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ストラテジー~知略の勇者~  作者: 鷹飛 諒
第一章
2/31

~召喚の先は~

二話目です!

鷹飛 諒でございます!

この後ももう一~二話ほど投稿させていただきます。

では!

どれくらい眠っていただろうか。重く瞑っていた目蓋(まぶた)の隙間から光が射しこまれてくる。


 光でオレの意識は覚醒しつつあり、次第に体の感覚が蘇っていく。頬に硬く冷たい感触を感じる。大理石だろうか。手の方にも感覚が戻ってくる。オレはゆっくりと手を動かし、床に手をつける。


「目覚めたか。勇者よ」


 聞き覚えのある声にオレの意識は完璧に覚醒した。


「……ここは?」


 オレは体を起こし、辺りを見回す。


 ここは大理石の王城のようだった。外見を見たわけではないが確信できる。なぜなら目の前に大層豪華な礼服に宝石をあしらった金色の王冠を被った長い白鬚が特徴の老人が大勢の騎士や部下のようなものを連れてそこに立っていた。


「バルカ王国王城じゃよ。勇者殿」


 老人がオレの独り言に応えるように語りかけた。


「……状況を説明してもらえると助かる」


 オレは思いのほか自分が冷静でいられていることに対し、内心びっくりしていたが事の運びが急すぎてまだ頭の理解が追い付いていないのだろうなと勝手に、というか自分がしたいように解釈した。


「その前に自己紹介をしよう。わしはグスタフ・ボナパルト。この国の五三代国王じゃ」


「柊和人だ」


 ついでに自分も名乗っておく。


「では、和人殿。お主は古に伝えられし儀式により、こことは異なる世界、異世界からここバルカ王国に召喚されたのじゃ。そして今この現状に至る。こうして召喚されたという事はお主に勇者の資格があり、この世界を救える力を持っているという事じゃ。勇者よ、世界をどうか救ってほしい」


 あれー? 状況を説明してくれって言ったのに最後の方はなんかお願いされたぞぉ。


 訝しげに見るオレに気付き、少し慌てた様子で咳を一つ。


 そういえばこの声は……魔法陣から聞こえてきた老人の声にそっくりだ。


「あんたかぁ……あんなことをしたのは」


「おい! 王国国王の御前であるぞ。口を慎め」


 グスタフ国王の隣に立っていた壮年のがっしりとした体格の男がオレに向けて檄を飛ばす。何とも騎士の鎧が似合う男だな。


「おいあんたら……誘拐犯だってことを忘れてんじゃねぇぞ」


 それにしてもすごいなオレ。こんな口調で啖呵切れるなんて驚きだ。それにしてもさっきから驚いてばかりだ。まぁ、あんなに追い掛け回されて気が立っているってこともあるんだけど。


 依然としてオレは老人を睨みつける。


「む……こちらの都合でこちらに呼び出したのは大変申し訳なく思っている。本当にすまない」


 グスタフ国王は少し落ち込んだ様子で深く頭を下げる。


 こうも素直に謝られると責める気もなくなってしまう。オレはしばらく思考を巡らせた後、深くため息をついた。


「わかったよ。話ぐらいは聞こう」


「おお、ご厚意に感謝する。では」


 グスタフ国王は先程の壮年の男に声をかけ、説明を促す。


「かしこまりました。では坊主、まずは俺の名も言っておこう俺はアレク・アドルフだ。この王国の騎士団長をしている。

 さて、単刀直入に言おう坊主には勇者として魔族と戦ってほしい。

 今、この王国は魔族と戦争状態にある。数一〇〇〇年前、封印された魔王がどういうわけか復活し、魔族の大軍を率いて攻めてきたのだ。

 我々はほかの王国との協定を結び、魔王軍に対抗するため一致団結し、事にあたっていた。だが奴らは魔の物、身体能力も魔法適正も俺たち人間よりも高い! 俺たちは苦戦を余儀なくされていた。

 そこで俺たちは過去の大戦に勝利した我々の先祖の時代の文献を調べることにした。一度封印されたのだ、過去に何か魔族に打ち勝つ秘訣があったのかもしれん。そして、我々は――」


「長い長い長い! 簡潔に話せよ軍人だろぉ!」


「俺は聖騎士だ」


「同じだ!」


 マジで長い。前置きが長すぎるよ、全く。


 オレはアレクを睨みつけ、不満な顔を惜しげもなく見せる。


「……魔族と戦うため、古代の文献を調べていたら勇者を召喚して戦っていたことが分かり、それを今回実践した」


 アレクは少し不満そうに語った。


 少し抑揚をつけて語りたかったのだろう。オレを戦う気にさせるためにいろいろ言葉を用意したんだろうなぁ。でもこいつ言葉で士気とかを上げる資質なさそうだし、行動で見せるタイプだなこいつは。


「んでオレは独りここに召喚? されてその魔族とかいう化け物と戦えと」


「いや、坊主のほかにもあと四人、勇者はいるぞ」


 はい?

