなんでしょうけどね。まあ南米の大会に招待された日本は所詮程よい噛ませ犬として敗退していただくのがお仕事なのに頑張ってんじゃねーよって事かしらね。ともかくまだ上に行く可能性は残ってるみたいだし、負けるにしてもいっぱい経験値を得られるような負け方だといいね」


「そうだね。若手で言うと久保建英がレアルマドリードへの移籍決まったり、他にも色々な噂話があるよね」


「久保は今年のJリーグでも見事なものを見せていた。気持ち悪いぐらいに足に吸い付くドリブル、ああいうのって海外のプレーを紹介する映像だけのものだったけどちゃんと日本にもあれをやれる人がいたのねって感動があったわ。元々バルセロナの下部組織にいた経歴からしても海外移籍はもはや必然だったとは言え、いきなり世界最高峰のクラブに加入は大変そう」


「でも最初は確かBチームからなんだよね」


「まずここで何を見せられるかよね。とにかく怪我にだけは気をつけてくれれば。日本代表の将来を担う人材だけにね、小野伸二程度で終わったら元も子もない」


 そんな事を語っていると敵襲を告げる合図が光り輝いたので、平穏な学園生活を諦めて密かに教室を抜け出し、人目につかないところで変身した。


挿絵(By みてみん)


「ふはははは、俺はグラゲ軍攻撃部隊のヤブイヌ男だ! この汚れた星に正義を示してやる」


 ブラジルを中心とする南アメリカ大陸の北部に分布する、原始的な特徴を多く有しているとされる犬の仲間の姿を模した男が山林に出現した。なんか全体的に丸っこくてかわいいが、侵略者であるという大前提を忘れてはならない。そしてその暴力を対処するための人材はすぐに現れた。


「ついに出たなグラゲ軍。お前たちの思い通りにはさせないぞ」


「見てくれには騙されないわ。侵略など愚かしい事を考えずにすぐ去りなさい」


「ふっ、何を言い出すかと思えばとんだ戯言を。貴様らには早速死を与えてやろう。行け、雑兵ども」


 敵将の掛け声とともに次々と出現してきたメカニカルな雑兵を、二人は次々と破壊していった。そしてついに全滅させた。


「よし、これで雑兵は片付いた。後はお前だけだヤブイヌ男!」


「もはや不毛な争いはここまでって手もあると思うんだけどな」


「くだらん。貴様ら蛮族に話しても意味などない。だから叩き潰すのだ」


 そう言うとヤブイヌ男は懐から取り出したスイッチを押して巨大化した。まったく話が噛み合わないのが悲しいが、嘆いてばかりもいられない。闘志をかきたて、二人は合体してこれに対抗した。


「メガロボット!!」

「メガロボット!!」


 ぶつかり合う巨体と巨体、金属と金属の軋む音が空を引き裂く。そして悠宇が一瞬のタイミングを制して肘をぶつけて相手の体勢を崩した。


「よし、ここよとみお君!」


「ありがとうゆうちゃん。そしてとどめはエメラルドビームだ!」


 この一瞬を逃さず、渡海雄は緑色のボタンを叩いた。瞳からあふれる勇気を具現化したエメラルド色の炎が敵を焼き尽くした。


「うああああ、強い。どうやらここまでだな」


 機体が爆散する寸前に作動した脱出装置によってヤブイヌ男は宇宙へと帰っていった。激戦の後を雨が洗い流せば、後に残るのは清々しい夕焼けのみであった。

今回のまとめ

・あんなに打てないんじゃ勝てなくても当然

・小園は使うのが早すぎたけど現状打破の試みとしては必要

・残留争いはそれっぽいところが下に集まりだした

・久保がしっかり育ったら良いがまだこれからの素材

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