第十一話「光に憧れる少年」
第十一話 「光に憧れる少年」
(主人公 ブラウン1)
トラックで走る少年
銀河「はぁ…はぁ…はぁ…」
晴香「お疲れ!はい、あんたが好きなグレープ味!」
銀河「おう…サンキュー…」
晴香「…なんか最近元気なくない?前は「くぅ~!練習頑張った後の炭酸は染みるぜ!」とか言ってたのに。」
銀河「………最近…なんで自分が走ってたのかわからなくなってな…俺はただ、速くなりたかったから走ってたけど…最近気づいちまったんだ。どんなに頑張っても、光にはなれねぇって……」
晴香「はぁ…?どういうこと?」
銀河「この世で一番はえーのが光なんだってよ。秒速30万キロってやべぇだろ…。そんなに速かったらどうなるんだろうな…」
晴香「はぁ…あいかわらずバカで安心したよ。光には敵わないからモチベが下がっただけか。あ~あ、心配して損した。」
銀河「バカってお前…言っとくが、それだけじゃねぇぞ、俺は今進路のことも悩んでんだよ。」
晴香「ああ、そういやあんたまだ何の仕事にするかすら決めてなかったわね。」
銀河「そうなんだよ。はぁ…どうすっかなぁ~」
晴香「あんたなら走りで食べていけるでしょ。っていうか陸部のメンバーは全員その道に進むと思ってるよ。」
銀河「無責任なこと言いやがって…しかもそれ、先公にも言われたなぁ…俺バカだからそれしかねぇのかなぁ…」
晴香「まぁまだ時間あるんだし、ゆっくり考えれば。心配するほど大した悩みでもなかったし。じゃあたし行くねー」
銀河「大した悩みじゃないってなんだよ!俺にとっては深刻なんだぞ~!」
晴香「進路のことなんてほぼ全ての人が悩んでんだから大したことじゃないのよ。誰に相談してもヒントくらいもらえるだろうし…どうしてもって言うんなら、あたしに相談してもいいしね!」
銀河「お前じゃ頼りになんねぇな…」
晴香「バカ!!」
銀河「ってぇ!!」
*
街に繰り出す少年
銀河(はあ~。俺のやりてぇことってなんだろうな…。そういえばそろそろクリスマスか…。イルミネーションが綺麗だな。あそこのベンチに座って見るか。)
銀河「…………………」
光って綺麗だよな……。こんなに身近にあるものなのにちゃんと視たのは初めてかもしれねぇ……
俺は速くなりてぇからって走ってたけど…どんなに練習しても光の速さにはなれねぇんだろうな…
どうしたら光の速さになれるんだろうか……
というか…俺は速くなって何がしたいんだろう……
銀河(だぁあああ!!考えても何にも思い浮かばねぇ!もう今日は帰るか…ん?)
銀河が視線を前に戻すとそこには曇った表情のおばあさんがいた。
銀河「おばあちゃん?何か困りごと?」
老婆「ああ!このお店に行きたいんだけど行き方が分からなくてねぇ…」
銀河「ん~?どれどれ……あ~このお店なら反対側だね!ここは東口の方だから駅に戻って……」
*
老婆「ありがとねぇ…!助かったよ。これお礼!」
銀河「お!ありがとな!おばあちゃん!」
鞄から出されたみかんを貰う銀河
銀河「お孫さんへのプレゼント買えるといいね!」
老婆「ん~! ありがとうね~!」
銀河「うん!気を付けてな~!」
手を振って笑顔で見送る銀河
銀河「………やべっ!ぼーっとしてた!そろそろ帰るか!」
(こんなにも「ありがとう」と言われることが嬉しいなんてなぁ……。善いことしたな!……あれ?)
