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King Colours  作者: TEAM,IDR
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第五十話「受容」

第五十話 「受容」

(主人公 イエロー最終話)


バラレンジャーの解散から半年が経った。

朱祢はみどりに突然呼び出された。


朱祢「どうしたの突然…?」

みどり「まぁまぁ♪暇なら付き合ってよ!」


朱祢はみどりのバイクに乗せられ、海が見える場所までツーリングに付き合った。


みどり「ん~~!やっぱり海を見るのはイイね~~!」

朱祢「……海を見るためだけに連れ出したの?」

みどり「ん~~まぁそれもあるけど、朱祢ちゃんとお話ししたくって♪」

朱祢「何のお話?」

みどり「朱祢ちゃんは最近何してるの?」

朱祢「…別に…大したことはしてないよ…。実家のお手伝いをしてるくらいかな…。」

みどり「お手伝いって花火作ってるの?」

朱祢「うん…。」

みどり「楽しい?」

朱祢「……別に…楽しいからやってるわけじゃない…。他の仕事なんてできないし…。」

みどり「そう?やろうと思えばできるんじゃないの?」

朱祢「みどりも知ってるでしょう!?混乱を避けるためにもう目立った行動は絶対にするなって言われてるでしょう!?」

みどり「まぁそうだけど…でも、それで自分のしたいことが出来なくなったら嫌じゃん。」

朱祢「世界が言ってるのよ!?私たちがどれだけの影響を及ぼすのか、みどりにも分かるでしょう!?」

みどり「……あたし達が与える影響か…そんなの、関係ないねっ!あたしはあたしがやりたいように生きる!あたしが護ろうとしたのはそれができる世界だから!」

朱祢「はぁ?」

みどり「やっぱり思った通りだったよ。朱祢ちゃん、真面目でお固いからね~。変なルールに縛られてるんじゃないかって思ってたよ。」

朱祢「……みどり、あなた何をするつもりなの?」

みどり「そんなにコワイ顔しないでよ~…あたしはただ、自分の好きなように生きたいだけ。世界をどうこうしようなんて、考えてないよっ♪」

朱祢「……じゃあ何?何を言いに来たの?」

みどり「だ、か、らっ♪朱祢ちゃんにも楽しく生きてほしいの♪」

朱祢「…はぁ…?」

みどり「御実家のお手伝いが楽しいならそれでいいけど…楽しくないって言うのなら他にやりたいこと、見つけなよ!世界が何と言おうが、朱祢ちゃんの人生は朱祢ちゃんの物なんだから!ねっ♪」

朱祢「…………みどりのそういう所…本当に嫌い……」

みどり「えぇ!!?」

朱祢「…簡単そうにそんなこと言って……私がどれほど悩んで…苦しんでいるのかも知らずに……でも…いつも私のことを気に掛けてくれて……そういう、嫌いになれない所もホンっと嫌い…!」

みどり「………。…ねぇ…あたし達、ずっと一緒にいたけど、昔の話したことなかったよね?」

朱祢「?……そうね……」

みどり「あたしも実は朱祢ちゃんとおんなじだったんだよ…?」

朱祢「…?」

みどり「あたしも昔はすごく真面目でね…ブラックな会社だったけど一生懸命頑張っちゃって…頑張ったのに怒られて、セクハラなんかもされちゃって…もう全てを否定されたようだった…。本気で死のうと思ってた…。」

朱祢「…………」

みどり「…んで、その時に現れたのがアンシィだったの。ちょっとエッチだったけど、おバカなことやって、あたしを笑わせようとしてくれた。あたしを暗い闇から救ってくれたのがアンシィだったの。それで、元気が出たあたしはあのクソ野郎に辞表を叩きつけて言ってやったわ…『テメーらの言いなりになるのはもう終わりだ!あたしはこれから好きに生きる!!』ってね♪…これからの人生の誓いも込めてね…。」

朱祢「…………」

みどり「ま!あたしにもそんな過去があったのよ。だから、朱祢ちゃんも昔のあたしみたいにならないでほしいって思ってついつい口出ししちゃうのよ!」

朱祢「……そう…だったんだ……私…何も知らなかった……」

みどり「そりゃあそうでしょ。言ってなかったんだから。」

朱祢「…………」

みどり「…………」

朱祢「……私…………大切な家族がいたんです…。愛犬が……タロっていう名前の犬が…。」

みどり「あ~たまに出てたあのワンちゃん?」

朱祢「うん…その犬…実はもう死んじゃってて…私は…それを生き返らせるために契約してヒーローになったんです…。敵を倒し続けることを条件に愛犬を生き返らせた…でも…力を使えば使うほど、皆は怖がって…私を化け物だって言い続けた…。信じていた人からも否定されて…もう友達すらも信じられなくなって……タロが死んじゃったら嫌だから、後悔しないように選んだのに…後悔してしまうようなことばかりが続いて…私…もうどうしていいのか分からなくなって……」

