それじゃあ、一丁やるか
この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻発売中です。
そして、『この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』原作ベースのコミカライズがシーモア様で先行配信となっております。
興味のある方は、是非どうぞ!
「では、この場における役割の分担がまとまったところで、早速行動に移ろう」
復活された学院長様が私達に向かって声をかけてきた。
というか学院長様。役割は決まりましたが、場は全くまとまっていないような気がするのですが……って、え?「いつもの事でしょう?」ですか。
確かに、場がとっちらかったら誰かが強引に締めるというこの状況、いつも通りですね。
「アシュル。私はこの場に残り、ディラン達の補佐に加わる。このような老骨の身ではあるが、彼らにとっての多少の助けにはなろう」
学院長様のお言葉に、アシュル様は胸に手を当て、頭を垂れた。
「……分かりました、大叔父上。どうか、この場に残る者達へのお力添えをお願いいたします」
アシュル様のお言葉の通り、学院長様がこの場に残って共に戦ってくれる事は、ディーさん達にとって本当に心強いに違いない。
……でもね、学院長様。
普通の老骨の方は、『溶解』を司る『魔眼』なんて厄介過ぎるものを、一瞬とはいえ封じたり出来ません。どうか自分を誇ってください。
「有難う、エレノア嬢……いや、『聖女』様。私の可愛い子供達を、どうかお願いいたします」
「はい!私の持てる力でもって、全力で頑張ります!」
そして流石は学院長様。オリヴァー兄様のスキル『心眼』を完璧に会得されましたね!?
「いや、エレノア。んなもん会得しなくても、お前の心の声ってすぐ顔に出るから読みやすいんだよ」
「お黙りください、クライヴ兄様!!」
まったくもう!貴方って人は、愛する妹への忖度ってものが無いのですか!?……え?無い?酷いや兄様!!
――まあ、それはさておき。ここに残って戦う彼らの為に、私も『聖女』らしい事をしなくては!
決意を新たに、私はその場で両膝を突き、両手を組んでスッと瞼を閉じた。
『女神様。私の祈りをお聞き届けください。この場に残る彼らに、どうか貴女様の加護を……!!』
私達を見守ってくださる女神様へと、心の底から深く祈りを捧げる。すると、あちらこちらから息を呑むような声が聞こえてきた。
『……?』
どうしたのだろうかと、閉じていた瞼をゆっくり開けてみる。すると、兄様達やアシュル様方を含めたその場の人達が全員、呆然とした表情を浮かべながら、自分の掌や身体を見つめていた。
『……え!?』
しかも私の目の錯覚でなければ、彼らの身体がうっすらと発光しているように見えるんですけど!?
「……聖女様!!」
「ひゃっ!!」
一瞬後。アシュル様方隠れ婚約者(もう隠れてないけど)を含めた私の婚約者達(+マテオ)以外の全員が、私に向かって一斉にその場で片膝を突き、祈りを捧げだした。あっ!イーサンが滂沱の涙を流している!!い、一体これは何事!?
「いや、エレノア。実はね……」
オリヴァー兄様曰く、どうやら祈ってた私の足元からは、いつものペンポポスミレではなく、黄金の蔓が次々と芽吹き出すと、その場に居たアルバ王国の人達全ての身体に優しく絡み付いた。そして蔓は金色の光の粒へと姿を変え、そのまま彼らの身体の中に溶けるように消えていったのだそうだ。
「ああ……っ!!聖女様の御力が私達の中に……!!」
「なんたる至福!!なんたる僥倖!!」
「あの感触……!!まるで、優しくも力強い御手で抱き締められているかのようだった……!!」
「この得難き一体感……!!今この場で果てても悔いはない……!!」
祈っている人達全員、口々にそう呟きながら、まるで夢に浮かれているようなウットリとした表情を浮かべている。
というか皆さん、言い方が微妙にエロ……じゃなくて、アレな感じですよね!?しかも、なまじ顔面偏差値が高すぎるがゆえに、その破壊力たるや臨界事故級!!
まあ幸か不幸か、それどころではない緊迫した状況なので、その熱量のこもった視線が全身にビシバシ集中砲火されても「くっ!なんという暴挙!」だけで済んでいる。でも平常時にこれやられたら、間違いなく鼻腔内毛細血管が決壊し、命の危機に瀕する事態になっていたに違いない。
「エレノア……。君もアルバの女性なら、『私の慈悲を勘違いするな愚民。不快な視線を寄越していないで、とっとと散れ!』ぐらい言えるようにならなくてはいけないよ?」
青筋を立てたオリヴァー兄様のお言葉に、他の婚約者の皆様も青筋立てながら深く頷いている。
だけど皆さん、ちょっとお待ちになって!そんな事を言えるようなメンタルが欠片でもあったら、度々出血多量で召されるような事態になんてなっていませんから!!
『というか、この集団崇拝の中に、マロウ先生とヒューさんがシレッと混ざっているんですけど!?』
お気を確かに!!マロウ先生は通常運転だけど、ヒューさんって、そういうタイプではなかったですよね!?
