19ノ語 帰りたくない人々
帰りたい人ばかりではなかった。
それが、この事案を難しくした。
久慈代市から出られない。
道路を進んでも同じ町へ戻る。
電車へ乗っても久慈代駅へ着く。
外部との通信は切れ、町の外周は少しずつ縮んでいる。
それでも、住民の中には、この異常が終わらないことを願う者がいた。
亡くなった妻がいる。
幼い頃の父親がいる。
取り壊された団地に、家族全員が揃っている。
閉校した学校に、もう一度会いたかった先生がいる。
過去へ戻れるわけではない。
時間を巻き戻せるわけでもない。
ただ、失った人がそこにいる。
話せる。
触れられる。
名前を呼んでくれる。
その場所から離れろと言われて、すぐに頷ける者ばかりではなかった。
午後5時15分。
久慈代市の時計は止まっていた。
市役所の時計。
駅前の時計台。
商店の壁時計。
学校の時計。
すべてが同じ時刻を示している。
だが、人間の時間は止まっていない。
水瀬の端末内時計は、午後5時22分を示していた。
「閉鎖予定時刻まで、あと38分です」
助手席の水瀬が言う。
黒麒麟は久慈代駅へ向けて走っている。
現代の道路と、古い石畳が重なっていた。
白線の上を荷車の轍が横切る。
信号機の脇に、木製の道標が立っている。
コンビニの駐車場には、古い旅館の玄関が半分だけ現れていた。
人が多い。
住民たちは、駅前広場ではなく、それぞれの復元建造物へ向かっている。
市内放送が繰り返す。
『最寄りの保存施設へお入りください』
『保存開始後は、安全に生活できます』
『失われた家族と、再び暮らすことができます』
水瀬が端末を操作する。
「市内放送を止めたいんですけど、放送設備から出てません」
御影が問う。
「どこからだ」
「各家庭のテレビ、スマホ、車載ナビ、店内スピーカー、全部です、町そのものが放送してます」
白羽が窓の外を見る。
「保存施設って、復元建造物のことですよね」
「ああ」
御影が答える。
「入った者を、過去の住民として固定するつもりだ」
戸張が後部座席で刀袋を握る。
「今の名前ごとか」
水瀬は住民台帳を確認した。
「今の名前は消えて、昔の名簿へ近い位置に入り直されています、家族構成も過去側に合わせて変わってる」
東雲が言う。
「自分の人生を残したまま、昔へ戻れるわけではない」
「はい」
水瀬は、団地へ入った女性の記録を出した。
現在の氏名は消えている。
代わりに、旧団地の住民名簿に、幼少期の名前が追加されていた。
「49歳の女性が、8歳の子どもとして登録されています」
上原が運転しながら言った。
「本人は気づいているのか」
「最初は気づいていたと思います、でも今は」
水瀬は団地の監視映像を出す。
古い居間。
若い父親。
母親。
兄弟。
その中に、小学生の少女がいる。
49歳の女性だった。
現在の身体ではない。
映像の中では完全に子どもの姿へ戻っている。
少女は食卓で笑っている。
御影が言う。
「長く入るほど、現在を失う」
東雲は画面を見たまま言った。
「それでも幸せそうに見えます」
誰もすぐには答えなかった。
黒麒麟が交差点へ近づく。
道路の中央に、人々が立っていた。
20人ほど。
進路を塞いでいる。
先頭には、市役所前で上原に止められた男性がいた。
亡き妻が映画館にいると訴えていた男。
手には角材がある。
他の住民も、棒や工具を持っている。
上原は黒麒麟を停めた。
「降りる」
御影が言う。
「俺も行く」
上原と御影が車を降りる。
戸張も続こうとしたが、東雲が言った。
「まず二人で話してもらいましょう」
戸張は座り直す。
「俺は話し合いに向いてないか」
「自覚があるなら助かります」
道路には、現代のアスファルトと古い土道が混在している。
住民の男は、御影を見る。
「あんたたちが、この町を壊しに来たんだろ」
御影は否定しなかった。
「異常を止めるために来た」
「同じだ」
男は角材を握る。
「俺の妻は、あそこにいる」
「お前の妻だった者がいる」
御影の言い方に、男の顔が歪んだ。
「だった者?」
「現在のお前を知らない」
「妻は俺の名前を呼んだ!」
「12年前の名前だ」
男が一歩出る。
上原が御影の少し前へ立つ。
「それ以上近づくな」
男は上原を睨む。
「またお前か」
「ああ」
「お前らに何がわかる」
上原は答えない。
男が言葉を重ねる。
「12年だぞ、妻が死んでから12年、毎朝ひとりで起きて、仕事して、帰っても誰もいない、やっと会えたんだ」
