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13 仮装パーティ

 暗めの照明にノリのいい音楽。

 中央のステージでは扇情的な格好の女性が思い思いに踊っている。そんな女性達を眺めながらリズムにのっている男達の格好が、いささかおかしい。


 ある者は頭に角が付いていたり、ある者はまるで一騎当千の武将の様な格好をしていたり、服装にも季節感などまるでない。


 そしてロングヘアに狐耳を付けた、男のくせに色々愛らしい立花たちばなの目の前には、ウエーブの掛かった白髪に羊の角についた爽やかイケメン、海棠かいどうが居る。


「何の格好?」

「悪魔紳士だって……」

 うんざりした様子の海棠の瞳はカラコンのせいで赤い。

「どこら辺が紳士?」

「この服だろ?」

 海棠が着ているのは妙にレースやら刺繍のついた仮面舞踏会のような服だ。残念ながら紳士と執事の区別がつかない立花には、とても紳士には思えない。


「う〜ん。なんか微妙な気がする……」

 別に似合わないとまでは言わないが、海棠がきちんとした服装をしていると違和感がある。普段適当に着崩した格好を見慣れているせいかもしれないが。


「そりゃあ、お前に比べたら誰だって似合わないよ」

「うっ……」

 立花は狐耳に狐の尻尾を付けた完全装備だ。耳も尻尾も大きめなのが小動物感を強調している。しかも耳は先の方が重くなっているのか、立花が頭を動かす度に大きく揺れる。今はうつむいているのでお耳がペタンと伏せた形になっており、大変可愛らしい。


「お前の隊の人ほとんど狐なのな」

「俺のせいで申し訳ない……」

「まあ、俺よりいいんじゃない? てか隊長に合わせるなら俺も爺いみたいな作務衣さむえが良かったわ……」

「今日は老師、ヒゲの仙人の格好だよ?」

「はぁ? ノリノリじゃね〜か……」



 何故こんなコスプレをみんなしているのかと言えば、時は数ヶ月前に遡る。


 ここレオモレアでは王が急逝してしまい、王族に次ぐ地位にいる二人の将軍の、王の座を巡っての争いが佳境を迎え、数々の嫌がらせと、”他国のお偉方と勝手に縁組しちゃうぞ攻撃”の結果ついに首席将軍が桐生に宣戦布告し、間も無く開戦の運びとなり、今は戦勝祈願の激励会兼決起集会が行われている。



 集会なら普通に宴会でもすればいいのだが、残念ながら桐生は普通ではなかった。戦に先駆けて新しく入隊した新顔の為に自己紹介を兼ねてキャラに合わせた仮装をしようと言い出した結果がこれである。


 桐生の思いつきの為に衣装を調達したり、無い物は作ったりしていた立花は、女装させられたらどうしようと密かに怯えていたが、出てきたのは狐耳だった。

 他の色々な、例えば猿の被り物やレスラーの様な格好や、全身タイツのヒーローの様なものを着させられている人と比べればだいぶマシだ。立花一人なら。


 新顔のコスプレを作れるほどキャラクターを把握できていなかった立花は、二〇才の立花より一回りほど年上の大人達を、”イカツイ狐耳のあんちゃんの集団にする”という惨事を引き起こしてしまった。色々な方面に申し訳ないと立花は思う。



「じゃあ、立花。俺行くけど、絶対に飲み過ぎるなよ!」

「はい!」

 立花は素直に返事をする。海棠は心配そうな顔をしながら人混みに紛れていく。顔の広い海棠と違って友達の少ない立花は宴会では暇だ。忠告に従って隅っこで大人しく飲んでいようと思っていた。

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