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美少女恋愛ゲームに異世界転生したのに攻略対象(チョロイン)だったんだが!?  作者: 萌奈菓
第二章 夏休み編

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第29話 秘密の話し(ヴィルティス視点)

「……眠れない…」


ベットの上で何度も寝返りを打っても、中々眠気が訪れてくれない。


(明日は朝からリリアと馬車で移動しないといけないのに)


けれど仕方ない、だってリリアが…好きな人がもしかしたら自分の事を好きかも知れないだなんて、寝られなくなって当たり前だ。


(でもリリアもハッキリと自覚した訳じゃなさそうだし、あぁでも、あんなに赤い顔をされて期待しないなんて無理だよ…)


答えが出るまで待って欲しいとは言われたけど果たしてどんな答えが出るのか、期待と不安がごちゃ混ぜになる。


(駄目だ、何か気を紛らわせないと)


ベット近くのスタンドランプに明かりを灯して、本を読み始める。

取り敢えず頭の中を文字だらけにして眠気を誘う作戦だけど、漸く意識を手放せる様になったのは空が少し白み始めた頃だった。



「――大丈夫ですか?ヴィル様」

「リリアこそ眠そうだね」


睡眠時間が足りない上に無理矢理脳を疲れさせて寝たからか、頭が少しボーッとしてしまう。

寝坊して遅刻しなかったのは奇跡だ。


(リリアも寝不足で調子が悪そうだ…ハンカチを返した時も貸してた事を忘れてたみたいだし)


馬車に乗る前に洗って乾かしたハンカチを渡すと『すみません!ヴィル様がお帰りになる時に受け取るの忘れてました』と謝られたけど、借りてたのは俺だから気にしないでと返したのは、つい先程の話しだ。


今は休憩を挟みつつスエーベル領からティエラ領まで馬車で移動中だけど、リリアと二人っきりだから変に緊張してしまう。


(しかもお互いに寝不足だから、変な事を口走らないように気を付けないと)


せめてリリアが連れて来ている、レミーナと言うメイドが居たらと思うけど『お二人のお邪魔にならない様に、護衛の人達と一緒の馬車に乗りますね』と言われてしまった。


「…あの、ヴィル様…あの後ご両親のご様子はどうでしたか?」


そんな緊張を解(ほぐ)そうとしたかったのか、リリアが話しかけてくれた。


「それがね、父上は少し気落ちしつつも帰って来た義兄(あに)達に噂を流してた事を咎めてたよ」


今更だとは思うけどねと笑うと、リリアも意外そうに目を丸めている。


「父上なりにリリアの言葉を考えてくれたんだと思う、妾の子とは言え人の噂を考えなしに流すと自分達に予期せぬ形で帰って来るって」

「そう思って頂けたなら良かったです」

「義母(はは)はまだ納得しきれてないみたいだけど、流石にこれ以上加護持ちの気分を害したくないのか大人しくなってたよ」


(まぁ昨日の今日で俺への態度を変える程、簡単な関係性ではないからね)


リリアも俺の顔を見て悟ったのか苦笑いをしている。


(あぁ、でもいつものリリアとのやり取りに戻って来たな)


これならリリアのご両親への挨拶も大丈夫そうだと、ホッとした。



(――ヤバい、眠気が凄い…)


途中で寄った町で昼食をとった後、再び馬車に乗り込んだけど腹がふくれたせいか、はたまたリリアとの緊張がなくなったからか凄く眠たい。


ガタガタと揺れる振動と、少し開けた窓から入る涼し気な風が心地良い眠りへと誘う。


(リリアが目の前に居るのに…駄目だ…もう…)


降りていく瞼に逆らえず、俺の意識は遠のいていった。



(――ハッ!)


ガタン!と大きな揺れで目が覚めると、窓の外は少し日が傾き始めていた。


(どれぐらい寝てたんだ?……リリアは!?)


バッと前を向くと、壁にもたれながら静かに寝息を立てているリリアが目に入る。


(リリアも寝てたんだ……寝顔初めて見た)


当たり前な事だけど、無防備な姿に思わず見入ってしまう。


(寝顔も可愛いなぁ…目を閉じてると睫毛の長さが際立つなぁ)


まだ寝起きの頭でぼんやり見つめていたら、いつの間にか馬車が止まってたらしく、扉がノックさせる音で飛び上がる。


「リリア様、ヴィルティス様、そろそろご休憩なさいますか?」

「あっ!ちょっ…ちょっと待って…!」

「う〜ん…レミーナ?…へっ!? 私寝て…!?」


俺とレミーナのやり取りで起きてしまったリリアも飛び上がった。


「えっ?えっ?もしかして、寝顔見て…?」

「見てない!見てない!俺もノック音で目覚めた所だから」

「あの、大丈夫ですか?」


本当はしっかりと見てたけど、そんな事を言ったら引かれてしまいそうで咄嗟に嘘をついてしまう。


扉の外で心配するレミーナも加わって、暫くその場は騒然となってしまった。



――うん、今日も良い天気だ。


現在ティエラ領、リリアの住むサルヴィーニ伯爵家の近くの宿屋で目が覚めた俺は挨拶へ向かう準備を進めている。


(俺の時とは逆だな)


違いがあるとすれば、俺に付いてくる家の者が居ない事と、リリアに誘われた『ピオス祭』に参加する為に何日か滞在する事だ。


(あの家にずっといなくて良いのは有り難い)


そんな事を思っていると、2階の窓の外からこちらに向かって歩いて来るリリアが目に入ったので、窓を開けて呼びかける。


「リリア!一人で外に出て大丈夫?」

「あっおはようございます!領内では自警団の方々が巡回しているので大丈夫ですよ」


それに田舎だと知らない人が居たら直ぐ話しが広まるので、と言っているけど流石に心配なので最後の仕上げに襟にリリアから貰ったラペルピンを着けて一階へと降りた。


「ヴィル様、昨夜は寝れましたか?」

「うんぐっすりだったよ、リリアは?」

「私も熟睡出来ました」


長時間の馬車移動の疲れなのか、昨日の寝不足が原因なのか定かではないけど、昨夜はお互いにゆっくり寝れたようだ。


自然に手を繋いで「それでは我が家にご案内します」と言って歩き出したけど、確か領民には婚約の話しはしてないって言ってなかったっけ?


