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3話 レベルアップ。


 3話 レベルアップ。


 センは、ルットに何度もナイフを突き立てた。

 その途中で、ルットは、血を吐きながら、


「き、聞けぇえ! 私が死ねば! デカールの戦力は大幅に落ちる! デカールが弱体化すれば、乱世はさらに長く続くぞ! 我が祖国はいずれ、天下統一をなしとげる! そうすれば、世界は平和になるのだ!」


「平和ねぇ。大層な夢を見るじゃないか」


 と、冷めた声で言ってから、続けて、


「あんたの根性を見るに……あんたの中にも、一定の正義があるのかもな」


 感情の死んだ目で、


「けど……俺から大事なものを奪おうとした時点で、てめぇは終わってんだ」


「知性のない獣……いや、理解した上で……私を――」


 ルットが喋っている間も、センは、ナイフを突き立て続けている。

 その狂気的な目を見て、ルットは、自分が死ぬことを悟った。


「ぁ、あの鉄の龍は……もしかして、貴様が召喚したのか」


「そんなわけねぇだろ」


 敵に本当のことなど言わない。

 通信の魔法を使われている可能性もある。


 切り札の詳細は、可能な限り隠しておいた方がいい。


(ゼロ戦を無限に使えるなら、このままデカールまでいって、兵隊も王族も皆殺しにするんだが……)


 執拗《しつよう》にナイフを突き立てながら、センは冷静にそんなことを考えていた。


(どうにか、この『スキル日本』を強化する術を探す。……もしかしたら、俺のスキルは、『日本に関するものを召喚できる』という力なのかもしれない……だとしたら……やり方しだいで、バカどもを皆殺しにすることも可能……)


 ルットが、ごふっと大量の血を吐きながら、


「……ぁ、あの鉄龍……な、なかなかのものだが……私を殺しきれない程度の力では……世界は変わらんぞ……精霊都市フーマルには、私をはるかにしのぐエリートだけで構成された部隊がいる……デカールも……私の部隊以上の力をもった部隊は……いくつも……ほかの列強にも……」


「どうにかするさ。そうじゃないと、大事なものを奪われる……それはどうしても許容できないのだと、自分の心を、今日、正しく理解できた。感謝するよ」


 底冷えするような目で、ルットをにらみ、


「おかげで、とことん残酷になれる。俺は、この先、二度と迷わない。俺の敵になるやつは、どんな理念をもっていようと殺す」


 覚悟をまっすぐ言葉にする。

 そうでなければ、砕けてしまいそうな弱さを殺す。


「日本生まれのせいか、結局のところ、どこかで平和ボケしていた俺に……命の覚悟を植え付けてくれて、ありがとう」


「……」


 その間も、ナイフは止まらなかった。

 一切の躊躇《ちゅうちょ》がない殺意。

 狂ったように、壊れたように、ナイフを突き立て続けていると、


「セン、やめなさい!」


 ミシャの叫びが響く。


「もう……死んでいる」


 センは、ナイフを握ったまま、荒い息を吐いた。

 血に濡れた両手が、小刻みに震えている。


「はぁ……はぁ……」


 センは、その場に崩れ落ちた。

 ルットを討ち取ったことで、大量の経験値が流れ込んでくる。


 ――レベルが、『17』から『32』へと跳ね上がった。


 世界の声が聞こえる。


 ――スキル『日本』の武勲《ぶくん》システム発動。

 ――100人以上の敵兵を倒した功績《こうせき》をたたえ、

 ――『朧月華《おぼろげっか》の長羽織《ながばおり》』を進呈《しんてい》。


 朧月華の長羽織:桜と月光をあしらった、蒼《あお》く燃える意匠《いしょう》の羽織。

 高レベルになればなるほど、隠されたチート性能が解放されていく神器。




 ★


 ――デカール大帝国、西方方面軍司令部。


 石造りの広間に、定時連絡の途絶を告げる伝令が駆け込んできた。


「ルット将軍麾下《しょうぐんきか》、第七軍――定刻の連絡が途絶えております。すでに二刻《にとき》が経過しておりますが、応答なし」


 報告を受けたのは、大将ロス・ヴァンディアス・デカール・エンペラードル。

 デカールの第三皇子であり、この方面軍を実質的に率いる、若き将帥。

 主戦場である対ドーン戦線から離れ、この西方の平定を任されている。


「……ほう……」


 ロスが、どこか愉快そうにつぶやくと、

 周囲の参謀たちが、


「まさか、セファイラごときにやられたのか?」

「そんなバカな。どうすれば、あんなカスみたいな戦力でルットの軍を退けることができるのだ……」

「……ぁ、ありえん」



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― 新着の感想 ―
命の覚悟を植え付けてくれて、ありがとう セリフがめちゃくちゃ重みがあってカッコいいです……!
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