上原は黙って聞いている。
「偽物でもいい」
男の声が震えた。
「声が同じで、顔が同じで、俺を覚えてる、それで十分だ」
御影が言う。
「十分ではなくなる」
「何がだ」
「お前が現在を忘れる」
「構わない」
即答だった。
その場にいた住民たちも頷く。
御影は男を見る。
「今の12年間を捨てるのか」
「捨てたい」
「その間に会った人間も」
「いない」
「本当にか」
男は答えなかった。
御影は続ける。
「職場の人間、近所の人間、医師、店員、ここでお前を止めた警察官、誰もいなかったことにするのか」
「そんなのは家族じゃない」
「だから消えていいのか」
男の角材を握る手が震える。
「綺麗事を言うな」
御影は表情を変えない。
「綺麗ではない、残酷な確認だ」
男が角材を振り上げた。
上原は盾を出さなかった。
角材を片手で受け止める。
奪わない。
折らない。
男の手ごと、そこに止める。
「殴っても変わらない」
「離せ」
「今のあんたが決めろ」
「決めた!」
「昔のあんたに戻ってからじゃ遅い」
上原の声は低い。
「今のあんたが、本当に全部捨てると決めたなら、俺はその言葉を聞く」
男は上原を睨み続けた。
やがて、角材を手放した。
地面に落ちる。
後ろの住民の一人が叫ぶ。
「騙されるな! こいつらは国の人間だ、都合の悪いものをまた消しに来たんだ!」
その言葉に、周囲がざわつく。
御影は反論しなかった。
完全には間違っていない。
アラハバキもまた、怪異を閉じ、記録を秘匿してきた。
語らせないことで被害を防いだ。
そのやり方は、久慈代市が行ってきた隠蔽と、表面だけを見れば似ている。
男が御影へ問う。
「あんたたちは、何が違う」
御影は少しだけ沈黙した。
「消したものを、なかったことにはしない」
「誰にも知らせないくせに?」
「被害を広げないために隠す、だが内部には残す」
「俺たちの町も同じだろ」
「違う」
御影ははっきり言った。
「この町は、責任を逃れるために人を消した」
道路の空気が変わった。
古い土道の上に、泥水が流れ始める。
鳥守地区を襲った台風の雨。
住民たちの足元へ、過去の水が広がっていく。
白羽の声が黒麒麟から飛ぶ。
「班長、道路の固定が崩れます!」
御影は男を見る。
「駅へ来い」
「なぜ」
「消された記録を、市民全員の前で開く」
住民たちがざわめく。
「鳥守地区だけじゃない、この町が隠したものを全部だ」
男が御影の目を見る。
「本当に出すのか」
「ああ」
「国が止めても?」
「今、国とは繋がっていない」
御影は久慈代駅の時計台を見る。
「ここで決める」
男はしばらく黙った。
最後に、道路の脇へ退く。
他の住民も少しずつ道を空けた。
「妻を消すな」
男が言った。
御影は答える。
「消さない」
「助けられるのか」
「わからない」
男の顔が歪む。
それでも、御影は嘘を言わなかった。
「だが、物として保存させない」
男は俯き、角材を拾わなかった。
黒麒麟が再び動き出す。
東雲は後部座席から道路脇の住民を見ていた。
「来てくれるでしょうか」
御影は答えた。
「選ぶのは彼らだ」
水瀬が端末を確認する。
「現在側の人口、6万7240人、減少速度が上がっています」
白羽が問う。
「復元建造物へ入った人だけですか」
「違います、建物へ入っていない人も消え始めてます」
市内の一部では、家族全員の記録が突然欠落していた。
住戸はある。
食事も残っている。
車もある。
だが、住民だけがいない。
誰かに呼ばれたわけでも、建物へ入ったわけでもない。
町が、保存する価値のある者と、ない者を選別し始めている。
戸張が言う。
「基準は何だ」
水瀬は住民情報を比較する。
「町との結びつきです、久慈代市で生まれた人、長く住んでいる人、土地や過去の記憶が強い人は保存側へ、転入者、単身赴任、外国籍住民、最近生まれた子どもは」
言葉が止まる。
白羽が察する。
「消される側」
「はい」
東雲の表情が変わる。
「保存ではなく、町が自分の物語に必要な人を選んでいる」
御影は言った。
「語部機構の仕込みだ」
戸張が前を向く。
「町を一つの物語にする」
「古くから続く、失われた町の物語へ」
水瀬が画面を切り替えた。
「出生地が市外の住民から優先的に消えています、次は、市内出身でも“昔の町”と関係が薄い人」
上原が速度を上げる。
「時間は」
「閉鎖まで27分」
道の先に、消防車が停まっていた。
その周囲に、数人の消防隊員がいる。
