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King Colours  作者: TEAM,IDR
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第二十五話「勇者として呼ばれた俺はパーティー組んだけど一人で魔物を全滅させる」

第二十五話 「勇者として呼ばれた俺はパーティー組んだけど一人で魔物を全滅させる」

(主人公 ピンク2)


「おお!本当に来てくださった!」

「勇者様!?」

周りの人たちがざわつく。

紫雲「ここは…?」

目を開けると武装した兵に囲まれていた。

??「異国からの勇者殿、どうか我々の願いを聞いていただけないだろうか?」

正面の兵士の後ろにいる、明らかに偉そうな人が話しかけてきた。

国王「私はこの国の国王だ。一月ほど前、魔王の封印が解かれこの国は魔物に襲われた。この国で選りすぐりの戦士たちを向かわせたが、ほとんどがやられてしまった。そこで、古くから伝わる魔術儀式により強大な力を持つ勇者殿を召喚させていただいたという状況だ。

 そこで、頼みがある。我々の代わりに魔王を倒してくれないだろうか?」

国王は座ったままだが、頭を下げた。隣に座っている女王らしき人物も一緒に頭を下げる。

紫雲(武器を構えた兵士に囲まれて…。これじゃ脅しじゃないか。だが、俺は力の使い方を証明しに来た。)

紫雲「いいだろう。魔王の居場所を教えろ!すぐに殺しに行ってやる!!」

紫雲は語気を強めて言い放った。

「「おお!!」」

国王「感謝する。異国の勇者よ。魔王についてだが、詳しいことは後ろにいる3人に聞いてくれ。」

紫雲が振り返るとそこには周りの兵士達とは服装の違う女性が3人立っていた。役職は魔法使い、剣士、弓使いだ


*


互いに自己紹介を済ませながら城を出て、街を歩きながら話した。

魔法使いのツク「シウン様は何の武器で戦うのですか?」

紫雲「武器はいらない。蹴りだけで十分だ。」

剣士のサヤ「蹴りぃ!?おいおい、ほんとにこんなやつが勇者なのかぁ?」

弓使いのシーナ「ふぅん…しかし、自信はある様子。勇者殿、失礼を承知でお願いがあります。街を出てすぐにオークの巣窟があるのですが、そのオークを倒してみてはくれませんか?」

サヤ「お!勇者を試そうってか? いい考えだ。一人でオークを全滅させられるくらいじゃなきゃ魔王なんて倒せねーしな。」

紫雲「いいだろう。すぐに案内しろ。」

ツク「ええぇ!?あの…でしたら、せめて防具だけでも…。」

紫雲「必要ない。」


*


紫雲は3人に連れられてオークがいるという巣窟の前まできた。

サヤ「ここがオークの巣窟だ。奥に行けば行くほど強いやつがいるからな。まぁ気を付けて行って来いよ」

ツク「私もついて行きます!戦闘ではあまり役に立たないけど、回復魔法や強化魔法なら使えますから!」

ツクだけはついてこようとするが、紫雲はその提案を無視しながら巣窟を眺める。


サヤ「おいおい、もしかしてビビったのかぁ? はぁ…、やっぱりオレらだけで行こうぜ。こんなやつに魔王なんて倒せるわけねーよ」

サヤは呆れてその場を去ろうとする。シーナはううんと唸っている。

紫雲「お前ら、仮にも魔王を倒そうって言うんだろ?なら、俺の攻撃に巻き込まれても死なないよな?」

ツク「え?」

サヤ「は?」

シーナ「!?」

紫雲「五秒後にここを吹き飛ばす。死にたくなければ逃げるなり、防御するなりしろ。」

サヤ「ははっ!何言ってんだ?吹き飛ばすってどうやってだよ?」

サヤはバカにしたように聞いてくる。

ツク「サヤ、シーナ、下がって!!」

ツクは魔法を使って3人の前にバリアを張った。その後、サヤが口を開く前に紫雲は雷を纏った。

近くの木々に放電しながら力を右脚に集中させる。右膝を上げて、蹴りの構えをする。脚を突き出すと共に電撃が一直線に放たれる。放たれた電撃は周りの物質を破壊しながら一瞬で進み去った。

