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終末世界に帰省した元社畜、実家のネギを抜いたら聖剣でした~俺が収穫した野菜だけ性能がおかしい~  作者: k-ing☆孤独な王子①6/8発売


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20.社畜、野菜の能力を整理する

「うんうん、鶏が火を吹くぐらいだからな」


 鴨田さんは頷きながら、ダイコのことを受け入れていた。

 火を吹く鶏がいつも一緒にいるからこそ、簡単に受け入れられたのだろう。


「それでこの大根……ダイコはどうやって動いてるんだ?」

「ああ、それは俺の能力で――」


 俺が自分の力を説明すると、鴨田さんは静かに整理をしていた。


「うん……。やっぱり理解不明だな」


 静かになっていたのは、思考停止していただけだった。

 それを言ったら、今俺の頭の上に乗っている鶏だった不思議だ。

 まだ見たことはないが、火を吹くってぐらいだからな。

 プロパンガスの中身がなくなったら、料理する時に手伝ってもらうのもいいかもしれない。

 こういうのは考えずに感じろっていうからな。


「でもそんな変わった野菜は食べられるのか?」


 どこか怪しむような顔で鴨田さんは見つめてくる。

 そうか、鴨田さんにとって大事な鶏に変なものは食べさせられないからな。


「光がなくなったものは普通に食べられるので、それまで触れていたら大丈夫です」

「おお、それならよかった」


 野菜を鴨田さんに渡すと、少しずつ光が弱くなっていく。

 俺が触れていると全く変わらないのに、どういう仕組みなんだろう。


「また野菜が必要になったら言ってください! お互いに助け合わないといけない状況なので」

「ああ、助かるよ」


 鴨田さんの養鶏場にも井戸はあるし、俺の家とそこまで設備は変わらない。

 問題はこの冬が越せるかどうかだろう。


 家に戻ると、俺は収穫した野菜を床に置いて眺める。


「そんなに野菜と睨めっこして何してるんだ?」


 そんな様子を祖父は心配そうに見ていた。

 別におかしくなったわけじゃないからな。


「いや、野菜によって効果が違うのは何か理由があるのかと思ってね」


 今収穫している野菜は、ネギ、白菜、大根、人参の四種類だ。

 違いがあるとしたら、野菜によって光の色がわずかに違うことぐらい。

 あとは普通の野菜と特に変わりない。


「白菜と大根は同じアブラナ科だから、光っている色が同じなのか?」


 言われてみたら白菜と大根は同じ緑色に輝いている。


「じいちゃん、どういうこと?」

「白菜と大根はアブラナ科、人参はセリ科でネギはヒガンバナ科だったか……」


 祖父は少し考えながら野菜を見つめる。


「野菜にもそれぞれ仲間があってな。同じ科の野菜は似た特徴を持っとるぞ」

「例えばどんな特徴があるかわかる?」

「あー、アブラナ科は栄養価も高いから、消化機能を助けたり、免疫機能を上げるって聞いたことがあるぐらいだ」


 祖父の言葉にダイコの力を思い出す。

 水を綺麗にしたのは浄水したというより、浄化した印象が強かった。

 それに白菜は見えない壁のように守りを固めていた。

 それを踏まえると、防御や癒やしの力が特徴的だ。

 一方、化け物を真っ二つにしたヒガンバナ科のネギは攻撃的なイメージがある。

 光の色も違うから、別の能力なのは納得がいく。


「にんにくや玉ねぎはどれかと一緒?」

「ああ、ネギと同じヒガンバナ科だったはずだぞ」


 ネギと同じなら、にんにくや玉ねぎも攻撃手段として使えるかもしれない。

 化け物への自衛手段が増えれば、より安全に生活はできるしね。

 祖父の話では、ヒガンバナ科は強い刺激成分があったり、害虫を寄せ付けなかったりと排除する力があるらしい。

 野菜でも特性が違うのは勉強になる。

 農家としてこれから生活をしていくなら、俺も勉強しないといけないからね。

 ただ、スマホが使えないから、しばらくは祖父に頼ることになるだろう。


「さあ、話が終わったらご飯を作るぞ」

「そっちが先だったね」


 まずは俺がご飯を作れるようになるのが先だな。


「んー、何が作れるのかな?」


 俺たちは台所に向かい材料を並べる。

 今あるのはネギ、大根、白菜、人参、玉ねぎ、卵。

 あとは米や小麦粉、調味料は残っている。

 元々祖父母だけで住んでいた時は祖母を一人で置いておけないのもあり、買い物も鴨田さんが時折買ってきてくれていたらしい。

 鴨田さんには感謝しきれないね。


「野菜ばかりだから難しいよね?」


 ご飯は祖母が毎日作っていたから、俺も祖父もレパートリーが少ない。

 こんな時にレシピ検索ができるスマホが使えたらと今になって思う。


「中華丼とかは作れそうだな」

「さすがじいちゃんだね」


 何もできなかった祖父が手際良く料理をする姿を俺は見つめる。

 祖父がここまでできるようになるなら、俺でも何かは作れるようになるだろう。


「修平は絶対に包丁を持つなよ」