「……エル。お前と奴が初めて出逢った時の事を思い出せ。ヒューの奴、お前にマシュマロを食わせて悦に浸ってやがっただろう?」
「え?悦に浸っていたって……。ヒューさんって、子供好きなんだなーとしか思っていませんでしたが……」
「いや。あいつ、お前が女の子だと知っていてアレやってたんだ」
なんですと!?……って事はひょっとして、ヒューさんってばロ●コン?あっ!ディーさんが真面目な顔でコクリと頷いた!!
「ああ。ようはそういう事……って、うぉっ!!」
あっ!!ヒューさんが振り下ろした暗器を、間一髪でディーさんが避けた!!
「あ、あっぶねーな!!なにしてやがんだヒュー!!」
「それはこちらの台詞ですよ、ディラン殿下。あんたエル君に何訳の分からん事吹き込んでんですか。ひょっとして、あの騎士とやり合う前に私の手でぶっ殺されたいんですか?」
おおっ!ヒューさんのこめかみに、でっかい青筋が!!
「ディラン兄上、空気を読みなよ。人間、本当の事を言われたら腹が立つものなんだからさ」
ああっ!!フィン様のお言葉を受け、ヒューさんの青筋が二個増えた!!ついでに、アシュル様が笑顔でブチ切れしている!!
「フィン。ディラン共々、余計な事を言っていないで、さっさと行くぞ!エレノアに『貰った』んだから、今のお前なら出来るだろう?」
「うん。じゃあ、大叔父上。そしてディラン兄上、頑張ってね。他の連中も死なないでよね。死んだらエレノアが泣いちゃうから」
その言葉を言い終わると同時に、フィン様の身体から『闇』の触手が噴き上がると、私達の身体に次々と巻き付き、全身を覆っていく。
「えっ!?ち、ちょっ!フィンさ……」
言葉が言い終わる前に、フッと視界が暗転した。
◇◇◇◇
「……行ったか」
エレノア達がその場から消えたのを、ディランが確認した瞬間、今までオリヴァーが施した防音結界により遮断されていた、耳をつんざくような轟音が再び襲い掛かってきた。
「ディラン殿下。どうやらフィンレー殿下は私の真似をされたようですね」
そう言いながら、眼鏡のフレームを指クイしているイーサンに向かい、ディランが肩を竦めた。
「ああ。本来であれば魔力を温存する為、己の足で『邪神』の元に向かう予定だったんだが……。エルからあれだけの魔力を貰ったからな」
そう。『邪神』と相まみえた時の為、ここに至るまでアシュルとフィンレーは己の魔力を極力使わず温存していたのだ。……が、あのチビエレノアをゼンが蹴り飛ばした時点でブチ切れ、一斉に魔力を放出してしまうという不測の事態が起こってしまったのである。
「使っちまった分を差っ引いても、なお余りある程の聖魔力をエルが与えてくれたおかげで、結果的により確実で安全な方法で『邪神』の元に向かう事が出来た。……流石は『大地』の聖女と言ったところだな」
「当然です。エレノアお嬢様は初代聖女様の御力を継承した女神様の御使いであり、この世における至高の存在なのですから」
「ああ。その通りだな」
無表情なドヤ顔で、エレノアへの賛辞を口にするイーサンに完全同意しつつ、ディランはソッと自分の胸に手を当て目を瞑る。
『エル……』
そこには確かに、最悪な敵の元に向かった、自分の命よりも大切で愛しい少女の魔力が温かく息づいていた。
「イーサン!」
「はっ!」
「お前の最優先は、ベネディクトと協力しての『魔眼』の抑制だ。だがそれと並行し、出来る限り『黒騎士』の『魔眼』の力がどのようなものであるのかを探り出せ!シーヴァー、お前は他の騎士達や大叔父上と共に『魔眼』を持つ連中から彼らを守り、制圧せよ!!」
「「御意!!」」
「ディラン……」
「大叔父上。『魔眼』を完全に無効化出来ない以上、それを知らなければ俺達に勝機は無い。あの『黒騎士』は多分、師匠レベルの化け物だ。その上、ネイハムや他の連中も相手にしなくてはならないんだからな」
そうこうしている間にも、閃光と轟音が大きくなっていく。それにつれ、半透明な結界が軋みひび割れていくのが見えた。
「……さて。作り手が不在となったからには、この防御結界もそろそろ限界だろう。アーウィン、ジルベスタ、てめぇら覚悟は出来てんだろうな?」
「殿下、誰にものを言っているのですか?」
「殿下の方こそ、婚約者の枠を我々に奪われぬよう、せいぜい奮起なされますように」
自分達の剣に魔力を込め直しながら、不敵な笑みを浮かべるアーウィンとジルベスタに対し、ディランは口角を上げる。
「はっ!ぬかせ!……まあ、それじゃあせいぜい足掻くとするか!」
獰猛な表情を浮かべながら、いよいよもって崩壊しそうな防御結界を睨み据えたディランは、己の魔力を愛刀へと纏わせた。
こんな非常事態だというのに、ネタにされるヒューさんです。
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