だが、ひとりの姿が薄くなっている。
若い隊員だった。
上原が黒麒麟を停める。
第一班が降りる。
薄くなっている隊員は、自分の手を見ていた。
「俺、ここにいますよね」
同僚が腕を掴もうとする。
手が身体をすり抜ける。
「名前を言え」
上原が言う。
隊員は答える。
「森田圭介」
「所属」
「久慈代消防署、救助係」
「出身は」
「川越です、去年こっちへ」
水瀬が端末を見る。
「転入者です、町の過去名簿に入る場所がない」
白羽がすぐに森田の胸へ名前札を貼る。
だが、墨が薄れていく。
「固定できません」
東雲が森田の前に立つ。
「この町で、誰かを助けましたか」
森田は混乱しながら答える。
「あります、救急も、火災も」
「名前を覚えている人は」
「そこまでは」
「では、あなたを覚えている人は」
森田が同僚を見る。
年上の隊員が叫ぶ。
「俺が覚えてる! 森田圭介、去年の4月に配属、初日に救助車の棚へ頭ぶつけた!」
別の隊員も続ける。
「辛いもの食えないくせに、歓迎会で激辛頼んだ!」
「彼女に振られた時、勤務中ずっと無言だった!」
森田が言う。
「そこまで言わなくていいです!」
声が戻った。
薄くなっていた身体の輪郭が、少し濃くなる。
東雲は言った。
「町との記録がなくても、人との記憶はあります」
白羽の札の墨が戻る。
御影が水瀬を見る。
「固定条件がわかった」
水瀬は頷く。
「土地の記録に対抗するには、現在の人間同士の記憶」
上原が消防隊員たちへ言う。
「駅前へ行け、途中で名前を確認し合え」
年上の隊員が森田の背を叩く。
「行くぞ、激辛」
「その呼び方やめてください」
消防車が駅方向へ走り出す。
水瀬は市内放送へ侵入を試みる。
「町の放送には入れません、でも消防と警察の無線網なら市内限定で使えます」
御影が言う。
「住民に伝えろ」
「何を」
「互いの名前と、現在の記憶を確認しろ、土地ではなく人へ結べ」
水瀬は無線へ切り替えた。
『久慈代市内にいる全員へ、近くにいる人の名前を確認してください』
声が市内の警察無線、消防無線、市役所の一部スピーカーへ流れる。
『家族でも、同僚でも、知らない人でも構いません、今ここで見たこと、今日話したことを伝えてください』
市内放送の女性音声が割り込む。
『保存に不要な情報です』
水瀬は無視して続ける。
『久慈代市で生まれていなくても、ここにいる人は現在の住民です、誰かが覚えている限り、消えません』
町中で、人々が互いの名前を呼び始めた。
避難所の体育館。
「田中和夫、朝一緒に逃げてきた」
「佐々木美里、さっき水をくれた」
病院。
「先生、私の名前わかりますか」
「石川さん、昨日手術をした、忘れていない」
路上。
「この人の名前知らない!」
「じゃあ今聞いてください!」
「何て名前ですか!」
知らない人同士が名前を告げる。
今日の出来事を共有する。
今ここにいるという、小さな記録を互いの中へ残す。
住民台帳の減少が鈍った。
水瀬が画面を見る。
「止まりました、完全ではないですけど、消失速度が下がってます!」
白羽が少し笑う。
「人が人を札にしてる」
御影は頷いた。
「今の町を、今いる者で固定する」
戸張が前方を見る。
「だが、復元建造物の中はどうする」
答えは出ない。
そこに入った者たちは、現在の人々から距離を置いている。
亡くなった家族だけを見ている。
その者たちを固定する記憶は、過去側へ吸われ続けている。
久慈代駅へ近づくにつれ、道路が混雑していた。
警察や消防の誘導で、多くの住民が駅前へ集まり始めている。
しかし、駅へ向かう流れとは逆に、復元建造物へ走る者もいる。
東雲は黒麒麟を降りた。
「ここから歩きます」
御影が見る。
「何をする」
「戻りたくない人と話します」
「時間がない」
「だからです」
東雲は一人で走り出した。
上原が車を停める。
「俺も行く」
御影は首を振った。
「東雲に任せる」
上原は少しだけ迷い、再び車を動かした。
東雲が向かった先は、久慈代中央団地だった。
解体されたはずの建物。
外壁は汚れ、階段は暗い。
それでも各部屋には明かりがついている。
入口に、数人の住民がいる。
入るか、戻るか迷っている。
東雲は声をかけた。
「中へ入る前に、一つだけ考えてください」
中年の女性が振り返る。
「止めるつもり?」
「いいえ」
東雲は答えた。
「戻らない可能性を説明します」
「わかってる」
「中の家族は、今のあなたを知りません」
「そんなの、これから話せばいい」