(でもそれを指摘すると滞在中に手を繋いでくれなくなりそうだから、気付くまで黙っておこう)



「――リリアからお話しは伺っております、サルヴィーニ伯爵家当主のジェイク、そしてこちらが妻のタニアです」

「ようこそティエラ領へ、後日行われるお祭りも楽しんでいって下さいね」

「ヴィルティス・バールナーです、よろしくお願い致します」


前にリリアが言っていたように作戦の事は知らせているので、話す内容は婚約者になって娘を守ってくれていた感謝と、学園でどう過ごしていたかが中心になっていた。


(優しそうな人達だな)


バールナー家とは違って、ここでは穏やかな雰囲気で満たされている感じがする。


(俺を敵視する人がいないから当たり前か…)


あの家では常に邪魔者、厄介者扱いだったから新鮮だ。


瞳の色も俺が妾の子だと言う事も、何も言わないで接してくれているご両親に感激していると、バシャっと水がかかる音とリリアの小さな悲鳴が聞こえて振り向く。


「リリア?」

「もっ…申し訳ございません!」


見てみるとレミーナが手を滑らせたらしく、リリアのドレスにお茶がかかってしまっている。


「直ぐにお着替えの準備を!」

「大丈夫よレミーナ落ち着いて、貴女の方こそ濡れなかった?」

「そう言えばレミーナもずっとリリアに付いて馬車移動していたものね、きっと疲れが出てしまったのよ」


倒れたグラスをレミーナと片付けた後、リリアが立ち上がる。


「部屋に戻って着替えてまいります、ヴィル様お待ちくださいね」

「分かった、ゆっくりで構わないから」

「レミーナも今日は休んだ方が良いわ」

「はい、本当に申し訳ございませんでした」


退出するリリアに続いてレミーナも出ようとしている時に、何故かタニア様が笑顔でグッと親指を立ててる。

何だと思ってレミーナを振り返ると、満足そうに笑ってから一礼して扉を閉めていった。


「……えっ?」

「うん!上手くいったわね」

「タニア、少しやり過ぎではないか?」

「でもこうでもしないとリリアが席を外さないでしょうし」


……つまり、レミーナがリリアにお茶をかけたのは態とだったのか?


(俺だけ残してどうする気だ?)


緊張して身構えていると、タニア様がにっこり笑って口を開く。


「ヴィルティス卿」

「ヴィルティスで大丈夫です…周りでもそう呼ぶ人はおりませんから」

「じゃあヴィルティス君、リリアが戻ってくるまで時間がないから単刀直入で聞くけど……正直リリアの事どう思っているのかしら?」


………えっ?


「えぇっ!?」

「ほら、彼戸惑ってしまっているだろう?」

「でも聞いておいた方が私達も安心するでしょう?」


(…成る程、リリアを預ける身として真意を確かめておきたいのか?

なら変に誤魔化すより、正直に言った方が誠意も伝わるかも)


「リリアの事は、一人の女性として愛しています」


二人の目を見てハッキリと伝えると、タニア様が嬉しそうにジェイク様の肩をバシバシと叩いている。


「ほらほら!私の言っていた通りでしょう?」

「ちょっ痛いって分かったから!」


……さっきから何なんだ?

しかし二人からは嫌な感情が伝わってこないから、悪い方向には行かないのか?


戸惑いが強くなっている俺に気付いたのか、タニア様が苦笑する。


「急にごめんなさいね、でも夫と話していたの…もしヴィルティス君がリリアの事を愛してくれているのなら、リリアのお婿さんとして迎え入れようって」

「リリアが加護持ちだと分かっても、利用しようとせずに守ってくれていた君なら、娘を任せられると思ったんだ」


思っても見なかった話しに、思わず声も上擦る。


「それは…とても嬉しいお話しですけど…でもリリアは?」


(まだ彼女の中では答えが決まってないんじゃないのか?)


俺の疑問にタニア様が困ったように頬に手を当てる。


「それがねぇ、リリアもあと一歩が踏み出せない状態みたいなのよ…貴方とここで過ごしている内に、乗り越えられれば良いのだけれど…」


(母親である彼女がそう思っているなら、更に期待しても良いのだろうか?)


胸の高まりが抑えられない、今夜もまた寝れないかもしれないけど、それはもう受け入れよう。


リリアが戻って来る気配に「この話しは一旦ここまで」と切り上げられ、扉が開かれる前に気分を落ち着かせようと、ゆっくり深呼吸をした。

いつも読んで頂きありがとうございます!


ヴィルティスの呼び名は『卿』で良いのかと悩みましたが、物語に支障はなさそうなのでスルーして下さいm(_ _)m


次回は場所を王都に移して、ゲイル視点の予定になっております。



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