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32.防衛戦開始

 それは俺がラインアルストに帰ってきてから十日経った朝のことだった。

 数分前から何か騒がしい気がした。最近は町外に避難する者やギルドメンバーが一日中動いているため、そんなもんだろうと思いながら歯を磨いていた時の事だ。どんどんと部屋のドアを叩く音がした。


「ジュンイチ!」


 開けてみればレオだ。俺より先に起床し、食堂に行っていたのだろう。

 息を切らしてここまで走ってきた様子の彼は、


「大変だよ!」


「どうした?」


「魔物だよ! とにかく支部に!」


「!」


 もう来てしまったのか。

 昨夜までの話ではまだラインベルニカからの応援は届いていなかった。そもそもラインベルニカからここまでは約二千キロ。俺のヴィエラでも一週間近くはかかる。

 ラインベルニカへの救援要請を持った使者が先月末に出発したことを考えると、どう考えても間に合わない。集団での移動となれば遅れも出るし、おそらく早く見積もってもあと一週間は必要だろう。だが、魔物は来てしまった。


「この町の人間だけでどうにかするしかないのか……!?」


 レオとともにギルド支部に行って見れば、フロントは人でごった返していた。


「うわ、すごい」


「この様子だとミストさんが緊急招集かけたみたいだな」


 先ほどから鳴っている鐘がそれだろう。町中に響いている。


「ジュンイチ、ミストさんが来た」


 見れば、ミストがケインを伴って支部長室からこちらに歩いてくるのが見えた。

 彼女達はフロントに集まったメンバーたちを前に台に上る。


「――先に、事実だけを述べます。三十分ほど前、北の観測チームが町まで撤退してきました。理由はガルフの集団の接近。報告では、おそらく二時間以内に先頭集団が町に着くだろう、と」


 メンバーがざわめく。いきなりの展開だ。昨日まで徐々に南下はしてきていたが、予想ではまだラインアルストまでは来ないはずだった。

 何故急に、という声が周囲から上がる。


「静かに! どうして魔物が南下を進めてきたのか、魔物の総数などは現時点では詳細不明です。ですが、こうなっては我々もそれ相応の対応をしなければなりません。……ケイン」


 ミストに促され、ケインが一歩前に出る。


「あー、現状はそういうことになっている。俺からは各ランクの役割を発表する――」


 それから数分間、各々の役割が発表される。内訳としてはこうだ。

 ランクDの十七名の内、四名をミストの補助、その他を遊撃手。

 ランクEは三名、またはニ名でチームを組み、ガルフの討伐にあたる。

 ランクFの中でもある程度の戦闘ができる数名は前線での補助、出来ない者は住民の避難誘導にあたる。

 姿が確認されていないキメラを発見した場合、全員に配布された彩光弾と同じ使い方ができる魔法弾を打ち上げて居場所を知らせる。

 それをミストたちが急行、討伐すると言う流れだ。

 


●●●



「……こんなもんかな?」


 各々のランクに別れ、個人の仕事を伝えられた後、俺は町のやや南側、避難所にいた。

 周りを見てみれば、俺と同じランクFのメンバーや住民からの有志が働いている。女達が料理をし、男達はと言えば、資材運びやテント設営だ。


 そんな中、俺は何をしているかといえば、ご婦人方にまじって料理をしている。味見をしてみれば、なかなかどうしていける味だ。

 一人暮らしの経験が役に立った。一時期、料理が出来る男子はモテる、なんて言われてたこともあったが、そんなことなかったなそういえば。

 俺個人としては魔物との戦闘経験もあったので、前線支援に配置されても良かったのだが、リーシャ以外はラインマインズでのことを知らないからか、後方にまわされたのだ。

 だが、考えてみればどちらにしろ危険ではある。

 誰も声に出して言わないが、仮に前線が突破された場合、俺達で住民を守り逃げなければならない。

 とは言え、ここにいる人間で魔物とまともに戦えそうなのは俺だけだ。それは武装の面もあるが、経験が違う。

 俺は既にガルフを始めとして、それなりの戦闘をしてきた。もちろん魔物と戦うのは怖いが、身体が竦むようなことにはならないだろう。

 だが、他の者はどうか。周囲、見知ったギルドメンバーを見る限り、武器は持っているが、雑務や採集などで実戦をしたことがないという面々ばかりだ。最悪、俺が中心になって戦うようなこともあるかもしれない。

 そうならなければよい、と思いながらも、覚悟は必要だ。

 ――せっかく拾ってきた魔石も全部使う必要があるかもな……。

 対魔物用戦闘ロボット、なんて作った時にはヴィエラ以上に魔力消費しそうだ。あれだけ採って来た魔石でも足りるかどうか。

 そもそも前線が壊滅ということはリーシャやレオたちも……。

 不安になる。やはり無駄に想像はしないほうがいいだろう。


「……よし! 考えないようにしよう」


 今やらなければならないのは住民のケア、前線への食料支援などだろう。


「ジュンイチー! こっちも手伝ってくれ!」


 料理を丁度終えたタイミングで知り合いが声をかけてきた。


「おう、今行く――」


 その瞬間、北の空に光が上がった。


「あれは……!」


 戦闘開始の知らせだ。魔物が、ラインアルストの北部に築かれた簡易防衛線に届いたのだ。

短めですが、こんな感じで

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