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司祭は今日も人々を救う 〜ただし内心は(あ〜司祭辞めて〜安月給だし休みないし何がいいの?)と思ってる様です〜  作者: レイ


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9/9

9話 司祭は後悔する

 城の中を歩くのは初めてじゃない。

 初めてヴァーミリオン王国に訪れた時は城に入り浸ったぐらいだ。

 あるお方の治療のためにね。


「お久しぶりですクリス様」

「お元気でしたか司祭様」

「この前は治療をしていただきありがとございます」

「また私達にお世話をさせてください」


 おかげで知り合いやお世話になった執事、騎士、メイドなどがおり、何人かにこのように挨拶されている。

 

 ふむ、またここにお世話になるのもいいかもしれない。 

 食事は美味しいし、お風呂は広いし、ベットはフカフカ、細かいお世話はメイドや執事にお願いすればいいし、控えめにいって幸せじゃね。

 

「だけどなぁ〜」


 幸せな妄想を繰り広げていクリスだが、その幸せが続くことはなかった。


「おやおや、何故にこんな所にみすぼらしい司祭風情がいるのでしょうかね〜」


 ニタニタと下卑た笑みを浮かべながら近づくのは、やたらと豪奢な服を着た丸い豚……失礼ハゲデブのジジイだ。


「お久しぶりです豚…ハゲ、んんっ……デブーラ様」


 おっと危ない、うっかり名前を間違えるところだった。(本気)

 てか、名前もややこしいな。

 なんだよデブーラって、狙ってんのか?


「はん、みすぼらしい貧民が。この王城を歩くなど不敬と思わないのか!」


 お前は見苦しい見た目してるが。


「ほう。それは私が連れてきた存在が不敬だったとそういいたのか?ぶ……デブーラ」


 今豚って言おうとしたよね?

 目の前にいる腐れ豚は、このヴァーミリオン王国の高位貴族の1人だ。

 生まれつき高貴な存在として甘やかれてこんな醜い……可哀想な姿をした中年デブだ。


「!!これはこれは姫様、本日はお日柄もよろしく」

「挨拶はいい。それよりデブーラ、クリス司祭は私の客人だ、無礼は許さん」

「ヒィー!」


 視線を鋭くするエリシアにデブーラは一歩後ろに下がるも、反論する気は満々でクリスを指差す。


「ひっ、、姫様、誤解です!私は治療と称して金銭を受け取るこの輩が気に入らぬのです!!」

「何をいっておるのだ貴様は?クリス司祭は治療を施してくださっているのだぞ。その行いに報いるのは当然のことだろう。治療師や薬師達が労働に賃金などの対価を受け取るのと一緒だ」

「しかし、こやつらは聖職者です!神に仕える者が金銭を受け取るのは不敬ではありませんか?」

「聖職者の前に人だ。食事をとるのにも金銭は必要だ。それとも何か、貴様は食事を一切取らずに生きていけるというのか?」


 お〜姫様いいこと言う。

 そうなんだよ生きてくためにもお金は必要だよな!

 だから俺のお給金どうにかならないかな?

 

「むむむ。……ですが姫様こやつは、私が金銭を渡したのに治療を施さなかったのです!」

「何それは本当の話か?クリス司祭が治療しなかっただと…?」


 信じられない話だった。

 クリス司祭のことはよく知っている。

 慈悲深く、謙虚で穢れない司祭だ。(勘違い)

 治療魔法の腕も確かで、今までも戦場でその腕を見てきた。

 そんなクリス司祭が、治療しなかった?

 

「その言葉は本当なのだろうな。もし嘘であれば…」

「っっ……!!」


 信じられない気持ちで一杯のエリシアはデブーラの発言を戯れ事と思い、腰に添えてある剣に手を伸ばす。

 これはただの脅しのために手を伸ばしているが、その行動だけでも十分に相手を脅すことが可能だ。


 流石のエリシアも目の前の貴族を斬ってしまえば、問題になることを理解している。

 腐っても高位貴族なのだ。

 

「本当ですとも姫様。この者は多額の治療費を払ったのにも関わらず、私のこのちょっと膨らんだ腹と少し寂しくなってしまった髪の治療を施さなかったのですぞ!!」

「………んん??」


 困惑するエリシアを眺めながらクリスは内心大きな、それはもう大きなため息を吐いた。


(この腐れハゲデブジジイいい加減にしろよ)


 確かに城に入り浸っていた時、クリスはデブーラから多額の治療費を無理矢理渡され治療のお願いをされた。

 しかし治療の内容を聞いてみれば、到底治療魔法ではどうしようもないものだったため、即治療費を返し断ったのだが、これに逆上したデブーラはその日以来クリスに会うたびこうして嫌味を言ってくるようになったのだ。

 本当に迷惑な貴族である。


「お腹と髪の治療だと?」

「そうです。高貴な私がこのような姿になってしまった病気の治療を依頼したと言うのに、この司祭はあろうことか検討する余地も見せずに依頼を断ったのです!!」

「……デブーラ。髪はともかくとして、お腹周りの事に関しては病気ではなくただの食べ過ぎと体を動かしていないことによる運動不足が原因だ」

「何をおっしゃいます姫様?高貴な者がこのような姿になってしまったうのは病気以外にありえません!」

「…………」


 本気でそう信じてるデブーラを前に、エリシアは言葉を失う。

 普段から素行や自身より下の者を見下すなどの問題行動が目立つ人物だったが、どうやら頭にも相当な問題があるようだ。


「おい司祭!貴様にもう一度チャンスをやる。私の病気を治せ!さもなければ痛い目を見ることになるぞ」

「……」

 