みどり「……うん……」

朱祢「……今でも分からないんです……。この道で本当に良かったのか…私が選んできた道は…本当に正しかったのか……信じても…信じても…それを否定するような『答え』が出てしまうんです……」


みどりは朱祢をそっと抱き寄せ、頭を撫でる。


みどり「……ごめんね…あたしも朱祢ちゃんのこと、知らなかった……辛かったね……もういいんだよ…そんなに頑張らなくて……」

朱祢「…っ!!…う…うっ……うぅ………」


朱祢はみどりの胸の中で声を抑えながら泣いた。



みどり「………朱祢ちゃんは結果だけを求めてない?」

朱祢「…え?」

みどり「たとえば…誰かを護るために戦って一人も救えなかったら、朱祢ちゃんは落ち込むでしょ?」

朱祢「それはそうよ…。誰一人として護れなかったら、無駄になるじゃない…」

みどり「……無駄なのかなぁ…その努力って……」

朱祢「え…?」

みどり「どれだけ頑張っても結果が出ないことなんていくらでもあるでしょ?それなのに結果だけに意味や正解を求めていたら疲れちゃうよ。…あたしの言いたい事…わかるでしょ…?」

朱祢「……はい……」

みどり「朱祢ちゃんは今まで、誰かのために力を使ってきた。そして、バラレンジャーの一員として世界を救うために闘ってきた。これだけは変わらないでしょ?たとえどんな結果になったとしても、気持ちがそれに付いて来なくても、やろうと思った意思が自分にとって正しければ…それが正解の『答え』なんじゃない?」

朱祢「…!!」

みどり「そう考えることができれば、これまでの『物語』も後悔する必要なんてないんじゃない?」

朱祢「……みどり…ちゃん…」

みどり「ふふっ♪もう大丈夫そうだね。じゃあ帰ろっか……」

「キャーーーーッ!!」


突然、悲鳴が聞こえる。


朱祢「何!?」

みどり「あっちだ、行こう!」


二人が駆け付けると路上で座り込み、怯える女性が二人いた。


みどり「どうしたの!?…って…あれ?」


女性の前にいたのは大型のトカゲのような生き物だった。


みどり「なぁ~んだ、魔物が出たのかと思っちゃったよ」

女性1・2「助けてくださ~い!!」


女性二人がみどりにすがりついている隙に朱祢は矢を放った。

それに驚いた大型トカゲは山の方へ逃げていった。


朱祢「ふぅ…これでもう大丈夫よ…」

女性1・2「キャーー!!」

朱祢「わっ!ちょっと…!」

女性1「追い払ってくれたんですかぁ!ありがとうございます~!」

女性2「どうやったんですか!?一瞬でしたよね!?不思議なオーラが見えた気がしたんですが!?」

女性1「お礼させてください~!」

女性2「アタシからも!ぜひお礼させてください!」

朱祢「お、お礼なんて…」

みどり「まぁまぁ、せっかくなんだから厚意に甘えようよ!あっちにおいしいクレープ屋さんがあるから、一緒に食べない?」

女性1「あ~!ワタシたちそれが目当てできたんです~」

みどり「そうなの!?奇遇だね~あたしたちもなの~!」

朱祢「そうだったの!?」

女性2「あそこのお店有名ですからね!」



四人でクレープを食べながら談笑した。

別れ際に見たバイクに女性二人は大騒ぎした。


女性1・2「キャーー!!カッコイイー!!」

女性2「お二人ともホントにカッコイイですね!」

みどり「いや~それほどでも~…あるかなっ♪」

女性1「ワタシお二人の推しになっちゃいました~!」

朱祢「二人とも、観光楽しんでね」

女性1・2「はい~・はい!」

ドゥルン!!

