15話 リリーとの雑談
次の日、俺は一人で考えていた。
何故アイツは襲って来たのか、そしてどうして俺を殺そうとしたのか――
「考えてもやっぱりわからないよな」
とりあえず、今日は無理せず宿でおとなしくしておくか?
ここに居れば基本的には安全だと思う。
「でも、今まで宿で一日過ごしたことないんだよな」
いつもなら、俺は外に出て散歩したり、ココナと特訓したりの繰り返しだったからな。
もちろんココナの特訓が無い時もある。
そして、毎回散歩などして時間を過ごしている訳ではないが、何故かそういう時に限ってココナから一緒に出掛けようとか持ちかけられるのだ。
「今日もココナから誘われたりしてな」
「呼んだ?」
「どうわ!?」
いつの間にか部屋に入って来ていたココナにびっくりしてしまう。
いつも思うのだけど、なんで入ってきた気配が全くしないのだ?
「なぁココナ」
「何?」
「何でお前いつも入ってくるとき気配感じないんだ? もしかしてワザと気配消してる?」
「うーん。どうだと思う?」
「いや……聞き返されても」
「あはは、ごめんごめん。そうだねーワザとやってることが多いかな?」
ん? 多いって事はワザとじゃない時もあるって事か?
まぁぼーっとしてたりしたら、気が付かない事あるからな。
「そんな事よりさ!」
「ん?」
「出かけよう!」
「また唐突だな」
「でも私から誘われるの期待してたでしょ?」
「まぁ……一応」
少し期待していたのは本当なのでここは正直に言っておく。
「それじゃ、行きましょうか!」
「あ、あぁ」
俺はココナに手を引かれながら部屋を出る。
気になることも多いが、今はココナと一緒に楽しむことに集中しておこう。
「で、ココナ今日はどこに行くんだ?」
「んー特に決めていない」
「なんだよそれ……」
「まぁその辺ブラブラしよう」
まぁ、それも悪くないかもしれないな。
「なら、普段あんまりいかないような場所にいきたいかな?」
「普段あまり行かない場所か……」
考える素振りをする。
そして、何かを思いついたのかパンッと手を叩く。
「それなら、お金持ちが住んでいる場所にまた行こうか?」
「え? またアリア様に用事でもあるのか?」
「違う違う。この前は最強の騎士様に会いに行くためにお邪魔したけど、今回はその周辺を歩こうってこと」
なるほど。確かにアリア様のお屋敷というか、仮のお屋敷? みたいな所に一直線に向かったから、あまりあの辺周辺はちゃんと見れていないんだよな。
「あの辺意外とお屋敷とか多い様に思うかもしれないけど、意外とお店多いから」
「へーなら普段見たことないような物とかありそうだな」
「そうだね。結構高級な物を取り揃えてるお店もあるし、見るだけならタダだから、飽きないと思うよ」
確かに普段見る事の出来な物を見れるのは良いと思うが、でもそれって冷やかしなのではないのか?
