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第二十六話「君は、ぼくのヒーローだから…」(ホワイト3)

第二十六話 「君は、ぼくのヒーローだから…」

(主人公 ホワイト3)


カランカラン!

喫茶店のドアが開く


黄慈「銀河くん、こっちだよ」

銀河「あっ、お疲れ様っす!」


軽く挨拶をしながら黄慈の正面に座る銀河


銀河「なかなか雰囲気のいい店っすね」

黄慈「そうだろう…?ここは夜になるとバーにもなるんだ。」

銀河「へー」

黄慈「しかも、ここの席はパーテーションで区切られているから話もしやすい。…マスターとも顔なじみでね。今日は特別に空けてもらったよ」

銀河「そうだったんですね……ありがとうございます…!」

黄慈「いやいや………それにしても…銀河くんが、真面目な顔をして相談とはね……。何があったんだい…?」

銀河「…長い話になるかもしれません……コーヒーが届いてから話してもいいですか…?」

黄慈「…あぁ、わかった」


*


数分後、湯気の立つコーヒーが運ばれる。


黄慈「……で、話って…?」

銀河「……おれ…実は、タイムリーパーなんです」

黄慈「……タイムリーパーって……未来から来たってことかい?」

銀河「そうです…。今のおれは三週目の……いや…色んな結末を知ってるから三週ってほどでもないのか………まぁ、未来から来たんで、これから起こることが分かるんです」

黄慈「…それで?これから、何か起こるっていうのかい?」

銀河「はい…。…世界各国の首都に浮かぶ、クラウン…あれが落ちます。」

黄慈「…!!」


銀河はコーヒーにミルクとシロップを入れながら話を続ける


銀河「…おれはそれを阻止するために未来から戻ってきた…。……おれは、バラレンジャー全員が力を合わせれば、クラウン落下を阻止することなんて簡単だと思っていた。」

黄慈「………」

銀河「…でも違ったんです。…おれ達に力を与えてくれた存在っているじゃないですか」

黄慈「…あぁ…」

銀河「おれの場合は、バディって呼んでるんすけど……バディが言うには、バディたちこそが更に先の未来から来ていて、クラウンの落下…つまり、首都の破壊こそが未来の繁栄の為に必要不可欠だって言うんですよ…」

黄慈「…ふむ……」

銀河「…でもおれは…それで大勢の人が死んで…苦しんで…悲しんだのを見た……。おれが『ヒーロー』になって護りたい世界はそんな世界じゃない。…だからおれは、バディたちがなんと言おうと、理想を目指したい!…全てを救う可能性に、おれは賭けたんです……」

黄慈「………それで…ぼくへの相談というのは、その協力の申し出かい?」

銀河「…話が早いっすね……その通りです……」

黄慈「…………」

銀河「…実はもう、説得は進めていて…前回協力してくれなかった、紫雲、虎羽、桃華ちゃんの三人は説得済みなんです。そして、残ったのはみどりちゃん、藍さん、黄慈さんの三人だけです。…その三人を説得できれば、バラレンジャー全員の協力が得られることになります。…みどりちゃんは、当日説得して気分を乗らせるだけなんでいいとして…もし、黄慈さんが協力してくれるのなら実質、藍さん以外の人が協力してくれることになります。」

黄慈「………………」

銀河「…藍さんを説得するために、色々と情報は集めているんですが……なかなか難しくて……最悪、藍さんの協力は諦めて、中立に持っていくことになるかもしれません。…そうなると、なんとしてでも黄慈さんの力は借りたいんです…!」

黄慈「…そうだろうね……能力的に、あれの破壊は簡単だろうけど…その下の人たちを護るとなればぼくか、藍さんくらいしか適任がいない…」

銀河「そうなんです………」


銀河はゴクリと、一口コーヒーを飲む


銀河「……黄慈さん……あの時……いや、未来で…なぜ、協力してくれなかったんです?」

黄慈「…………………」

銀河「…過去の出来事……ヒーローになった経緯が、関係してるんですか?」

黄慈「………まぁ………そうかもね…………」

銀河「…真奈さんのことが、何か関係あるんですか?」

黄慈「…!!!!…どうして……真奈のことを……!?」

銀河「ははっ…おれは、いくらでも過去に行くことが出来るんですよ?…おれが本当に未来から来たと信用してもらうために、未来の黄慈さんから少しだけ教えてもらいました。」