「話している間に、あなたが今を忘れます」
女性の表情が強張る。
「脅してるの?」
「事実です」
東雲は団地の窓を見る。
子どもの姿に戻った49歳の女性が、家族と食卓を囲んでいる。
「中に入ること自体を、私たちは完全には止められません」
「だったらどいて」
「でも、戻りたいと思った時に、戻る自分が残っていないかもしれません」
女性は団地の入口を見る。
そこに、若い母親が立っている。
「早くおいで」
女性の目に涙が浮かぶ。
「母なの」
東雲は母親の姿を見る。
「そう見えます」
「否定しないのね」
「本人かどうか、私には決められません」
「じゃあ、どうすればいいの」
東雲は少し黙った。
「今のあなたが、何を失うかを考えてください」
女性は笑うように泣いた。
「今の私には何もない」
「本当に?」
「子どもはいない、夫とも別れた、仕事も辞めた」
「今日、誰かと話しましたか」
「避難所で隣にいた人と」
「名前は」
「知らない」
「その人は、あなたを覚えているかもしれません」
「それが何になるの」
「今のあなたが、完全に何もない人ではないという証拠になります」
女性は東雲を見た。
団地の入口から、母親が再び呼ぶ。
「おいで」
女性は一歩進む。
東雲は止めなかった。
もう一歩。
そして、女性は立ち止まった。
「戻れる?」
「約束できません」
「ひどいね」
「はい」
東雲は正直に答えた。
女性はしばらく母親を見ていた。
「少しだけ、話してくる」
東雲が言う。
「入口から先へは行かないでください」
「それも約束できない」
女性はそう言って、団地へ入った。
東雲は追わなかった。
隣にいた別の男性が怒鳴る。
「行かせるのかよ!」
「本人が決めました」
「助けるのが仕事じゃないのか!」
東雲は男性を見る。
「助けることと、全部代わりに決めることは違います」
声は静かだった。
だが、自分自身へ言い聞かせるようでもあった。
団地の中へ入った女性は、母親の前で立ち止まる。
母親が手を伸ばす。
女性も手を伸ばしかける。
その時、団地の外から声がした。
「吉岡さん!」
避難所で隣にいたという高齢の女性が、息を切らして走ってくる。
「あなた、吉岡さんでしょう!」
中年女性が振り返る。
「どうして名前を」
「避難者名簿で見た、さっきずっと話したじゃない、息子さんはいないけど、猫を飼ってるって」
女性の顔が揺れる。
「猫」
「家に置いてきたって心配してたでしょう!」
現在の記憶。
母親の顔と、今の家に残した猫。
女性は入口で動けなくなる。
団地の母親が笑う。
「猫なんていなかったでしょう」
その言葉で、女性は一歩下がった。
「今はいるの」
母親の表情が止まる。
「私、今は猫と暮らしてる」
女性は団地から出た。
建物の入口が少し暗くなる。
東雲は高齢女性へ頭を下げた。
「ありがとうございました」
「何が何だかわからないけど、あの人、猫の話ばっかりしてたから」
吉岡と呼ばれた女性は泣きながら笑った。
「猫に助けられた」
東雲が言う。
「今の生活に、ですね」
しかし、すべての人が戻ったわけではない。
家族の声を選び、建物の奥へ進む者もいた。
東雲はその全員を救えなかった。
名前を呼んでも、振り返らない人がいた。
今を思い出しても、過去を選ぶ人がいた。
東雲は無理に引きずり出さなかった。
それが正しいのかは、わからなかった。
久慈代駅。
黒麒麟は駅前広場へ到着した。
数千人の住民が集まり始めている。
駅舎は、現代の建物と古い木造駅舎が重なっていた。
自動改札の向こうに、木製の改札口。
電光掲示板の下に、古い行き先板。
現在の駅名は久慈代。
古い看板には、鳥守口と書かれている。
水瀬が言う。
「久慈代駅は、鳥守地区の住民移転後に作られています」
御影が問う。
「最初に消した場所とは」
「駅の建設用地です」
水瀬は古い地図を重ねる。
「ここには、鳥守地区の共同墓地がありました、災害前から使われていたものです」
白羽の顔が変わる。
「墓地の上に駅を?」
「遺骨は移転したことになっています、でも移転先の記録がない」
戸張が低く言う。
「埋めたままか」
鷹宮が駅舎を見た。
「下にいる」
駅前時計台が、午後5時15分を示したまま鳴り始める。
一回。
二回。
三回。
閉鎖までの鐘ではない。
数えている。
駅前の住民が静かになる。
市内放送が流れた。
『保存対象者の収容を開始します』
復元建造物の中にいる者たちが、一斉に窓辺へ立つ。
