これでラストだぁ―――っ!!!
イラストは志雄崎あおい様からいただきました。
<SIDE エビえもん>
「良かった~……エビ太とエビ美……泣けるわ」
隊長さんは手の甲で目尻を拭っている。
何この人。
マジで泣いてるの?
言ってみれば一匹のエビが、つがいのエビを見つけたっていう、ただそれだけの話でしょ?
そう言えばこの人って、昔から陳腐な恋愛小説を読んでは、感動してガチ泣きしてたよな~……。
ああ、でも良かった。
この人が感動に浸ってる間は、僕も無事だろう。
このまま、何もなかった顔をして本土に帰ろう。
じゃ。
……あれ?
なんか、足元にまとわりついて……何これ……?
【翌日】
「……彰彦はどうした?」
「誰でしたっけ?」
「……和泉さんです……」
「ああ、エビえもんか。あのエビ達が何か知ってるんじゃないですか?」
「ダメですよ~、ラブラブな2人のジャマをしちゃ」
キャッキャうふふ♪
「……班長。先ほど、廿日市南署地域課から連絡がありまして……どうも、和泉さんと思われる男性が宮島のフェリー乗り場のところで倒れていると……」
「どんな様子だ?」
「頭部を何箇所か殴られた上、顔が真っ黒で、判別がつかないようですが……持ち物からどうやら、和泉さんではないかと。なお、傍には凶器と思われるタコツボが転がっていたそうです」
「どうします?」
「……あと5分で9時か。とりあえず、9時になっても連絡してこなかったら無断欠勤っていうことにする」
「迎えに行かなくていいんですか……?」
「放っておけ」
こうして。
数々の苦難を乗り越えた一匹のオスエビとメスエビは結ばれ、そうしていつまでも仲良く暮らしましたとさ……。
完




