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「これで何回目だというのかしら」
三年間通った王立グラウトゥリー学園卒業後に眠りにつくと、入学式の日に目を覚ます。これをルイーズ・ドルトレットは幾度となく繰り返している。
本来ならば寮生活が規則である学園での初めての目覚めであり見慣れない天井に少しばかりの不安を抱いたはずの景色は見飽きて辟易する景色となり下がりまた繰り返すのかと不満を込めてポツリとルイーズはこぼしてた。
「ちょうど1000回の回帰をしたから、1001回目の学園生活になるな。」
答えが知りたかった訳でもなく、返ってくるとも思っていなかった返答にルイーズが困惑し起き上がると部屋の入口付近にあるソファで寛ぎにこやかにルイーズを見ている少年がそこにはいた。
「おはよう。そして初めまして、俺の愛し子ルイーズ」
何度も繰り返してきた同じはずの朝に突如現れた見知らぬ少年に戸惑い声も出せずにいるルイーズを気にする素振りもなく少年がするには似つかわしくない親が子に向ける様な愛おし気な顔で少年は言葉を続ける。
「俺様は運命神アキュトスそして今回のお前の弟ルドイズ・ドルトレットだ」
「なっ……な、にを言っているの?」
ルイーズは混乱している頭でなんとか言葉を発するが少年は全く意に介する様子はない。
「ふはは、まぁ叫ばないだけましだが千回も同じ時を繰り返しているというのに順応性が無いというか理解力が無いというか何とも愚かで愛らしいなルイーズよ」
「何なのよ貴方!私を馬鹿にしているの!?勝手に部屋に入って意味の分からない事言って頭おかしいんじゃなくて!幼いからってドルトレット公爵家令嬢ルイーズ・ドルトレットを侮辱することは許さなくってよ!!リリアン!侵入者よ!今すぐ来なさいリリアン!!」
愚かと評され馬鹿にされたと思ったルイーズは怒鳴りながら既に起きて身支度をしているはずの専属侍女リリアンを呼びつける。だが本来なら呼べばすぐに駆け付けるはずのリリアンはいくらルイーズが呼んでも部屋に来ることはなかった。
少年は騒がれようとも慈愛の満ちた表情のままでいる。
「まったく……そんなだから何回も回帰する事になるんだぞ。リリアンはいくら呼んでも来ないから大人しく話を聞きたまえ。」
「どういう事よ!?リアにいったい何をしたの!リアに何かあったらただじゃおかないわ!」
「リリアンには何もしていない。まさかここまで執着するとは思わなかったな。」
「なっ、しゅ、しゅ、執着じゃないわよ!大切なゆっ友人になっただけよ!」
学園生活を繰り返す前はリリアンの名前をルイーズは知らなかった。何度繰り返したのかも忘れ、婚約破棄されることも繰り返す事もどうでもよくなり何をやっても変わらない結末に気力もなくした頃にリリアンとは親しくなるようになった。
考えつく様々な行動を全て行い何もすることがなくなったと思っていた学園生活で初めて知った、回帰がはじまってから最も近くでルイーズと過ごしていた人間の知ろうと思えばいつでも知り得たが自ら知ろうとする事はなかった専属侍女の名前は、まだやれることがあるという希望にルイーズには思えたのだ。だからルイーズはそれからリリアンとは毎回親しくなり、天井は見飽きて辟易するようになったがリリアンから毎回言われる言葉には安らぎと活力を得ていた。
「惨たらしい死439回、内密に始末されたのが217回、侘びしく死んでいったのが162回、他にも後悔や怨念の執念をもった細やかな死181回これが今までの結果だ。」
「ちょっと!なんなのよ結果って!私は今まで三回しか死んでいないわよ!」
「その三回は行動を修正させるために仕方なく経験させたにしか過ぎない。でなければお前は同じことを繰り返しさらに無情の死を迎えていたからな。死を起点に繰り返していてはここまで耐えられなかっただろう?」
実際にルイーズは死んで回帰した時、どんなに満足していた状態からの回帰よりも自暴自棄になり死という終わりの悲壮感に苛まれていた。
「……だとしても毎回そんな死に方してるわけないわ!どうして貴方にそんなことが分かるというのよ!」
第二王子との婚約はルイーズにとって既にどうでもいい事だ。だから第二王子が聖女と謳われる少女と結ばれる事を望むのならば自ら身を引いたし祝福もした。貴族である事も贅を尽くす事にも固執しなくなりルイーズはただ、回帰する事がない事を望んでいる。そうやって繰り返す中には確かに未来に夢を見て明日の目覚めに心躍りながら眠りに就いた時もあったのだ。その終わりすらも無情の死を迎えていたなど到底ルイーズは信じる事ができない。
「言ったはずだが?俺は運命神、未来・現在・過去そのすべてが俺の物だ。つまり、お前の行動の結果を俺は知る事ができる。」
「そんなの、信じられるわけないわ。」
「ふむ。まぁ、お前が信じようと信じまいと真実は変わらないから話を進めようか。」
「なっ!あなっっっ……!!!!????」
ルイーズは気に食わないと文句を言おうとしたが少年が制止するように掌をかざすと言葉が発せなくなってしまう。そして急に話せなくなり混乱するルイーズを意に介すことなく少年は話始める。
「俺としては、お前が幸福な終わりを迎えるまで回帰させる気だったのだが他の者共がうるさくてな、どんな結果になろうとも今回が最後だ。」
永遠に続くのではないかと恐怖すらしていた回帰が終わりだと聞き、ルイーズは喜びに少年に顔を向けたが少年を視界に捉えると「無情の死を毎回迎えていた」と言われた事が脳裏によぎり一瞬にして表情に影を落とす。
「そう気を落とす必要はない。やる事は決まっているのだ。ドルトレット公爵家当主となり幸福の中で最後を迎える。そして、そのために俺様が弟として共に学園生活を過ごしてやるのだ!」
「……」
「ふははは!感激して声もでないか!お前は愛し子だからな祈りを捧げる必要もないぞ。……何か言わぬのか?」
「……」
少年によって話せない状態のルイーズはただ困惑し、上機嫌に話す少年を不安交じりの目で睨みつけるしかできない。
「ん?あぁそうか、俺が黙らせていたんだったな。さぁ、もう喋っていいぞ!思う存分喜びを伝えよ!」
「ふっざけんじゃないわよ!!」
「ぐふっ!?」
言葉が発せられるようになったルイーズは怒りを露わに少年に枕を力任せに投げつけた。
「私はっ!やり直したいなんて、…当主になりたいなんて事も、一度も祈った事はないわ!」
「では、リリアンを殺せ。あれは公爵家の物だし壊しても問題になることはないだろ。」
感情のままに投げつけた言葉に返ってきたのは、少年の口から発せられているとは思えない冷淡な声で告げられる残酷な言葉だった。




