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King Colours  作者: TEAM,IDR
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第二十二話「きみはぼくのヒーローだ…」

第二十二話 「きみはぼくのヒーローだ…」

(主人公 ホワイト1)


 あなたは花が好きですか?最近見た花は何ですか?道端に生えている花、花屋で見かけた花、何処かに生けてある花、プレゼントされた花、何でもいいです。

 花を見てどんな気持ちになりますか?

 花に関わらず、人は物質と感情がセットになることがあります。同じ物を見ても人が違えば感じることも違うでしょう。ぼくにとってそれが花です。特に薔薇の花。ぼくは薔薇の花が大好きです。でも、薔薇を見ると少し寂しい気持ちにもなります。なぜ薔薇を見るだけで特別な感情が出てくるのか。それを答えるには少し昔話をしなければなりません…。


 ぼくは生まれた時から他の子と違いました。ぼくは特別な子でした。まず、他の人には見えない友達がいました。彼の姿はぼくにもハッキリとは見えませんでしたが、そこにいるということだけはハッキリわかっていました。両親はイマジナリーフレンドだと思っていたようでしたが、小学校へ上がっても見え続けていたのでかなり心配していました。(汗)ぼくはそれに気づいてから見えなくなったフリをし続け、なんとかそこは普通の子に戻れました。(笑)

 そして、もうひとつ他の子とは違うところがありました。それは眼の色です。ぼくは生まれつき眼が青かったのです。そのせいで小さい頃、よくいじめられました。


*


体の大きい男の子「おまえなんで目が青いんだよ?きもちわりぃなぁ」

元気な男の子「ウイルスにかんせんしてるんだよ!」

小柄な男の子「うわ!にげろー」


小柄な男の子「こないだあいつ、ひとりでしゃべってたぜ。きもちわるくね?」

元気な男の子「え!きも!!」

体の大きい男の子「みんなにひろめてやろうぜ!」


 噂が広まり、クラスのみんなから気味悪がられました。そして、放課後にいじめっ子の3人に呼び出され、殴られたり、蹴られたりしました。

体の大きい男の子「おまえいまからゾンビな!おれらがいまからころすから」

元気な男の子「ゾンビなんだからはやくうごくなよ!」

小柄な男の子「木のぼうひろってきたよ。これでたおそう!」

 そして、暴力はエスカレートし棒で殴られそうになった時…

見知らぬ女の子「あんたたち何してんの!」

 初めて見る同い年くらいの女の子がいました。

小柄な男の子「こいつ、いまからたおすんだよ」

元気な男の子「たたかいごっこしてんだから女は入ってくんなよ!」

 女の子は突き飛ばされ尻もちをつきました。それを見たぼくはいじめっ子たちに飛び掛かり、暴れました。さっきまでいじめられ、怯えていたのにボロボロになりながらも彼女から3人を遠ざけることに成功しました。

 この時ぼくは初めて誰かを護るために自分の力を使いました。そして、誰かを護りたいという気持ちは勇気をくれるということを学びました。絶対に勝てないと思っていたのに、戦ってみたらなんとかなるということも学びました。彼女がいなければ学べなかったことです。それを言葉に出来なくても直感的には「すごく大切なことを知れた」と感じていたので彼女に言いました。


黄慈「ありがとう…」

 すると彼女はキョトンとした顔で2,3秒固まってから、ふふっと笑いました。

見知らぬ女の子「助けてもらったのはあたしなんだからありがとうを言うのはあたしなのに」

黄慈「えっそうかな…。でもさいしょにたすけてくれたのはそっちだし…」

砂霧真奈「さぎりまな!あたしのなまえ!まなでいいよ!」

 これが彼女との出会いだった。彼女は実はクラスメイトだった。あの時のぼくは人を見ていなかった。だから気づけなかった。彼女との出会いで全てが変わった。運命の人だった。コンプレックスだったこの眼を好きにさせてくれたのも彼女だった…。


真奈「ねぇ、おうじ君はなんでいじめられてたの?」

黄慈「目の色がみんなとちがうからだよ…。ほら、青いでしょ?ふつうはくろいのに…」

真奈「ふつうになりたいの?」

黄慈「……」

真奈「あたしはその目、すごくキレイだと思うけどな~。ふつうになったらもったいないよ!」



 彼女にとっては何気ない一言だったかもしれないが、ぼくはこの言葉を一生忘れられないだろう。この言葉を聞いた時、初めて世界に色がついた気がした。他人には無い色のついた、この眼で世界を見ることができたんだ…。


*


 この眼を好きになってから、ぼくは、よく世界を見るようにした。人を見るようになった。相手の目を見て話すようになった。まるで、「あんたの目を見ているぼくの眼を見ろ」って訴えているみたいに。それか相手の目に映る自分の眼を見ていたのかもしれない。どちらにせよ若い時は少しナルシストだったのかもしれないね。(笑)

 でも、自信を持つようになったからなのか女の子にはすごくモテた。バレンタインデーの時はいつも20個くらい貰ってたな。懐かしい…。もちろん、ぼくの眼には真奈しか映っていなかったけどね。


 中学から大学一年生くらいまでは楽しかったな…。ぼくと彼女で料理部に入っていろんなものを作った。先生や部活メンバーと楽しく料理してた。休日には彼女と一緒に勉強したり、カラオケに行ったり、ボウリングやバッティングセンターに行ったりして遊んだ。毎日毎日ずうぅっと彼女と一緒にいた。彼女に会わない日なんてほとんどなかった。