 

 アレクの言葉でオレは頭の上に疑問符が浮かんだような気がした。


「あー勇者ってのは基本一人体制がゲームの常識でありましてぇ~その一人の勇者に付随して強力な仲間が数人いるってのがテンプレなんだけど……相違なかろうか?」


「体制? ゲーム? て、テンプレ? なんかの暗号か?」


「…………いえ、なんでもないです」


 いえ、別にあれ? オレってば特別? とか思って内心ウキウキなんてしてないんだからねっ! 


 と自分を落ち着けてみるが、しかし四人も勇者がいるとは……オレいらなくね?


「というわけじゃ何とか協力してくれんか、勇者よ」


「断る」


 オレはきっぱり断った。正直やらなくて済むのならやりたくない。


「……理由を聞かせてもらってもいいかの?」


「オレは人殺しの経験もないし、戦ったこともない」


「奴らは化け物だ。殺しの範疇には入らない!」


 アレクがいきなり吠える。オレが魔族とやらを人扱いしたことが気に障ったのだろう。


「それはずいぶんな物言いだと思うぞ。あんたらが戦争って言葉を使ってるからには魔族はオレ達人間と同じように言葉を話したり、感情があったり、思考することができるんだろう? 人殺しじゃなくても人に似たものを殺せって言っている。あんたらの代わりにな」


「なかなか、頭が回るようじゃのぉ。他の勇者四人は初めはそこまでの思考にたどり着いてはいなかった」


 グスタフ国王が感心したように何度もうなずいた。


 一方のアレクは気づかれるとは思ってもいなかったようで、しばらく驚いた後悔しさをその表情からにじみでている。


「え、いやこれぐらいの頭は回るだろ。こっちはあんたらに追い掛け回されていたんだからな。冷静になる時間はあったさ」


「しかしのぅ、現在お主をもとの世界に送り届ける手段はないのじゃ。だからのぅ、逃げられないのじゃよ。お主が召喚されたのは運命であり、天命なのじゃ」


 グスタフ国王は老いて重くのしかかった瞼の裏から鋭い視線をこちらに向けてきた。


 さすが王様だな。腐っても威厳がある。


「さすが、超テンプレ通り。こういう時に限って確実に逃走手段を断ってくるとは、神様ちょっと厳しくないですか」


 なんとなく予感していたが、改めて言われると来るものがあるなぁ。オレは思わず天を仰いだ。しかし、呼ぶ手段はあるのに帰す手段がないのは少々気にかかる。こうなると知ってるけど言わないってのが可能性的に高いな。


 オレはそう自己完結して、辺りを今一度見回して、意を決した。


「わかった。協力することは別として。今のあんたの王国をしばらく見て回ることにするよ」


「数々の温情、誠に感謝申し上げる」


 グスタフ国王が深々と頭を下げる。


 それにつられ、アレクとその他大勢の騎士や王の側近が頭を下げた。


「では、早速お主にほかの勇者を紹介しよう。別の部屋で待っておる」


「わかった」


 オレは素直にうなずき、ここで初めて立ち上がった。ずっと座っていたからかうまく足に力が入らず、少しふらついてしまった。


「大丈夫ですかぁ?」


 またしても聞き覚えのあるやわらかい声にオレは目を向けた。ずっとオレの後ろで待機していたらしい……全く気付かなかった。


 そこには青髪の眼鏡をかけたフード付きのローブを着た女の子が立っていた。身長は俺の胸のあたりくらいの高さで、可愛らしい。


「え、ああ、うん、大丈夫です」


 女の子に慣れてないのでおもわず敬語になってしまった。恥ずかしい。


「ここからは私がご案内致します。だからついてきてくださぁい」


 さぁいきましょう、と女の子は先導する。


 なんかおっとりした子だな。悪いとは思ったもののオレは彼女をしげしげと観察する。


 するといきなり彼女が足を止め、こちらを振り返ったので気づかれたと思ってドキッとする。


「申し遅れましたぁ。私、エミリア・ルーシーと申します。よろしくお願いしますぅ」


「あ、はい、柊和人です。よろしくお願いします」


 うーん、なんかもっと言い返し方ができない物だろうか。女の子だと変に緊張してしまう。


 エミリアはオレの慌てた様子も気にも留めていない様子でまたオレを先導していく。


 なんか気にされていない様子で少しへこむが、オレは気を取り直してエミリアについていき、部屋を後にした。


 ……あ、こいつ魔法陣の時の女の声だ。


最後まで読んでありがとうございます!

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