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夢想の瑞希  作者: 木崎 しの
瑞希編
12/66

偽りの関係

そんな学校と任務をこなす日々がしばらく続いた。幸いあの赤子の霊はあれで消されたらしくあれ以降出ることもなく、ドアノブガチャガチャする方も偶然出会い、うぜってぇんで竜馬が燃やしたと言っていた。今では特に不自由なく暮らしている。



「よぉ、瑞希飯いこうぜ」


昼休みになると竜馬が教室まで来ていた。


「いいが」


「よし、決まり。何処で食べようか。」


「屋上でいいんじゃないか、騒がしい場所は疲れる」


「いいね。よし決まり」


購買で適当にパンを買い屋上へと向かった。


「いいねーいいねーやっぱりこういうのってのが日常だよねぇ」


他に誰もいない区画でパンを貪りながら竜馬が呟いた


「友達と飯を食い気に入らねぇあいつの悪口を言って笑う。これこそが俺達の欲した日常。違うか?」


悪口は言わないが概ねそうだろう


「そうだな」


適当に同意しておく


「でさぁ、流行りのゲームについて話したりボスの攻略法を教えあったり。したいねぇ。時間的にゲームは厳しいな」


「カプセルに入れば睡眠は1時間で済む。疲れは取れる。傷も癒える。学校は9時から16時。学校にいるのは7時間、通学時間2時間食事トイレなど2時間。仕事が4時間ここまでで16時間残りの10時間でゲームやら何やら出来るんじゃないか?やるとは思わないが勉強を3時間するとしても7時間余るぞ」


「分かってないねぇ。」


「何が?」


「誰よりも普通に憧れているこの俺が睡眠時間を取らないなんて有り得ない。眠らなくていいのは分かっている。だが俺はしている。何故だと思う?それが普通の日常だと信じているからだよ」


「悪かった。いらぬ話だったな」


「いや、参考になったよ。やっぱり今俺に1番いらないのって仕事なんだよ。ま、老後を待つしかないねぇ。本気で離反しようなんて考えれば体ドカンだし。ところでよぉ、瑞希」


紙パックのジュースを飲みながら言葉を投げてきた。


「なに?」


「お前、好きな女とかいるわけ?」


口に含んでいたジュースを吹いた。


「聞いてませんよ?瑞希さん」


ここまで沈黙を守っていた零亜も口を開いた。というよりお前いつからいたのだ。

入学式はさぼったらしい零亜。理由はなんでもいきなり学校にいたような演出で俺を驚かせようとしたらしい


「まさかいないって訳でもないよな?いるよな気になる女のひとりやふたり。ホモじゃあるまいし」


「ホモってなんですか?」


純粋な目で竜馬に零亜が尋ねた


「知らないの?ホモってのはね。瑞希の場合女を好きになれず男を好きになるってことだよ。俺もまさかこれまでずっと一緒にいた瑞希がホモだなんて思いたくないよ。」


手を目に当ててメソメソしたような素振りを見せる竜馬


「ごめんな。瑞希お前の気持ちに答えてやれなくて、俺は男じゃなく女が好きだから…」


「えぇ?そうなんですか?」


乗るなよお前も。

流石にそろそろ口を挟もうか


「俺も女が好きだよ。勝手に失恋した方向に持っていくな。」


「で、それは誰なわけ?やっぱり零亜ちゃん?だよねぇ。いっつもお前の近くにいてくれる零亜ちゃんだよねぇ。俺がお前でも多分零亜ちゃん好きになると思うし。零亜、君のことが好きだ!ほら言ってみ」


「そうなんですか?嬉しいですけどごめんなさい。私達、だって兄妹じゃないですか…」


「えぇ?まじで?ショックだわ…唯一愛した女。妹である零亜に振られてしまうなんてショックを隠せないね…」


何故こいつらはこんな馬鹿らしい会話を続けられるのだろう。


「というよりお前、血のことを持ち出しているが、俺とお前の血がもし繋がっていなかったらどうだったんだ?」


単純に疑問に思ったので聞いてみることにした


「変なこと聞きますね。そりゃあまぁ?もし、もしですよ。繋がってなかったとしたら…考えるかもしれません」


「へー。」


「仮にの、話ですよ?」


「分かっている」


どうしてこいつはこんな、俺と自分が兄妹なんていう、有り得ない嘘を信じられるのか。だいたい俺とこいつでは同じ人間から生まれたとは思えないほど顔が似ていない。

そんなことを考えているとおもむろに竜馬が立ち上がった


「さてと、そろそろ時間だな。次体育じゃなかったか?いやぁ。女子の揺れるあれを拝みにいこうや。なぁ?瑞希?」


「あぁ。」


俺達も立ち上がって屋上を後にした




「パないねぇ。あいつ前原だっけ?ブルンブルンに揺れてやがる。ドゥルンドゥルンだぜ。俺の調査によるとあいつは1年の女子の中じゃトップ10に入る巨峰の持ち主だ。ひゅ〜。それに比べてお前の妹小さすぎだろ。まな板だろあれ。まだ瑞希ちゃんの方が抱き心地良さそうだよな」