紫雲の蹴りの後には、溶けかけている岩、燃える木々、えぐれた大地が残っていた。

紫雲「これでいいだろ。次は魔王の所に案内しろ。」

そう言いながら、開いた口が塞がらない3人の前を歩き去る。



「これから。シウンは命を大切にする?」「…うん。俺もカインを見習うよ!」「ふふっ!その言葉、忘れないでね?」

紫雲(……くっ……カイン…許してくれ…でも…人間が安全に暮らすには自然の管理が必要だ。危険を排除し、残すべき自然は人間が管理すればいい。そうすれば、自然を愛しながら安全に暮らしてゆける。たとえ一時的に自然が壊されようが…人間が死んでいい理由にはならない…!)

紫雲の顔はこの世界に来てからより一層険しくなった。


*


4人は魔王の城へと向かっていた。3人は横並びで紫雲の前を歩いていた。

ツク「ほら、ちゃんと言いなさい!このままだと気持ち悪いでしょう?」

サヤ「うーーん。そうだよなぁ…。」

シーナ「サヤ、謝るのならば早い方が良い。私も勇者殿には謝らねばならない。」

サヤ「分かった、一緒に謝ろうぜ。」

3人は立ち止まり、サヤとシーナが紫雲に近づいて言った。

サヤ「すまねぇ!」

シーナ「申し訳なかった!」

サヤ「オレ、あんたのこと信じられなくってよぉ。いろいろ失礼なことしちまった。許してくれ!」

シーナ「私も、勇者殿を試した挙句、あまりの強さに驚き謝罪が遅れてしまった。申し訳ない!」

紫雲は魔王のことや、力の使い方のことで頭がいっぱいになっており、全くと言っていいほど気にしていなかったことで謝られたのでどうしていいかわからなくなっていた。

ツク「2人も2人なりに反省しているみたいだし、許してあげてくれませんか?シウン様?」

紫雲は頼み込む3人を見て顔を緩めた。

紫雲「いいよ。気にしてないから。」

サヤ「はぁ~~良かった。よっし!これで仲直りもできたことだし、オレらは仲間だな!」

そう言ってグータッチを要求してくる。紫雲は要求に応える。

シーナ「勇者殿の力があれば魔王など恐れるに足らずです!ハッハッハ!」

シーナはスラっとした見た目に反し豪快に笑い、それをみたツクも「ふふ」と笑う。


 紫雲は三人の笑顔を見てカインのことを思い出した。


紫雲(あの笑顔を護ることは…できなかった……だから…今度こそは…必ず護ってみせる…サヤ、ツク、シーナのことも…この世界も……)


 紫雲は誓う。二度とあの悲劇を繰り返さないと…。この力で世界を護ってみせると…。



*



ツク「この先が魔王城です。ここから生きて帰ってきた者はおりません。」

サヤ「どうする?作戦を立ててから行動した方が良いんじゃねぇか?」

シーナ「勇者殿…」

紫雲(ここに来るまでの魔物は倒してきた。3人を安全な場所に移動させてから俺が一人で魔王を倒しに行けばいいが…。目を離した隙にまた…。)

