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終末世界に帰省した元社畜、実家の畑にあるネギを抜いたら聖剣でした  作者: k-ing☆孤独な王子①6/8発売


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9/9

9.社畜、ホームセンターに行く

 「よし、これでいいか!」


 ホームセンターは街中にあるため、化け物が出てきた時の対策が必要となる。

 そこで準備したのが白菜付き鍋蓋とネギだ。

 鍋の蓋に白菜を貼り付けた簡単な作りになっているが、まるで剣と盾を持った気分になる。


「ホームセンターに行ってくるから、じいちゃんはばあちゃんを見てて」

「ああ、わかったぞ」


 傍から見たら奇妙な行動に見えるかもしれないが、命を守るためにはないよりあった方が良いだろう。

 車に乗り込むと、すぐに走らせる。

 ここからホームセンターまでは学校の近くまで行く必要がある。

 途中でガソリンスタンドにも寄りたいが、電気が止まっている状態でやっているのだろうか。


――カサカサ!


「まさか化け物――」


 後部座席から音が聞こえ、俺はチラッとミラーを確認する。

 ハッと驚いたような反応をしている大根がそこにはいた。


「付いてきたのか?」


 俺の言葉に反応して、頭の葉を揺らす。

 いつの間に車に乗ったのだろう。

 それにちゃんとシートベルトまでして、ドライブに行くかのように脚をバタバタさせてはしゃいでいる。


「ちょっとラジオをつけるぞ」


 情報を得るために車のラジオをつける。


『ザザ……災害……対……部。住……様はザザ……不要……の外出……ザザください』

「どっちなんだよ……」


 避難しろと言っているのか、それとも外へ出るなと言っているのか。

 肝心な部分だけが雑音に消されていた。

 どの局も雑音か同じような言葉が延々と繰り返されている。


「情報は聞けないってことか」


 誰か知っている人から情報をもらうのが一番良いのだろう。

 最悪、ホームセンターの帰りに避難所に寄れるからな。


「ガソリンスタンドはここならいけるか?」


 到着したのは災害対応型のガソリンスタンドだ。

 だが、敷地内には一台も車が止まっていないし、営業中を示す看板も消えている。

 試しにガソリンを入れようとするが、反応しない。


「やっぱりダメか……」


 電気が使えないとガソリンスタンドも正常には動かないようだ。

 俺は諦めようと思ったが、大根が勢いよく車から飛び降りた。


「おい、危ないぞ」


 大根は大丈夫だと言わんばかりに事務所へ向かって走って行く。


「この先にガソリンが入れられる何かがあるのか?」


 ドアは鍵がかかっているのか動かず、どうしようか迷っていると、大根は頭の葉を伸ばした。


――カチャ!


 まさか頭の葉を器用に使って鍵を開けるとは思わなかった。

 それにあの葉は伸び縮みが自由にできることに驚いた。


「お前は化け物なのか?」


 俺の問いに大根は葉を横に揺らした。

 化け物じゃなければ、一体何なんだろう。

 葉を動かすたびにキラキラ輝いていたが、ネギと違って全く光がなくなるような気配がしない。

 扉を開けると、大根は一目散に走って行く。

 まるでどうすればいいのかわかっているようだ。


「失礼します!」


 俺はネギと白菜蓋を構えながら、周囲を確認するが店内は無人のようだ。

 机の上には飲みかけのペットボトルが残されており、人が慌てて避難したことを物語っていた。


「誰もいないな」


 ふとカウンターの奥を見ると、一枚の紙が貼られていた。


『停電時は非常用発電機を起動してください』


 矢印の先には〝裏口〟と書かれている。

 半信半疑で裏へ回ると、大きな発電機が置かれていた。

 書いてある使用方法通りにレバーを操作し、ボタンを押す。


――ブォォォォンッ!