そこに広がる景色は特別変わったものではなかった。イルミネーションの光、店の光、街灯の光、月の光、星の光。そして、それらに照らされた人々の顔。みんなが笑顔で楽しそうで、とてもキラキラと輝いている…
銀河(こんなに眩しかったっけか…………やっぱ光ってすげーんだな……めちゃくちゃはえーし、世界を照らしてくれる………。俺もこんなふうに人々に安らぎの光を与えられたらなぁ………)
そう考えた時、ふと先程の笑顔を思い出した
銀河(……………同じ……かもな……………よっし!決めた!やっぱ光はすげぇ!だから俺も光になりてぇ!! どうすれば光になれるかわかんねぇけど…いつか絶対、光になりてぇ!よっしゃ!早速帰って考えるか!)
みかんを食べながら気合を入れて帰る銀河。しかし、家に帰って飯を食ったら何を考えようとしたのか忘れて寝た。
その晩、不思議な夢を見た。
*
銀河「まぶしい…ここはどこだ?」
??「ここは、私が見せる幻覚の中だ。」
銀河「あ~夢か。じゃあ寝るか。……まぶしい!!」
??「お前に質問がある。ヒーローになる気はあるか?」
銀河「ヒーロー?なんで?」
??「我々は世界を救うヒーローを探している。私が持つ力はあまりにも強い。正しく使える者にしか渡すことはできない。お前は力を持つ資格がある。どうだ?世界を救う気はないか?」
銀河「う~~ん。まぁ他にやりたいこともねぇし、あんたがヒーロー探しに困ってるっつうんならやってもいいぜ!」
??「そうか、ならばお前にはヒーローになってもらう。目が覚めた時には『光の力』が使えるようになっている。」
銀河「光の力!?それってどんな力だ!?」
??「説明するよりも使った方が理解が早いだろう。目が覚めたら使ってみるといい。」
銀河「ん~そうだな!あんた俺がバカなのよく知ってんな!」
??「しばらく観察していたからな…。それにこれからもお前を観察することになる。」
銀河「そうなのか?」
??「お前が世界を救えるように導くのが私の使命だ。これからはお前と共に行動することになる。直接関わることはほとんどないだろうがな…」
銀河「そっか。じゃあこれからよろしくな!俺の名前は癒丹銀河だ!あんたの名前は?」
??「私に名前はない。好きに呼んでくれて構わない。」
銀河「え!?名前ねぇのか!?ん~~じゃあ考えねぇとな……。………これからお前は俺の相棒になるってわけだろ~?…ん~相棒って呼ぶのはそのまんま過ぎるしなぁ…。!そういや、相棒って英語でなんて言うんだ?知ってるか?」
??「……相棒は英語でBuddyだ。」
銀河「よっし!もう考えるのめんどくせぇし、それにしよう!よろしくなバディ!」
バディ「……ああ…分かった。よろしく頼む。」
次の日の朝、光の力が自在に使えるという確かな実感と共に目が覚めた。ベッドの横には、絶対的に白く輝く槍が立てかけてあった。その槍は美しく、軽く、しなやかだった。
*
晴香「ちょっと!陸上やめるってどういうことよ!?」
銀河「あぁ晴香か…。ま、ちょっとやりたいことが出来たんでな!」
晴香「…急に辞めることはないでしょう!?陸上続けながらやればいいじゃない!なんで突然やめるなんて言い出すのよ……」
銀河「……他のやつらに言っても信じねぇと思うけど、お前だから言うわ。俺、すげー力を手に入れたんだ。」
晴香「…は?」
銀河「誰よりも何よりも速くなれる力だ。俺はこの力を使ってヒーローになる。陸上はやめだ…。この力を手に入れてから…なんつーか人間の力をそのまま出すことが出来なくなってんだよな…。どれだけ手を抜こうとしても予備の電源が作動してるみたいっつーか…てか、競技で手を抜こうとしてる時点で俺はもう陸上に本気にはなれねぇんだ。だからやめる!」