紫雲は考え込んだ。

ツク「シウン様?どうかされましたか?」

サヤ「言いたいことがあるんなら遠慮なく言ってくれよ!オレたちは仲間なんだからよ!」

シーナ「そうです!我々を信じてくだされ!」

紫雲は三人の顔を見る。

紫雲「…………頼みがあるんだ。」



紫雲は3人を魔王城から離れた場所に移動させ、ツクにバリアを張らせた。

紫雲「ここで待っていてくれ。みんなは自分の安全だけを気にしていればいい。俺は魔王城ごと吹き飛ばしてくる。」

サヤ「おいおい、オレたちを信じていないのか?お前も見ただろ?オレたちはそんなにやわじゃない!オレたちも連れて行ってくれよ!」

ツク「サヤ!私たちが行っても足手まといになるだけです。シウン様を信じて待ちましょう。」

シーナ「魔王をこの手で討てないのは心残りではあるが仕方あるまい。信じておりますぞ、勇者殿。」

紫雲「ああ。行ってくる。」


紫雲は電気と一体となり、一瞬で魔王城まで移動した。そして魔王城の上空で雷の力を解放した。

辺りの雲は一斉に吹き飛び、溢れ出る雷が地上に降り注ぐ。

紫雲「終わりだ…!」

紫雲は巨大な雷となって魔王城を破壊した。爆音が鳴り響き、眩い閃光が消えた時、そこに生きていたのは紫雲だけではなかった。


紫雲「何っ!?」

魔物「凄まじい力を感じ、バリアを重ねて張ったが…まさかこれほどの威力とは…」

紫雲「流石の防御力だな。魔王の名は伊達じゃないな。」

魔物「ふっ…。魔王様がこの程度なものか…。だが、我も魔王軍では随一の防御力を誇っていたのだがな。しかし、貴様でも魔王様には勝てん…。」

紫雲「魔王はどこにいる!!」

魔物「今頃、お前らの国を蹂躙しているだろう…。そんなことにも気づかずにここまで来たとは…憐れだな…。やはり魔…」

紫雲は微かに残ったバリアごと魔物を踏みつぶし、急いで国へと戻った。

紫雲(嫌な予感がする……たのむ…!外れてくれ…!誰も死なないでくれ…!)


*


紫雲「そん…な…」

そこには変わり果てた街の姿があった。空も地上も魔物が覆いつくし、兵士や街の人々の死体があたりに転がっている。

魔王「来たか…。異国の勇者よ…。」

声がするのは国王がいた城からだった。

紫雲「お前が魔王か…!」

紫雲は砕けた城から見えた魔王を睨みつける。そして、雷と一体化した紫雲は城内に落雷する。

魔王「おっと…動くなよ…。こいつの首が折れてしまうぞ?」

魔王の手には女王が握られていた。

王女「勇者様!わたくしのことは気にせず、魔王を倒してください!」

紫雲「くっ…!」

紫雲は身構える。しかし。

魔王「こいつの命は保険だ。これを見るがいい。」

魔王の近くにいる魔物の一体が鏡を運んできた。その鏡にはツク、サヤ、シーナの3人を人質に取っている大量の魔物が映っていた。

紫雲「これは!?」

魔王「異国の勇者が召喚されたと聞いて手を打っていて良かったよ。我が城が一瞬で破壊されるとは正直思っていなかったぞ。やはり代々言い伝えられるだけのことはある。さて、勇者よ、この者たちの命を救いたくば両腕か、両脚を差し出せ。」

魔王がそう言うと、斧を持った魔物が紫雲ににじり寄る。

王女「いけません!勇者様!今、魔王に立ち向かえるのは勇者様だけなのです!魔王に屈してはなりません!」

紫雲(魔王は強い。あいつらに攻撃の指示をされる前に魔王を倒すとなると、街は吹き飛ぶ。力をセーブしたとしても街に残っている魔物は何をするかわからない。どうすれば…。せめてあいつらだけでも…。いや、街を吹き飛ばせば遠くからでもわかる。その瞬間あいつらは殺されるかもしれない。)

魔王「あと五秒で決めろ。手足を差し出して人々を救うか、全てを殺すか。」

王女「勇者様…」

魔王「時間だ。やれ!」

魔物が飛び掛かってくる。

紫雲(魔王を野放しにしては、どの道人間に安息はない。全てを救うことはもう………)

紫雲は放電し、近づいた魔物を一掃する。

魔王「殺せ!」

魔王は鏡の中に指示を出す。紫雲は雷を身に纏い、魔王に跳び蹴りを放つ。

魔王「クハハハ!!面白い!人間の命よりも戦いを望むか!!」

魔王は片手で蹴りを受け止めた。女王を放り投げ、紫雲へと殴り掛かる。

紫雲「貴様に構っている暇はない!!」

紫雲は掴まれていない方の足から、魔王の顔をめがけて電撃を放つ。

ドォン!!