 俺は包丁を手に取ろうとしたら、すぐに止められた。


「じいちゃん……俺もう大人だよ」

「大人とか関係ないぞ!」


 俺も手伝おうとしたら、怒られてしまった。

 何もできない役立たずだから、簡単な作業しかさせてもらえなさそうだ。

 白菜は二~三センチほどのざく切り、玉ねぎは薄切りにする。

 ええ、祖父が切っていますとも。


「じゃあ、玉ねぎを炒めてくれ」


 俺は言われた通り、玉ねぎが少し透明になるまで炒める。


「修平、あまり近くで炒めるなよ」

「さすがにわかってるよ」


 俺はフライパンから少し離れる。

 確かにフライパンから数cmしか離れていなかった。

 祖父はこっちを見ていないのに、まるで横に目があるみたいだ。


 そこへ白菜を加え、しんなりしてきたら水を注ぐ。

 鶏ガラスープ、醤油、塩で味を整えるが、もちろんこれも祖父の指示だ。

 料理ができないやつが、オリジナルを求めると絶対に不味くなると口酸っぱく言われたから、俺は祖父に従うのみ。


 しばらく煮込んだ後、水溶き片栗粉でとろみをつける。

 最後に溶き卵を流し入れれば完成だ。

 とろみをつけるのは、ご飯と絡んで美味しいからというだけではない。

 祖母が食べやすくするためでもあるらしい。

 誤嚥による肺炎は認知症の高齢者によくあるそうだしな。

 最後に炊き立てのご飯の上に載せたら完成だ。


「ばあちゃん、白菜と卵の中華丼ができたよ!」


 盛り付けたら、すぐに祖母の元へ中華丼を持っていく。

 祖母の膝の上に座っているダイコがまだかと葉を揺らして待っていた。


「今日は俺が作ったんだよ!」


 ほぼ祖父の言われた通りに作ったが、調理をしたのは俺だから間違いではない。

 その言葉に祖母はどこか笑っているような気がした。


「ばあちゃん、食べようか」


 俺はスプーンに一口だけ中華丼を掬い、口元まで運んでいく。

 小さく開いた口に中華丼が入ると、祖母は少しずつ口を動かす。

 美味しいのかはわからないが、祖母の目を見ていると目が合ったような気がした。


「へへへ、美味しいのかな」


 それだけの小さな反応だけど、今の俺には嬉しく感じた。

 祖母の失った感情が蘇っているような気がするからね。


「はい、もう一口」


 食べ終わったのを確認してもう一口入れると、さっきよりも口が速く動いている。


「おっ、気に入ったのかな?」


 俺の言葉に祖母は答えない。

 それでもスプーンを見つめる視線は、次の一口を待っているようにも見えた。


「修平、急がせるなよ。ちゃんと飲み込んだのを確認してからだ」

「わかってるって」


 祖父に注意されながらも俺は嬉しくて、ついつい速く口元に運んでしまう。

 祖母が認知症になったと聞いてから、こうして反応が返ってくることは少なかったからね。

 もちろん、今のも俺の勘違いかもしれない。

 だけど――。


「ばあちゃん、もう一口」


 スプーンを近づけると、祖母は催促するように何度も口を開ける。

 その仕草が妙に嬉しかった。

 祖母はゆっくりと中華丼を食べ進めていく。

 膝の上ではダイコも葉を揺らしながら様子を見守っていた。


「ダイコ、お前も食べたいのか?」


 俺の言葉にダイコは頷いた。


「ばあちゃんに食べさせた後だからな」


 そう伝えると、ダイコはぷいっと顔を背けた。

 まるでわがままな子どもみたいだ。

 だけど、そんな姿を祖母も見ていた。


「ばあちゃん、残りあと少しだよ」


 再び祖母の口元へ中華丼を持っていくが、いきなり口を開けなくなってしまった。

 もうお腹いっぱいなんだろうか。

 そう思い手を止めるが、視線はジーッと膝の上にいるダイコに向いていた。


「ダイコに食べさせたいんじゃないか?」


 祖父の言葉を疑いながらも、ダイコの口元……葉が生えている根本に中華丼を持って――。


「あっ!」


 ダイコは葉で中華丼の器ごと掴むと、勢いよく中華丼を流し込んだ。


――シャキシャキ!


 白菜の咀嚼音が部屋に鳴り響く。

 食べたものがどこに入っているのか相変わらず謎だ。

 それよりも問題が――。


「ダイコ、それはばあちゃんのだから全部食べたらダメだよ」


 俺の言葉にダイコは俺と祖母の顔を交互に見ては、頭を下げていた。

 どうやら反省はしているらしい。

 そんなダイコの頭にどこからか手が伸びていく。


「ばあちゃん……」


 ダイコを慰めるかのように祖母は優しく葉を撫でた。

 今までそんな行動をしたことなかったのに、ダイコのおかげで祖母も変わってきたのだろう。

 さすが大根セラピー。


「ぐすっ……」


 鼻をすする音に俺は振り向く。


「えっ……じいちゃん!?」


 そこには涙を流している祖父がいた。


「な、なんでもない」


 そう言いながら目元を拭う。

 祖父も優しい祖母を見るのが久しぶりなんだろう。

 俺たちはその後も少し冷めた中華丼を食べたのに、どこか温かく感じた。

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