第四十八話「わたくしは、誇り高きグリーンローズの星乃藍ですから。」
第四十八話 「わたくしは、誇り高きグリーンローズの星乃藍ですから。」
(主人公 グリーン最終話)
バラレンジャーが解散してから数日が経った。お嬢はあの丘にいた。これからどうしていくのかを考えているのだろうか…。
しばらくしてお嬢が無言で車に乗り込んできた。俺も無言のまま車を屋敷に向かわせる。
*
車中、お嬢はいつものように窓から外の景色を眺めているだけだった。でも、その表情はいつものような期待に満ちたものではなく、迷いを拭いきれていないような…そんな表情だった気がした。
お嬢は何を迷い、悩んでいるのだろうか…。こんな時、先生ならどんな言葉を掛けるのだろう…どんな行動を起こすのだろう…。
…わからねぇな…。どうすればいいのかなんて欠片も思い浮かばねぇ。…でも、何もしないっていうのは違う。俺はお嬢の従者だ。そして、従者である前に俺だ。俺なら、悩んでいるお嬢をこのままにするなんてことはしない。たとえ、何が正解かなんて分からなくても俺は…。
一狼「…お嬢。…お嬢がヒーローになった理由を聞いてもいいですか?」
藍「……力を持つ者がすべきことだからよ。力を持つ者には、その力を使う宿命があるのよ。それに……それが多くのものを奪ってきたことへの贖罪だからよ…。」
一狼「贖罪……ではもう、贖罪は果たせましたね。」
藍「はぁ?何言ってるのよ…」
一狼「もう、十分です。お嬢の活躍でどれほどの人が救われたと思ってるんですか。それに、力があるからとか宿命があるとか、そんなことのためだけに人生を生きるなんて俺から言わせればそんな人生はクソです。」
藍「………」
そう……たとえ不幸になる運命のレールを与えられたとしても、そのレールの上を走るだなんてまっぴらごめんだ!どんな運命だろうが、他人や環境に突き動かされて進む道なんてクソと同じだ!…だから…俺は…ここにいる…!
一狼「たった一度しかない人生なんですから、『お嬢だけの人生』を生きてください。ヒーローでもなく、星乃家でもなく、お嬢としての人生を…。」
藍「っ!…ふん!あなたに説教されるなんて…ムカつくわ……でもま、今回だけは許してあげるわ。」
一狼「痛み入ります。」
藍「でも、わたくしはバラレンジャーであることも星乃家であることも捨てるつもりはないわ。どちらもわたくしの誇りですもの。でも、あなたの言う通り、これからはわたくしだけの人生を歩んでいくわ。」
一狼「…はい。それがいいと思います。」
藍「わたくし、もともと強者なんて性に合っていなかったのよ…。わたくしは簡単に弱者を切り捨てられるほど強くなんてなかったわ…。」
一狼「そうですね。でも、それを弱いとは言いませんよ。お嬢の言う強者ではないのかもしれませんが…でも俺は、お嬢のこと、強いと思いますよ。だって、俺を救ってくれたのは弱者を切り捨てられないお嬢じゃないですか…」
お嬢はニヤリと笑った。
藍「そうね…そうだったわね…。わたくしには、わたくしの強さがあるということね…。バカね…わたくし…こんなことに気付くのにここまでかかるなんて…。」
それからしばらくお嬢は何かを考えていたようだった。そして…
藍「一狼!わたくし、やりたいことが決まりましたわ。」
そう言ったお嬢の表情にもう迷いなんて微塵もなかった。ようやく、いつもの表情を取り戻したのだ…。
一狼「それは…?」
藍「ヒーローよ。」
一狼「ヒーロー…?」
藍「そう、これからもヒーローとして生きていくわ。わたくしは、誇り高きグリーンローズの星乃藍ですから。」
一狼「それがお嬢の人生なんですね…。」
藍「ええそうよ。それで、あなたはどうするの?ついてきたければ構わないわよ?」
一狼「もちろん、どこまでもついていきます。それが俺の人生ですから…。」
*
お嬢はボランティア活動を始めた。今まで稼いだお金とヒーロー活動で稼いだお金で貧しい国の人たちを支援したり、児童養護施設などに寄付したり、運営したりして困っている人を救っている。それが、お嬢の決めた道。お嬢にとっての『ヒーロー』としての道。
星乃家であることを誇りにし、バラレンジャーであることを誇りにし、自分が自分であることを誇りにして進むお嬢。強者として振舞っていたお嬢が、今では沢山の人を救うために手を差し伸べている。穏やかで優しく、それでいて気高く凛々しい。その姿は弱者にとってはまさに希望そのものだった。
*
一狼「お嬢…お嬢はいつも観葉植物を送られていますよね?あれは一体なぜです?」
藍「それが一つの指標になるからよ。」
一狼「指標…ですか?」
藍「ええ。あなた、観葉植物が生活に必要だと思う?」
一狼「……いえ…正直に申しますとそこまでの必要性はないかと…ましてやお嬢がよく訪問される方々の所では特に…」
藍「だからこそ、よ。必要性がないからこそ、観葉植物にまで気を配れるようになれば、それは生活が安定し心にも余裕が出来ている証になるのよ。」
一狼「…!!…なるほど…だから、指標になる…と…」
藍「そうよ。次に訪問した時、手入れが行き届いていないと分かれば更に改善する必要があるわ。逆に、しっかりと手入れが出来ているのならそこに住んでいる人達は心が豊かになっていると分かるのよ。」
一狼「そこまでお考えになられていたとは…流石です、お嬢。」
藍「ふふん!当然よ、わたくしはグリーンローズの星乃藍なのだから!さぁ、一狼!次の場所へ行くわよ!」
一狼「はい…!」
お嬢の『ヒーロー』活動はこれからも続いて行く。人々に癒しを与える『希望の緑』と共に…。
「King Colours」
薔薇薔薇戦隊バラレンジャーグリーンローズ、星乃藍の物語。
これにて終幕でございます。




