眠りの竪琴
ある冒険者が、旅の途中で手に入れた竪琴を故郷の国に持ち帰った。
その竪琴は人魚から貰ったもので、その美しい音色には、人を眠りに誘う魔法の力があるのだった。それも、ただの眠りではなく、最高に気持ちの良い眠りである。
早速王様は、国一番の竪琴奏者を呼び、都の広場で、その竪琴を弾かせた。
奏者が弦をはじくと、得も言われぬ美しい音が広場に響いた。
確かに美しい音色だった。
ところが、二音、三音と、音が旋律になってゆくと、演奏は止まってしまった。
うとうとしていた人々も、音楽が止まると共に目を覚ました。
「どうしたことだ。もっとその音色を聞いていたいぞ」
もう少しで眠れるところだった王様は、奏者に言った。
すると奏者は、はっと我に返った。
「申し訳ありません。しかし、この竪琴を弾いていると、私もその音のために眠くなってしまうのです」
王様は他の演奏者を呼んだ。
しかし、どの演奏者も、音が旋律になってゆくと眠ってしまい、そこで音楽は途絶えてしまうのだった。
「ならば、耳に栓をすればよい」
王様の命令に奏者は従い、耳に栓をして演奏した。
ところが、音を失った奏者の曲は、リズムもテンポもバラバラで、とても聞けたものではなかった。
そこへ、国一番の魔法使いがやってきた。
「私の作ったゴーレムは眠りません。眠らないゴーレムなら、演奏を続けることができるでしょう」
「それを連れてまいれ!」
王様は、魔法使いのゴーレムに演奏をさせることに決めた。
数日後、広場には国中の人々が集まった。
魔法使いは、人魚のように美しいゴーレムを作っていた。
竪琴がゴーレムの前に運ばれた。
「では、弾いてみよ」
美しいゴーレムは、王様の命令に従い、竪琴を弾き始めた。
美しい旋律に、人々はばたりぱたりと眠り始めた。
貴族も、大臣も、王様も、皆、目を閉じた。
魔法使いも、騎士も、花屋も、石工も、馬方も、父も、母も、子供も、大人も、鳥も、草花も……。
やがて、何もかもが眠りについた。
静かで幸せな眠りに。
美しいゴーレムは、永遠の命が尽きるまで、竪琴を奏で続けた。




