ミニノアとの別れと敵陣の本丸
この世界の顔面偏差値が高すぎて目が痛い』9巻及び、ジュニア文庫2巻も発売中です。コミカライズ企画も進行中。よろしくお願い致します!
通販その他の情報は、活動報告をご覧になってくださいませ。
※書籍9巻の特典です※
◆書籍書き下ろしSS:『その雑草ホーリーにつき』
◆電子書籍書き下ろしSS:『クロス伯爵家の家令は見守りたい』
◆TOブックスオンラインストア特典SS:『いつか貴女に騎士の誓いを』
◆応援書店特典SS:『アンテナショップは「ぷるっちょ」と共に』
私の活躍(?)により、スプラッタショーから一転、花人形……いや、花ミイラまみれとなった『黒城』の回廊を、無理矢理気を取り直したアルバ王国一行が足早に駆け抜けていく。
「アシュルよ!このまま回廊を進むのか!?」
「はい、大叔父上!……罠である可能性は否定し切れませんが、この先に最も濃厚な魔力の気配があります!!」
「分かった!……が、エレノア嬢のお陰で、遊撃隊の出番が無いな。魔力が温存出来てなによりだ」
学院長様のお言葉を受け、あちらこちらから苦笑が上がった。す、済みません。私も出来ればもっと格好良くキメたかったです。
『それにしても……』
実際に『邪神』がいる敵の本拠地だから、私の『大地』の魔力があまり発揮出来ないんじゃないかと危惧していたんだけど、左を向いても右を向いても。なんなら走り抜ける回廊の至るところに花ミイラが転がっている。……なんというか、シュール過ぎる光景だ。
ペンポポスミレ……。まさか君達がここまで頑張ってくれていたとは思わなかったよ。いや本当に、その雑草魂には真面目に脱帽だよ!
「それにしても兄様、彼らはなんで、ペンポ……いえ、『大地』の魔力でここまでダメージを受けてしまったんでしょうか?」
「『聖』属性の魔力は、『邪神』の天敵だからね。当然、『邪神』の魔力の流れを汲む『魔眼』にとっても、君の魔力は天敵となるんだよ。……というかまさか、ここまで効くとは思わなかったけど……」
オリヴァー兄様の説明に、「成る程……」と納得する。
ようするに、最初に『バ●ス』状態になってた連中って、『魔眼』がダメージを食らっていたって訳なんですね。
「……ねえ、エレノア。『バ●ス』って何?」
あ、その件については、説明が長くなるので、無事に帰る事が出来たら詳しく説明しますね。というか兄様が私の心を読むスキルって、いついかなる時でも健在ですよね、もうっ!
兄様達やアシュル様達。騎士道精神からか、最初は花人形達を律儀に避けていたんだけど、あんまりにもあちこちに転がっているから避けるのが面倒になったらしく、最終的には遠慮なく踏みつぶしていくようになった。
やっぱり邪魔だったのか。あ!ヒューさんが『風』魔法で花ミイラ達を吹き飛ばして進路を確保している!……まあ、鎧を着ているだろうし、ペンポポスミレがクッションになっているから、そこまでダメージは無いだろう。それにそもそも敵だし同情はしない。ご愁傷さまとだけ言っておこう。
『……ん?』
「――ッ!?」
前方を走るアーウィン様にふと目を向け、衝撃的な光景に思わず目を丸くしてしまった。
『こ、小人な私……!?』
なんと、アーウィン様の背中に張り付いていた小人な私が、手のひらサイズのミニマム状態になってしまっていたのだ。
『そ、そういえば元々あれって、私の『大地』の魔力が具現化したものだったよね?』
つまり、アーウィン様の中に滞留している『邪神』の魔力を浄化&治癒する為、己の魔力を使い続けているうちに、どんどん縮んでいってしまった……という事なのだろう。まさしく、身を削る献身!
「……ん?おい、アーウィン。背中のエレノア嬢、滅茶苦茶縮んでいるぞ!?」
あっ!ジルベスタ様が気が付いた!アーウィン様も「えっ!?見えないけどマジか!?」って、焦って背中に手を伸ばしている。
それを見たクライヴ兄様とマテオが「あ、本当だ!」「エレノアが手乗りサイズに!?」って口にしている。ってマテオ!手乗りってなんなんだ!?確かによく見てみたら、ぴぃちゃんと同じサイズだけどさ!!
「えっ!?エレノアが!?」
「エレノア嬢が!?」
「姫騎士様が!!?」
「私じゃありません!!」
先陣を切っていた面々が、次々と足を止めてこちらを振り返った。私も思わず、彼らに対してツッコミを入れてしまう。
当然と言うか、オリヴァー兄様もしっかり足を止めて小人な私を凝視している。……なんだかんだ言って皆、小人な私が気になっていたんですね。
あっ!アップリケのように服と一体となっていた小人な私が、アーウィン様の背中からペリッと剥がれ落ちた!!それを見ていたその場の全員が、慌てて手を差し出し、小人な私をキャッチしようとする……が、当の小人(もう省略)は『心配無用!』とばかりに、アーウィン様の服をはっしと掴み、勢いを付けてピョンピョンとジャンプしながらアーウィン様の肩まで登って行った。
「エレノア嬢!?」
「エレノア……?」
だから!ソレ、私じゃありませんって!!