目をぎらつかせながらその前原と呼んだ女子の胸を見ている隣の変態。


「…あのさぁ、楽しんでるとこ悪いんだが、いい加減ペース上げないか?このままじゃドンケツだぞ」


「はぁ?ドンケツだろうが何だっていいだろ。こんなグラウンド周回。今大事なのは胸だよ胸。それ以外に大事なことなんてねぇよ。脳みそどうなってんだお前!!!!」


「脳みそどうかしてんのはお前だよ九膳!口を動かしてる暇があるなら足を動かさんかい!」


怒声が飛んでくる。主は体育教師のようだ。

ほら見ろ怒鳴られてやんの


「ちっ、どいつもこいつも人のおっぱい鑑賞会を邪魔しやがって。」


「そりゃ口ばっか動かしてやる事やらないなら怒鳴るだろ。特に俺らほぼドンケツだしよ」


「お前も俺のランニングおっぱい鑑賞会否定すんのか?クソカス瑞希。もういいわお前とはこの場限りで絶交だよお望み通り早くいけよ。二度とこの俺様に話しかけんな!」


今の結構理不尽な切れ方をされたと思うのは俺だけだろうか。


「んじゃ、先に行ってるぞ。」


「あぁ!どこでも勝手に行きやがれや!このゴミムシが!」






竜馬がゴールしたのは俺がゴールしてから1分後くらいの話だった。それから口を開きながら俺の元へ近付いてくる


「あのコースでさおっぱ,,,」


「絶交じゃなかったのか?」


「過ぎたことだ。水に流せよ」


自分勝手な奴だ。いつものことなので別に構わないが


「九膳。お友達と仲良く談笑か?随分余裕だな」


そこで体育教師が口を挟んできた。顔は笑っているが目は笑っていないというやつか


「はい。ばっちりですよ!こんなもん俺にかかれば朝飯前ですね」


ほんとに言葉を選ばないなこいつは。


「じゃあ、そんな自信満々のお前は次回から東條と同じ4分で走れよな。加点してやるから」


「あ、すみません先生。嘘ですごめんなさい。あれが…ヒュー、ゼー、全力…なんですよ。朝飯前…ヒュー…なんて嘘ですよ…」


わざとらしく息を乱れているような演技をしている。バレバレだ。


「そうか。本気ならせめて東條とお話は辞めるんだな。あんなデカイ声で『脳みそどうなってんだお前』なんて叫ばれたらまだ余裕あるんだなと思ってしまうだろ」


「…ヒュー、ゼー 、あれは東條がすごいランニング方法を思いついてしまって驚き…ヒューのあまりゼー叫んでしまいました…ヒュー。」


もう辞めろよそれ見苦しいぞ。というより俺に責任を擦り付けるな


「そのランニング方法って何だ東條」


「出任せですよ。只の責任の押し付けですよ」


「そうか。お前も話していたなら何か考えなければならなかったからよかったよ」


そう言うとまた元の位置に戻っていった。


「太田!もう少しだ!頑張れ」


太田?もう少し?見るとまだ誰か走っていた。走っているというより最早あれは歩いているレベルだが本人は大変そうにゼー、ヒューと本気で言っている。


「またあいつか。あいつも遅いねぇ、本気出してあんだけ遅いって何らかの病気持ちだろ。学校行く前に病院でも行けよ」


横にいた竜馬が呟いている。口は悪いが言っていることには同意できるな。何回か体育の授業を受けたが毎回あんな感じだ。


「ま、あいつは恵まれてない方のパンピーって訳だ。俺は普通に憧れてはいるが流石にあれは勘弁だな」


今度は苦笑いだ。


見ているとようやくゴールしたようだ