――まぁいいか。
「それじゃ行ってみようか」
「うん。行こう!」
俺たちは貴族が多く住む場所に向かう。
☆☆☆
さて……到着したのは良いが、何故かちょっと騒がしいな。
「なんか騒がしくないか?」
「そうだね。それに皆ピリピリしてる」
辺りを見渡してみる。
するとあちこちに憲兵がいるのが見受けられた。
これは――何かあったな。
「やたら憲兵が多いな」
「そうだね……」
ふとココナの方を見ていると険しい顔をしていた。
「ココナ?」
「何かどんどん憲兵の数多くなってきてない?」
「え?」
俺は改めて周りを見渡す。
確かにどんどん増えていってる気がする。
そういえばこの辺って――
「この辺確か姫様の近く……」
どうやらココナも気が付いたみたいだ。
そう――この辺はアリア様の屋敷の近くなのだ、そして、屋敷が近づくにつれて憲兵の数が多くなっている。
まるで、何かから守る様に憲兵が配置されている。
「なぁココナもしかして……」
「カエデ君ちょっとだけ寄り道してもいい?」
「え? あぁもちろん構わない」
その言葉を合図にココナは走り出した。
俺も急いでその後ろを追いかける。
「ていうか、ココナ足速い!?」
ココナが足速いのはわかっていた。
しかし、俺もそれなりに鍛えてきたのだ、もう少しくらい近づけても良いと思う。
だが、距離が離されるばかりで追いつける気配が全くしない。
「俺もまだまだかもな」
とりあえず、今は俺の全速力で目的地に向かうとしよう。
アリア様の屋敷に――
☆☆☆
「はぁはぁはぁはぁ……着いた」
「……」
アリア様の屋敷に到着した。
そして、俺は全速力で走っていたため、息が乱れている。
それに比べてココナは息一つ乱さず、アリア様の屋敷を見つめている。
辺りには、やはり憲兵が数多く配置されていた。
やはり予想通り、この屋敷を守るために配置されていたようだ。
何故この屋敷を守るように憲兵が配置されてるのかわからない。
だけど、ただ事ではないのは確かだろう。
「来たのは良いがどうするんだ?」
「……姫様にまず会おう」
「わかった」
俺たちはアリア様の屋敷入ろうとすると――
「止まれ!」
門の前に居た憲兵に止められる。
「お前たちここに何の用だ?」
「えっと俺たちは……」
ちらりとココナを見る。
こういう時、真っ先に対応してくれるのがココナなのだが、今回は全く対応する様子を見せない。
アリア様の事が心配で頭が回っていないのかもしれない。
なら、いつも頼ってばっかりだったが、今回は俺が対応するか。
「俺たちはアリア様の友人です」
「友人?」
「ええ、ここを通りかかったのはたまたまなのですが、アリア様の屋敷に憲兵さん達がいらっしゃるので、それで気になってしまって」
「ふむ……」
目の前の憲兵がもう一人の憲兵に目配せする。
その意図を汲み取ったもう一人の憲兵が屋敷の中に入る。
「しばらくここで待て」
「はい」
「……」
ココナは無言だった。
本当にどうしたのだろう?
それから、一分くらいして、屋敷の方から人が出てくる。
「あ。あの人は」
奥から現れたのはアランさんだった。
よかったこれなら通してくれそうだ。
「お手数おかけしますアラン隊長。この者達が、アリア様のご友人だと申していますがいかがでしょう?」
「……」
アランさんは俺たちをじっと見つめる。
え? なんですぐに答えてくれないんだ?
「アラン隊長?」
「あぁ済まない。そうだな、そっちの女性はアリア様のご友人で間違いない」
「え……?」
俺が言葉に発するよりも早くココナが反応する。
ココナが何で反応したのか気になるが、今はそれよりも友人がココナだけ?
え? じゃあ俺は?
「では、この男の方は?」
「友人ではない。ついこの前初めて会ったばかりの者だ。だからこの者だけは入れるな」
まぁ確かにこの前会ったばかりだもんな、入れてくれって方がどうかしているか。
「そちらの女性だけ入れて構わん。そっちの男は絶対に入れるな」
「は! 了解しました!!」
まぁ仕方ないな。
そう思いココナの方を見る。すると、俺の顔を見ていたのかココナと目が合った。
その顔は申し訳なさそうな表情に寂しさが混じっているように思えた。
だから、俺は優しく微笑み。口を動かす。
「ココナ。どうやら俺は入れて貰えないみたいだから、あとでどういう状況になってたのか教えてくれ」
「……」
ココナはこちらを見つめているが返事が無い。
再び口を動かし喉を鳴らす。
「ココナ?」
優しく。まるで怯えている動物に『大丈夫だよ』と言うかの様に。
「……わかった。それじゃあここで外で待ってて?」
「あぁわかった」
「本当に待っててね? どこかに勝手に行ったら嫌だよ?」
「わかったから。どこにもいかない。ここで待ってるからアリア様に会ってきな」
「うん!」
ココナはアリア様の屋敷の門を潜り、アランさんの後ろについていく形で屋敷に入っていった。
「さて、俺は入れて貰えないし。この場所からは、なるべく離れないようにしないといけないしな」
本来の目的だったこの周辺をブラブラするのは、ココナが戻ってきた時にするとして、戻ってくるまで何をするか――
「ん?」
あそこに居る人って――リリー?