現在の町にいる住民も、駅の方を向く。
地面が小さく揺れた。
駅前広場の舗装に、黒い線が走る。
巨大な保存記号。
町全体を一枚の図面として閉じるための印。
白羽が札箱を開く。
「ここで閉じられたら、町全体が記録になります」
水瀬が住民台帳を見る。
「残り19分」
御影は駅舎を見る。
「墓地へ降りる道は」
鷹宮が改札の奥を指す。
「下りホーム」
上りと下り。
だが、電車はどちらへ乗っても久慈代駅へ戻る。
水瀬が古い構内図を調べる。
「昔の貨物地下道があります、現在は封鎖済み、共同墓地の地層と重なります」
御影が指示を出す。
「上原は駅前を維持、住民を黒線の外へ出すな、東雲が戻り次第、復元建造物から出た者を保護」
上原が問う。
「中へ入った者は」
御影は一瞬だけ黙る。
「戸張と白羽で縁を引き上げられるか試せ」
戸張が言う。
「本人が残ると決めた場合は」
「切るな」
白羽が御影を見る。
「そのまま保存されます」
「わかっている」
御影の声は重かった。
「それでも、本人の意思を無視して現在へ縛れば、我々も町と同じになる」
上原は納得した顔ではなかった。
だが、頷いた。
「了解」
御影、水瀬、鷹宮は駅舎へ入る。
戸張と白羽は改札前に残り、町中へ伸びる無数の黒い糸を確認する。
上原は駅前広場へ盾を立てた。
「全員、互いの名前を確認し続けろ!」
住民の中から声が上がる。
「家族が中にいる!」
「戻ってきてない人はどうする!」
「この町はどうなる!」
上原は答える。
「わからない!」
騒ぎが一瞬止まった。
上原は続ける。
「だが、今ここにいる人間を消させない、隣にいる人間の名前を呼べ、今日あったことを話せ!」
飾らない言葉だった。
住民たちは戸惑いながらも、互いに声をかけ始める。
駅の地下道。
御影、水瀬、鷹宮が階段を下りる。
現在のタイル張りの壁が、途中から土壁へ変わっていく。
照明はない。
水瀬が端末のライトをつける。
「機械、まだ動きます」
鷹宮が言う。
「長くはない」
「そういう予告、やめてもらえませんか」
地下道の先に、古い改札があった。
木の柵。
その向こうに、駅のホームではなく墓地が広がっている。
小さな石塔。
土に半分埋まった墓石。
折れた卒塔婆。
その中央に、現代の駅の時計が立っている。
午後5時15分。
時計の下に、男がいた。
八雲了玄ではない。
古い背広を着た老人。
水瀬が資料を検索する。
「昭和30年代の久慈代町長、神崎正臣、鳥守地区の記録処理を決めた人物です」
老人は御影たちを見る。
「保存の邪魔をしないでもらいたい」
御影が言う。
「お前は神崎正臣ではない」
老人は笑った。
「記録上は、そうです」
鷹宮が静かに言う。
「中身がない」
老人の背広の内側には、人間の身体がない。
古い議事録。
死亡者名簿。
都市計画図。
廃棄された新聞記事。
紙の束が人の形を作っている。
水瀬が言う。
「町の隠蔽記録そのもの」
「記録ではありません」
老人の口が動く。
「秩序です」
墓地の向こうに、鳥守地区の家々が見える。
43人の住民が並んでいる。
顔はある。
年齢も服装も違う。
子ども。
老人。
若い夫婦。
消された人々。
「混乱を防ぐため、被害を小さく記録した」
紙の老人が言う。
「町を再建するには必要だった」
御影が返す。
「人を消す必要はない」
「死者は町を再建しません」
「生き残った者は」
「従うしかありません」
水瀬の端末に、新しい文書が表示された。
久慈代市保存計画。
作成者欄には、神崎正臣。
監修。
語部機構。
水瀬が息を呑む。
「語部機構は、昔の隠蔽記録を使って町全体を怪異化した」
紙の老人は笑う。
「違います、彼らは町が望んでいた形を教えてくれただけです」
「町が望んだ?」
「失敗も、死者も、余所者もいない、完全な故郷です」
鷹宮が銃を構える。
「撃つ場所が多い」
紙の老人の身体には、無数の黒い点が見える。
一つの核ではない。
町中の隠蔽記録が繋がっている。
御影は言った。
「ここだけを壊しても終わらない」
水瀬が時間を見る。
「閉鎖まで12分」
地上から白羽の声が、弱い通信で届く。
『班長、糸が引っ張られてます、保存建造物が駅へ集まり始めました!』
戸張の声も入る。
『建物ごと動いてる、住民の意思と関係なくなり始めたぞ』
御影の目が変わる。
「選ばせる気はなかったか」
紙の老人が答える。
「選択は混乱を生む」
駅前では、古い団地や映画館、旧校舎から伸びる黒い糸が、一斉に駅へ向かっていた。