という、凄まじい音と共に城の一部が崩れる。

魔王の手が緩み、地に下りた紫雲。

魔王「この鎧を砕くとはな…」

紫雲「…っ!?まだ生きてんのか…。」

魔王の体からは不気味なオーラが漏れていた。

魔王「この鎧はこのオーラを抑えるためであったがまぁ良い。我が眷属にすら悪影響を与える力故に抑えていたが、今は周囲を気にする必要もあるまいな…。さぁ!ようやく我も全力を出せる!殺し合いと行こうか…!」

魔王のドス黒いオーラは瞬く間に辺りを包んだ。魔王の姿すらはっきりと目視できないほどの暗闇に立ち尽くす紫雲。

魔王「人間には何も見えぬであろう。やはりこのオーラを使ってしまうと殺し「合い」ではなくなってしまうな。」

紫雲(もう間に合わないかもしれない。)

魔王「どうした?最期くらい抵抗してみせろ!」

紫雲(俺が悪かったのか…?俺がバカだったからこんなことになったのか?)

魔王「瘴気にやられたか…。ならば死ね!」

魔王の攻撃。しかし、そこに紫雲はいない。

闇の中でバチバチと電気が走る。

魔王「なっ…!?」

紫雲の蹴りが魔王に直撃。電撃による光で紫雲の体だけが照らされる。

紫雲「ぶっ飛べ!!」

魔王は空に蹴り上げられたが、紫雲はそれよりも速く魔王の上空へと移動した。

高速で回転し、その力を乗せた踵落としが魔王に直撃。空へと上がっていた魔王は今度は地に向かって猛烈な勢いで落ちてゆく。

紫雲は音を置き去りにして地へ落雷。

地上から勢いをつけて落下途中の魔王に突進する。

全スピードを乗せた強烈な前蹴りが魔王の体を貫く。巨大な雷が天へと昇りながら魔王を破壊した。


*


その後、紫雲は3人のもとへと向かったが既に手遅れだった。その場に残っていた魔物、街に残っていた魔物を全て片付け、城へと戻った。

壊れた城から、街を見下ろす紫雲。そこから見えるのは壊れた街と死体だけだった。

紫雲は地獄のような有り様をただ見るだけしかできなかった。

??「勇者…様…?」

声がする方を見ると、そこには女王がいた。

紫雲「大丈夫か!?」

紫雲は女王の体を抱き上げる。

王女「魔王は?」

紫雲「倒した!もう怖がることなんてないんだよ!平和に暮らせるんだよ!」

王女「それは…良かった……勇者様、あれは…?」

女王が指を指す方を見る。その瞬間、全身にスピードの概念を超越したかのような速過ぎる電気信号が走った。

生物の反応速度を超えた動きが王女の攻撃の手を止めた。

紫雲「…これは……?」

王女「やはり人間ではないな……魔王様をも瞬殺できる存在を殺すことなどできぬか…」

紫雲「…お前は…なんだ!?」

王女「ハッ!貴様も間抜けよな…この攻撃に巻き込まれて死なぬ人間がいるか。我は魔王様の部下だ。まさか、たまたま貴様がいない時に攻めてきたと思ったのか?これも全て魔王様の指示によるもの…貴様が勝ったのはその力があったからだ!それ以外の要素で貴様が勝てる物など一つもない!この国の惨状も貴様が弱いせいだ!!アーッハッハッハッハッハ!!!」

紫雲「…………」

魔物「魔王様バンザーイ!!!!」

魔物は自分の体に暗器を突き刺し、城から飛び降りた。

紫雲「!!?」

落ちる瞬間、王女の顔が正気に戻り、涙を流していたように見えた気がし、驚いたがそれを気にしている余裕もなかった。

崩壊した城から国を見下ろす。生き残った者は誰一人としていなかった…。

紫雲「うわあああああああああああ!!!」

紫雲はただただ、ひたすら泣いた。日が暮れきっても、泣き続けた…。


*


紫雲「うっ…うう…」

神「これがお前の望んだ世界か?」

紫雲「っ!?お前は…!ふざけんな!!こんな世界望むわけないだろ!!俺は!…俺は…」

神「…お前は確かに強い。この世界の何かに殺されることは絶対にない。だが、他の者は違う。死なないのはお前だけだ。お前はうぬぼれている。その力があれば何でもできると勘違いしている。お前は所詮人間だ。やれることに限度はある。その限度をわきまえていない。」

紫雲「…くっ!!じゃあどうしろっつーんだよ!!俺は考えた!どうすれば皆を護れるのか!カインの時みたいにならないように頑張った!!なのに駄目だった!!これ以上何をどうしろって言うんだよ!!俺に何かできたのかよ!!なぁ!?チート能力なのに世界を平和にすることもできねーのかよ!?…どうすればよかったんだよ……教えてくれよ……」

