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第一話 流聖星

第一話

「お前の能力なら…ここから簡単に出られる。」

兄ちゃんは廊下の先を指差した。

ここは地下の階で、エレベーターで他の階と行き来できる。

廊下にはおれの部屋、トイレだけがある。

エレベーターは一日中監視されている。おれが出ないように、だ。

兄ちゃんはおれに外の世界を教えてくれた唯一の人だ。

おれは彼を信頼してる。唯一おれと温度がある会話をしてくれる。


でも、兄ちゃんがしてるのは間違ってることだって、兄ちゃん自身が言っていた。その意味はおれには何となく分かっていた。

おれは特殊な力を持って生まれた。それが、『保星(バッテリー)』。星の力をその体に保存しておく力だ。その力は今星の力が枯渇しているこの宇宙で希望になる力だった。だからおれはここに閉じ込められてるんだ。

兄ちゃんはそんなおれをここから出そうとしている。


エレベーターが音を立てて開く。

監視カメラには黒い機械が取り付けられていた。兄ちゃんがやった。

「外に出たら、何するんだ?両親に会うのか?」

会いたい。でも──

「誰にも見つからないところで…能力のこと、忘れたいな」おれはきっとここから出てはいけないのだから。

「俺のことも忘れてくれ」

「…何言ってるんですか?」


「F79 セキュリティルーム」ドアが開くとそこは廊下。

でるとエレベーターが左右にいくつもある。

兄ちゃんはおれの腕を掴んで走った

黒いエレベーターへ。

兄ちゃんはカードキーをかざす。

「このエレベーターだけが一階に着く。俺が先に出て撹乱するからお前は能力をつかって、隙を見て正面突破できる。」

おれは溜めた星の力を利用することもできる。但し今できるのは力を強くしたり、足を速くする自己強化だけだ。

「兄ちゃんは?」

「俺のことは忘れろって言っただろ」

「ッ、おれが抱えて走る!」

「それは…」

エレベーターが1階からこちらに来ていたエレベーターが77階で止まった。

兄ちゃんは目を見開いた。

「「『HI!アイワナpeople save.

 自由ニ、

     己から"破滅"ヲ選びタク成ホド、

                    ジユウに。

なりたいデスカ?」聞コエル……ナリタイナリタイナリタイ!」

ハハッ!ハ…

      HAHAHAHA!   

             HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!! HA!!」]」』

声は天井のスピーカーから聞こえた。

[「『「シナバ、諸共… HAHA。」]」」


77階で止まっていたエレベーターが上がり始める。

「ッ、気づかれた…」兄ちゃんは冷や汗をかいてる。

おれは何を言えばいいか分からなかった。

[「『コノ気持ち…アンタ、ラが植エ付ケンデスヨ…hah…ワタシモ、自由ニ…

          HA HA HA.

               iT'S sO bAd!!]』」

声が途切れた。

エレベーターが開く。

白い髪をまっすぐ下ろした女性が立っている。

深海のような真っ暗な瞳に白い光が散りばめられた、宇宙のような目。

持っているのは、銃。彼女はそれを兄ちゃんに向けた。

「貴方はこうすると思ってたわ。優しい心の持ち主ですもの。貴方は本当に綺麗だ。」

「ホープ、お前なら出れる。俺のこと…やっぱ忘れんなよ…」


ドン、と鼓膜を震わせる高い音が響いた。

兄ちゃんが、ゆっくりと崩れ落ちていく。灰色の冷たい床に、じわりと赤い液体が広がっていくのを見て、初めておれの頭は理解した。

「──。」

兄ちゃんが撃たれた。

ドサリ、とそれは倒れた。

「ごめんなさい、目の前で撃ってしまって…ホープ様。ここは立ち入り禁止ですよ。部屋に戻りましょう。」

はぁ、はぁ、はぁとおれの声は早くなる。

「[『…彼の死亡を確認。]」」

天井からの声だ。

目の前の女がこちらに歩み寄ってきた瞬間、おれは叫んで逃げ出した。

「…あ、そうですか。…逃げ場はないですよ。」

彼女はおれの方へ歩いてくる。

左右の壁がスライドして、白い装備と、ライフルを持った兵士たちが出てくる。彼らは俺を捕らえよう、と手を伸ばした。

おれは足を速くして、駆け抜ける。

手を避ける。

彼女が歩いてくる。彼女に当たらないように俺の後ろにいる兵士達は整列して道を開ける。

廊下の反対側の奥はガラスでできてる。おれはそれを思い切り殴りつけた。

「割れませんよ。力を強化しても。」

「っぁあああああああ!!」

おれはとにかく、外に。外に出たい。

おれの窓に叩きつけられた──手が──光る。

その光はおれの拳から流れでるように、閃光が光る。

ガッシャァン!

おれの無理やり詰め込まれて、抑えらていた感情が吹き出た。

外にガラスが落ちて夜の星のひかりがそれを輝かせる。


おれは衝動に任せて飛び出た。

空を埋め尽くす巨大な赤や緑の球体。星だけを眺めていた。

おれの体が光る。ぎゅんと体がまっすぐ動く。流星になったみたいだ。


自由へ。

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