中にいる住民も、亡くなった家族も、建物ごと保存記号へ収められようとしている。
残ると決めた者も。
迷っていた者も。
戻ろうとした者も。
すべて同じ記録へ押し込まれる。
御影は紙の老人を見る。
「これは保存ではない」
「では何です」
「廃棄だ」
御影は御影札を取り出した。
紙の老人が笑う。
「紋を開けば、町の記録へ取り込まれますよ」
御影は構わず札を掲げる。
「水瀬、地上へ戻れ」
「班長は」
「ここを止める」
「一人では無理です」
「一人ではない」
御影は鷹宮を見る。
鷹宮は銃を下ろしていない。
「残る」
水瀬が言う。
「私も」
「お前は記録を市民へ出せ」
「でも外部通信は」
「外ではない」
御影は墓地の向こう、並ぶ43人を見る。
「現在の久慈代市民へ、過去の名を返せ」
水瀬は理解した。
送れないなら、町の中へ流す。
隠蔽記録を、保存される側の全員へ見せる。
「市内放送を奪います」
「やれ」
水瀬は階段へ走る。
紙の老人の身体から、紙片が飛ぶ。
水瀬を止めようとする。
鷹宮が発砲した。
鎮符弾が紙片だけを撃ち落とす。
「通れ」
水瀬は振り返らず、地下道を走った。
御影と鷹宮が墓地に残る。
閉鎖まで10分。
地上へ戻った水瀬は、改札前で白羽と戸張に合流した。
「市内放送を乗っ取ります」
白羽が札を押さえながら言う。
「町の放送網は怪異側です」
「だから、駅の案内放送を使います、町中の道と建物が駅へ繋がってるなら、今は駅の音が全部へ届く」
戸張が黒い糸を斬りながら言う。
「理屈が乱暴だな」
「今は時間がありません!」
「嫌いじゃない」
水瀬は駅務室へ飛び込む。
現代の放送設備と、古いマイクが重なっている。
端末を繋ぐ。
画面には、市内の隠蔽資料。
鳥守地区死亡者43名。
旧団地火災の未公表被害者。
工場事故。
無縁墓地。
学校事故。
水瀬は深く息を吸った。
「久慈代市内にいる全員へ」
声が駅構内へ流れる。
さらに、町中のテレビ、ラジオ、スピーカー、復元建造物の中へ広がっていく。
「これから、この町が消した記録を読み上げます」
市役所の市長が顔を上げる。
住民たちが駅のスピーカーを見る。
紙の老人が地下で叫んだ。
「やめろ!」
初めて、声が乱れた。
水瀬は読み始める。
「昭和34年、鳥守地区水害、公式死亡者5名、実際の死亡・行方不明者43名」
名前を、一人ずつ読む。
子ども。
老人。
家族。
長い。
閉鎖まで8分。
水瀬は止めない。
町中で、鳥守地区の43人の姿が濃くなる。
顔がはっきりする。
記録から消された者が、現在の住民に知られていく。
御影は墓地でその光景を見ていた。
紙の老人の身体が崩れ始める。
「死者を増やせば、町は再建できなかった!」
御影が言う。
「再建した町が、今消えようとしている」
「忘れるから前へ進める!」
「忘れることと、消すことは違う」
水瀬は別の記録を読む。
「昭和58年、久慈代中央団地火災、公式負傷者11名、未公表死亡者2名」
団地の一室にいた、亡くなった家族が外を見る。
彼ら自身も、自分たちがどう消されたかを知る。
古い映画館。
旅館。
旧校舎。
それぞれの建物で、戻ってきた者たちの表情が変わる。
彼らはただ懐かしい存在ではない。
町から一度消された者たちだった。
誰かを誘い込むために戻ったのではない。
保存計画に使われていた。
映画館の中で、亡き妻が夫へ言った。
「ここにいちゃだめ」
夫は席から立ち上がる。
「一緒に行こう」
妻は首を振る。
「私は、もう帰れない」
「だったら俺も」
「あなたは帰って」
妻は微笑む。
12年前までしか知らない顔で。
「私が知らない12年を、捨てないで」
映画館の扉が内側から開く。
夫が外へ出る。
その後ろから、現代の住民たちも立ち上がる。
全員ではない。
妻の隣へ座ったままの者もいる。
それでも、戻る者が現れた。
団地では、若い父親が子どもの姿になった娘へ言う。
「お前、もう大人なんだろ」
少女は泣く。
「ここにいたい」
「そうか」
父親は娘の頭を撫でる。
「でも、俺はお前が大人になったところを知らない」
食卓の家族が少しずつ薄くなる。
「戻って、誰かに話してくれ」
「何を」
「ここに俺たちがいたことを」
少女の姿が49歳の女性へ戻る。
女性は団地の廊下へ倒れ込む。
東雲が受け止める。
「戻りましたね」
女性は泣きながら、父親のいた部屋を見る。
「帰された」
東雲は答える。
「はい」
