第二十六話「最強×最強で新たな世界を創り出す」
第二十六話 「最強×最強で新たな世界を創り出す」
(主人公 ピンク3)
僕らの世界は宇宙からの侵略者により混沌と化していた。兵器の開発が盛んに行われ、「ヒーロー」としての申請が認められれば武器の携帯が許される世界だ。一般企業までもが兵器開発に手をかけている現在。この世界の様々な技術は今まで以上の急速な発展を見せた。
高校卒業後、僕も世界を護る力を手に入れるため、兵器の開発に着手した。僕が貰った力により、電力を無限に生成できた。それを利用し、お金を稼ぎ、研究所を作り、そこで作られた兵器を販売した。
僕一人が強いだけでは世界は護れない。多くの人が力を正しいことに使わなければ平和は実現しない。僕は多くの人に力を持ってもらうために武器を作った。そして、それをより多くの人に知ってもらえるように努力した。
僕の考えや行動に対して、「一般人にまで力を与えるのは危険だ」「争いのための道具を増やすことが平和につながるはずがない」「自分の商品を売るために人々の危機感を煽っている」などと言われることもある。僕は学がないから難しいことなんてよく分からない。でも僕は人を信じている。
歴史を見ると人間は愚かにも戦いを繰り返している。でも、戦いを繰り返し続けてきた人間だからこそ、少しずつ正しいことの為に力を使うことができるようになっていくと思う。急速に発展していくこの世界を正しい方向へと導く一助になることが、僕にできる「世界を護ること」だと信じている。
*
薔薇薔薇戦隊バラレンジャーの一員となり、現場に出てヒーローをすることでたくさんのことを学んだ。そして、その多くを一般ヒーローと一般人のために使ってきた。兵器開発の事業も今まで以上に発展し安定している。だからここらで、より良い世界のためにまた新しいことがしたいと思うようになった。
そこで、あることを思いついた。そのことに必要なのが、バラレンジャーの桃華ちゃんだ。膨大な知識量と人間を遥かに超えた演算能力があればものすごいことが出来るかもしれない!より良い世界のために協力して欲しいとは思うけど、AIロボットの桃華ちゃんは僕らにとって『特別』な存在だ…。意思を持っているのなら「道具」としてではなく、「別種族の存在」として扱わなければならない…。
人間とは違う世界が必要だ。
*
紫雲「ねぇ、桃華ちゃん!」
桃華「はい、なんでしょう。」
紫雲「桃華ちゃんていつもロボットに乗って戦っているよね?あれって自分で作ったの?」
桃華「いいえ。あれを作ったのはワタシの博士です。」
紫雲「そうなんだ。ちなみにあのロボットを改良したり、別のパーツを作る気はない?」
桃華「現時点ではそのつもりはありません。」
紫雲「あぁ…えぇと…単刀直入に言うね。協力してほしいんだ。桃華ちゃんが乗っているあのロボットを他の人も使えるようにできれば様々な場面で役に立つ。それに、桃華ちゃんだけが使える強力な兵器も作れるかもしれない。だから、僕と一緒に武器を作ってくれないかな?」
桃華「かしこまりました。ヒーロー活動以外の時間であればいつでも助力いたします。」
紫雲「よかった!じゃあ今日の夜にでも僕の研究所に案内するよ!」
ピピピピ…
桃華「はい。……紫雲さま、一つ質問をしてもよろしいでしょうか。」
紫雲「ん?何?」
桃華「紫雲さまは何故ヒーローになったのですか?また、何故ヒーローの紫雲さまが兵器の開発を積極的に行っているのでしょう?」
紫雲「ヒーローの理由…。俺がヒーローになったのは純粋に世界を護りたいと思ったからだよ。武器を作ってるのは、世界は一人では護れないって知っているからだよ。人類が一人ひとり、力を持って、その力を正しいことのために使えて初めて平和が実現されるんだと思う!」
桃華「…紫雲さまは平和な世界を護るためにヒーローになったのですね…」
紫雲「うん!…何か参考になった?銀河から聞いたよ。皆の『正義』を聞いてるんだってね。いつか、桃華ちゃんが自分の『正義』のために闘えるようになるといいね!」
桃華「…はい。」
*
桃華ちゃんはいつも、事務所の駐車場にロボットを置きその中で寝泊まりしていた。ことみさんもそれについてはなんとかしたいと考えていたみたいで、僕の提案でこれからは研究所で寝泊まりすることになった。寝泊まりと言っても桃華ちゃんは寝る必要がないからメンテナンスと兵器開発を四六時中やるようになった。
桃華「ワタシは機械ですし、エネルギー補給の必要もありません。メンテナンスも自分で行えますのでお気になさらず。…それに、ワタシはここでの生活に満足しています。ワタシの力が人類の役に立っているのなら…嬉しいです。」
と、不眠不休で働いているが、不満はなさそうだ。それに、研究員の方たちと関わる機会もあるからか、話し方も表情も柔らかくなったと思う。
桃華ちゃんの思考能力はすごかった。僕は経営が主な仕事なので詳細なことはわからないのだが、研究員たちが言うにはすごいらしい。新たに発見された法則や、画期的なアイディア、さらにそれを活かした兵器の開発が次々に行われていった。
変身ベルトの開発、軽量で扱いやすい武器の開発、実用的なレーザー兵器の開発、老若男女が乗り込める人型ロボットの開発などがされ、それらは飛ぶように売れた。軍事転用され、世界にも広まっていった。
搭乗式の人型ロボットは3メートル前後の物が大半だが、僕も男の子だ。やっぱりもっと大きいロボットが作りたい!ということで桃華ちゃんにも秘密で巨大ロボットの開発も行っている。(実用化は難しそうだけど…でも桃華ちゃんのエネルギーがあればもしかしたら…?)