黄慈「……なるほど……真奈の名前を出されたら信じるしかないな………」

銀河「…で……黄慈さん…何故、協力してくれないのか教えてもらえませんか?」

黄慈「……………………」


長い沈黙。

黄慈は持っていたティーカップをソーサーに戻すと、外を眺めた。


黄慈「…銀河くん……」

銀河「! …はい…?」

黄慈「……君は……花が好きかい?」

銀河「…花……っすか……?まぁ…嫌いじゃないっすけど………」

黄慈「……ぼくはね……花が好きなんだ………。特に、薔薇の花が………」

銀河「はぁ……」

黄慈「……人の記憶というのは不思議なものでね…。匂い…景色…物なんかと、感情を結びつけることがある……。…ぼくは……薔薇の花を見ると……とても寂しい気持ちになるんだ………」

銀河「えっ……でも…バラレンジャーの名前を考える時だって………」


黄慈は銀河へと視線を向ける


黄慈「あぁ…好きだよ……。……好きだからこそ……寂しいのかもね…………」

銀河「……真奈さんと関係が……?…というか…真奈さんって黄慈さんにとって、なんだったんですか?」

黄慈「………真奈は……ぼくの妻だよ……」

銀河「!!」

黄慈「………もう……この世にはいないけどね………」


哀しい微笑みを見せる黄慈


黄慈「………ぼくがヒーローになった理由……そして………この先、銀河くんが言ったようなことが起こった場合…協力できない理由……。それは……どちらも、ぼくが不甲斐ないからだ………」

