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8話
なんで。
どうして。
手に力が…入らない。
目の前が霞む。
頬に冷たい何かが流れる。
「なんで、なんで……見えない、見えない見えない見えない」
どうして躊躇う必要がある?
僕は悪いことはしていないんだ。
とにかく、このまま力が入らないんじゃ彼女を殺せない。
机の上のハサミに目を向ける。
ぼやけた視界でそれを手に取り
彼女の胸に刺した。
首に巻かれたネクタイが緩むと同時に、彼女は声にならない音を発する。
そのまま膝から崩れ落ち、濡れた瞳をこちらに向ける。
1発で殺せないのなら、徐々に死んでいけばいい。
さあ、これでもう後戻りはできない。
「あなたが…お姉ちゃんを殺し…たの?」
絞り出したようなその声を聞き、僕の視界はさらに霞む。
言葉がでない。
僕はかわりに首を大きく縦にふった。
「お姉ちゃんを…殺した、時も……泣いたの?」
首を横に振る。
ああ、そうか…僕は泣いているんだ。
「どうして僕は泣いているんですか?」
今度は僕の方から彼女に尋ねる。
彼女はうっすらと笑みを浮かべてこういった。
「悲しいから……じゃない?」