閉鎖まで5分。
駅前に、復元建造物から出た住民が集まり始める。
戸張と白羽が黒い糸を切り、現在側へ引き戻す。
白羽の札が次々に焦げる。
「全部は無理です!」
戸張が言う。
「戻る意思がある糸だけ見ろ!」
「見分けてます!」
上原は駅前広場の住民を黒線の内側へ押し戻そうとする町の力を、盾で受け止めていた。
地面の保存記号が光る。
盾が軋む。
上原の足が舗装へ沈む。
「直城!」
戸張が叫ぶ。
上原は答えない。
盾の向こうに、巨大な駅の影がある。
町全体を収める箱。
上原は歯を食いしばる。
「まだだ」
水瀬が最後の資料を読み上げる。
「久慈代市は、これらの記録を隠し、死亡者および行方不明者を転出、身元不明、記録不備として処理しました」
市長が駅前へ到着した。
息を切らしている。
水瀬の放送を聞きながら、群衆の前へ出る。
「久慈代市長として認めます」
住民たちが振り返る。
市長の声も放送へ拾われる。
「この町は、過去の被害を隠しました」
危機管理担当者が止めようとする。
「市長!」
「今さらだ」
市長は続ける。
「鳥守地区の43名を含め、消された記録を全て再調査し、公表します」
地面の黒い線が揺れた。
「現在の市民を守るためではなく、消された人々を、もう一度市民として記録します」
墓地に並ぶ43人が、市長を見る。
紙の老人が叫ぶ。
「そんなことをすれば、町の歴史が汚れる!」
御影は言った。
「最初から汚れている」
御影札を掲げる。
「汚れを隠すから、腐る」
八咫鏡に三つ藤の紋が墓地へ広がった。
だが、まだ閉じない。
御影は43人へ向けて言う。
「名を戻す」
水瀬が読み上げた名前が、墓石へ一つずつ浮かぶ。
誰がどこに埋められたかはわからない。
遺骨が残っているかもわからない。
それでも、いたという記録が戻る。
紙の老人の身体から、死亡者名簿が剥がれ落ちる。
残るのは、隠蔽を決めた議事録と都市計画図だけ。
鷹宮が銃を構えた。
「核が一つになった」
紙の老人の胸。
赤い決裁印。
鷹宮が引き金を引く。
鎮符弾が印を貫いた。
紙の老人の身体が崩れる。
閉鎖まで2分。
だが、町の保存記号はまだ消えない。
御影の通信機に、水瀬の声が入る。
『班長、紙の老人を止めても町が閉じます!』
御影は墓地の奥を見る。
そこに、黒い穴が開いている。
鳥守地区だけではない。
久慈代市が消した全ての場所へ繋がる穴。
そして、穴の縁に小さな札が刺さっていた。
語部機構の印。
八雲の仕込み。
御影は札を抜こうとする。
鷹宮が止めた。
「触るな」
「なぜ」
「抜けば、開く」
札は封印ではない。
栓だった。
ここまで町を膨らませたものを、最後の瞬間まで一か所へ留めている。
抜けば、消された町が現在へ溢れる。
残せば、久慈代市全体が閉じる。
御影は穴を見る。
時間がない。
地上では、時計台が鳴り始める。
午後6時を告げる鐘。
一回目。
水瀬が叫ぶ。
『班長!』
御影は答えない。
二回目。
鷹宮が御影を見る。
「どうする」
三回目。
御影は札へ手を伸ばさなかった。
代わりに、穴の前へ自分の御影札を置く。
「閉じない」
鷹宮が目を細める。
「何をする」
「町を二つに分けない」
四回目の鐘。
地上の保存記号が強く光る。
上原の盾が押される。
白羽の札が燃える。
戸張の刀へ黒い糸が何十本も絡みつく。
東雲は戻ってきた住民を抱え、駅前へ走っている。
水瀬は放送席で時計を見る。
残り1分。
御影は穴へ向けて言った。
「現在の久慈代市と、消された久慈代市」
御影紋が広がる。
「どちらも記録する」
五回目。
穴の中から、無数の建物と人影が迫る。
御影は御影札をもう一枚出した。
八咫鏡に三つ藤。
二枚の札。
一枚は現在。
一枚は過去。
それぞれを閉じるのではなく、並べる。
「どちらかを偽物にしない」
六回目。
御影の紋が黒く染まり始める。
鷹宮が言う。
「持たない」
「わかっている」
七回目。
地上で上原が御影の名を呼ぶ。
「直人!」
通信は弱い。
それでも届く。
御影が答える。
「聞こえている」
八回目。
水瀬が放送用マイクを握る。
「久慈代市民の皆さん、自分が知っている町を話してください!」
突然の呼びかけ。
「今ある店、学校、公園、家、今日会った人、何でもいいです、現在の久慈代市を、声にしてください!」
住民たちは戸惑う。
市長が最初に言った。
「久慈代駅前の時計台」
消防隊員の森田が続く。
「久慈代消防署、救助車の棚が低い」