間違いない。あの綺麗なロングの銀髪はリリーだ。
「どうするか……声を掛けるべきか?」
だが、前はひどい目にあったしな。
結構悩むところ。
そんな風に悩んでいると、不意にこっちに顔を向けられる。
「あ」
こちらを見るとニコッとと笑った。
流石に無視するわけにはいかないよな……行くか。
仕方なく俺はリリーの元に行く
「えっと……こんにちは」
「こんにちは」
「こんなところで何してるんだ?」
「私ですか? 私は散歩です。カエデさんこそ、こんなところで何をなさっているのですか?」
「まぁ、俺もココナと一緒に散歩していたところだ」
「ほう? ではココナさんはどちらに?」
「まぁ……色々あってな」
「色々ですか……」
こちらの顔を真顔でジッと見つめてくる。
その瞳を見ていると、まるで全てを見透かされてしまうような感じがする。
「まぁココナさんがあの屋敷に入られたのをずっと見ていたので、隠さなくてもいいですよ?」
「じゃあ聞くなよ」
「ふふふ。貴方がどうお答えになるのか興味ありましたから」
随分と悪趣味だな。
「しかし、何故貴方も着いていかなかったのですか?」
「俺は門前払いだよ」
「……それは何故ですか?」
「俺は最近ここの主と初めて会ったんだ。見た感じ只事ならない事が起こったんだろうから、この前会ったばかりの俺なんか入れないよ」
「なるほど。ですが、カエデさんは気になったりはしないのですか?」
「そりゃー気にはなるが……入れてもらえない以上しょうがないだろ」
「そうですね。まぁ私なら門にいる憲兵を殺してでも入りますが」
憲兵があちこちにいるんだから、あまり物騒な事は言わないで欲しい。
「おいおい。そんな事したら憲兵全員から狙われるぞ」
「返り討ちにします」
実際にリリーなら返り討ちにできそうだから困る。
「それで」
「はい?」
「本当はなんでこんなとこに居たんだ?」
「あら、流石に嘘だとバレてましたか」
「そりゃ……な」
仮に散歩していたとしても、こんな憲兵だらけの所に長居はしたくないだろう。
「本音を言いますと、私この事件に少し興味がありまして」
「いや、事件とは誰も言ってないと思うのだが」
だけど、実際に何かあったのは確かだろうな。
それが、どんな事なのかはわからないが――
「そうですね。でも、何かあったからあんなに憲兵さん達が、いらっしゃるのではないのですか?」
「まぁそうかもしれないが」
「何よりあれだけ、憲兵さん達が囲んでいるのは異常ですよね?」
「まぁ確かに異常だな」
異常――確かに異常だ。
これだけ、憲兵がいるのはおかしい。
そして、憲兵とは俺が転生する前で言うところの警察だ。
つまり警察がこれほど集まる状況――つまり、殺人事件関連かもしれない。
ちなみに俺が殺人事件関連だと思ったのは、この町で殺人事件が頻繁に起こっているからという事と、貴族が狙われる事が多いと言われているからだ。
「これだけ憲兵多い理由、何か予想できるのか?」
「えぇ……予想はできてますよ?」
「じゃあその予想を聞いても良いか?」
「ええ構いませんよ。といっても単純な予想ですが……」
「それでもかまわないさ」
「では……まず一つはここの主が殺されてしまった」
つまりアリア様が殺されてしまった可能性の話だな。
「二つ目は殺人予告が来たとかですかね?」
なるほど、一番可能性があるな。
それならば、常に周りに憲兵がいるのも納得できる。
「なるほどな、なんだかそれが一番可能性高そうだな」
「え? ここの主が殺されたがですか?」
「いや、違う。二番目の殺人予告が来たって方だ」
「あら、そうでしたか」
フフフっとおしとやかに笑う。
「……リリー、ワザと言っているだろ?」
「ええ? もちろんです」
なんでそんなに満面の笑みなんだ。
まぁ良いか――
それから、俺たちは他愛のない会話を繰り広げていた。
☆☆☆
「予想より、長くお話してしまったみたいですね」
「え?」
「彼女が戻ってきましたよ?」
俺は何のことかと思い、リリーの目線の先に目を向ける。
するとココナが屋敷から出てきて歩いている姿が見えた。
「あ。もうそんなに経ったのか?」
「ええ、本日のお話は結構楽しかったですよ?」
「あ、あぁ俺も結構楽しかった。少し前に殺されかけたとは思えないよ」
「フフフ。あの時は本気で殺そうかとも思っていたのですが、まぁ気が変わりましたので、今は殺しません」
「本当か?」
「本当です。正直におっしゃいますと、少し貴方に興味が出てきましたカエデさん?」
「は?」
俺に興味が出てきた?
