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うちの王子に、夜な夜な異界の女が通って来る 〜だいたい俺のおかげ〜  作者: ダレモール
9章 あなたと生きていく
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番外編 側近Aは見た ―鉄壁殿下の秘密―

本編前半〜6章頃の出来事。

レイの側近が目撃した、ある夜の話です。


※本編を読了後に読むことをおすすめします。



私は、この仕事に誇りをもっている。

レイニアス殿下は、実に理想的な上司だ。


判断は早く、常に物事の先を見て行動される。

周囲への気遣いも、決して忘れない。


王太子の側近という重要な職務でありながら、急な残業とはほぼ無縁。

家族にも、大変喜ばれている。


――ただ、ほんの少し、壁を感じることもある。


言ってくれれば、もっとお役に立てるのに。

そう思ってしまうのは、少し図々しいだろうか。


あの方は、あまりにも完成されすぎている。

踏み込むことを、ためらってしまうほどに。


殿下は容姿も優れており、昔から貴族のご令嬢の視線を集めてこられた。

周辺国の王族と比べても、やはり自慢の殿下である。


しかし、どんなに美しい令嬢を前にしても、殿下の態度は変わらない。

あの方の心にまで踏み込めるご令嬢は、いないようだ。


大臣たちも、まだまだ大物を狙えると考えている。

全く、欲深い老人たちだ。




そんな毎日が続いたある日、私は気づいた。


最近、殿下は空を見上げることが増えた。

ふとした瞬間、物思いにふけるように遠くを見つめている。

殿下にも、悩むことがあるのだろうか。


近頃は、夜の自室周りを人払いしていることも多いらしい……。




「最近の殿下は、何か違うよな?」

側近Bがつぶやく。


「わかる。思い悩んでる感じというか」


「……恋かな?」


「まさか。鉄壁と言われた殿下を落とせる令嬢は、もう国内にはいないと思うぞ」





そして、私はとうとう目撃した。


満月の夜、庭園で。

白いふわふわした服をまとった女性と踊る、殿下の姿。

月明かりを受けた二人は、絵画のように美しかった。


私は、柱の陰から二人の様子を静かに見つめた。



ふいに、殿下は女性を抱きしめた。

女性が、光となって消え始める。



私は目を見開いた。

――見てはいけないものを、見てしまった。



こんな夜に、あの方が会う相手とは……。


会議で話しておられた「心に決めた人」は、確かに存在していたのか。


誰なのか、まったく見当もつかない。


ただ、光に包まれたその女性は、明らかに普通の人間ではない。


そして、殿下がこれまでいかなる女性にも心を開かなかったことを思えば、

この女性はただ者ではない――精霊に違いない、と自然に結論づけた。


会わせることができない理由も、たぶん――月の精霊だからだろう。


殿下……おいたわしや……。




少しして、女性は光とともにサラサラと消えた。




この後、レイニアス殿下の変化が城を揺るがすことになるとは、

この時の私は、夢にも思わなかった――。




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