誰かが言う。
「駅前のパン屋」
「市立病院」
「南公園の滑り台」
「うちの猫」
「昨日できた道路」
「新しいスーパー」
「転校してきた友達」
現在の町が、今いる人間の声で形を持つ。
九回目。
同時に、水瀬が過去の記録も流す。
鳥守地区。
中央団地。
旧校舎。
映画館。
失われた墓地。
過去も消さない。
現在も消さない。
十回目。
町の黒い保存記号に、白い線が重なる。
一枚の図面ではない。
現在と過去を別々に残す、二層の記録。
御影の膝が地面へつく。
御影紋の藤の一つが黒く染まる。
鷹宮が御影の肩を掴んだ。
「直人」
御影は顔を上げる。
十一回目。
最後の鐘が鳴る前に、穴の中から一人の子どもが出てきた。
鳥守地区の少年。
御影の前に立つ。
「僕たちは、戻れるの」
御影は答える。
「戻れない」
少年は俯く。
「でも、消さない」
御影は続けた。
「お前たちがいたことを、町へ返す」
少年は少しだけ考えた。
「それで、いいのかな」
「俺には決められない」
少年は御影を見る。
そして、わずかに笑った。
「じゃあ、みんなに聞いて」
少年は穴の向こうへ戻る。
43人が、御影を見る。
その後ろに、町が消した多くの人々がいる。
十一回目の余韻が消える。
時計台の針が、午後6時へ近づく。
御影は地上へ向けて言った。
「水瀬」
『はい!』
「全記録を残せ」
『外へ送れません!』
「市役所へ保存しろ」
『町が戻ったら消される可能性が』
市長が放送へ割り込む。
「私が署名します」
御影は言う。
「市民全員の前でだ」
駅前に集まった人々が、市長を見る。
市長は頷いた。
「公文書として残します」
水瀬が保存処理を開始する。
現在の久慈代市。
消された久慈代市。
同じ場所に重なった、二つの記録。
時計台の鐘が、十二回目を鳴らそうとする。
御影が御影紋を閉じる。
「まだ終わらせるな」
時計の針が、午後5時59分で止まった。
鐘は鳴らなかった。
町の閉鎖も完了しない。
だが、出口も戻らない。
久慈代市は、現在と過去の間で止まった。
復元建造物は残っている。
住民も閉じ込められたまま。
黒い保存記号も、完全には消えていない。
水瀬が端末を見る。
「閉鎖処理、停止しました」
白羽は焼けた札を抱えたまま座り込む。
「止まっただけです」
戸張が絡みついた黒い糸を刀から外す。
「ああ」
上原は盾に身体を預け、駅の時計を見る。
「時間を稼いだ」
東雲は駅前へ戻ってきた。
その後ろには、復元建造物から戻った住民たち。
そして、戻らなかった者たちもいる。
御影と鷹宮が地下から上がってくる。
御影の顔色は悪い。
上原がすぐに近づく。
「直人」
「聞こえている」
「紋は」
「一つ黒い」
白羽が御影札を見る。
八咫鏡を囲む三つ藤のうち、一つが完全に黒くなっている。
「これ以上は危険です」
御影は駅前の時計を見る。
午後5時59分。
「次で決める」
水瀬が問う。
「何を」
「この町を、現在へ戻す方法を」
戸張が言う。
「過去側を切り捨てずにか」
「ああ」
「できるのか」
御影は答えなかった。
駅前広場には、多くの住民がいる。
戻りたい者。
残りたい者。
迷っている者。
亡くなった家族の姿は、復元建造物の窓辺に残っている。
彼らもまた、駅の時計を見ていた。
市内放送が途切れ途切れに流れる。
『保存処理は、一時停止しました』
初めて、女性音声にノイズが混ざった。
『再開条件を確認しています』
水瀬の端末へ、新しいメールが届く。
送信者は空欄。
件名。
選べない者は、両方を失う。
添付された画像には、隔離施設の面会室が映っている。
そこに八雲了玄が座っていた。
こちらを見ている。
録画ではない。
現在の映像。
外部通信が切れているはずなのに、八雲は久慈代市を見ていた。
そして、口だけを動かした。
何を言ったのか、音声はない。
水瀬が映像を拡大する。
唇の動きを読む。
「次は、御影さんが消す番です」
御影は画面を見た。
八雲は笑っていない。
ただ、結果を待っている。
上原が端末を閉じた。
「見るな」
御影は駅前の住民たちへ視線を戻す。
「そうだな」
時計は午後5時59分。
針は動かない。
町には、まだ出口がない。
そして第一班には、あと一つだけ選択が残されていた。
過去を残して、現在へ帰るか。
現在を守るために、過去をもう一度閉じるか。
あるいは、どちらも失わない方法を見つけるか。
止まった町の上で、空だけが少しずつ暗くなっていった。