紫雲は悔し涙を流し、膝をつく。

神「…私はお前に「神になれ」と言っているわけではない。絶対の力を持ってしても、全てを救うことなどできはしない。」

紫雲「なら…こんな力になんの意味があるんだよ…!……俺が…俺が…チート能力を欲しがったのは何でも思い通りになると思ったからなんだよ…なのに…なんだよこれ…全然意味ねーじゃねーかよぉ!………」

神「…お前の言う思い通りの世界とはなんだ?」

紫雲「…あ?そりゃ…女の子にモテて…ちやほやされて、誰にも負けなくて………」

紫雲(そうだ……俺は最初、力を自慢したかった。最強になって女の子にモテて…。でも、カインと出会ってからどうでもよくなった。力なんてなくてもあんな風に生きていれば楽しかった。カインが傍にいてくれればそれだけで良かった。…でも、護れなかった…)

紫雲「……俺は……護りたいと思った……この力を使って…護りたかった。」

神「誰を?何をだ?」

紫雲はしばらく考えた。

紫雲(護りたいのはカインだけだった。でもツク、サヤ、シーナの3人に出会ってからは3人を護りたいと思うようになった。そして、あいつらが住んでたあの国も護ってやらなきゃって思ってたんだ…)

紫雲「……俺は…皆を護りたかった…こんな景色…見たくない……」

そう言って変わり果てた街を見る。

紫雲「もうチート能力なんてどうだっていい!俺は…!平和に暮らしたい…!ただ…誰かと一緒に笑えて…好きな人がいて…誰も死なない…そんな当たり前の普通な生活が続くだけでいい!俺は…そんな世界が欲しい!」

悲しみに満ちた表情のままだが、はっきりと自分の想いを口に出した。

紫雲「教えてくれよ…!!俺はどうすればよかったんだ…?」

神「……たとえその力があったとしても、世界をコントロールすることは容易ではない。」

紫雲「…っ!……………。」

紫雲は黙り込む。

神「どの決断が正解かも分からない。お前にできることはたった一つだ。」

紫雲「たったひとつ…?」

神「考え続けることだ。選び、信じた道が本当に望んだ世界に繋がるのか…自分の力をどのように発揮すれば世界が変わるのか…何を知り、何を学べば自分が変わるのか…」

紫雲「…………」

神「お前に考え続ける覚悟はあるか?どんな世界が理想の世界か、その世界に導くために何をすべきかを永遠に考え続ける覚悟が…!」

紫雲「…………………」

神「答えは今出さなくてもいい。答えが出るまで好きなだけ異世界を冒険すればいいさ…」


また、視界が歪む。


*


紫雲は世界を護りたいと思う心を手に入れた。

どれほどの力を手に入れようが世界を変えるにはあまりにも無力だということを学んだ。

世界は力だけが全てではないと学んだ。


*


今度の異世界では国同士で戦争をしていた。二度とあんなことを繰り返さないように俺は政治に参加し、軍事力を強化した。作戦も立て、偵察も入念に行った。

その国で出会った女の子に恋をし、その子と国を護ろうとした。だがどれだけ気を配っても仲間は死んだ。どれだけ力があろうといついかなる時でも全ての人を気に掛けるなど不可能だった。滅ばないのは僕だけだ。このやり方じゃ世界は変わらない…皆を護れない…。


全てを護ることは出来ないと学んだ…


*


 次の世界でもまた戦争をした。戦力の強化、市民の意識改革を行いつつ、単騎で敵国の戦力を削った。前の異世界で培ったノウハウと、この絶対無敵の能力を最大限に活かして戦った。そして完全な勝利を手に入れた。

 被害を最小限に抑えやっと手に入れた勝利。敵国を完膚なきまでに叩き潰し、全てを奪った。最高に嬉しい…はずだった…。はずなのに……。


紫雲「同じ人間なのに…こんなにも残酷なことが許されていいのか…?」


 全てを奪われた敵国民に反論の術はない。奴隷となり家畜以下の扱いを受けている。争いだけで決着をつけてしまった結果だった。それも互いの国が戦争で消耗していればここまで格差がつくことはなかったのかもしれない。