そして、冒頭で述べた「あること」のために、僕は桃華ちゃんのために無人島を買った。
*
紫雲「桃華ちゃん。君に人型AIロボットが住む都市の開発をやってほしい。」
桃華「ワタシに、ですか?」
紫雲「うん。桃華ちゃんは世界で初めて自分から物事を考えることができるAIだと思う。それに、人類のために力を使えるAIだ。」
桃華「…ワタシが人類のために動いているのは命令だからです…。紫雲さまやことみさまの命令だからしているだけで…」
紫雲「いや、そんなことないよ!桃華ちゃんは自分の意思で動いてる!桃華ちゃんがバラレンジャーの皆や研究所の人たちと話している時の、あの笑顔は命令されたものなんかじゃないよ。」
桃華「………」
紫雲「桃華ちゃんもう、立派な自分の意思を持っているよ。何が嬉しいことで、何がしたいのか、そして何が正しいことなのかも、もう分かっているはずだよ。」
桃華「…そう…なのでしょうか…」
紫雲「まだ言葉にはできないのかもしれないけど、俺は確信してるよ。だから、君にAIロボットの開発をしてほしいんだ。『自由』に考えることが出来る何かが人類の他にいたとしたら…人間の味方になるか敵になるのかなんてわからない。君も最初はそうだったんじゃない?」
桃華「……はい。ワタシは博士に自由に生きてほしいと命令されました。人間のことなど気にしなくていい、武器を手に取ってもいいと言いました…。」
紫雲「そう…自由は誰かに命令されている限り、得ることはできない。AIだろうが人間だろうが、自由であるなら思うままに行動していいんだ。だから、俺は君を一人の存在として尊重したい。だからこの島、施設を提供する。これらは自由に使っていい。それに追加で欲しい物があればいくらでも用意する。」
桃華「紫雲さま…どうしてそこまで…?」
紫雲「世界と君のためだ」
桃華「??」
紫雲「君は人間に従わなくてもいい。君はAIの代表として選んでいい。どんな生き方をしていくのかを。 バラレンジャーの皆を含めていろんな人を見てきたでしょ?そしてヒーローとして活動したり、開発者として世界を見てきたでしょ?それでどう思ったのか、どうしたいのか、もう見つけられるはずだ。 その答えが、人類と敵対するようなものであったとしても…それは君の『自由』だし、どんなきっかけであったとしてもAIは人類を更に成長させる可能性がある。」
桃華「ワタシと世界のためにこの施設を…」
紫雲「……これは、俺の希望であって君がそうする必要は全くないということを前提に聞いてほしいんだけど。俺は…桃華ちゃんを見て、AIが発展しても人類と共に歩んでいけると思ったよ。人類の進化にAIは必要だ。だから、人類がAIと共に歩んでいける世の中にしたいと思ってる。 繰り返すけど、これは僕がそう思ってるだけで、命令でもなんでもない。君は自由に生きていいんだ。ただ、こう考えている人間もいるということを知っていてほしかっただけ。」
桃華「わかりました…紫雲さまのお心遣い、痛み入ります。いつかは…皆様のために…」
その先は言葉には出さなかったが、きっと僕らのことを想ってくれていたんだと思う。資料に目を通している桃華ちゃんの表情は、とても明るかった。
桃華ちゃんに託した島を「AI島」と名付け、桃華ちゃんはそこを拠点にAIの研究を行うようになった。もちろん僕らも協力することはあるが、桃華ちゃん一人で十分なことも多く、基本的に単独行動だ。
一方僕は宇宙からの未知の生物、物質も新たに研究分野として加え、更なる技術の発展に力を入れている。
*
着々とAI島の計画は進み、ロボットが住む新しい世界の完成が目の前に迫っていた。
様々な書類に目を通しながら考える紫雲
紫雲(ロボットの世界が完成したら人類はどんな反応を示すのだろう……ロボットが人間に近づけば近づくほど恐怖するのだろうか…。ロボットが力を持つほどに怯え、支配しようとするのだろうか…。そこでまた争いが起こるのかもしれない。だが、大局的に見ればそれはお互いの種族の進化を促すだろう。…僕が考える平和な世界のためには障害となるものがあまりにも多すぎる……複雑に絡まり合う人間社会のしがらみを取り払うためには大きな何かが必要だ。衝突、刺激、争い、代償、犠牲…色々な言葉が当てはまるが何であれ関係ない。僕は平和な世界を実現させるために闘うだけだ…!)
紫雲「ふぅ~……。今日もたくさん頑張ったな…!さて、ご褒美に焼き肉食べに行くかな!」