銀河「……どういうことです……?」


カップの中。

紅茶の表面に映る、自分の顔をじっと見つめる。

そして、ゆっくりと目を閉じ……そして、ゆっくりと口を開く…


黄慈「……少し長い…昔話をしてもいいかい…?」




*



ぼくには、他の人と違う部分が二つあった。

一つは、見えない友達がいること。

名前はトモちゃん。友達の「とも」から取った名前だ。


もう一つは、目の色が青くて、他の人と違ったこと。

そのせいでよくいじめられていた……


*


体の大きい男の子「おまえなんで目が青いんだよ?きもちわりぃなぁ」

元気な男の子「ウイルスにかんせんしてるんだよ!」

小柄な男の子「うわ!にげろー」


*


小柄な男の子「このあいだあいつ、ひとりでしゃべってたぜ。きもちわるくね?」

元気な男の子「え!きも!!」

体の大きい男の子「みんなにひろめてやろうぜ!」


*


体の大きい男の子「おい!おまえ。いまからゾンビな!おれらがいまからころすから」

元気な男の子「ゾンビなんだからはやくうごくなよ!」

小柄な男の子「木のぼうひろってきたよ。これでたおそう!」

黄慈「ひっ……!」


暴力はエスカレートし、棒で殴られそうになったその時…


見知らぬ女の子「あんたたちなにしてんの!」

黄慈「…?」

小柄な男の子「こいつ、いまからたおすんだよ」

元気な男の子「たたかいごっこしてんだから女は入ってくんなよ!」

見知らぬ女の子「やめなよ」


ドンッ。

突き飛ばされ、女の子は尻もちをつく。


見知らぬ女の子「きゃっ……!」

黄慈「…!!」


その瞬間、頭が真っ白になった。

考えるより先に体が動いた。


黄慈「やめろー!!」

体の大きい男の子「うっ…!?はなせよっ…!!」


ぼくはいじめっ子に飛び掛かり、暴れまわった。


*


体の大きい男の子「くそっ!もういい!行くぞ!」

小柄な男の子「うっ……うん……」

元気な男の子「くっ………」


足音は遠ざかり、荒い呼吸だけが残った。

ぼくはボロボロになりながらもなんとかその女の子を守った


見知らぬ女の子「…だいじょうぶ…?」

黄慈「……え……?」

見知らぬ女の子「けがしてない…?」

黄慈「…あ……あぁ…ちょっとすりむいたくらいだよ……」

見知らぬ女の子「……ごめんね……」


その子はばつが悪そうな顔で俯いた。


黄慈「………………」


ぼくはその子の顔を見て、なんとか励ましたいと思った。


黄慈「……たすけてくれて、ありがとう…」

見知らぬ女の子「…え……?」

黄慈「…え…?」


その子もぼくも、キョトンとした顔で数秒固まってしまった。

が、すぐに女の子はふふっと笑って言った。


見知らぬ女の子「助けてもらったのはあたしなんだから、ありがとうを言うのはあたしの方でしょ…?」


少しだけ首を傾げる


黄慈「…!…そうかな……でも、さいしょに助けてくれたのはそっちだし……」

見知らぬ女の子「………………」


少し考えてから――

ぱっと、顔を上げる。


砂霧真奈「あたし、さぎり まな! “そっち”じゃなくて、まなって呼んでいいよ!…そっちは?」

黄慈「…おうじ……」

真奈「?…おうじって名前なの…?」

黄慈「…うん…」

真奈「ふーん…そうなんだ……」


じっと見つめて、くすっと笑う。


真奈「なんだか、ほんとうの王子さまみたいだねっ…!」

黄慈「…えっ!?」

真奈「ふふっ、なんでもない!」


くるり、と背を向ける。


真奈「じゃあねー!」


手を振って、駆けていく。


黄慈「………………」


ぼくは立ち尽くしたまま、しばらく動けなかった。

心臓がバクバクして、あの真っすぐな笑顔が脳裏に焼き付いて離れなかったから…


*


次の日からぼくは、放課後すぐに帰らなくなった。


理由なんて、ひとつしかない。

――もしかしたら、また会えるかもしれない。

そんな、淡い期待があったから…


*


数日後…


真奈「あっ!おうじくん!」

黄慈「…! まなちゃん……」


ブランコに乗っていると真奈が駆け寄ってきた


真奈「なにしてるの?」

黄慈「えっ!いや……べつに……」


目を逸らす。

待っていたはずなのに…


真奈「ふーん……」


じっと、見られる。

その視線に、顔が熱くなる。

何か言わなきゃと焦るほど、余計に何も出てこない。


ドサッ


黄慈「…!」


真奈はランドセルを置き、隣のブランコに座った


真奈「あたしも遊ぼうっと!」

黄慈「…!!」


そのいたずらっぽい笑顔に、また頭は真っ白になってしまった。


キィ……キィ……

とブランコの軋む音だけが静かに響いた。


無言だけど、不思議と心地いい時間…


*


真奈「…………あたし…そろそろ帰らなきゃ……」


トン、と地面に足をつく。


黄慈「……また…!」

真奈「…!」

黄慈「……また…一緒に遊ぼう…………」

真奈「……うん…!」


やっと言えたのは、その一言だけだった。

でも彼女は笑顔でそれを受け止めてくれた。


真奈「またね、おうじくん!」


*


それから…

放課後になると、ぼくらは自然と同じ場所にいた。

最初はぎこちなかった会話も、少しずつ増えていって――

