武士来襲と、ダブル手のひら返し!
「なな! なな! 大変だよっ!」
「むにゃ…… ねむいよ……」
「すぐ! ほら、起きて!」
バサっと羽毛布団が引き剥がされる。
「大変だよ! なんか変な鎧着た人がっ……!」
涙目で叫ぶアキノ。
寝ぼけた目で、寝室の入り口を見ると……
「そなたが、夏奈殿でござるか?」
真っ赤な甲冑を着たイケメンが立っていた。
「…… はい、七光台夏奈ですけど……」
すると、甲冑のイケメンは、私の元へ来る。
「我は関宿城主から、手紙を預かる者でござる」
「せ、せきやどおー!?」
関宿って、あの、野田市の!?
ここ、異世界だよ!!
「などか、変な世に迷い込んでしもうてな。不覚」
いや不覚って……
「…… ナナの知り合い……?」
さっきまで私が入っていた布団から、顔をのぞかせるアキノ。ちょっと怯えてる。
「いや…… 同郷ではあるみたいだけど……」
野田市民ではありそうだ。時代は違うかもしれないが。
「手紙はこれにて侍る。では、さらばだ。布団の少女よ、怖がらせて申し訳ない」
甲冑男は布団にくるまるアキノのもとへ行き、声をかける。
「…… は! はいっ! 大丈夫ですっ!」
「アキノ……」
一瞬動揺していたが、イケメンを直視したからか、手のひらを返すアキノ。
「では…… 手紙、読んでおきます……」
「またな、なな」
え? 現代語…… と思ったが、武士姿の人物はもう去ってしまった。
「さて…… まずはあのイケメンのリサーチだね」
「いや、手紙でしょう……」
早とちりするアキノ。私が手紙を開けようとすると、アキノが私の手を掴む。
「なな! あのイケメン、逃していいの!? 千載一遇のチャンスだよっ!」
「いや…… 私、一応委員長ですから……」
騒ぐアキノを置いておき、手紙を開封する。
そこには……
「シルバーウィーク限定! 愛宕のスーパーで豆腐半額セール開催!」
「…… なにこれ…… ただのチラシじゃない……」
チラシを見てガッカリするアキノ。しかし……
「な、何おっしゃって!? 豆腐半額セールよ!? しかも愛宕の! ぐぬう…… 行きたい……」
「え……? ナナ、そんなに豆腐好きだっけ……?」
愚問! 愚問だよ!
「私は、大豆の街から来たのよ! だから、豆腐は主食なのっ! 豆腐がこいびと!」
そう。野田市は醤油の町。大豆から作られる醤油と、豆腐は仲間なのだ。
「…… すごいね…… まあ、豆腐ならさっきのイケメンさんが、お土産に渡してくれたよ」
と、冷蔵庫から豆腐をとってきたアキノ。
「…… ナナがチラシを見て、食べたくなるだろうからって」
え……
その時、私は言葉にならない衝撃を受けた。
「アキノ、あのイケメンとっ捕まえに行くわよ! 絶対逃してはいけないわ」
「てのひら返し……!」
豆腐で孤高の委員長プライドは、砕け散った。