竜馬がゴールしてから2分後。最初こそ走っていたような気がするが最後は徒歩。頑張ったんじゃない?とは思うが


「それより瑞希あんなノロマデブ見るより、前原のブルンブルンおっぱいでも鑑賞しようぜ。って女子はもう準備運動に移ってるな。あー俺も女子と準備運動してぇよぉ。」


「よく頑張ったな太田!」


声の聞こえた方角を見ると汗ダクダクで座り込んでいる太田の背中をポンポンしている体育教師が見えた。




「うぉぉぉぉぉぉ。パネェなぁ。前原!ブルンブルンブルンブルンブルンブルン」


「お前それしか言えないのかよ」


「おっぱいの前では飾り気のない言葉で十分なんだよ」


「ところで反復横飛びか、竜馬は何回いけたよ」


「去年なら普通20秒で250以上詳しくは覚えてない。お前は」


「通常の肉体で200ちょい」


「うし、勝った。基礎スペックの勝ちって事で。」


「今日は抑えろよ?」


「分かってるよ適当に周りに合わせるわ」


前のグループがおわり次は俺のグループの順番らしい


「じゃ行ってくるわ」


声をかけたが竜馬は既に女子の方を見ていた。



あれから放課後のホームルームも終わりボロ屋へ戻ってきた今は俺の部屋に竜馬と陽菜と3人だ


「無難な回数に落ち着いたな」


「あぁ、パンピーに合わせるのも大変だわな。」


結果俺達の項目全て測定結果は周りと似たような結果になった。


「ところであの反復横飛びってやつでの前原はほんとやばかったんだよ瑞希!お前の彼女は全然揺れてなかったけど、むしろお前の方が揺れてたよやっぱり!」


零亜のことか


「勝手に彼女にすんな」


「でもお前ほんとに血が繋がっていないこと言わなくていいのか」


「言ってどうなる」


「どうなるとかじゃなく、彼女本気で信じてるんだろ?それはどうなのかそう思うわけよ」


「…」


「無理強いはしない。まぁ今は前原のおっぱいについて今日の戦果を報告し合おうじゃないか」


ブレないなこいつは。胸胸胸。胸しか見ていない。そう考えると吹き出してしまった


「何がおかしいんだよ」


「いや、ごめん何か笑っちゃってさ」


「そうかよ。まぁ俺といて笑わないというのは不敬罪だからな。今は全力で笑っとけ」



話題を変えよう。腹もすいてきた


「ところで、お前飯はどうする?カップ麺くらいならあるが」


「何味?」


「味噌」


「じゃそれでいいよ。麺はトリプルで頼むわ」


「そんなもんねぇよ」


「ありますよ」


俺達の会話を黙って聞いていた陽菜が突然口を開いた。


「は?」


「失礼します」


そう言ってから立ちあがると引き出しの中から麺を取り出してきた


「気が利くねぇ。陽菜ちゃん。おっぱいデカいしいい女になれるよ」


いつまで胸の話してんだこいつ。


「そんなことないですよ。夕飯の準備は私がしますのでお2人は寛いでいてください」


無難な答えを返してから作業に入る陽菜。


「ところでさ、前々から気になってたんだが瑞希はいいよな。ルームメイトが女の子で俺は1人だしよ。寂しいぜ。」


「ただ色々あって一緒にいるだけだ。この施設全般の話だが、1人用の部屋多いから2人なら狭いぞ。あんまりいいもんでもない。たしかに洗濯だのなんだのその辺りの家事は助かるが。お前も誰か気に入った奴がいるなら交渉すればルームシェアとか出来るんじゃないか」