気づけば、それが当たり前になっていた。



*


ジャングルジムに登り、沈んでいく夕陽を、並んで眺めていた時…


真奈「……ねぇ、おうじくん」

黄慈「…なに?」

真奈「おうじくんって、なんであのとき、いじめられてたの?」

黄慈「………目の色がみんなとちがうからだよ…。…ほら、青いでしょ?ふつうはくろか、ちゃいろなのに…」


ぼくは、自分の目が嫌いだった。

言葉には出さないが、両親がこの眼をよく思っていないのも感じていた。


真奈「ふつうになりたいの?」

黄慈「…………………」

真奈「あたしはその目、すごくキレイだと思うけどな~。ふつうになったらもったいないよ!」

黄慈「……!!」


その言葉を聞いた瞬間から、世界が鮮やかになったように感じたのを、今でもハッキリ覚えている……

俯きがちで暗い日々に、光が差し込んできた感覚。


真奈「とくべつで、カッコイイと思うよ…?」

黄慈「……………」


まっすぐ見つめる真奈の瞳が、ぼくの目に映る。

その眼は、ぼくの目なんかよりもずっと綺麗で、特別に見えた…


黄慈「………………………」

真奈「……………なに?そんなに見つめて……」

黄慈「…………あ…ごめん……………」


視線は再び夕陽に向かう。


黄慈「……………まなちゃんは……ぼくの目…すき………?」

真奈「えっ……」


しまった、と思った。

もし、彼女にまで嫌いと言われてしまったらぼくは……


真奈「すきだよ…!」

黄慈「……!!!」


あぁ………この人は……

ぼくの人生を救ってくれた……『ヒーロー』なんだな………


黄慈「………そっか………………なら…ぼくも…すきになった………」

真奈「…うん!…それがいいよ…!」


ぼくは紅く照らされたその微笑みを、碧の瞳に焼き付けた


人生が変わったその瞬間を、記憶に刻み込むかのように…



*


その日からぼくは少しずつ変わっていった。

顔を上げて歩くようになった。

相手の目を見て話すようになった。

まるで、「この眼を見ろ」と訴えかけるように。

「どうだ?綺麗で特別な眼だろう?」と自慢するかのように。


行動には自信が宿るようになり、成績も人気も上がった。


気づけば、いじめられることもなくなっていた。


バラ色の日々を手に入れることができた。



ぼくは真奈のおかげで、自分のことが好きになれるようになっていった。

そして…

それ以上に、彼女のことを好きになっていった…



*



中学に入ると、ぼくは真奈と一緒に家庭科部に入った。

意外なことに真奈は、ものすごく不器用だった。

包丁の持ち方もぎこちないし、裁縫も針を落としてばかり。

そのたびに、ぼくが横から手を添えて教えていた。


*


「…! このクッキー、黄慈先輩が作ったやつですか…!?」

黄慈「うん、そうだよ」

「とっても美味しいです!料理もできるなんて、すごいですねっ!」

黄慈「あはは…喜んでもらえて何よりだよ」

「さっすが、“王子”くん。もう新入生の心を奪っちゃったのかい?」

黄慈「えぇっ!?そんなつもりは……」

「気をつけな~、この人、天然女たらしだから」

「へ~……」

黄慈「そんな言い方しないでくださいよ~」

「よく言うよ…彼女がいるくせに、他の子にも優しくするんだから……」

黄慈「彼女…?」

「黄慈先輩の彼女……あっ!もしかして真奈先輩のことですか!?」

「大正解!…小学校の時からの付き合いらしいよ~」

「…そうだったんですね……」

黄慈「…………………」

「…ん?どうしたの?」

黄慈「…いえ……ぼくと真奈は、付き合ってるとかじゃなくて……ただの幼馴染です」

「………え?付き合ってないの?」

黄慈「…はい……」

「「えぇっ!!??」」

「なっ、なんで告白してないんですかぁ!」

黄慈「…えぇ!? だ…だって……今までの関係が壊れたら嫌だし………」

「っ~!こんの意気地なしがぁ!手先は器用でも、女心は全然分からない不器用者だったとはね…!」

黄慈「そ…そこまで言います…?」

「言うでしょ!まったく…人の気も知らないで……」

「あら?なんの話?」

「あっ、ちょっと聞いてよ!黄慈くんったら真奈ちゃんと……」


*


「…なるほど…それは黄慈くんが悪いです」

黄慈「えぇっ!先輩まで……」

「でしょ~!? あんた、もう少し自分がモテてること自覚しな!そのせいでね、真奈ちゃんがどれだけ不安になるか、分かってる?これ以上真奈ちゃんを不安にさせないようにちゃんと言葉にして伝えるの!分かった!?」

黄慈「うっ……で…でも……もし、真奈にその気が無かったら……」

「無いわけ無いじゃないですか!! 先輩に見せる笑顔と、他の人に見せてる笑顔、全然違いますよ!?入りたての私でも気づきますよ!」

「そうそう」 「うんうん」

黄慈「そ…そうだったのか……」

「……思い立ったが吉日、です」


部長はにっこり笑う


「今日、告白してきてくださいね?」

黄慈「今日!?」

「えぇ…部長命令です」

「うわ…」

黄慈「せ…先輩…そんな無茶な……」

「女の子を待たせるものじゃありません…。大事に思っているのなら、なおさらです」

黄慈「………………」


ガラガラッ…!