なんだかすごく怖いのだが――
まぁわかることは、おそらく恋愛的意味ではないだろう。
「リリーに興味を持たれるなんて、なんか怖いのだが」
「フフッ。別に怖がらなくて良いですよ? どうですか? カエデさん貴方も私達と――おや?」
ふとリリーが何かを言いかけて止める。
そして、見ている方へ見てみるとココナがこちらを睨んでいる――いや、正しくはリリーを睨んでいるようだ。
「どうやら、私はお邪魔みたいですね。それではカエデさん失礼します」
「あ、あぁじゃあな」
そして、リリーはゆっくりと歩いて行った。
「本当に何から何まで、よくわからないやつだな」
とりあえず、ココナがこちらに歩いてきているから、俺もココナの元に行くとするか。
「おかえり、どうだった?」
「うん。色々話す事があるけど、その前に聞きたい事があるんだけど?」
「ん? なんだ?」
ココナは少しだけ間を開けると、口を開いた。
「何でアイツと一緒に居たの?」
「え?」
アイツ――とはリリーの事だろう。
「いや、たまたま会ってな。それで雑談をしていた」
なんで一緒に居たかと言われれば、そう答えるしかできない。
「ふーんそうなんだ。でも前殺されそうになっていたのに、良く雑談なんてできたね?」
「まぁ俺も最初は話しかけようか悩んでいたんだが、目が合ってしまってな」
「それで無視するわけにいかなくなったってこと?」
「まぁそんなところ」
あのまま、こちらに振り向かなければ俺は話掛けたりはしなかっただろうな。
もしかしたらリリーはそれを見越してワザと振り向いたのかもしれない。
リリーの実力なら、気配とかで誰かを判別することも可能かもしれないし。
「それにリリーは今は殺すつもりは無いと言っていたぞ?」
「はぁ? カエデ君それは本気で言っているの?」
「え? まぁ……普通は信じられないよな」
「うん」
「まぁ俺も信じているわけではない。でも嘘って感じもしないんだよ」
「へー、なんで?」
「リリーは確かに人を煽ったり、見下している節はある。だけど、彼女は嘘はそこまでつかないと思う」
「ふーん」
目を細め俺の顔を見てくる。
俺はその視線に苦笑いしつつ。言葉を続ける。
「それにリリーは俺に興味が出たと言っていたから殺さないって。だから、もし殺すなら俺から興味をなくした時なんじゃないかと」
「なるほどね。だけど、それ自体が嘘かもしれないよ?」
「リリーがわざわざ意味のない嘘つくかな?」
「……そうね。アイツは嘘を平気でつくとは思うけど。意味のない嘘はつかないかも」
そう――リリーは嘘はつくと思う。
しかし、格下であり能力も足元にも及ばない俺に、わざわざそんな嘘をつく意味がない。
「まぁそういうわけだから、一応信じる事にした」
「わかった。それで他には何か言われたりしてない?」
「特には――いや」
「何か言われたの?」
「何か言いかけてたんだよな。でもココナに睨まれてそのまま何も言わずに去っていった」
「何かって何を言っていたの?」
「いや。だから何かわからないんだって。ただ……なんか私達とっとは言ってた」
瞬間――ココナの周りの雰囲気が変わった。
なんか怖い――
というか、怒っているような感じがする。
「ココナ?」
「私達ってもしかしてカエデ君も――と? そんな――合わせられない」
小さく途切れ途切れにしか聞こえないが
ココナは何かをブツブツと呟いている。
「ココナ?」
「あ――ごめん。なんだっけ?」
俺は少し苦笑いしながらも、喉を鳴らした。
「さっきからブツブツ何か言っていたけど、何かリリーが言いたかった事に、心当たりあるのか?」
「……ううん。ないよ」