大学に入ってからは二人で映画を観たり、カフェに行ったり、図書館に行ったりすることが多くなった。あとは、二人きりでいる時間が多くなった。彼女がよく甘えるようになったのもこの時期からだったな…。今思えばこの時、その違和感に気づくことが出来れば良かったのかもしれない…。


 ふぅ~~~~。今、一息ついている。ここから、ある出来事が起きてしまったんだ。ぼくが異変に気付いたのは大学2年の夏になってからだった…。


*


黄慈「今日も長袖だね。暑くないの?」

真奈「知らないのぉ?日が出てる時は肌を隠してた方が涼しいのよ。」

黄慈「それは砂漠地方とかだけじゃないの?」

真奈「む、女の子は日焼けとかも気にしてるんだからいいの!」

黄慈「ふーん。それより、そろそろお腹減らない?今日はどこかで食べて行こうよ!」

真奈「…ごめん。あんまお腹へってなくて…」

黄慈「夏バテじゃないの~?やっぱり長袖着てるからだよ。じゃあカラオケにでも行って涼む?」

真奈「………」


ぼくは立ち止った。


黄慈「どうしたの?最近どこに誘っても全然乗り気じゃないね…。」

真奈はしばらくうつむいてから言った。

真奈「もう…やめにしない?」


ぼくは真奈の言葉に驚いて…ただうつむいている真奈を見ることしかできなかった。


真奈「あんたといるのもう飽きたっていうか、もう嫌なんだよね。こんな関係。もう、あたしに関わらないでくれる?」


真奈はそう言って反対方向へ歩いて行った。突然そんなことを言われて納得できるわけがない。ぼくは真奈を追いかけて手をつかんだ。


黄慈「待ってよ!っ……!!!」


その時の衝撃は今でも忘れられない。つかんだ手首は信じられないくらい細かった。このまま握ったら折れてしまいそうな危険な脆さを感じた。ボウリングやバッティングセンターを好んで行く活発な彼女にはどうにも似合わない細さだった…。


真奈「離してよ!」


振り払う力も弱かった。そして、彼女は目に一杯の涙を浮かべて

真奈「もう……関わらないでよ…」

と言って走り去ってしまった。

ぼくはあまりの出来事にショックを受け、しばらくその場から動けなかった。


*


 その後、電話で真奈のお母さんに事情を聴いた。


 真奈は生まれつき体が弱く、心臓にも異常があった。余命宣告受けたが、奇跡的に回復し今まで過ごしていた。しかし高校3年の冬頃に新たな異常が発覚したらしい。そして、それが原因でもう長くないと告げられたという。

 当時はあと数年持てばいい方だと言われていた真奈がこんなにも長く生きてくれたことは何よりも嬉しく、幸せであった。こんなに長生きできたのはいつも娘を笑顔にしてくれた黄慈くんのおかげだと言われた。そして、最近特に体が弱り始めてきていてもう学校へも行けなくなるかもしれないと涙ながらに言われた。

 おばさんもどうしていいかわからなかったのだろう。ぼくに話すだけ話して泣き続けた。おばさんの優しい声と笑顔しか見たことなかったから、電話の向こうで大泣きしている声を聞いているのはなんだか怖かった。真奈が死ぬかもしれないという予感が人をこんなに変え、ぼくもとてつもない不安に襲われるということを知り、事の重大さを全身で感じていた…。

 冷や汗をかきながらもぼくは「悲しいのはわかりますが、落ち着いてください。ぼくもどうしたらいいのか考えますから」と言って電話を切った。その日の夜はなかなか眠れなかった。これから真奈とどう接していけばいいのかを考え続けた。真奈のことを思う度に胸が苦しくなって眠気が飛んだ。この胸の苦しみはどこからくるのだろう…。怖いからなのか…好きだからなのか…悲しいからなのか…。もうぐちゃぐちゃだった。


*


 ぼくは次の日、学校を休んだ。自分の部屋のベッドでずっと仰向けになってボーっとしていた。気が付くと空が茜色になっていた。気分を変えようと思い、散歩に行くことにした。

 外に出ると丁度、真奈がぼくの家を訪ねようとしていたところだった。そのまま二人で散歩に行った。でも、お互い何もしゃべらなかった。何を言えばいいのかわからなかったのだろう。


 ぼくは歩きながらどうすればいいのかをずっと考えていた。でも、何もできそうになかった。どんなに頑張っても真奈がもうすぐ死ぬことは変わらない。その答えにたどり着く度に泣きそうになってもう一度考えた。それを繰り返しているうちに限界がきた。

 ぼくはどんどん歩くのが遅くなり、ついには涙が目からこぼれ落ちた。

黄慈「うっ……うぅ…。っくぅ……。」

真奈「っ!……どうしたの…?」


後ろを歩いていた真奈が優しくぼくの背中をさすった。その時ぼくの本心が口から出た。

黄慈「…いやだ……。真奈が死ぬなんていやだ…!ずっと一緒にいたい…。一緒に生きたい…!!」

真奈「…うん…。あたしも…もっと生きたかった…!あなたと一緒に…。」


それからしばらく二人で泣いた。



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