「エ、エレノア嬢……?」
違うって!!
戸惑いながら差し出されたアーウィン様の掌に、小人はピョンと飛び移ると、小さな指でグッとサムズアップした。まるで『もう大丈夫!』とでも言いたげなその笑顔。やり切った感が半端ない!
そうして小人は「バイバイ」と手を振った後、出て来た時と同様、ポン!とポップな音を残して消えてしまったのだった。
「エ、エレノア嬢ー!!」
アーウィン様が私の名前を叫びながら、絶望の表情を浮かべてその場に膝から崩れ落ちる。その場の皆も(勿論、オリヴァー兄様も)「ああっ!!」「そんな……!!」「まだ抱っこしてなかったのに!!」などといいながら、アーウィン様同様絶望したような表情を浮かべていた(もう、何もツッコむまい)。
「……アーウィン」
そんな中、アシュル様がアーウィン様を肩ポムする。
「『彼女』は君を癒すという使命を全うし、女神様の御許に戻ったんだ。その身を削り、君に己の力を注いでくれた『彼女』の尊い献身に恥じぬよう、共に前に進み『邪神』を倒そう!」
「――ッ!アシュル殿下……!!」
アーウィン様の絶望顔が一転、闘志に溢れたものへと変わった。周囲の皆も感じ入ったように力強く頷いている。
……なんか良い感じにまとめているけど。アシュル様のこめかみに、ひっそりと青筋が立っているのを私は見逃しませんでしたよ。
しかもその後方では、学院長様とフィン様が、「せめて一回でもいいから抱っこしたかった……」「まさか、僕の力で捕獲出来なかっただなんて……!」って言いながら深い溜息ついてる。そういえば、小人な私をキャッチしようとした手の中に、フィン様の『闇』の触手が混ざっていたような気が……って、あっ!アシュル様の青筋がもう一個増えた!
「アシュル……。お前も大変だな」
「……クライヴ、言わないでくれ」
クライヴ兄様が同情の面持ちで、アシュル様に肩ポムしている。長男同士、相通じるものがあるのだろう。
というかオリヴァー兄様、そっと目の端を拭いながら、「そうか……。僕を助けてくれたあの子は、消滅してしまった訳じゃなく、今も僕の中に宿っているんだね」って感動していますよ。
……まあぶっちゃけ、原理はペンポポスミレと同じですからね。多分……いや、間違いなく兄様の中に小人いると思いますよ?
◇◇◇◇
「――!!?」
回廊を突き進んだ先に、ひときわ豪華で重厚な扉が目の前に現れた瞬間、ドクン……と、心臓が激しく高鳴った。
「エレノア?大丈夫?」
思わず胸元を握りしめた私に気が付いたオリヴァー兄様が眉根を寄せる。
けれども、扉の向こう側に感じる深淵のごとき昏く邪悪な魔力に当てられた私は、心配そうな兄様に返事をする事が出来ず、早鐘のように鳴る心臓を鎮めようと浅く息を吐く事を繰り返していた。
「…………」
アシュル様は、そんな私の姿を目の端で確認した後、険しい表情を浮かべながら扉を……いや、扉の向こう側を睨みつける。
「……『邪神』自身の魔力ではない。だが、それに限りなく近い魔力の波動を感じる。多分だが、ここはこの黒城における『玉座の間』なのだろう。……フィン、お前はどう思う?」
アシュル様が険しい表情を浮かべながら扉を凝視しているフィン様に問い掛けると、フィン様は自分の眼鏡フレームに手をかけながら、コクリと頷いた。
「うん。アシュル兄上の見解で間違いないと思う。……というか、『邪神』の魔力と同様、随分穢れた魔力を感じるよ。気分が悪くなりそうだ」
アシュル様とフィン様の言葉に、その場の空気がキンと張り詰める。……というか、『玉座の間』!?……つまりこの先には実父である先の皇帝を殺し、玉座に着いたという、あの第三皇子セオドアがいるという事なのか!?
「恐らくこの先には、今まで遭遇した刺客達などとは比べものにならぬ程の手練れが待ち構えているに違いない。皆、今一度気を引き締めよ!!」
アシュル様の下知に、この場に居る全ての人達から一斉に魔力が噴き上がった。
「エレノア、大丈夫だよ。今度こそ、僕が君を守るから。勿論、殿下方やクライヴ、アーウィン殿達もだけどね」
そう告げたオリヴァー兄様の、私を抱く腕に僅かに力がこもったのを感じる。
「……ッ、はいっ!!私も……皆を守ります!!」
そう返した直後。目の前の重厚な扉が、まるで私達を誘うかのように音を立てながら、ゆっくりと開いていった。
ミニノア退場!そして場面は変わり……。
観覧、ブクマ、良いねボタン、感想、そして誤字報告有難う御座いました!
評価して頂けるとモチベに繋がります!
次回更新も頑張ります!