少し間があったのが気になったが、本人は「ない」と言っているのだから、これ以上突っ込むのはやめた方がいいな。
「そうか」
「うん。ごめんね。でも、アイツは危険なやつだから。何言われても気にしない方がいいよ」
「……わかった。ところで、アリア様はどうだった?」
そろそろこの話題は変えた方がいいと判断したため、アリア様の事を聞くことにした。
なんだかんだ、気になっていたことだから。
「一応無事だった」
「一応なんだな」
「うん。どうやら、姫様に殺人予告が届いたみたい」
リリーが予想していた通りだったという事か。
「その殺人予告にはなんと書いていたんだ?」
「今夜アリア・レイチェルを殺害する。その一文だけ書いてある紙が送られてきたみたい」
殺害予告か――
だからあれだけの憲兵が周りを囲んでいるんだな。
帝都の姫の命が狙われているなんて大事件だ。
しかしこの殺人予告してきた奴も、どういった理由でアリア様に脅迫状送ったのか、そのあたりはわからないが、アリア様に殺人予告送った時点でもう取り返しはつかないだろう。
彼女は帝都のお姫様だ、そんな人物に殺人予告を送りつけるなんて捕まれば牢屋に何年も入れられる事が確定している。
そして、殺害を実行すれば最悪即死刑なんてこともあり得る。
「アリア様はどうだった? やっぱり怯えていたか?」
「そうね、カエデ君は姫様とは一度しか会ったこと無いから、知らないだろうけど、あの子、ああ見えて結構強いんだよ?」
「そうか」
「ん? なんだかあんまり驚いてないね」
「まぁな」
アリア様が強い子だっていうのはなんとなく察していた。
初めて出会って、そしてココナが帰ると言い出した時の、悲しい表情からの切り替えの早さ。
あの時も思ったが、あの切り替えの早さは普段から無理に笑顔を作っているから。
だとすれば、どんなに悲しい事が辛いことがあろうと、笑顔を作って来たという事だ。
そんな子が強くないわけがない。
「あ。それと姫様がカエデ君に会いたがっていたよ」
「え? アリア様が?」
「そう、今日は一緒じゃないんですか? とかまたお会いしたいとか言ってたよ」
本当は一緒に居たんだがな。
一緒に入れてもらえなかったのだから仕方がない。
「で、ココナはなんて言ったんだ?」
「んー、あの騎士様にはムカついていたんから、正直に話しても良かったんけど、そこは抑えた」
「正しい判断だと思う」
まぁ俺だけ入れてもらえないくらい、大した問題にはならないが、やはりアリア様に迷惑を掛ける真似だけは控えた方がいいだろう。
何より、アランさんの判断は何も間違っていないのだから。
「まぁ、良くはないが、実際に襲われたわけじゃな無くて良かった」
「そうだね」
さて――知りたい事も知ることができたわけだし、本来の目的を再開してもいいかもな。
「ココナ」
「ん?」
「この辺見て回るか」
「え? でも……」
「本来はそういう目的でここに来ただろ? 確かにアリア様も心配ではあるが、今考えてもしかたないさ」
俺も別にアリア様が心配じゃないわけではない。
しかしここで考えたって、どうにもできないのだ。できる事は一応あるが、それは予告を送りつけてきた犯人を捕まえる事。
しかしその目星もたっていない。
それどころか、俺やココナでどうにかなる相手かもわからない。
まぁ、ココナはどうにかできそうな気もするが。
「ほら、行くぞ?」
「う、うん」
俺はココナの手を取って歩き出す。
いつもなら、ココナがこの役なのだが、今の状態ではそんな元気もないのだろう。
だから、俺が代わりにリードしてやらないとな。
「ありがとう」
「なんだ急に?」
「ううん。ただお礼を言いたくなっただけ」
「そうか」




