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桜の退屈で平凡な日々 ②

桜編はこれで終わりかなぁ(日本編が終わるとは言ってない)

 また授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。そしてそれと同時に周囲で起こる喧騒を避けるために校内をさ迷う。

 これは、このところ私のお決まりの行動になってしまった。

 あれからすぐに熱は下がり、次の日から普通に登校を続けている。あの後私は眠り、そして目覚めると私はいつの間にか青い宝石が付いたペンダントが握っていた。少し気味が悪くなり、捨ててしまおうかと思ったけれど、そのペンダントが、お母さんが大事にしていたペンダントととてもよく似ている事に気がついて今ではスクールバッグの中にしまっている。


 ありえない話だけど、そのペンダントに触れていると、何故かお母さんにも触れているような気分になってとても落ち着く。入手経緯は少し気味が悪いけど、今では私の一番大事な宝物になっている。

 それ以来少しだけ体調も良くなったし、とても感謝している。


 「桜! 一緒にご飯食べよ?」


 「うん、いいよ。屋上?」


 「まぁね、私はいつもあそこで食べて、食べ終わったら本読んで時間潰してるの。教室だとうるさいからね」


 「それは分かるなぁ」


 実際私もそのうるささから逃げてる訳だからね。


 「でも意外だね?」


 「何が?」


 「結花はみんなと中がいいじゃない、なのに進んで一人になるとは思わなくって」


 「あぁそれね⋯⋯私としては特に周囲の摩擦なく生きてたいだけだからさ、みんなと話すのも摩擦を避けるためだし⋯⋯あぁでも桜は違うよ? なんていうか桜は⋯⋯私とちょっと似てるからそばにいやすいんだよねぇ」


 「そうなの?」


 「そうなの」


 私としてはそんな事を言われても困ってしまうのだけど、私は周囲の環境に馴染めないだけなのだ。お兄ちゃんが死んじゃう前は、普通にみんなと話したりもしてたし、前から一人になりたかった訳じゃない。

 だからそんな事言われても困ってしまうけど、前から私と結花が仲がいいのはクラスのみんなが知ってるから、結花と一緒にいても不審がられない。その結花は学校のアイドルで、話しかけるのも躊躇われるような扱いだから、今の私にとっては非常にありがたい。

 なにせ結花と一緒に歩いていると、モーゼが通る海のようにサッと人が消えていくのだ。そして遠くから珍獣や、ありがたいものを見たかなのような目をして離れていく。人払いとしてこれ程この学校で機能するものが他にあるだろうか? こういう点でも、結花と仲良くしていて本当に良かったと思う。


 そのまま屋上への扉を開けると、意外な事にそこには先客がいた。


 「あれ? 陽美子(ひみこ)ちゃん? 珍しいね⋯⋯」


 「そうだね⋯⋯」

 思わず同意を返す。

 雛月陽美子(ひなつきひみこ)、結花が学校のアイドルだとするならば、彼女は学校のマスコットにあたる。小柄な身体と、愛くるしい表情が非常に人気の少女で、噂だと月一で告白が来るらしい。

 彼女の父親は農家出身だったが、畑仕事を継ぐのが嫌で東京に出てきたらしい。彼女の母親にはそこで出会ったそうだ。

 私が何でそんな事を知ってるのかというと、彼女の母親の家系が代々続けているブリーダーとしての仕事が認められ、テレビに出た事があったからだったりする。その時に知り合った経緯として今の話が知られ、彼女は学校で知らないものはいない有名人になった。


 そんな陽美子ちゃんは、屋上で一人、幸せそうにおにぎりを頬張っていた。その様子は、まるでほっぺたに餌を溜め込むハムスターのようで、しかし非常に可愛らしく、同じ女として少し負けたような気分になる。


 「こんにちは! 陽美子ちゃん!」


 「!? は、はわわわ!?」


 今まで私達に気付いてすらいなかったのか、陽美子ちゃんは結花に突然話しかけられて、明らかに動揺した様子で、持っていたおにぎりをお手玉していた。


 「ご、ごめんだいじょぶ?」


 「だ、大丈夫です」


 しかしこれはまた珍しい子にあったなぁ。学校でも人気者の陽美子ちゃんは、常に誰かに囲まれている場合が多い。まぁマスコット的な扱いだから、本人も困っているのをたまに見る。

 でも本人の控えめの性格のためか、特に反論する事もなく受け入れている。


 「陽美子ちゃんも屋上でご飯食べてたの?」


 「は、はい」


 「ふ〜ん、意外だなぁ。陽美子ちゃん仲良い人たくさんいるのに一人で食べてたの?」


 「はい、その方が気楽なので⋯⋯」


 どうやら彼女も私と似たようなものらしい。


 なら、あまり話しかけない方がいいかな。


 「でも別にお話するのが苦手な訳じゃないんです。でもその⋯⋯あんまり会話についていけなくって」


 まぁ確かに陽美子ちゃんの普段の様子も、陽美子ちゃんのそばにいる女子と、その女子と仲が良くて、陽美子ちゃん狙いの男子達が喋って、たまに陽美子ちゃんに同意を求めてただけっぽかったからね。

 あれだけ一方的な会話になると、確かに陽美子ちゃんの控えめな性格だと会話しずらいかもしれない。


 そしてよく思い出してみれば、陽美子ちゃんがお昼を誰かと一緒に食べているのを見た事がない。


 「そっかぁ⋯⋯陽美子も私達と一緒に食べる?」


 「ふぇ?」


 「ちょっと結花?」


 「だいじょぶだいじょぶ! 節度は弁えるからさ!」


 「はい!」


 あれ? 本人からは思ったよりも好印象だな⋯⋯てっきり断られると思ってたからこれは意外かも。


 「いいの? 別に断ってもだいじょぶだよ?」


 「いえ、天野さんと上里さんとは前からお話してみたいと思ってたのでちょうどいいかなぁと」


 「それならいいんだけどさ、無理しないでね? 結花がちょっと強引なのはいつもの事だし」


 「はい」


 まぁ本人がいいならいいか、私が決める事じゃないしね。


 「ほら早く早く!」


 「じゃあ行こっか」


 「はい! すぐ行きます!」



今日中にもう一本出します。

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