うちの子集合!
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今、私の横では、大仰にふんぞり返ったシルビアが大層満足げに腰に手をあてていた。
「どう?面白いでしょ!」
どや顔のシルビアの横で、瞳をきらきらと輝かせたクロードが『木漏れ日の丘』の外観を見上げていた。
時刻はお昼前。午前の講習が終わり、開け放たれた大扉から多くの人が出入りしていた。老若男女、それぞれが溌剌とした表情を浮かべている。それを珍しそうに観察するく~ちゃん。
「あ、ダン兄ちゃ~ん!」
丁度建物内から外に出てきたミケルがこちらに気づいて手を振ってきた。私はそれに笑んで大きく手を振り返す。すると、横にいたく~ちゃんが何とも言えない顔でこちらを見やった。
――というのも。先日、く~ちゃんとダンデのお披露目会をシルビア主導の下執り行ったのだ。シルビアと二人で話し合った結果、クロードにも『ダンデ』の存在を明かす事にした。私たちは幼馴染だし、流石に至近距離でバレないわけがないからね。
毎度おなじみのカフェに呼びつけシルビアが私の座る席までく~ちゃんを案内してきた時の顔と言ったら……。何かめっちゃすっぱい梅干しを呑みこんだみたいな、狐に化かされたみたいな、何と特定できないくらい忙しなく百面相された。
「なかなか似合ってるでしょ?」
「……それは首肯して褒めた方が良いのか?」
最終的にげんなりとしたく~ちゃんが零した言葉である。
私たちはお茶を楽しみながら、『ダンデ』がいるからく~ちゃんが外出出来ること、私の男装を知っているのは今一緒にいる二人と、極一部の大人だけであること、お忍び活動中は身分を明かさないことなど、これから先必要になる情報を共有し合った。
……因みに兄様sにはまだ秘密にしている。兄様が指導に訪れる日はナターシャとして付き添うか、ひたすら身を隠す予定だ。
そうやって回想している間に駆け寄ってきたミケルにく~ちゃんを紹介する。
「ミケル、この子はクロ。僕の幼馴染なんだ」
「初めましてクロ兄ちゃん!僕はミケル。仲良くしてください!」
私の紹介に頷いたミケルがクロに笑顔を向けると、大きくぺこりとお辞儀した。……可愛い。後でハンナに報告してあげよう。お宅の息子さんはとても良い子に育ってますよって!
そうして顔を上げたミケルがシルビアとクロを交互に見比べて首を傾げた。
「……クロ兄ちゃんも貴族様?」
その言にく~ちゃんが短く息を呑んだ。見つかったら殺される敵のアジトに潜入しているとかじゃないんだから、そんなに緊張するでないよ。私は思わず苦笑い。
「良く解ったねミケル。そうなんだ。だから、いつもみたいに内緒にして普通に接してくれる?」
「解った!ボク、丁度今から孤児院の友達呼びに行くところだったから、ついでに皆にも話しておくね!」
パッと笑顔を咲かせたミケルはそう言うと颯爽と孤児院へ駆けて行った。途中で振り向いて手を振っている。薄桃のふわふわの髪と、赤いお目目が軽やかに地面を跳ねる姿は子ウサギを彷彿として癒されるわぁ……。
気分がほっこりとした所で今日の本題といきましょう。
今日の目的とは。
く~ちゃんの公園デビューですよ!!