「まじかぁ。でも俺は前原のおっぱい」


「前原は置いておいてな。お前俺にばかり聞くが自分は気になる女とかいないのか」


「気になる女か。目の前にいるじゃん」


「は?」


「だからお前だよ」


「…」


「お前、オレの女になるために女になれよ。そして俺の女になれよ。おっぱいは2人で大きくしていこう」


「…」


「…黙り込むなよ。冗談だよ冗談」


「…」


「…」


「…」


ただ陽菜の動作音のみが聞こえる沈黙。


「わーったよ。気になる女の1人や2人教えるから喋れよ」


「早く言えよ。前原は抜きでな」


「流石にそれくらい分かってる。俺の好きな女はな、愛菜だよ」


「へー、愛菜、ねぇ」


呟いてみるが一応聞いたことはある程度の名前だった。


「あの幼い言動とても背徳的だ。彼女と共に幾度の夜を越したい。そして…」


「そして、なんだよ」


「幸せに暮らしたい、そのためにはどうすればいいか教えてくれチャラ男な瑞希先生」


「先ず、彼女の同意を得て所長にその旨を伝える。あちらも一部屋開くということで喜んでOKするだろう」


「それだけでいいのか?」


「俺が陽菜を預かった時と同じ手順だ。多分それでいい」


「多分って何だよ」


「マニュアルもないんだし仕方ないだろ。文句言うなら自分でやれ」


「お待たせしました」


陽菜がわざわざトレイに載せてカップ麺を持ってきた。


「ところで陽菜ちゃんって何で瑞希と一緒にいるわけ?」


食べながら竜馬が問を投げていた


「たしかに。俺がお前を預かっていた理由も随分前になくなっているな。どうしてなんだ?」


いるということが普通になっていて当然の疑問を疑問だと感じなくなっていたようだ


「私は不要ですか?」


「いや。いてくれた方が助かるが」


「私は使用人ですので瑞希様が不要だと仰るまでお傍にいますよ」


「だ、そうだ」


「へー。なるほどね」


「俺らの事を気にしていないで自分のことを気にするべきだな。」


「それもそうだな!おし付いてこい瑞希!」


カップ麵の空を乱暴に置くとズカズカと立ち上がって歩き出す竜馬。いつの間にかカップ麺は食べていたらしい。俺の3倍もいつ食べたのだあいつは。




部屋で一人思い出す。今までの事を


「食えん。出直せ。全くこんなこともまともに出来ないのか」


そう言って私に料理を投げつけてきた両親。

熱い。私の黒い髪をスープが伝う。


「失礼しました」


床にぶちまけられた料理を片付ける毎日。


「パパァ、ママァ、お腹空いた」


私と彼で何が違ったのかなんてわからなかった。

違いなんてあれが男で私が女であることくらいしか理解できなかった。

何故私はそこに座れないのだろう。そう何度も思ったが、結局考えるのは辞めた。考えても私がそこに座れるわけではないのだから。


そんなある日私は両親に売られた

そして組織にきた。その時はただ漠然と次の主人が変わるとしか思わなかった。


「よう。何してるんだ」


「何も」


ボーッと食堂で座っていたらそいつは声をかけてきた。見たことがある。というより知っているやつだ。私は彼と何度も任務をこなした事があるから。


「ふーん」


それからそいつは私の隣に座ってきた。


「お前名前は」


「ない。」


そんなものあるわけないじゃないか。あったとしても知らない。呼ばれる機会なんてなかったんだし


「そうか。そんな名無しにいいもんやるよ」


「何?」


食べ物だろうか。

彼は少し悩むような素振りを見せた後こう口を開いた。


「お前は今日から唯。唯って名乗れ」


何それ,,,は。


「ゆ…い?」


「名前だよ名前。嫌だったか?」


不安そうな顔で覗き込んでくる彼。そんな彼を直視出来なくて私は顔を背けてしまった。


「…いや、そうじゃない」


何故私は顔を背けたのかは分からない。

でも、それは初めて私が他人から何かを貰った瞬間だった。だがそして同時に


「こんないいものを貰ってしまっていいのか?」


そんな疑問が浮かんだ。私にそんないいものを貰う資格なんてないのだから。こんな量産品の私に固有名称なんて勿体ない。


「いいよ。いいよ。俺があげたんだし。いつもはただじゃぁないが、今回は特別に無料だ。」


そう無邪気に笑う彼。その笑顔を見ているとまだ何色にも染まっていないんだなと思った。


「だからな。お前は今日から誰が何を言おうが唯。」


己の決定が全てだと言うように彼はきっぱりと断言した。


「…うん。分かった」


何故かそれがとてつもなく嬉しかった。


でも…


あいつと出会ってからお前は変わってしまった。何色にも染まっていなかったのに。出来たらそのまま私と同じ無色でいて欲しかったのに。

お前はお前だけが色を得ていた。

いや、違う。あの時は気付かなかったが私も色を得ていた。あいつと違う色というのが残念だっただけなのだ。


「瑞希…」


最近の瑞希は私を頼らなくなった。何でも自分でこなしてしまう。もしかして私は


「もう瑞希の足で纏いなのかもしれないな」


でもずっとそのままは嫌だ。そうだ。特訓しよう。そしていつの日かあいつをワッと驚かせよう。その時の瑞希の顔を思い浮かべると俄然やる気が出てきた。






今回もご覧くださりありがとうございます。

このまま最終話まで何とか走り抜けたいです。


何か報告などありましたら活動報告の方に書きたいと考えています。

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