サリーさんにお願い!
皆様の応援のお陰で50話まで辿り着くことが出来ました!!
これを活力に明日も頑張れます!!
ブクマ&評価本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願い致します!!
「ご無沙汰しています。サリーさん、僕も手伝います。」
厨房で夕食の支度をしていたサリーさんを見つけてご挨拶。すぐに破顔したサリーさんが歓迎してくれた。
厨房には見慣れない青少年の男女が数人いて、私の視線に気づいたサリーさんが教えてくれたのだけれど、前回の寄付金のお陰で、卒院生の子供を何人か雇い入れる事が出来たらしい。それで随分彼女の仕事にも余裕が生まれたのだとか。
その子たちに夕飯の仕上げを任せて、サリーさんは私とレイを談話室へと連れ立った。
「ダンデ君のお陰でとても助かったわ。本当にありがとう…」
孤児院の談話室、その応接セットに腰掛けた私とレイにお茶を差し出しながらサリーさんがはにかんだ。
「いえ、僕は何も。……石鹸たちは役に立ってますか?」
「ええ、石鹸も化粧水も、もちろんお料理も。庭のハーブは手入れもほとんどいらないし、どんどん育つから、お世話になっている街の人にもちょっとお裾分けしてみたの。ハーブオイルは街でも人気が出てきたのよ。」
「そうですか…。喜んで貰えたのなら何よりです。ところで、以前お話しした事を覚えていますか?」
「ええ、覚えているわ。私たちに良くして下さった『親戚のお嬢様のお願い』でしょ?……勿論、お引き受けするわ。」
「え!?まだ内容も話してないのに?」
「だって、私たちをこんなに暮らしやすくしてくださった方のお願いだもの。悪いようになるはずが無いし、ご恩を返したいわ」
「それって、ナターシャ嬢の事!!?」
突然レイが喰い付いてきて面食らう。
「…そ、そうだけど……、レイ、彼女の名前知ってたの?」
「ああ、シルヴィーとリッツ父さんに聞いた。それより、また彼女がここに来るの!?」
「え!?…いや~…直接はぁどうかな?…多分来られないと思うけど……」
言えばレイががっくりと肩を落とした。サリーさんはその姿に含み笑いをしている。
「…え?な、ナターシャがどうかしたの??」
そんな二人の様子に嫌な汗が…。何々!?私、気付かない所で何かやらかしたの!?
「うふふ、パーティーの日ダンデ君はすぐ帰っちゃったものね。あのね……―――」
「わ、わーーーー!!何でもないっ!!何でもないよっっ!!」
何だ!?その慌てようは…。ますます気になるけれど、レイはサリーさんを口止めするのに忙しくしている。…う~ん。ほとぼりが冷めた頃に掘り返してみるか……。
「えと、話を戻すけど。…そのナターシャ嬢の指示でここの隣に今あるものを建てています。」
「ああ、お隣はお嬢様の持ち物だったの…」
「そうなんです。で、それが彼女のお願いと関係しているのですが…。あの建物は『職業訓練所』なんです。」
「「職業訓練所??」」
二人が首を傾げる。
「はい。貴族の使用人や街の職人たちを集めて、その仕事に必要な技能や知識を分けて貰える場にしたいのだと。で、筋の良さそうな人材は引き抜いて貰えばいいし、例え触りだけでも複数の業務の実情を知る事が出来れば、自分の将来も選びやすくなるだろうと言っていました。見返りは情報。ナターシャは街の人達の生活のリアルな話が聞きたいんです。貴族令嬢は基本、自分の屋敷から出る事はありませんから。」
「え?…じゃあシルヴィーは?」
最もな意見ありがとうレイ!
「…あの子は例外中の例外。でも大っぴらにバレたらヤバいのは変わらないから、ここにはお忍びで来てる。…サリーさん。子供達にもシルヴィーの話は孤児院の外でしないように指導して貰えますか?」
「それは構わないけれど…彼女…そんなに良い所の……」
「それ以上は詮索されない方が身のためです。僕からはその位しかお教えできません。彼女はここでは『シルヴィー』でそれ以上でも以下でもありません。ただ、素性を知られると事件に巻き込まれる可能性も無いと言い切れませんから。…孤児院の子供たちを護るためにもお願いします。」
サリーさんが神妙に頷いた。レイも心得たように口を引き結ぶ。
「続けますね。それでナターシャがあなた方に臨むのは、職業訓練所のモデルケースになって貰えたらなと。」
「もで?…って何かしら?」
「え~っと……、手始めにここの子供たちに体験してもらって、感想を教えて欲しいんです。そうしたら、子供たちの就職活動にもなるし、逆に石鹸とかの作り方を教える方になっても良い。…そこに旨味を感じれば、街の人も自分の子供を寄こすかもしれないでしょ?…大人は仕事で頻繁には無理かもしれないけど、引退したご年配の方達を招けば有意義な話も沢山聞けるだろうし。そうやって街の人達の交流の場にしたいんです。そうすれば貴族と門戸も近くなるし、皆が情報共有できる場所があれば、徒に悪意ある噂に惑わされることも減るでしょう。訓練所なんて銘打ってますが、要は気軽に学べる場所を作りたいんです。」
「…そんな。……そんなご慈悲、お断りする訳がないわ!きっと子供たちも喜びます!!」
「ありがとうございます。…レイには先生になって貰うからよろしくね。」
「はい?…何で俺が?」
「レイは貴族として勉強をしている最中だろ?復習も兼ねて読み書き計算をここで教えてよ。礼儀作法なんかは教えてくれるひとが常駐してるから、その人に倣えばいい。ベイン男爵には口添えしておくからそうしなよ。自分も学べて、皆の様子を見に来る口実になるんだから悪くないだろ?」
「……確かに。」
やった!釣れた!!奉仕活動で有名なベイン男爵とその息子が関わっていて、尚且つチャリティーパーティーのお土産効果も加われば、貴族側も興味を持つはず。そして奥方たちは絶対協力的になる!庶民との懸け橋の場にするには打ってつけだ。最終的には庶民の識字率を上げて、自己判断が出来るようにすること。犯罪に走る前に助け合えるコミュニティーを確立させること。要は病院と教会と寺子屋を一緒くたにした施設を作って、来る大寒波に備えようって言う試みです。情報の発信源としての信憑性が確立されれば、多少の混乱も防げると思うのよね。…何としても成功させなきゃ!
「もう間もなく建物の完成と共に、先んじて入居者たちがやって来ます。その人たちと協力してこの訓練所の立ち上げ人になって貰えませんか?」
「委細承知いたしましたとお嬢様に伝えて下さい。きっとご期待に応えて見せます。」
「…この優しさ……やっぱり天使なんじゃ……」
ん?天使?…毅然と微笑むサリーさんの横でレイが惚けてるけどどうした一体?
「レイ?」
「!?あ、いや…何でもない。あのさ、俺も頑張ったらナターシャ嬢は喜ぶかな?」
「…そうだね?…嬉しいと思うけど……?」
「ヨシッ!!俺も出来る事は何でも協力するっ!!そしてナターシャ嬢の期待に応えて見せるっっ!」
「……はあ。」
うん。良くわかんないけど、やる気になってくれたならま、いいか。
…後は職業訓練所が出来るまで静観すればいいもんね。
さて。今日の私の目的は達成されたし、広場のロンを回収して帰りますか。
―――ロン、生きてるかしらね…?