みどり「じゃあね~バイバ~イ!」

女性1「はぅ~最後までカッコイイ…」

女性2「あんなカッコイイ女性っていたんだぁ…」



帰りの道中、バイクに乗りながら二人は話した。


朱祢「ねぇ…みどりちゃん……」

みどり「!…な~に?」

朱祢「あの……これから………」

みどり「ん~~?」

朱祢「……やっぱり何でもない…」

みどり「なによ~!気になっちゃうな~!」

朱祢「秘密!」

みどり「え~秘密か~」

朱祢「……………」

みどり「…………」

朱祢「……ねぇ…私、やりたいこと決まったかも…」

みどり「え!なになに?」

朱祢「……笑わない?」

みどり「笑わないよ~!」

朱祢「……クレープ屋さん……」

みどり「っ!!そっか!おいしかったもんね!」

朱祢「…うん…」

みどり「そっか~朱祢ちゃんがクレープ屋さんか~……ぷっ!」

朱祢「あ~!!やっぱり笑った~!もう!これだからみどりは……」

みどり「ごめんごめんって!真面目な顔してクレープ焼いてるとこ想像したらおもしろくなっちゃった!」

朱祢「真面目にクレープ焼いて何が悪いのよ…!」

みどり「いや、お客さんに真顔でクレープ渡してないかなって」

朱祢「っ!お客さんには愛想よくするわよ!こう見えてもともと明るいんだから…!」

みどり「ふふっ…そうだね。朱祢ちゃんなら変われるよ。イイ笑顔ができるようになったもん♪」

朱祢「笑顔って…運転しながらじゃ見えないでしょ。」

みどり「見なくたってわかるもん♪」

朱祢「…もう…!」





力を手に入れたことを悔いてしまった。

でも、それは否定される。なぜなら愛犬を救うただ一つの手段だったから。

護った人達に拒絶され、自分はもう人ならざる者だと実感した。

心だけが傷つき続ける出来事が立て続けに起こった。

何もかもが嫌だった。何も肯定できなかった。

ヒーローになったのも、これ以上後悔したくないから。

何かを護りたいだとか、正しいことをしたいからとか、そんな肯定的な考えでヒーローをしてはいない。

苦痛の拒絶。ただこれだけの否定的な理由だけでヒーローをやっていた。


何のために戦っているのか…何を護りたいのか…そんなこと分からない…。

でも戦わなきゃならない。

信じられるものなんて何一つなかったのに…

何一つ…?

本当にそうだったのかな…?

私はことみさんに感謝してもらえた。助けた女の子に感謝されたこともあった。そして、バラレンジャーの皆は私の力を含めた全てを受け入れてくれた…。対立したこともあったけど、拒絶せずに向き合ってくれた。必要としてくれた…。


私はいつから『ヒーロー』でいたのかな…?

もしかしたら最初から『正しい答え』を選び続けていたのかも……


でも……

もし、そうだとしても…私の物語は輝かしいものじゃなかった…。いくら変わっても、後悔や辛かったことが消えるわけじゃない。…でも私は今までの私とは違う…私は…これまでの全てを受け入れて、前に進む…




朱祢「お父さん、お母さん…私…やりたいことができたの…」

父「…なんだ?」

朱祢「…クレープ屋さん……」

母「…!!…そう…!……好きにやっていいわよ……!ね、お父さん?」

父「ああ。…こっちは何の心配もいらん…やりたいことをしなさい…」

朱祢「っ!…ありがとう…!」



 朱祢は移動式のクレープ屋を始めた。とびきり愛想が良いわけでもなく、経営が上手いわけでも、特別な味をしているわけでもない。

 それでも朱祢は一生懸命、クレープを作った。丁寧に、真心を込めて…。その薄黄色の綺麗な生地こそが、彼女が辿り着いた物語の終着そのものだった。


 キリっとした顔で完璧なクレープを作る姿は男女問わず、その心を射抜いたという。女学生には特に好評で黄色の声に囲まれることもままあったという。そしてクレープを作るまでの間には看板犬であるタロが可愛がられている。愛嬌を振りまくタロと不器用だが真摯的な朱祢のコンビはどこへ行っても一定層に人気があり、特段有名になることはなかったが、お客が途絶えることもなかった。


 この広い世界を彩る一色。『ヒーロー』という弓から放たれた一矢。その一矢、その一色こそが朱祢の物語なのだ。


朱祢「今日はどれくらいお客さん来るかな?」

タロ「わんっ!」

朱祢「ふふっ…いっぱい遊んでくれる人が来るといいね」

タロ「わんっ!」

朱祢「ふふ…」

タロ「わんわんっ!」

朱祢「あっ…いらっしゃいませ…!」







おわり


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