 俺がいたから…圧倒的な力の差をつけてしまったから…。そもそも敵は悪いやつらだったのか?本当に?最初に関わった国のことは調べた。でも敵国のことなんて偏見交じりの意見でしか知らなかった。

 同じ人間なのに虐げられ、蔑まれ、隷属させられるのか?こんな世界を望んでいたのか?本当に戦争しか道はなかったのか?勝つことは正解とは限らないのではないか?こちらの正義が正義とは限らないのではないか…。


戦うことだけが解決方法ではないと学んだ。

何が本当の正義なのか考えるようになった…


*


 食糧難の異世界へ飛ばされた。

 食料の奪い合いが起きていた。どちらも生きたいだけ…悪も正義もない。そんな状況に戦力的介入はできなかった…。

 色々考えた。畑も耕した。でも遅い。どうにもならない。どんどん餓死していった。神に祈り続けても自然は牙をむく。

死なないのは僕だけだ……

救っても…救っても……

いくらすくってもこぼれ落ちていく……


どうすればよかった…?

人を救うために誰かを犠牲にするべきだったのか……そんな馬鹿な話があっていいのか……何が足りない?

僕の努力は全て無駄だったのか?



何を知り、何をすれば『世界』を護ることができたのだろうか………



*



神「…もう諦めるか?」

紫雲「…………疲れたよ……でも…諦めるつもりはない………」

神「そうか…だがこれ以上はもう無駄だ。お前はもう元の世界へ戻す。」

紫雲「っ!!なんでだよ!!俺はまだ諦めてない!平和な世界を、必ず手に入れてみせる!!」

神「…勘違いするな。お前は合格だ。お前はもう世界を変えるには充分な力を手に入れた。異世界転生を繰り返す度に成長してきた。これ以上の成長はもうここでは必要ない。だから、元の世界へ返すんだ。」

紫雲「……元の世界…か………今になってようやく分かるようになった…。あの世界はこれまでのどの世界よりも複雑だ…今の俺になんとかできるとは思えない……」

神「…そうだろうな…お前一人では変えることは難しいだろう。そして、もし仮に変えられたとしてもお前の望む形ではないかもしれない…。」

紫雲「……だろうな…」

神「…最後に一つ伝えたいことがある。」

紫雲「?」

神「世界にいるのはお前一人じゃない。力を持っているのも、世界を変えようとしている者も、お前一人じゃない。一人で世界を変え、平和を護ろうとしなくていい。頼れる仲間を見つけるんだ。世界の人々を信じてみるんだ。一人で万能になれるのは神だけだ。お前が望む世界は人間が力を合わせる世界じゃないのか?」

紫雲「……!!!」

神「超人の力を持つ者ではなく、支え合い信じて共に歩もうとする者こそが世界を変える『ヒーロー』なのだ。」

紫雲「…ヒー…ロー…?」

神「ああ。それがお前の成りたかったものだろう?そして私が求めていた人材でもある。」

紫雲「……お前なんなんだ…?……最初っから…俺をどうしたいんだ?」

神「私は『ヒーロー』を探していた。最強の力を正しく使えるヒーローを。だから異世界(仮想現実)へ送り込み、試していた。…お前は成長してくれた。ヒーローとして相応しい人格に…」

紫雲「………」

紫雲の目の前の空間が歪んだ。

神「次が最後だ。もし、『ヒーロー』になると言うのならその力はお前に託す。断るならこれまでの記憶を全て消す。お前は何も知らず、何も得ず、何も背負うことなくこれまで通りの生活を送ることになる。さぁ、どちらを選ぶ?」