真奈「先生呼んできましたー」

「あら、ありがとう」

「…ほれ」 「先輩…!」

黄慈「わ…分かりましたよ………帰り道で話しますから……」



*


自転車を押しながら歩く、帰り道。


真奈「今日のクッキー、先生も誉めてたね!」

黄慈「ん?あ、あぁ……そうだね……」

真奈「…あたしが作ったのはイマイチだったな~」

黄慈「……………」

真奈「…聞いてる?」

黄慈「えっ!?あぁ…聞いてるよ…」

真奈「…なんでダメだったんだろう…お砂糖の量が足りなかったのかな…?」

黄慈「…ココアパウダー初めてだったしね。味の調節はまた次回やればいいと思うよ。…それより、生地の混ぜ方とか、焼き加減の方が問題だと思うな」

真奈「えー、ちゃんと混ぜたけどな~」

黄慈「…もっと丁寧に混ぜないと……あと、予熱が完了する前に入れてなかった?」

真奈「えへっ、バレた?」

黄慈「時間無いからって焦り過ぎだよ……」

真奈「だって…いろいろやってたら時間なくなっちゃったんだもん…」

黄慈「先にスイッチ入れておけばよかったのに…」

真奈「忘れてたの!……はぁ……あたしってばダメダメだ……クッキー一つ、まともに焼けないなんて……」

黄慈「……………………」


カラカラカラ……

ペダルが空回りする音だけが、静かに響く。


真奈「…いいよね~黄慈くんは…」

黄慈「え…?」

真奈「勉強も運動も料理もできて……おまけにモテモテで……」

黄慈「なに…急に……」

真奈「…べつに~……………」

黄慈「…………………」


あと、もう少しで道が分かれてしまう。

あの話をどう切り出そうかと考えていると、真奈がほっぺを膨らませてこっちを見てきた


真奈「…先輩たちと何話してたの?」

黄慈「…え…?」

真奈「あたしがいない間、なんか楽しそうに話してなかった?」

黄慈「あ…あれは…その………」

真奈「……ふ~ん……言えないことなんだ…………」

黄慈「いや…うーん…………」

真奈「…………ねぇ………黄慈くんは…好きな人とかいるの……?」

黄慈「え……」

真奈「…だって…部長はおしとやかで美人だし…副部長も、距離が近いじゃん……新入生のあの子だって……なんか……気がありそうだったし……」

黄慈「……………」

真奈「………?」


立ち止まり、真っすぐ真奈を見る


黄慈「……真奈」

真奈「…え…?」


真奈も、つられて止まる


黄慈「…今まで言えなくてごめん。…ぼく…真奈のことが好きだ……」

真奈「っ…!!??!?」

黄慈「……ずっと……こんなふうに一緒にいてほしい……付き合ってください…!」

真奈「…!!!!!!!!!」


今、真奈がどんな反応をしているのか気になったが…

頭を上げられなかった。

真奈の言葉が聞こえるまでの数秒が、数分にも数時間にも思えるほど、長く、静かに感じた…


真奈「……お……遅いよ…!」

黄慈「…!」

真奈「……ばか………………いいよ……付き合ってあげる…!」

黄慈「…!!!! はぁ…よかったぁ………」

真奈「もう……………………はっずぅ………………」


その後はずっと無言だった。


*


カラカラ………


別れ際に一言。


真奈「……またね……」

黄慈「…うん……また……」


二人の頬は赤く染まっていた。

――それが、夕陽のせいなのか。

確かめられないまま、その日は解散した。


*


それから――

ぼくらの距離は、少しずつ変わっていった。

“友達”から、“恋人”へ。


一緒にいる時間は、今まで以上に増えていった。

休日は、どこへ行くにも二人で。

勉強も。遊びも。何気ない時間も。


全部、隣に真奈がいた。


彼女に会わない日なんて、ほとんどなかった。


高校に進んでも。


大学に進んでも。

それは変わらなかった。

行く場所が、少しずつ変わっただけ。

カラオケ、ボウリング、バッティングセンターから…

図書館、映画館、カフェへと変わっていった。


少しずつ、大人のデートに近づいていった…そう、思っていた。


ずっと一緒にいたから、些細な変化に気づく事ができなかった。

…なんて……言い訳だ……

ぼくはこの眼で……一体、彼女の何を見てきたというのだろう………



*


夜道を歩く黄慈と真奈

手をぎゅっと握り、コツンと頭を黄慈の肩に寄せる


真奈「……ねぇ……あたしのこと…大切に思ってる…?」

黄慈「…?…もちろん…とっても大切だよ」

真奈「……どれくらい…?」

黄慈「えっ……それはもう…この世で一番、大切だよ…」

真奈「…………………」


それ以上、言葉は返ってこなかった。

ただ、握る手の力がほんの少しだけ、強くなった気がした。


黄慈(……当然だ)


胸の中で、そう思う。


黄慈(だって、君は、ぼくの人生を変えてくれた、“ヒーロー”だから。)


*


家の前まで送り、手を離す


真奈「……………………」


俯いたまま、動かない。

まるで何かを言いたいのに、言えないみたいに。


黄慈「…ハグする…?」

真奈「…!………いや…お父さん帰ってきてるし…見つかったら恥ずかしいから……」

黄慈「…そっか…」


真奈は、玄関の扉に手をかけ、笑顔で振り返る


真奈「ありがとう……じゃあね…!」

黄慈「あぁ……またね」


バタン……


その笑顔はいつもと同じはずなのに…

どこか、遠く感じた。


*


その日を境に真奈は…

学校にも来なくなり、ぼくとも会わなくなった。


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