 数秒後、重々しいエンジン音が響き渡る。

 すると、真っ暗だった給油機の表示が点灯した。

 後ろから付いてきていた大根も葉っぱを揺らして喜んでいる。


「これでしばらくは安心だな」


 ガソリンが入れられたら、ある程度は移動することができるだろう。

 ついでにホームセンターでタンクを買って、帰りに寄った方が良さそうだな。

 これから寒くなることを考えると、灯油も必要になってくるし。


「えーっと……とりあえず後で返しますね」


 俺は事務所にある紙に住所を書いて置いておく。

 現金も持っているが、今はそこまで必要にならないだろう。


「次はホームセンターだな」


 ガソリンを入れ終わった俺たちは車をホームセンターに走らせる。

 街に近づけばお店も増えてくるが、それよりも厄介なものたちがいた。


「化け物ばかりじゃないか!」


 田舎でも人が集まりやすいところに化け物も集まる習性があるのだろうか。

 それも動物の形ではなく、人型の化け物ばかりだ。

 幸いなのは動きが遅くて、車に追いついてこれないことだろう。

 この間の犬やうさぎの化け物の方が、圧倒的に動きが速かったからな。


「うわ……こんな状況になってたのか……」


 ホームセンターに近づくにつれ、周囲の店や家は燃え尽きるか破壊されるかしており、残骸ばかりが目についた。

 そして、そこには人型や四足歩行で歩く小さな動物型の化け物が周辺を彷徨っている。


「まるでその家に住んでたみたいだな……」


 家の周りをクルクルと彷徨っては立ち止まり、まるで自分の家を守るかのように動いている。


「ひょっとしてゾンビ映画みたいに元は人間だったり……ってことはないか」


 さすがに元の姿が人間だったら、ネギで切るのも罪悪感を覚える。

 ただ、避難所にいた時に感染症がどうこうって言っていた話が気になっていた。

 本当に元が人間なら、俺は人殺しになるだろう。

 そのまま彷徨うのか、それとも天に昇るのか。

 どちらが正しいのかはわからないが、まずは情報がなければどうしようもできない。


「やっぱりここも荒れてるよな……」


 ホームセンターに到着すると、すでに荒らされた後なのか入り口がグチャグチャになっている。

 何でも揃っているホームセンターなら、すでに物がなくなっているのは予想していた。

 何も機能しなくなると、窃盗も当たり前になるのだろう。

 すでに俺もガソリンを後払いにしているからな。


「せめてクリップとロープがあればいいな」


 俺が探しているのはクリップとロープ。

 他にもあるならタンクや自家発電ができるバッテリーがあればいい。

 電気や水道がいつ復帰するかはわからないからな。

 よくあるゾンビ映画だと、このまま何ヶ月も復帰しないとかあったはず。

 考えてみたら、そんな状況で生きられる方がおかしいだろう。


「じゃあ、行くか」


 俺は大根とともにホームセンターの中に入って行く。

 店内は荒らされた跡こそあるものの、思ったより物は残っていた。


「食料以外は結構あるんだな」


 棚からロープを手に取って、買い物カートへ放り込む。

 結束バンド、クリップ、ブルーシート。

 それに灯油やガソリンを入れるタンク。

 使えそうな物を次々と集めていく。


「お前は楽しそうだな……」


 もちろん大根は子ども椅子に横揺れしながら座っている。


「発電機やバッテリーはこの辺にあるか……?」


 防災用品の売り場を歩いていると、棚の端に大きな箱が置かれているのが目に入った。


「あった……!」


 近づいて確認すると、ソーラーパネル対応のポータブル電源だった。

 スマホのモバイルバッテリーのような小さなものではなく、小型のクーラーボックスほどの大きさはある。

 それに災害時でも家電が使えると書かれているから、ちょうど良いだろう。


「これならスマホの充電くらい余裕だろうな」


 値札を見ると、普段なら簡単に手を出せないような金額が書かれていた。

 食料や乾電池、ガスボンベはなくなっているのに、この辺りだけはほとんど手付かずだった。


「重そうだな……」


 箱の持ち手を掴んで持ち上げる。


「ぐっ……!」


 思わず声が漏れた。

 20kg近くはあるのか、ずっしりと腕に重みがかかる。

 それでも会社で運ばされていたコピー用紙の束よりかはマシだった。

 なぜか俺が倉庫から持ってくることが多かったからな。

 今思えばあれも主任の嫌がらせだったのかもしれない。

 誰も手伝おうとしてくれなかったからな。


「おっ、お前は手伝ってくれるのか!」


 そんな同僚たちとは異なり、大根は葉を伸ばして運ぶのを手伝ってくれた。


「車があってよかった……」


 これで電気の確保は何とかなりそうだ。

 ついでに近くにあった園芸コーナーに寄り、野菜の種や苗も持って帰ろう。

 手持ちの現金全てと、紙に名前と住所を書いておく。

 証拠にスマホで写真を撮れば問題ないだろう。

 俺はカートを押しながら、出口に向かうと一角にあるペットショップが目に入った。


「そういえば、ここにも動物がいたんだよな」


 店内の照明は消えている。

 静まり返った空間には誰もいない。

 犬や猫たちは無事だったのだろうか。

 そんな気持ちが俺の体をペットショップへと引き込んでいく。

 俺は少し気になってガラス越しに中を覗き込んだ。


 空っぽのケージに倒れた餌皿。

 散乱したペットシーツは血で赤く汚れていた。


「さすがに生きてないよな」


――ガンッ!


「うおっ!?」


 目の前のガラスに何かが叩きつけられた。

 反射的に後ろへ飛び退く。

 ガラスの向こう側にいたのは、小型犬ほどの大きさをした化け物だった。

 だが、その姿は犬とはまるで別物だ。

 全身が隙間なく水膨れのようなものに覆われていた。

 口元は裂け、鋭い歯が何重にも並んでいた。

 化け物はガラスに張り付き、こちらを見つめている。


――ギチギチギチ


 歯を鳴らしながら、異様な音を立てていた。


――パンッ!


 大きな音とともに化け物の水脹れが破裂した。

 血飛沫がガラスに向かって吹き出し、真っ赤に染まる。

 その奥でギラリと何かが光ったような気がした。

 俺は異変を感じ、すぐに後ろに下がる。


――バキィィン!!


 ガラスが砕け散るとともに、犬型の化け物が襲ってきた。

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