「マル爺いる~?」
気楽に呼びかけながら建物の中に入ると、講堂奥にある勉強スペースにその人はいた。丸まった背中。長く伸ばした白い髭の下の方をリボンで結び、丸メガネの老眼鏡がとってもチャーミングなお爺ちゃん。お城から派遣されてきて、すっかりここの先生として定着した物知り爺さんだ。
私の声に視線を向けたマル爺がシルビアともう一人を見つけてそのメガネを光らせた。
「ほ~、やっとお出でなさいましたか。じいは待ちくたびれましたぞ」
ニイっと意味ありげに口を横に引き伸ばしたマル爺の瞳がく~ちゃんを捉えていた。
「っえっっ!!?マルベックっっ!!?お前、隠居したんじゃ……」
「ええ、隠居しましたとも。ですからお若い殿下に通っていただきますのじゃ」
殿下というマル爺の言葉に近くにいたロンとレイが凄い速さでこちらを向いた。私の動向を先読みした爺ちゃんが先手を打ってくれたらしい。まるで示し合わせたみたいにこの場には私たちしかいないのだ。眼鏡の奥を弧にしたマル爺が後を私に引き継ぐようにこっちを見た。それに軽く肩を竦めてみせてから口を開いた。
「ロン、レイ、丁度良かった。二人にも紹介するよ。彼はシルヴィーの幼馴染でクロ。これからちょくちょくここに顔を出すからよろしくね!」
「いやいやいやいやいやいやいやいや!!!!!!」
顔の前で高速で平手を振りながら即行でレイモンドが突っ込んでくる。
「……それは、お忍びという扱いで良いということか?」
「ロン、よくできました!」
「いやいやいやいやいやいやいやいや!!!!!ちょっっ、え、だって、そんな簡単にっっ!!?」
シンプルな思考のロン、常識苦労人のレイの間逆の反応がちょっと面白い。マル爺もずっとニヤニヤしてる。
「レイ、落ち着いて。僕の言う事よく聞いて。…君たち、先日殿下のお茶会でシルヴィーに会ったんだよね?そしてナターシャの茶会にも招かれて一緒にいたんだよね?思い出して。シルヴィーだって、こう見えて公爵令嬢なんだよ?」
「あ……」
そういえば、と顔に盛大に貼り付けてレイがシルビアを見た。
そしてクロへと視線を滑らせて……。――瞳に無を映して何かに頷いた。私もレイに向かってしかと頷く。シルビアはハテナと首を傾げた。
「ここでは彼はクロ。シルヴィーの幼馴染。君たち同様見識を深める為に所謂貴族のお忍びで城下に遊びに来ている。オッケー?」
私がロンとレイに向かって再度言い直すと、今度は二人も頷いた。
「……至らぬ部分も多いと思うが、これからよろしく頼む。」
話の落ち着きを見つけたクロードが慇懃に頭を下げた。それに慌てるレイモンド。
「あ、いえっ!こ、こちらこそヨロシクお願いイタシマスデス…?」
「レイ、もっと普通にしてよ」
私が苦言を呈すると、シルビアがズイッと前に出た。
「レイ、ナターシャがクロのことお願いねって言ってたのよ」
「この辺りの事は俺が一番詳しいんだ!なんでも聞いてよっ!」
シュン!と私も驚く速さでクロの肩を組んだレイがハハハハと笑いながら自己紹介を始めた。え?その変わり身の早さは何事!?戸惑ってシルビアを見たところ、ふふんとどや顔を返されたナゾ。
「俺の名前はレイモンド。ベイン男爵家の養子だよ。是非レイって呼んで!」
驚いた表情のまま頷くく~ちゃん。そして、ロンも無表情のまま二人の傍に近づいて会釈した。
「俺の名前はロン。オーウェン騎士団長の息子だ。」
「ああ、よろしく頼む」
初めて出来た同年代且つ同性の友達に、クロードの表情が徐々にはにかみ和らいでいく。照れくさそうに笑う姿に胸がきゅんと鳴った。良かった!良かったねく~ちゃん!おばちゃん感動で涙がでそうよ!!
おそるおそる彼らと握手を交わすクロード。
最後に何故かシルビアがその手を握った。
「さぁ、自己紹介が終わったのなら早速模擬戦しましょ!ロン、今日から二対二でやれるわよ!」
颯爽と外へクロを引っ張っていくシルヴィー。きらりと瞳を光らせて静かに後に続くロン。
「待って、二対二ってメンバー俺じゃないよね!?」
「何言ってるの?レイに決まってるでしょ!ロン、確保してきてっ!!」
こくりと頷いてがっしりレイを捕まえたロンが無表情のままにシルヴィーの後を追う。しかしその瞳だけは爛々と期待に光っていた。
「いってらっしゃ~~い!」
皆の背中を見送りながら、く~ちゃんの公園デビューの無事の成功に私は胸を撫で下ろした。
――そして誰もいなくなって漸く、そっと背後のマル爺へと振り返った。