晴香「………銀河…あんた何言ってるの?ずっと何言ってるかわかんないよ……本気で言ってるの……?」
銀河「俺が嘘ついたことあったか?説明は分かりにくいと思うけど、嘘だったらこんなにペラペラ話せないはずだ。それはお前が一番よく分かるだろ?」
晴香「…………」
銀河「…晴香。俺は光になる!!」
銀河は晴香の肩をつかみ、宣言する。
銀河「この力を使って本気でヒーローやるぜ!そんでもって大切な人を護るんだ!いいだろ?」
晴香「………わ、わかったわよ…!」
少し顔を赤らめながら銀河から距離を取る。
晴香「あんたどうせヒーローになるとか言っておきながら、ヒーローのこと何も分からないんだろうからあたしが教えてあげるわよ…!」
銀河「おう!助かる!」
晴香「もう!……ほんとにいつも突然なんだから……」
*
俺は晴香にいろいろ教えてもらいながら、ヒーローになるための就職活動を始めた。まず手始めに有名なヒーロー組織に応募しようとしたが、どこも締め切られていて、書類を送っても断られてしまった。 範囲を広げて色々なところに応募してみたがことごとく失敗してしまった…
銀河「くっそぉ…これも駄目だったよ。」
バディ「私がお前に望むことはヒーローとして活動することだ。お前の能力なら自宅からの距離など関係ない。思い切って他県の募集を探してみたらどうだ?」
銀河「そうだなぁ……お!ほんとだ!……ん~ここは出来たばっかりのとこらしいな…オープンメンバーで働けそうだ。ちょっと見に行ってみるか!」
*
掲載されていたヒーロー事業所まで行ってみるとそこには、お世辞にも立派とは言えない建物にヒーロー募集の張り紙が張ってあった。
その張り紙を眺めていると女性が話しかけてきた
ことみ「もしかして…ヒーローに興味あります?」
銀河「あ…実は、『ヒーロー』になろうと思ってて…」
ことみ「ヒーロー志望者ですかぁ!?大歓迎ですよ!」
銀河「ここの事業所の関係者ですか?」
ことみ「あ、申し遅れました。私、ここでヒーロー事業所を開こうとしている橙坂ことみと申します。もし、興味がありましたらいつでも連絡ください。」
銀河「あ、どうも。」
ことみ「では、失礼しますね。」
ことみという人は中に入っていった。
銀河「なぁバディ。俺、あそこで働いてもいいかな?」
バディ「言っただろう、どこでも構わないと。」
銀河「じゃああそこに応募してみる。なんか運命感じるんだよなぁ。」
バディ「そうか。」
銀河「バディもそう思わねぇか?応募してもことごとく締め切られていたり、断られたりしたのは、あそこに入るためだったんじゃねぇか?運命なんだよ」
バディ「運命か…」
銀河「ま、直感だけど…あの人はいい人だ!あの人と一緒ならなんとかなりそうな気がすんだ。なんとなくだけどな!」
応募するとすぐに合格をもらえ、ことみさんの事業所で働くことになった。ヒーローとしての名前も決まった。
俺は「バラレンジャー」としてヒーロー活動を始めた。
そして、活動にも慣れてきた頃…
*
銀河「よっし!無事、片付いたな!」
バディ「片付いたのはいいが、攻撃の前のあの掛け声はなんだ?」
銀河「ああ、フォトンアクセル!ってやつ?いいだろ?昨日めっちゃ考えたんだぜ?」
バディ「めずらしく勉強をしていると思ったらこれか……」
銀河「ヒーローってのは必殺技があるもんだ。必殺技が知れ渡れば、バラレンジャーの知名度も上がるだろ?ことみさんのアドバイスだ!」
バディ「………ダサいが、子どもにも覚えやすいという点を考えれば悪くないか」
銀河「おい!ダサいってなんだ!ダサいって!」
こうして、必殺技も考えながら、順風満帆にヒーロー活動を続けていった。
光に憧れていた俺は文字通り、光となり戦場を駆け巡っていった