紫雲「……汚いやり方だよ…ここまできて断れるわけないだろ…」

神「…世界を護るためにはたとえ非人道的であっても合理的な手法を取らねばならぬ時がある……すまなかったな……」

紫雲「…………お前…神にしちゃ人間くさいな……」

戦士「この世に神などいない。私はただお前よりもずっと『先』の存在なだけだ。…世界を護りたいと願う…ただの戦士だ…」

紫雲「………」

戦士「さぁ…もう行け…。伝えることは伝えた。もう言うこともない。」

紫雲「……あんたの願い、俺が引き継ぐ。」

戦士「!」

紫雲「先でゆっくり待ってな…!『ヒーロー』になって必ず会いに行く…!」

親指を立て、大きくなった背中を見せつけながら空間の歪みへ進んで行った。


*


目が覚めるとそこは病院のベッドの上だった。

母「紫雲!目が覚めたのかい!?ああ、良かった…!」

母が泣いている。

看護師「せ、先生!昨夜の事故の少年が目を覚ましました!」


*


それから落ち着くまでは少し時間が掛かった。驚いたのは事故に遭ってから一日も経っていなかったことだった。異世界でのあの何十年もの出来事がたった一夜の夢だなんてとても不思議だ。でも、もっと不思議なのは『力』を手に入れた状態で見る元の世界は異世界かと思うほど違って見えた。

驚いたのは僕だけじゃない。事故に遭ったのに怪我一つないっても驚いていた。母も、僕のあまりの性格の変わりように驚いていた。

様子を見るために、何日かは入院することになった。その間に母がお見舞いに来てくれた。寝ている間に反抗期が終わったなんて冗談を言いながら過ごした。退院が近づく頃になってようやく僕の様子に慣れてくれた。


*


母「あんたの変わりようには驚いたけど、不思議と違和感はないね。」

紫雲「そうかな?だいぶ変わったと思うけど。髪も何故だか真っ白になったし…」

母「見た目のことじゃないよ。心の奥のことさ…。あんたは覚えてないかもしれないけど、小さい時は『大きくなったら僕が母さんをまもるー』って言ってくれる優しい子だったんだから。」

母は嬉しそうに話す。

母「その優しさは今でも変わってないようで安心したよ…。」

紫雲「…………あのさ…」

母「うん?」

紫雲「俺、やりたいことができた。」

母「なぁに?」

紫雲「俺、世界を護る『ヒーロー』になりたいんだ。」


*


 世界の何もかもを知らないなんて毎度のことだった。だが、それでも自分に出来ることを探してとにかく進んだ。手始めに僕は電気を操る能力を使って資金を集め、企業した。一般市民も護身のために武装できる世の中だ。そんな、この時代に必要な武器と防具を開発し販売するようになった。

 それだけではない。政治家とも繋がりを持ち、マスメディアも活用しながら発言力も高めていった。僕は異世界で手に入れた全てを発揮した。

人々が強力し合い、一丸となって困難に立ち向かえるように…。

そして、その困難に立ち向かうために必要な力を持てるように…。



 そんな生活が3年ほど続き、今では色々な活動が軌道に乗った。会社の規模も大きくなり、知名度も世界的に有名になるほどになった。

 あとはゆっくりと時間をかけて世界の意識、価値観を正しい方へと導くだけだ…。僕が正しいと信じられる方へと…。


*


紫雲「ごちそうさまでした…!………ふぅ……」

(俺がこの世界でできることはこのくらいかな………)


大好きな焼肉を食べ終わり、独り言をつぶやきながら一息つく。温かな陽の光を感じながらぼんやりと外を眺めていると…


「「きゃー――!!!」」


襲われ、逃げ惑う人達。


紫雲「ああ…一個重要なやることを見落としてたな。」


立ち上がり、急いで外に出る紫雲


紫雲「やっぱ現場に立たなきゃリアルな現状がわからねぇよなぁ!」


ピシィッ!!バチバチッ!!!

雷を纏う。


紫雲「人々の安全を脅かすヤツは俺が駆逐する!さぁかかってきな!最強のヒーローが相手してやるぜ?」


*


 世界の平和を護るため、人々を理想へ導くため、技術を発展させ成長していくために僕は『ヒーロー』になった。

 そしてバラレンジャーの一員となり、他の仲間と出会って思った。僕がこの世界のためにできることはまだまだあるのかもしれない。他のメンバーと一緒にいるとなんでも出来るような気がしてくる。

 現実と幻の狭間で体験した出来事は辛いものばかりであったが、そこから学んだことは多かった。その学びを活かし、さらに歩みを進めることでまた新たな発見と学びがある。これはまるで、新しい世界に飛び込む度に新しいことを学んでいたあの異世界転生と同じだ。

 ぼくはこの先も、これまでとは違う『別世界』と関わりながら生きていく。学びを得て、仲間と楽しく花見なんかができるようなこの世界を護り続けるために……



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