 王族が目の前にいるにも関わらず客人に対して明確に脅しを入れるデブーラに対してエリシアのみならずクリスも黙り込んでしまう。


(こういうやつがいるからやなんだよ)


 悪目立ちが過ぎるデブーラだが実のところこんな輩はほかにもいたりする。

 貴族とかも大なり小なりこういうやつが多いんだよ。

 城に住んでいた頃も何回絡まれたことか。


 国や街などに限らず組織的に動く者達には、必ずと言っていいほどに”無能”や”害悪”となるものは存在する。

 大国の規模ともなると人の数が増え管理が収まらなくなってしまう。

 足を引っ張る者は切り捨てればいいかもしれないが、切り捨て続ける先にあるのは破滅の道だけだ。

 仲間、同僚、親しい者、はたまた自分がいつ切り捨て来るかも分からない人物に誰がついていこう。


 決してこの国の王が無能でも暗君でもない。

 寧ろ、築き上げてきたものを見れば十分に良き王様である。

 

「デブーラ様、先ずは食事を制限してはいかかでしょうか」

 

 このまま無言を貫くと後に面倒になってしまうため、クリスは治療ではなく提案を出すのだが、相手が悪かった。


「貴様は私に死ねと申すのか!」

「いえ、そんなことは言ってませんが。ただ食事を控えるようにと」

「好きな時に好きな物を食べて何が悪い!私は高貴な者だぞ。それとも何か?たかが食事ごときで私がこうなったと言いたいのか?」


 ダメだこりゃ。

 もう何を言っても聞く耳を持ってくれそうにない。

 どうにかこの状況を抜け出せないかな。

 というか帰りたい。


「ええい!やはりスラム街に住む司祭など信用できぬ!貴様は直ちに───」

「デブーラ卿」


 鈴の音色の様に落ち着く声色が、デブーラの言葉を遮る。

 声の主をたどってみるとそこには、デーブラとはまた違った色合いの豪奢な服装に赤いマント共にはためかせた青年。

 

 エリシアと同じ赤い髪と、優しさを宿した瞳。

 そして利発的で男性なのに女性の様にも見える中性的な風貌。


 エリクス・ヴァーミリオン

 ヴァーミリオン王国の第三王子で、若いながらも国の内政を取り仕切る切れ者だ。


「こっっっ、これはこれは、エリクス様!」

「デーブラ卿、お父上が探しておられましたよ」

「ち、父上が!」

「はい。執務室にいますので向かってあげてください」

「直ちに!!」


 体に似合わない俊敏性で走り抜けるデブーラに複雑な視線を向けたくなるが、今は目の前の王子様に集中しなくては。


「お久しぶりです。エリクス様」

「久しぶりだねクリス」


 頭を下げるクリスに朗らかな笑みを浮かべるエリクス。

 本来、一介の司祭では顔を合わせれない存在だが、城を何度か訪れたクリスにとってはもはや顔馴染みでもあった。


「エリクス助かったわ。あのデブ本当にしつこかったから。」

「姉上、王族がそんな下品な言葉を使ってはいけませんよ」

「ふん、事実よ」


 不愉快そうに鼻を鳴らすよエリシア。

 よっぽどデーブラに対してこたえたのだろう。

 それはクリスも同じだが。

 

「クリスも悪かったね。彼みたいな貴族もいるけどどうかこの国を嫌いにならないでほしい。君に離れられると姉上が悲しむ。勿論僕もね」

「…エリクス様にそう思っていただき光栄です」


 あ〜すっごくいい人。

 なんか心が清められる感じがするよ。


「ゆっくりとお話ししたいところですが、この後大事な用事がありまして」

「相変わらず忙しいそうね貴方は」

「はは、僕は姉上の様に戦う力がありませんので、こういった仕事で国のために頑張りたいんです」

「ご立派です」


 珍しく心の底から尊敬の念を抱くクリス。

 このような男が王になれば、この国もきっと安泰だろうとそう信じさせてくれる。


「それでは僕はこの辺で」


 立ち去るエリクスを見送った後、再び城内を歩き始める2人。

 

「クリス司祭、もう少しであの子の部屋につく」

「あの方は、お元気なのでしょうか」

「それはもうな。本当に病人だったのか疑わしくなるほどに元気一杯さ」

「それはよかったです」


 かつて、この城で入り浸る理由になった人物に合わせたいとエリシアにお願いされ城にきたクリスは、やがてその人物の部屋の前まで到着した。


「クリス司祭、ここまできてもらって悪いが、ここからは覚悟した方がいい」

「はい?覚悟とは…」

「この先は、さっきのデブが可愛くなるほどの……」

「……」


 えっ、だまんなよ。

 あのデブが可愛いって一体…。


「入るぞ」


 あっ待って、まだ心の準備が!

 





 数時間後

 




 クリスは本気でこの国から逃げたいと思った。

 

デブーラの1日

起床

朝ごはん

食後のデザート

お菓子を食べながら仕事場に向かう(馬車で)

職場についたら朝弁

仕事場を抜け出しお菓子を貪る

昼食

食後のデザート

おやつの時間

帰宅(帰宅中はお菓子をボリボリ)

仕事の疲れを食事で癒す

夜食

食後のデザート

就寝前にもう一回デザート

就寝(途中で起きたら食事をもう一回挟む)


好きな飲み物:ケーキ


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